新野の盆踊りとは

新野にいのの盆踊りは長野県下伊那郡阿南町しもいなぐんあなんまちの新野でおこなわれる盆踊りです。

8月14日から16日の3日間、午後9時から翌朝6時頃にかけて踊りつづけます。

いまでは夜通しかけて盆踊りをおこなうという地域は珍しいですが、かつては夜通しかけて踊るものだったのです。

このように古いかたちを残した新野の盆踊りは、楽器を使わず肉声のみで踊ることや、盆踊り期間が終わった日の夜明けとともに「踊り神送り」が行われることからも古い信仰を残していると評価されており、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

新野の盆踊りの唄と踊り

商店街を盆踊りの会場としており、通りの中央に組み上げたやぐらの上に「音頭出し」と呼ばれる5、6人の唄い手が上がります。

下の通りでは踊り手がやぐらを囲むようにして通り沿いに細長い大きな円を描きます。

踊り手は、音頭出しの唄の続きを返しながら手踊りや扇子を使って踊り進めます。

大正までは12種類もの踊りの演目がありましたが、現在は「すくいさ」「音頭」「高い山」「おさま甚句じんく」「十六」「おやま」そして「能登」の7種類となっています。

その日の踊り始めは必ず「すくいさ」と決まっており、その後はこの中の演目を自由な順番でくりかえし踊ります。

しかし、このうち「能登」だけは踊り神送りのときにのみに限り踊るという決まりがあります。

踊りの振りはゆったりとしたもので、演目によって手踊りのほかに扇を持つものがあります。

「おさま甚句」という演目では、ゆったりとしながらもテンポの心地よい足の動きと、扇をくるりくるりとひるがえしながら踊る姿が特徴的です。

踊り神送り

新野の盆踊りにおいて重要な「踊り神送り」は盆に帰ってきた祖霊や亡者と夜通しで踊ったあと、寂しいけれど帰ってもらわなければならないという先祖の精霊を送り出すための儀式です。

最終日の16日の夜、新盆の家に飾られていたそれぞれの「切子灯籠きりことうろう」がやぐらの下に取りつけられていきます。

夜通し踊り抜かれて17日の夜明けを迎える頃、この地域で信仰の深い市神様のほこらの前で和讃わさんが唱えられ、その後、切子灯籠をもった行列が「ナンマイダンボ」と唱えながら出発します。

一方踊り会場では、この日しか踊ることができない踊り納め「能登」を踊りながら行列を待ち構えます。

行列の先頭は小さな輪になった踊り手たちに向かっていき、踊りをやめさせようとしますが、踊り手たちは激しく唄い踊りながら抵抗します。

実はこれも儀式のひとつで、先祖の霊に帰ってもらわなければならないが、帰ってしまうのは寂しく、まだ踊りつづけたいという姿を見せているのです。

このせめぎ合いを何度か繰り返し、やがて踊り手たちはあきらめて行列を通します。

行列はやがて瑞光院の広場につくと、切子灯籠をつぶして積み重ね、その前で行者が刀を切りつけ道切りをおこないます。

その直後、花火の大きい音が響き渡ると、切子灯籠に火をつけ先祖を送ります。

そうして最後には決してうしろを振り返らないで「秋歌」を唄いながら来た道を戻ります。

※秋歌:かつて日本ではどの地域でも四季それぞれの歌が唄われてきました。新野の「秋歌」もその一つで、今でいう「春よ来い」や「ちいさい秋みつけた」のご当地版のようなものです。

振り返ってしまう悪霊がとりついてしまうと考えられており、さらに「秋歌」を唄うことで、秋をはやく招き夏の終わりを告げて追い払うという意味があるようです。

おわりに

長い歴史のある新野の盆踊り、いかがだったでしょうか。

特に17日の「踊り神送り」は新野の盆踊りのピークといっても過言ではない、必見の儀式です。

機会があれば、ぜひ一度ご覧になってください。

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