皆さんは、8月1日が「八月朔日はちがつさくじつ」や「八朔はっさく」と別の呼び方をされることをご存知でしょうか?

京都・祇園では「八朔はっさく」は特別な日であり、夏の風物詩としても知られています。

では、そもそも八朔とは何なのでしょうか。

この記事では、八朔とは何か、どのような歴史があるのか、そして舞妓さんとの関係やどのようなことが行われるのか、八朔についてご紹介します!

「八朔」とは?

八朔とはどんな日か

八朔とは、「八月朔日」のことです。

八月朔日の読み方は「はちがつさくじつ」で、朔日とは新月の最初の日、つまり旧暦の8月1日を表します。

そして、8月1日は徳川家康がはじめて江戸城に入った日だといわれています。

このことから、八朔は正月に次ぐ大切な日として江戸幕府から認定され、八朔の日には大名たちが江戸城に集まり、将軍に祝辞を述べていたそうです。

また、八朔の日を大切にしていたのは、江戸城だけではありませんでした。

吉原遊郭では、客足が増えるという意味合いからも遊女たちが白無垢を着て八朔を喜んだともいわれています。

あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、現在でも日本のあちこちで、八朔を祝う祭りや行事が残っているんですよ。

行事の「八朔」と果物の「ハッサク」に関係はあるの?

「八朔」と聞いてまず思い浮かべるのは、果物のハッサクではないでしょうか?

ハッサクは、広島県因島いんのしま市にあるお寺・恵日山浄土寺の境内で偶然発見されたミカンの一種です。

発見した住職が「8月1日になれば食べられる」と言ったことから八朔(ハッサク)と名前が付けられたといわれています。

果物のハッサクと行事の八朔とは、「8月1日」という繋がりがあったんですね。

しかし、八朔は冬の果物。

実際には8月1日に食べることはできませんので、気を付けてください!

八朔はお中元の起源

八朔を境に、季節は夏から秋へと移り変わっていきます。

古くから農家では、八朔の日にその年の収穫を、自身が仕えている家や知り合いに贈り、豊作を祈願する「の節句」と呼ばれる祭りが行われていました。

そのうち、この風習が町民や武家へと伝わり、「田の実」が“頼み”と同じ音であることから、よく頼み事をする相手へ感謝と共に贈り物を贈るという風習が生まれました。

この風習は鎌倉時代にはすでに存在していたようで、お中元の起源だといわれています。

しかし、残念ながら今ではもう八朔の日に物を贈る習慣は、どこの地域もほとんど見ることがなくなってしまいました。

八朔と芸妓さん・舞妓さんの関係

先ほど、八朔の日に物を贈る習慣はほとんどなくなってしまったとお話しましたが、実は京都・祇園では、八朔の日に芸妓さんや舞妓さんたちが日頃のお稽古をつけてくださる家元や師匠、お茶屋のお母さんに挨拶回りをするんですよ♪

京都 祇園の芸妓さん・舞妓さんによる八朔

では、芸妓さんや舞妓さんはどのようにして八朔の日を過ごすのでしょうか?

芸妓さん・舞妓さんによる八朔の準備

夏の暑い時期、しかも正午前後に行われる祇園の八朔ですが…

歩いている芸妓さん舞妓さんは汗をかいていない!?

実は、八朔の挨拶回りで芸妓さんや舞妓さんが汗をかかないのには、ちょっとした暑さ対策の秘密があったんです。

それは、【帯を胸よりも高い位置で結ぶこと】。

人間の身体には“半側発汗”という反射の一種があり、どこかを圧迫するとその部分を境に半分が発汗しにくくなります。

芸妓さんや舞妓さんたちは、この作用をうまく利用して顔からの発汗を抑えているのです!

夏に着物を着る機会があれば、ぜひ、試してみてください。

でも、慣れない着物で必要以上に帯をきつく締めてしまうと、気分が悪くなるかもしれません。

十分な注意が必要です!

芸妓さん・舞妓さんたちのお中元の挨拶

八朔の日、祇園では、お中元として芸妓さんや舞妓さんが品物を贈るわけではありません。

彼女たちは、「おめでとうさんどす」、「よろしゅうおたの申します」、「おおきに」など、家元や師匠の家、お茶屋さんを回り、感謝の気持ちを言葉で伝えます。

京都・祇園の八朔の日は、午前10時頃から正午過ぎまで、八朔の挨拶回りをする多くの芸妓さん・舞妓さんの姿で溢れます。

その美しい姿を一目見たいと祇園を訪れても、家の中での挨拶なので一般の人には公開されていません。

しかし、通りを歩く芸妓さんや舞妓さんを見るために、早くから場所取りをする人もいるほどです。

年々、八朔の日に祇園へ訪れる人が増えていることもあり、芸妓さん・舞妓さんの邪魔をしたり、車の通りを妨げるマナー違反者も増えてしまっているのだとか…。

素敵な伝統行事ですから、マナーを守って見学することが大切ですね!

八朔で芸妓さん・舞妓さんが着る着物

どうやら、芸妓さん・舞妓さんの着物は、普段と八朔の日とでは異なるようです。

着物にはどのような違いがあるのでしょうか?

普段の芸妓さん・舞妓さんの着物

芸妓さんや舞妓さんが普段着ている着物は、正絹しょうけんと呼ばれる100%シルクのものです。

これは季節に関係なく、年間を通して変わりません。

また、袖口と裾には、ふきが入っているのが特徴です。

袘とは、裏地を表地に被せて綿を入れたもので、ラインが綺麗に出るだけでなく、着物の豪華さや華やかさを引き立てます。

明治から昭和初期にかけて庶民の間でも人気でしたが、現在では花嫁衣裳のほかは芸妓さんや舞妓さんだけのものです。

八朔の芸妓さん・舞妓さんの着物

八朔の日、芸妓さんや舞妓さんは正装で挨拶回りをします。

そのため、普段とはまた違う雰囲気の芸妓さんや舞妓さんの姿を見ることができますよ♪

祇園甲部ぎおんこうぶでは芸妓さんはの黒紋付に白い比翼が付いており、帯も絽でできている金の織物で、お太鼓結びです。

舞妓さんも絽の黒い着物と、絽金ろきんの帯を着るのですが、舞妓さんはだらり帯でお袖も長いです。

襟足の白粉おしろいは、普段は2本足ですが、正装の時は3本足になります。

気付きにくいですが、細部までこだわりが感じられますね。

夏の暑い日差しの中での黒紋付は、本当に大変そうですが、艶やかに歩く姿は凛としています。

また、祇園の宮川町では正装ではなく、色無地の着物です。

色無地の着物は爽やかで、暑い京都の街並みの中、少しだけ涼しさを感じさせてくれます。

祇園甲部ぎおんこうぶ:京都市東山区にある京都の花街のこと

おわりに

京都の花街・祇園の伝統行事「八朔」について、ご紹介しました。

果物のハッサクや徳川家康とも繋がりがあり、現在のお中元の起源でもある八朔。

八朔の日の京都祇園は、観光スポットとしてもひときわ人気で、多くの人が訪れます。

八朔がどういうものかを知っておくと、また、違った見方ができるのではないでしょうか。