書道を始める際には筆が必要となります。
筆に関して何も知らないまま購入しようと店を訪れると、数え切れない種類の筆が並べられており途方に暮れてしまうでしょう。
しかし、あらかじめ最低限の知識を身につけていれば、数ある筆の種類を目の当たりにしても、選ぶのが楽しく感じられることさえあるかもしれません。
自分に合った筆を手に入れるためにも、筆の選び方に関する基本的なポイントを押えておきましょう。
美しい文字は、それだけでその人の品格や知的雰囲気をグッと上げてくれます。ここでは、必要な道具も練習方法も分からないけれど書道を始めたい!という人のために、書道を始めるために必要な事を解説します。筆の持ち方や姿勢、書道の基本、どんな風に練習を始めたら良いのかをオススメの書籍も含めお話していきます。
筆選びの4つのポイント「尖」「斉」「円」「健」
いざ店頭で筆を選ぶにあたり、特に大切なポイントとして、「尖」「斉」「円」「健」の「四徳」が備わっているものがよいとされています。
中国から伝わったこの4つのポイントは、今も昔と変わらず、書道を行う人々の中で共通認識として広く浸透しています。
尖
尖(穂先が尖っていて、まとまりがあること)
穂先がしっかりと尖っていることで、思い通りの道筋と線の太さを表現でき、筆を運びやすくなります。
斉
斉(穂全体がきめ細かく整っていること)
穂全体が整っていることで墨をまんべんなく含むことができ、美しい筆跡を残すことができます。
円
円(穂の形ががきれいな円錐状であること)
穂先の形がきれいな円錐形であることで、墨をたっぷりと含むことができ、ひと筆で勢いのある線を書くことができます。
健
健(穂先に適度な弾力があり、筆がスムーズに運ぶこと)
穂先に弾力があることで、「とめ」「はね」「はらい」などの動きを綺麗に出すことができます。
穂の毛色の違い、弾力の有無で選ぶ
筆の穂の部分は、白色の毛を束ねて作られたものと茶色の毛を束ねて作られたものがあります。
一般的に、白色の穂の筆は「羊毛筆」と呼ばれ、山羊が使われているものが多く、細く柔らかな毛質を特徴とします。
一方茶色の穂には、馬や鼬、狸、鹿などの毛が用いられており、コシが強く弾力があるのが特徴です。
まだ書道を初めたばかりの方は、茶色の穂の筆で少しずつ感覚を養い、慣れるにつれて柔らかな毛を使用した筆へと移っていくと、表情の豊かな線を紙の上に表現する力が身につくでしょう。
穂の材料と書体の関係
柔 毛筆
山羊の毛が使われているものが多く、細く柔らかではあるものの、丈夫な毛質であることから長く使い続けることができます。
また、小筆と呼ばれる小さくて細い筆から、大筆と呼ばれる大きな筆まで、筆の太さを選ぶことなく様々なサイズの筆に用いられています。
柔らかで伸びやかな字を書くことができ、粘りや墨もちがよい点も特徴のひとつです。
筆圧に強弱をつけることで重厚感のある豊かな線を書くことができるため、楷書、篆書、隷書ももちろん、流麗な筆跡を必要とする行書や草書にも適しています。
一方、力加減が難しく筆運びにも技術がいるため、初心者には扱いづらいという面もあります。
剛 毛筆
狸や馬、鹿、鼬など比較的硬めの毛が用いられ、コシが強く、弾力のある穂を備えた筆です。
剛毛筆の多くは、1本の筆につき1種類の毛のみを使用して作り出されますが、2~3割ほど他種の獣毛を用いて作られたものもあります。
筆の運びが思い通りにしやすいという特徴があり、「とめ」や「はね」をしっかりと表現することができ、楷書の字を書くことに適しています。
柔毛筆や兼毛筆と比べると、墨含みがあまりよくないぶん、かすれを出した字を書くのに適しています。
兼 毛筆
柔らかい毛と硬い毛を混ぜ合わせて作った筆を指します。
同じ動物でも部位によって硬さが異なりますが、その中でもさまざまな毛を混ぜ合わせたものや、数種類の動物の毛を混ぜ合わせたものがあるうえ、毛の混合率にも様々なバリエーションがあり、種類が豊富です。
羊毛の割合が増えると柔らかく、馬、狸、鹿の毛の割合増えると弾力のある強い筆となります。
様々なニュアンスを出しやすいため、楷書のかっちりとした書体から、行書や草書の流れるような筆跡まで幅広く表現できます。
初心者〜中級の方にはオススメです。
軸の太さで選ぶ
筆の持ち手部分を「軸」といいます。
「ダルマ軸」と「普通軸」の2種類があります。
ダルマ軸の筆は、持ち手部分(軸)が穂の太さよりも若干細く仕上げられています。
穂の部分が太く作られているため、墨持ちがよく、太く大きな字を書くのに適した作りになっています。
また、子どもでも持ちやすいため学童用の筆にも多く見られます。
これに対して普通軸の筆は、穂の根元部分の太さと、持ち手部分の直径がほぼ同じになるように仕上げられています。
軸と穂の太さが揃っているため、書く線の太さが筆を持つ手に正確に伝わりやすく、思い通りの線を書きやすいという特徴があります。
捌き筆と固め筆の違いで選ぶ
店頭で筆を選ぶ際に、穂先を見比べると尖った状態で置かれている筆と、ブラシのように広がったままの状態で置かれている筆と2種類あることに気がつきます。
穂先を尖らせた状態で固定した筆を「固め筆」、固めていない自然な状態の筆を「捌き筆」と呼びます。
「固め筆」は穂先を円錐状に固めており、購入時に毛束の中まで確認することはできません。
そのため、ある程度書道歴が長く、道具にもこだわりがある人にとっては、穂全体のコンディションを知ることができないためあまり好まれない場合もあります。
比較的安価で、初心者向けの筆であるともいえます。
固め筆のように穂を糊で固めている主な理由は、未使用の状態で筆を長持ちさせることができるという効果があるためです。
長い期間使用しない場合に、虫食いや穂割れを防ぐことができます。
一方で「捌き筆」は、店頭で穂の中身まで見ることができるため、毛質を確かめながら自分の感覚や経験も加味しつつ、最適な筆を選ぶことができます。
経験者が書く作品に合わせて筆を使い分けたいときにも、捌き筆から吟味します。
おわりに
書道の筆には数多くの種類があり、書道を始める際にいきなり自分に最適な一本を選ぶことは難しいかもしれません。
まずは、どこへ行けば書道用具を手に入れることができるかを調べましょう。
最も品揃えがよいのは、やはり書道用具の専門店です。
最初は、比較的安価な初心者向けのモデルや、販売店の中で人気のあるものを選んで使用してみるのがよいでしょう。
書道用品の専門店ではスタッフが商品について詳しく教えてくれるので、気になる点は質問するのが一番です。
また最近では、多くの書道専門店がオンラインショップでも同じように道具の販売を行っています。
専門店以外で品揃えが良い場所というと、大型の文具店や手芸用品店がおススメです。
しっかりと書道用具のコーナーが設けられており、筆の品揃えが豊富な店も多くあります。
とにかく早く書道を始めたいという方は、近所のスーパーや100円ショップに足を運んでみてください。
数種類しか品揃えはありませんが、手軽に書道用具を揃えるには適しています。
インターネット上で「書道店」や「書道用品」などと検索すれば、近くの書道用品店を発見することまでは簡単にできますが、実物に触れることなく数多くの筆の中から自分に合った1本を見つけ出すことは、やはりかなり困難であると思います。
書道の筆は使用してみないことには良し悪しが判断しづらいため、何本もの筆を実際に使って試してみてください。
自分の体験を踏まえ、様々な視点から自分に合った筆を選べるようになることを目指しましょう。
書道の世界には多くの道具が存在します。
中でも、文房四宝と表現される道具は、実際に文字を書く場面で欠かすことができません。
書道を上達させたいと思い、調べてみると「楽しむことが大切!」、「気持ちを整えることから始めよう!」、「集中できる環境を探そう!」…そんなことはもちろんわかっているんです!そういった精神論に近いアドバイスではなく、具体的にどうすればいいかを教えてほしい。そう思っている方も多いのではないでしょうか?
「書道って何ですか?」そう聞かれた時、あなたはうまく説明ができるでしょうか。また、「習字」とはどこが違うのでしょうか。確かに、筆に墨をつけて字を書くという点は同じです。しかし、書道と習字ではその目的が異なります。