茶道のお茶会に呼ばれたら、せっかくの機会なので着物で参加したいですよね。

しかし、「着物っていろいろあって難しそう」、「どんな着物を選べばいいか分からない」と思いませんか?

たしかに、茶道(お茶会)にふさわしい着物、NGな着物がありますが、ポイントさえ押さえれば難しいことはありません。

また、初めてのお茶会なら、お茶会のルールやマナーも気になりますよね。

この記事を読めば、お茶会にふさわしい着物や帯のこと、そしてお茶会のルールやマナーまで一通り理解できるので、ぜひ最後までお付き合いください。

茶道(お茶会)に着ていく着物とは?

まずは、茶道のお茶会へ着ていく着物についてご説明しましょう。

道(お茶会)の着物は色無地一つ紋がベスト

茶道はびの文化があるため、お茶会の着物で一番重宝するのは、派手すぎない「色無地」の着物です。

黒以外の色の無地の着物を、色無地と言います。

さらに、背中に一つもんの入っているものだと、正装を簡略にした略礼装に当たりますので、どんなお茶会にも着て行けます。

「色無地一つ紋」というのが、茶道のお茶会の大原則ですので、お茶会のために着物を購入、またはレンタルしようとしている方には、「色無地一つ紋」をオススメします。

道(お茶会)の着物は「色無地一つ紋」じゃないとだめ?着物の種類と格を知ろう

「色無地一つもんがベストと言われても、持っていない…」ということもありますよね。

茶道のお茶会の着物は、色無地じゃなければだめ、他の着物は絶対に着られない、ということではありません。

お茶会によっては、色無地以外の着物を着ている方もいます。

では、この着物はOK、これはNG、というのは何によって決まっているのでしょうか。

それは、着物の「格」です。

冠婚葬祭用の礼装から普段着まで、洋服と同じように着物にも格があります。

茶道のお茶会で着ることのある着物を、格の高いものから順に並べてみました。

訪問着絵羽模様が特徴の、ひと続きになった豪華な柄が入っている着物
絵羽模様とは、着物全体を1枚のキャンバスに見立てて染められたもの
付け下げ絵羽模様ではないが、全体に柄が入り、柄が全て上を向いている着物
華やかだが訪問着よりは控えめ
色無地黒以外の無地の着物
色無地に一つ紋を入れれば、略礼装として幅広く使える
小紋着物全体に同じ模様がちりばめられた着物
江戸小紋は色無地と同等に扱われることもあり、他の小紋より格が高い


物のマメ知識① ~染の着物は織の着物より格上~

着物には、そめの着物とおりの着物があります。

上に挙げた四つの着物は全て、染の着物です。

そめの着物…「後染め」白糸をりあげた後で染めた着物

おりの着物…「先染め」染色した糸を織って模様を出した着物

お茶会では基本的には染の着物がふさわしく、つむぎなどの織の着物はNGとされています。

ただし、お茶会によっては着られる場合もあります。

それについては後ほどお伝えしますね。

着物の格を知ったところで、お茶会に合う着物を見ていきましょう。

お茶会の種類を知って、ふさわしい着物を選ぼう

茶道のお茶会には、フォーマルなものからカジュアルなものまであり、金額もさまざまです。

それによって相応しい着物が違います。

初めての人が参加することの多いお茶会を、三つに分けてみました。

大寄せ1度に20~30人の大人数で入り、複数あるお茶席を回るお茶会
初釜・炉開き・口切り茶道の年中行事の中の主なお茶会
一般の人も参加する
お茶会
茶道関係者以外の一般の人も参加するお茶会

自分が参加するお茶会がどれに当たるのかを確認して、そのお茶会にふさわしい着物を選びましょう。

寄せ

大寄せの場合、割と気楽なお茶会のことが多く、色無地一つもんも相応しいのですが、少しドレスダウンして、「紋なしの色無地」や「小紋こもん」を着ている方も見かけます。

また、少しフォーマルな大寄せになると、色無地より格上で華やかな「訪問着」や「付け下げ」で参加される方もいます。

しかし、その際の注意点があります。

・柄は季節を先取りすること
着物の柄は、季節の草花のものが多いですが、その季節のものではなく、半月~1ヶ月程先取りすることが良いとされています。

これは、その時期の生花の美しさにはかなわない、という発想からです。

例えば、桜の柄の着物を着るのは、桜が満開の頃は避け、梅の花の終わり頃から桜がつぼみの頃にすると、粋な着こなしと言えます。

・参加者は主催者より格上の着物は避けること
フォーマルな大寄せだからと言って、ただ格の高い着物を着て華やかにすれば良いというものではありません。

参加者(客)は、招いてくれた主催者(亭主)に敬意を表す意味で、主催者より格上の着物は避けた方が良いと言われることもありますので、あまり華美になりすぎないように気を付けましょう。

このように、気を付けるポイントがありますので、訪問着や付け下げを着たいという時は、詳しい方に確認するのが良いでしょう。

釜・炉開き・口切り

初釜・炉開き・口切り、この三つに共通しているのは、おめでたいお茶会だということです。

そのため、色無地一つもんだけではなく、「訪問着」や「付け下げ」がいいでしょう。

また、若い方なら「振袖」といった華やかな着物を着ることもあります。

ただし、所属している社中(共通の目的の下に集まった人々の組織における仲間の事)の先生によって、良しとされるものが違いますので、初めての場合は事前に先生に確認したり、実際に着物を見てもらったりすることをオススメします。

般の人も参加するお茶会

屋外で開催される季節ごとのお茶会など、一般の人も立ち寄る気軽なお茶会の場合は普段着の洋服の人もいますので、あまり格の高い着物ではなく、小紋こもんや通常お茶会で着ないつむぎの着物など、カジュアルなものがぴったりです。

夏なら浴衣でも良いでしょう。

茶道(お茶会)の着物に合わせる帯を選ぼう

着物選びと同じぐらい大切なのが、帯です。

帯にも格があり、着物の格と合わせることが大事です。

茶道のお茶会の鉄板、色無地一つもんの着物に合わせるのは、「おり」の「袋帯ふくろおび」がベストです。

帯は、長さや形状によって、格の高いものから三つあります。

袋帯長くて太い 二重に巻く(二重太鼓)
長さ:4m30cm前後  幅:約31.2㎝(八寸幅)
名古屋帯短くて太い 一重に巻く(一重太鼓)
長さ:3m60cm前後  幅:約30.4㎝(八寸幅)
半幅帯長くて細い
長さ:3m60cm~4m前後 幅:約17cm(四寸幅)

上記三種類それぞれに、着物と同じようにおりそめがあります。

帯の場合は、織のものが染のものより格上となります。

着物とは逆なのです。

色無地一つもん以上の着物は、格の高い織の袋帯ふくろおびが合います。

少しカジュアルなお茶会であれば、織の名古屋帯でも問題ないですが、半幅帯はNGです。

格を合わせて着こなすことが大事ですので、次のように覚えましょう。

「染の着物に織の帯」

「織の着物に染の帯」

華やかにしたければ、金糸銀糸で織られた帯や、格式高い古典柄の帯にしてみましょう。

地味にしたければ色味を抑えたものにしたりと、帯によってドレスアップしたり、ドレスダウンして楽しみましょう。

道(お茶会)の着物のマメ知識② ~着物や帯にも衣替えがある~

洋服に夏物・冬物があるように、着物にも季節があります。

袷(あわせ)裏地のついた着物
10月~5月中旬頃まで
単(ひとえ)裏地のない着物
5月後半~6月と9月頃まで
絽(ろ)と紗(しゃ)裏地がなく、透ける素材の着物(総称して薄物とも呼ぶ)
7月~8月頃の盛夏

また、帯にも「夏物」と呼ばれる、夏用の帯があります。

季節に合わせて着物や帯を選びましょう。

茶道(お茶会)の着物以外で身に着けるもののマナーやルール

初めてのお茶会で、着物以外に気を付けることを押さえておきましょう。

道のお茶会に持っていくもの

茶道を始める方であれば、初心者用セットがありますので、そちらを揃えておくと安心ですが、茶道を習う予定がない方であれば、最低限、懐紙かいし・菓子切り(楊枝)を準備しましょう。

デパートや茶道具の専門店、ネットでも購入できます。

袋カバーを準備

足袋は、お茶席に入る前に履き替えるのが正式です。

しかし、最近はで足袋の上に足袋カバーを履き、足袋カバーを脱いでから入ることが多いです。

袢と半襟は白

お茶会の時、着物の下に着る襦袢じゅばん半襟はんえりは、白にしましょう。

半襟は柄の入っていない無地を選びます。

型はまとめてすっきり

ショートヘアや肩につかない髪型であればそのままで構いませんが、セミロング、ロングの場合は、一つにまとめるのが基本です。

髪留めなどは極力シンプルに、派手な髪飾りは避けるようにしましょう。

クセサリーや時計は外して

アクセサリー(ネックレスやピアス)、時計はお茶席ではつけません。

結婚指輪や長い爪も、お茶碗を傷つけてしまう可能性がありますので、事前に外したり整えておいてください。

また、マニキュアもつけない方が良いです。

お茶室では茶道具が主役ですので、目立つものは避けるようにしましょう。

呂敷があると便利

お茶席に入る前、受付で荷物をまとめて預けます。

その際、上着や荷物をまとめて風呂敷に包んでおくと、見た目も良く素敵です。

客と末客は必ず避けて

正客しょうきゃくとは一番上座に座る客のことで、末客(お詰めとも呼ばれます)とは最後に座る客です。

この二人には、さまざまな役割があります。

茶道上級者でなければ務まらないお役目ですので、お茶席に入る前に、「お正客をお願いできますか?」と係の方が回ってこられますが、「初めてですので」と言って、必ず断りましょう。

お茶席に入ってからのマナーやルールは、こちらに詳しくまとめてありますので、参考にしてみてくださいね。

茶道のお茶会にお呼ばれした際に必ず確認しておきたいこと

ここまで読んでくださったあなたに、お茶会にお呼ばれして、着物を準備する前にやるべき一番大切なことをお伝えします。

それは、「そのお茶会の参加者や関係者に、どんな着物が良いかを聞くこと」です。

「なんだ、そんなことか」と思いましたか?

しかし、実は何よりも大切なことなのです。

ポイントなのは、着物に詳しい人、茶道に詳しい人、ではなく「あなたの参加するお茶会の関係者」に聞くということです。

なぜなら、お茶会の着物に原則はあるものの、そのお茶会の種類、習っている先生の意向、地域などによって、相応しいとされる着物はさまざまだからです。

先生や招待者など、そのお茶会に参加される方に合わせるのが正解です。

ただし、着物に関して何も知らずに聞いても、余計に混乱したり、恥ずかしい思いをしたりするかもしれませんので、基本的なことを理解した上で聞いてみることをオススメします。

ぜひ、この記事を活用してくださいね。

おわりに

茶道のお茶会の着物選びで迷ったら、そのお茶会の関係者に聞くこと。

そして、聞けなければ大原則の色無地一つもんの着物と、おり袋帯ふくろおびを選ぶ、というのがポイントです。

手持ちの着物がない場合でも、今は簡単にレンタルできます。

せっかくの機会ですので、ぜひレンタルしてみてください。

また、2018年に公開された黒木華さん主演の映画「日日是好日にちにちこれこうじつ」では、大寄せのお茶会や初釜などの行事も出てきます。

こちらの映画を見るとお茶会の雰囲気がわかりますし、茶道そのものについて知ることができるうえ、コミカルに描かれているので茶道初心者の方にもオススメです。

実際にお茶会に出かけるようになると、他の方の装いを見る機会も増えますので、回数を重ねるにつれて、自分なりの組み合わせを楽しめるようになります。

「初心者なので」と言えば、着物やお茶会について優しく教えてくれる方も多いです。

この記事を参考にして、お茶会で着物デビューしてもらえたら嬉しいです。

あなたの初めてのお茶会が、楽しいものになりますように!