梅雨。

毎年この時期になると、憂鬱になりますよね。

ずっと雨だし、髪もうまくまとまらない……。

梅雨なんてなくなればいいのに!楽しい夏よ、早く来い!

と思っているあなたに贈りたい、梅雨にまつわる知識。

これを知れば、少しは気分が晴れるかもしれません。

梅雨とは?

では、そもそも梅雨とはどんな現象をいうのでしょうか?

学生時代に習ったはずの「梅雨」のメカニズム。

忘れてしまった方も多いと思いますので、まずはその復習から始めましょう。

アジアにみられる季節現象

梅雨は東アジアで起こる季節現象です。

6月から7月頃、暖かく湿った高気圧(太平洋高気圧)から吹く風と冷たく湿った高気圧(オホーツク海高気圧)から吹く風がぶつかります。

風と風がぶつかることで雲ができ、これが雨を降らせるのです。

この風同士がぶつかる境目のことを「梅雨前線」と呼びます。

しばらくは太平洋高気圧とオホーツク海高気圧の攻防が続くのですが、最後は太平洋高気圧が勝つことによって梅雨前線が押し上げられ、“梅雨明け”となるわけです。

沖縄地方は、特に強い南風とともに梅雨が明けることで知られていますが、このときの南風は夏至南風と書いて「カーチベー」と呼ばれます。

海道にも梅雨があった?

また、北海道には梅雨がないと思っている方も多いのではないでしょうか。

梅雨前線は通常、北海道に到達する前に衰えます。

しかし、太平洋側には「蝦夷えぞ梅雨」と呼ばれる現象が起こります。

オホーツク海高気圧から冷たい風が吹くことによって、雨が降り続くそうです。

とはいっても、期間は10日から2週間程度。

本州などの梅雨ほど、長続きはしません。うらやましい!

梅雨」と呼ぶ理由

それでは、なぜこのような気象現象のことを「梅雨つゆ」と呼ぶのでしょうか。

これには諸説ありますが、

●ちょうどこの頃に梅の実が熟すため
カビが生えやすいため「黴雨ばいう」といったのが、同じ読みの梅になったため

といった説が有名です。

また「つゆ」という音になった理由にも諸説あり、

つゆから
●梅の実が熟して潰れるという意味の「ゆ」から

といった説があるそうです。

ちなみに、梅雨は英語でも“Tsuyu”“Baiu”で通じるのだとか。

「五月雨」「五月晴れ」も梅雨にまつわる言葉

日本人の生活(心にも!?)に影響を及ぼす梅雨。

そのため「菜種梅雨なたねづゆ※1」「走り梅雨※2」「梅雨の中休み※3」……など、梅雨にまつわる表現がたくさんありますね。

一方、本来は梅雨にまつわる語でありながら、そう認識されていない言葉というのもあるのです。

※1 3月中旬から4月、関東以西に降り続く雨のこと。
※2 本格的な梅雨入り前に見られる、ぐずついた天気のこと。
※3 梅雨の時期の一時的な晴れ間のこと。

月雨とは

五月雨さみだれ」という言葉を聞いたことがあると思います。

松尾芭蕉まつおばしょうの有名な句「五月雨を集めて早し最上川」にも登場しますね。

この五月雨ですが、梅雨(の天候)を表す言葉ということをご存知でしたか? 

梅雨の時期といえば現在は6月ですが、旧暦では5月に該当します。

てっきり5月に降る雨のことを「五月雨」と勘違いしていた方も、中にはいらっしゃるのではないでしょうか。

月晴れとは

また、もっと誤解している方が多そうなのが「五月晴れ」です。

もしかしたら、ゴールデンウイークの頃の、さわやかな日本晴れを想像している方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、こちらの5月も旧暦のこと。すなわち、梅雨の合間の晴れを指す言葉なのです。

「入梅」とは

さて、梅雨に入る最初の日のことを「入梅にゅうばい」と言います。

ところが、ややこしいことに、入梅には二つの意味があるのです。

1. 気象上の入梅:実際の梅雨入りのこと。年・地域・気候によって変わる。
2. 暦の上の入梅:太陽が、「黄道座標」における経度を表す黄経80度の点を通過したとき(6月11日頃)

“本当の梅雨入り”と“カレンダー上の梅雨入り”があるなんて、ややこしいですね。

実生活で大切なのは前者ですから、暦の「入梅」なんて消してしまえばいいのに……と思いませんか? 

しかし、昔の人、特にお百姓さんにとっては、梅雨入りを知ることは大変重要なことだったのです。

多くの人は「梅雨」と聞くと、どんよりした気分になりがちですが、稲にとってみれば“恵みの雨”ですからね!

そのため、江戸幕府が作らせた「天保暦」以来、入梅は暦に記載されるようになったといいます(暦の上の入梅)。

とはいえ、西川如見にしかわじょけんという天文暦学者は、実際の入梅と暦の入梅が一致しないことに気づいていました。

そこで「百姓は暦に頼りすぎるな」と注意喚起していたそうですよ。

梅雨明けはいつ?

梅雨入り、梅雨明けの時期は毎年異なりましが、目安としては以下の通りです。

梅雨入り(気象上の入梅)梅雨明け(平均)
沖縄5月9日6月23日
九州北部6月5日7月19日
関東甲信6月8日7月21日
東北北部6月14日7 月28日


おわりに

多くの人にとっては憂鬱な梅雨も、農業に関わる人にとっては恵みの雨だったのですね!

いかに自分が視野の狭い人間なのか、よく分かりました。

そうは言っても、気分が沈みがちな梅雨の時期。

そこで、今年は梅酒を漬けてみたり、紫陽花あじさいを見に出掛けたりして、梅雨を楽しんでみてはいかがでしょうか。