茶道のお稽古を始めていくうちに、だんだんと気になってくるのが、茶道の「資格」についてです。
他のお稽古や資格と違い、茶道の資格は流派によって、種類も必要な経費も全く異なります。
今回は代表的な流派である、裏千家と表千家、そして武者小路千家の資格(許状・免状)について詳しく解説していきます。
茶道の資格とは?三千家における許状とお免状の違い
裏 千家
裏千家では、「資格」制度が存在します。
ここでの「資格」とは、茶道のお作法の習熟度を表す指針であり、持っている「資格」に応じて、申請できる「許状」の範囲が異なります。
武 者小路千家
武者小路千家の資格は、裏千家と同じく「許状」のシステムがとられています。
お稽古の習得度によって、次の段階のお稽古することを許可する旨の「許状」が与えられます。
表 千家
表千家には、いわゆる「資格」という制度は存在しません。
あえて表千家において「資格」を持っているという言い方ができるのは、「免状」を全て取得している状態のことを指します。
「免状」とは、他のお稽古でのいわゆる「修了証」とは異なり、技術を習得した後にいただくものではありません。
茶道における各段階でのお稽古を学ぶことができると、許していただいた証となるのが「免状」です。
今回は、代表的な流派の一つである裏千家を中心に、資格を取るために必要となるお点前を費用とともにご紹介していきます。
千利休を始祖とする茶道の流派には「三千家」と呼ばれる表千家・裏千家・武者小路千家の代表的な流派の他にもいくつかの流派が存在します。この記事では、茶道のそれぞれの流派の違いや特徴について詳しく説明します。
裏千家の資格(許状)の種類と費用
裏千家において、茶道の「資格」は初級、中級、上級、講師、専任講師、助教授に分かれています。
それぞれの「資格」を得るためには、資格に見合ったお点前を習得することが必要になります。
また、取得するお点前により挨拶料が異なります。
挨拶料とは、茶道を直接教えていただく先生から、一般財団法人である裏千家今日庵 に支払われるものです。
そのため、先生にお支払いするときには、挨拶料+先生へのお礼を合わせて包むようにしましょう。
お礼の一般的な金額は、中級までは挨拶料と同額程度、中級以上は2倍以上お渡しする場合もあります。
ただ、お礼を一切受け取らない先生もいらっしゃいますし、金額もお教室や先生によって異なります。
先生にお渡しする、挨拶料と合わせた具体的な金額は、先輩のお弟子さんなど周りの方に伺うことをオススメします。
資 格証【初級】
資格
茶道において最も基本となるお辞儀の仕方から、割稽古※1を習得し、お茶を点てます。
※1割稽古:袱紗の捌き方、棗や茶杓の清め方など、様々な所作を学ぶこと。
挨拶料:1,100円
小習(こならい)
前八ヶ条※2と後八ヶ条※3の十六ヶ条を学びます。
※2前八ヶ条:貴人点・貴人清次・茶入荘・茶碗荘・茶杓荘・茶筅荘・長緒茶入・重茶碗に関する作法
※3後八ヶ条:包帛紗・壺荘・炭所望・花所望・入子点・盆香合・軸荘・大津袋に関する作法
挨拶料:1,980円
茶箱点(ちゃばこだて)
茶箱を使ったお点前を学びます。
挨拶料:3,300円
この入門・小習・茶箱点の3つを習得することで、初級の資格を得ることができます。
資 格証【中級】
茶通箱(さつうばこ)
2種類のお濃茶を同じお客様に差し上げる時のお点前を学びます。
挨拶料:2,750円
唐物(からもの)
唐物※4茶入を使用したお点前を学びます。
※4唐物:産地が中国のもの。
挨拶料:2,750円
台天目(だいてんもく)
天目茶碗を台に乗せて扱うお点前を学びます。
挨拶料:2,750円
盆点(ぼんだて)
お盆に唐物茶入を乗せて行うお点前を学びます。
挨拶料:2,750円
和巾点(わきんだて)
名物裂※5で作った古帛紗の上に、袋に入れた中次をのせて扱うお点前を学びます。
※5名物裂:室町時代を中心に鎌倉時代から江戸時代初期にかけて中国などから渡来した、高級絹織物のこと。
挨拶料:3,300円
茶通箱・唐物・台天目・盆点・和巾点の5つを習得することで、中級の資格を得ることができます。
資 格証 【上級(助講師)】
行之行台子(ぎょうのぎょうだいす)
行台子と呼ばれる棚を使う、奥秘の基礎のお点前を学びます。
別名「乱かざり」とも呼ばれます。
挨拶料:7,700円
大円草(だいえんのそう)
大円盆と呼ばれるお盆を行われるれる、奥秘のお点前を学びます。
挨拶料:7,700円
引次(ひきつぎ)
所定の手続きを行うことで「上級(助講師)」の資格を得ることができます。
教授者(茶道師範)となることができ、弟子をとることができるようになります。
挨拶料:16,500円
中級の資格取得のための和巾点から1年経過した後であれば、行之行台子・大円草・引次の後、上級の資格を取得することができます。
資 格証 【講師】
真之行台子(しんのぎょうだいす)
真台子と呼ばれる、黒塗りの棚を使って行うお点前を習います。
挨拶料:13,200円
大円真(だいえんのしん)
真台子を使用しながら、大円盆を持ってお点前を習います。
挨拶料:13,200円
正引次(せいひきつぎ)
所定の手続きを行うことで「講師」としての資格を得ることができます。
挨拶料:22,000円
上級の資格取得のための引次から1点年経過した後であれば、真之行台子・大円真・正引次の後、講師となることができます。
資 格証【専任講師】
茶名(ちゃめい)
素質を備えられた方に「茶名」が与えられます。
挨拶料:121,000円
資 格証【助教授】
準教授(じゅんきょうじゅ)
取得することで、助教授の資格を得ることができます。
ただし、25歳以上かつ「茶名」取得後2年以降である場合に限られます。
挨拶料:132,000円
裏千家では許状のほか、お稽古を重ねて茶道の学びを深めるに従って資格を得られる制度があります。ここでは、裏千家の許状や資格とは具体的にどのようなもので、取得することでどういったメリットがあるのか、先生へのお礼や許状申請料などにについてご紹介します。
武者小路千家の資格(許状)の種類と費用
武者小路千家の資格も、修得状況に応じて「許状」を申請していき、教授や正教授の資格を得ることになります。
裏千家と同じく、この「許状」も修了証を意味するものではなく、1つ上のお点前を習うことができる許可証の役割を持ちます。
具体的な流れは以下の通りです。
武者小路千家では、「相伝」が最高位とされています。
その上に「皆伝」という位があるものの、これは一代のお家元に数名しかいただくことができない特別なものとされているため、普通の方は「相伝」をいただくことを最高位とします。
武者小路千家では、これらの資格の取り方や流れ、資格を取るためにかかる費用についてもお教室によって異なります。
ご自身が学ばれるお教室の先輩方や先生に伺いながら、お稽古を進めていくことをオススメします。
ゴコロ編集部による、東京都中央区銀座「茶禅」さんでの茶道体験レポートです。
おわりに
今回は、茶道の資格をとるために必要なお点前の習得内容や費用についてご紹介しました。
茶道のお勉強を始めてすぐに、助教授までの流れを見てみると、遠い道のりに感じるかもしれません。
初級以降はお手本となるような教科書のようなものはないことが多く、自分でノートを作りながら学んでいかなくてはなりません。
しかし、資格を持っていると、茶道の資格に恥じない美しい所作を心がけるようになり、普段の生活での心構えにも変化が生まれます。
そして、茶道は続ければ続けるほど楽しくなります…!
ぜひ楽しみながら一つ一つのお点前を学び、自分なりの茶道の世界を広げてみてくださいね。
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