西馬音内盆踊りとは
秋田県雄勝郡羽後町の西馬音内でおこなわれる盆踊りは独特の雰囲気をもつ姿で踊られます。
主に鳥追い笠をかぶった姿か、目元だけ開いた黒い彦三頭巾をかぶった姿で踊りますが、踊り手は共通して顔を隠しています。
これはお盆に帰ってきた亡者の姿を表したもので、亡者を踊りの輪に紛らせてともに踊ることで供養することを意味します。
そのため、顔を隠すということは民俗学的にも重要な意味をもつのです。
このように学術的にも価値があるため、西馬音内の盆踊りは昭和56年(1981)に国の重要無形民俗文化財にも指定されました。
西馬音内の盆踊りがいつから始まったのか定かではありません。
鎌倉時代に修行僧の源親が境内で豊作の年になるようにと踊らせた豊作祈願の踊りや、安土桃山時代に亡くなった領主をしのんで家臣たちが踊った供養踊りが起源だと考えられています。
それから次第に規模が大きくなり、盛んになっていきました。
大正時代になると風紀を乱すという理由で弾圧されたり、終戦の混乱のため中止になったりした時代もありましたが、西馬音内に住む人々の熱い思いにより復興をとげました。
そうして現在まで西馬音内盆踊りが繋がれてきたのです。
西馬音内盆踊りの衣装
前項で少し紹介したように、西馬音内の盆踊り衣装はとても独特でめずらしい衣装となっています。
踊り手は頭に鳥追い笠や黒い彦三頭巾をすっぽりかぶって顔を隠しており、誰が踊っているのか、薄暗い中では男女の見分けもつきません。
この鳥追い笠というのは阿波おどりなどでも見られますが、目元だけ開いた彦三頭巾を頭からかぶった姿はなかなか他にありません。
盆踊りの本来の意味は、亡くなった人への歓待と送りの儀式ですから、前述した通り「顔を隠す」ことは亡者が紛れて一緒に踊ってもわからないようにという風に考えられているのです。
この盆踊りの性格は着物にも表れていると考えられます。
着物には「端縫い衣装」と「藍染め浴衣」がありますが、この端縫い衣装、一般的には布の端を少し折り返して縫うことを指しますが、ここでは古い着物などの端切れを繋ぎ組み合わせたものを指します。
この端縫い衣装の計算された色合いや布の組み合わせが大変美しく、かがり火の薄暗い会場でひときわ華やかに映し出されます。
古い着物というのは祖母や母の着物という先祖代々の着物のことも含まれていることでしょう。
その端切れを縫い合わせたもので踊るということは、まさに先祖の霊と踊るということを意味するのではないでしょうか。
また、手絞りの藍染めをほどこした「藍染め浴衣」も、かつて町家の女性たちがそれぞれオリジナルの柄を考えて染めており、古いもので百数年経つ浴衣もあるといいます。
それぞれの先祖の思いを大事に受け継ぐことを体現している盆踊りといえるでしょう。
西馬音内盆踊りの音頭とがんけ
西馬音内盆踊りの特徴は、にぎやかな囃子に対し、ゆったりとした優雅なテンポをとる踊り方が特徴的です。
踊りは「音頭」と「がんけ」の2種類で構成されており、これを交互に繰り返して踊ります。
音 頭
太鼓が鳴り出すと「ヤートーセー、ヨイワナ、セッチャ」 という掛け声が起きて、「音頭」の囃子の始まりの合図となります。
笛をメインにした軽やかな曲調と親しみやすい歌詞ですが、踊り手の動きはゆったりと優雅で洗練された動きです。手の先を大きく反らすことで一層の色気を醸し出します。
が んけ
曲調は「音頭」よりも落ち着いて、亡者踊りの側面を持つことからどこか哀愁を帯びた雰囲気の踊りです。
踊り自体は「音頭」よりも振りの動きのテンポがはやいです。
袖をもってくるりと回る姿は目を奪う美しさがあります。
西馬音内の盆踊りが見たくなったら
(※平成30年時点の内容のため変更の可能性があります。)
日 時と会場
西馬音内の盆踊りを見るための方法を紹介します。
こちらの盆踊りは8月16日から18日までの3日間おこなわれ、19時から開催されます。
羽後町西馬音内の本町通りが会場となり、踊りを座って観覧したい方ははやくから敷物を敷いたり、椅子を置いたりして場所取りを行います。
場所取りなどせずに確実に楽しみたい方は有料観覧席をオススメします。
観覧席には予約受付分と当日販売分がありますが、予約受付分の場合は申し込み受付期間中にかならず「郵便往復ハガキ」により応募後、抽選で決定します。
申し込み受付期間と詳しい応募方法は羽後町観光物産協会のサイトでご確認ください。
駐 車場
自家用車でお越しの方は会場周辺に設けられた駐車場をご利用ください。
その際、環境整備協力金として普通車1,000円を負担していただく必要があります。
平成30年における普通車駐車場は羽後町役場(250台)、西馬音内小学校(70台)、羽後中学校(150台)でしたが、変更になる可能性もあるので事前に確認した方が良いでしょう。
また、盆踊り開催期間中は会場周辺の交通規制が行われます。
盆踊り会場(14:00~24:00)、会場周辺(18:00~24:00)。
変更になる可能性があるのでこちらも合わせて確認することをオススメします。
盆 踊り期間中の踊り方講習
西馬音内盆踊りの開催期間中、踊りの実演と踊り方を学べる交流会を「コミュニティーセンター町民ホール」で実施しています。
無料で踊り方を学べるので、ぜひ本番が始まる前に立ち寄ってみてください。
【開催日時】8月16日~8月18日 14:30~16:00
【会場】コミュニティーセンター町民ホール 秋田県雄勝郡羽後町西馬音内本町23
盆 踊り期間外の踊り方練習
期間中以外では「西馬音内盆踊り会館」にお立ち寄りください。
盆踊り体験交流ホールでは西馬音内盆踊りを大型スクリーンで鑑賞することができます。
さらに毎月第2土曜日になると午後2時から盆踊りの有料定期公演を観覧することもできます。
他にも、館内には古い踊り衣装の展示や盆踊りグッズの販売もおこなっています。
【所在地】西馬音内盆踊り会館 羽後町西馬音内字本町108-1
【開館時間】午前9:00~午後5:00(休館日:月曜・12/29~1/3)
【入館料】無料 (定期公演観覧料:お一人様1,000円)
【問合せ先】TEL 0183-78-4187
おわりに
不思議でちょっとこわいけど、とても美しい衣装を身にまとう西馬音内盆踊り。
その背景には先祖を思う優しくあたたかい精神がありました。
学術的にも価値が高い盆踊りなので、機会があればぜひ一度ご覧になってください。
実際に西馬音内盆踊りを見てみたい方はこちらからどうぞ!↓
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