こんにちは!

ワゴコロ編集部の西です♪

令和6年(2024年)7月5日から9月1日まで、無印良品 銀座店6階の“ATELIER MUJI GINZA”にて行われている展覧会「文化を味わうものづくり『にほんのさけ』展」。

今回は、にほんのさけ展へお邪魔した際の様子と、体験した内容をレポートします♪

「なぜ人は酒を飲むのか?」をテーマに、お酒の本来の姿を考えました!

「文化を味わうものづくり『にほんのさけ』展」とは?

ATELIER MUJI GINZAは、無印良品が考える未来へのメッセージを共有するため、ものづくりやデザイン、アートにまつわる企画・展示を行う場所です。

今回ATELIER MUJIで開催されている「文化を味わうものづくり『にほんのさけ』展」は、人と人を繋いできた日本の酒について考えるための展覧会です。

島根県出雲市で杜氏とうじをされている小島達也さんの考える酒の哲学を、展示を通して感じることができるという、ユニークで新しい内容となっていました。

※杜氏:蔵で日本酒造りを仕切る責任者のこと。

「文化を味わうものづくり『にほんのさけ』展」の回り方

ここからは、私が実際に展覧会を訪れて体験した展示内容をお届けします♪

銀座の一等地、並木通りの一画に店舗を構える無印良品 銀座店。

その6階に上がると、まず出迎えてくれたのは大きなテーブルとスクリーンに映し出された映像でした。

テーブルには、小島さんの酒蔵で造られている全6種類のお酒が、ルーツの古い順に並べられています。

にほんのさけセット”を購入しよう

展示を詳しく見る前に、「せっかく日本酒のことを学ぶなら、まずは実際に味わってみないと!」ということで購入したのが、こちら。

先ほどのテーブルに並べられていた、6種類のお酒の試飲ができる『にほんのさけ』セット(1,000円・税込/8月11日〜限定価格600円)です!

カウンターで販売されているこちらのお酒セットを飲みながら回ることで、より深く展示内容を理解することができるのだそうです。

早速このお酒セットを持ちながら、展示を見て回ります。

営みの渦巻き」でにほんの酒のルーツを辿る

まずは、先ほどのテーブルの展示がある“Gallery 2”エリアを見ていきます。

ここでは、「営みの渦巻き」をテーマに、古くから続く人と酒の関係を時系列で示しています。

女性が穀物を噛んで作っていた「どぶろく」や、神様に捧げるお神酒みきを連想させる日本酒など、先ほど購入したお酒をいただきながら、各お酒の特徴と、そこに込められた想いを学んでいきます。

今回、私が特に感動したお酒は、人類が現れるよりもはるか昔から存在する、世界最古のお酒「蜂蜜酒」でした。

「ミード」とも呼ばれる蜂蜜酒は、何かの拍子でひっくり返ってしまった蜂の巣に、雨水が溜まり発酵したことで誕生したという、自然と偶然が造り出したまさに奇跡のお酒です。

蜂蜜酒には、動物や昆虫などさまざまな生き物もあつまってくるそうで、“生命の営みを循環させる、まるでオアシスのようなお酒”であると説明が書かれていました。
西洋では神話にも登場するほど伝統あるお酒なのだそうですが、日本ではめったにお目にかかれない大変珍しい品で、蜂蜜と水のみを使った本来の製法で醸造されたものは、特に貴重なのだとか。

そんな貴重な蜂蜜酒は、口に含むと蜂蜜の良い香りとほんのりした甘みが広がります。

発酵されたことで生まれた酸味もあいまって、なんともいえない、幸福感溢れるお味です♡

あまりの美味しさに、これは生き物のオアシスになるのも頷けるな……と納得しました(笑)

※「にほんのさけ」セットは、こちらの展示エリアでのみ試飲可能です。

にほんのさけ」展のメッセージを受け取る

もう一つのエリアへ続く廊下には、本展覧会で伝えたいメッセージを、イラストとテキストで展示しています。

ものづくりのはじまりとも言える「農作」。

人々は、農作でできたお米を、神様からいただいた産物である、と考えてきました。

そこで、神様への御礼としてお祭りをし、いただいたお米に人間の知恵と時間を足した“お酒”という最上のお返しをお供えすることで、神様と人との関係の持続を図っていたのだそうです。

そうして、お供えすることで神様のものとなったお酒(お神酒)をお下がりとして頂くことで、神様と一体化できると考えました。

さらに、お祭りでお酒を飲むことで気分が高まり、周りの人と仲良くなり、コミュニティが出来ていく……という良い循環が育まれていったのです。

現在は、このコミュニティツールとしてのお酒の姿が一般的になっていますが、もともとは自然やそれらを司る神様への感謝の気持ちが込められたものだったのですね。

お酒というものが、いかに人類に、そして日本人に欠かせないものだったかを改めて実感しました。

然との共生を図ってきた人々をアートで見る

廊下を進んでいった“Gallery 1”エリアでは、繊維を通じて現代に生かす研究や制作を行っている、辛島綾からしまあやさんが製作した、酒と人の関係を可視化したアートが展示されていました。

人が生きていくために駆使してきた道具の一つである“縄”を使って、自然の恩恵に感謝を込めるという日本人の精神を表しています。

また、アート展示の隣では、本展示の要とも言える出雲杜氏・小島さんのインタビュー動画が投影されていました。

運営者にインタビュー

今回は特別に、本展覧会を運営されている株式会社良品計画の永田貴大ながたたかひろさん、そして出雲杜氏の小島達也さんに、このイベントへの想いや、伝えたいメッセージを伺いました。

の展覧会のポイントは?

永田さん(株式会社良品計画)

ATELIER MUJIでは、無印良品が伝えたい文化の魅力や成り立ちなどを、デザインやアートを通して、新たな切り口から皆様に共有しています。

普段はあまり食にフォーカスした展覧会はないのですが、今回は久しぶりに日本酒というテーマで展示を行うことになりました。

ただ全国各地の酒蔵で造られた日本酒を紹介する、といったようなものではなく、“人と酒の歴史的なつながり”、“本来の酒の姿とは?”という切り口で展開することによって、さらに文化的なお酒を感じて頂ける内容になっています。

いわゆる“味”という観点ではなくて、どのような哲学で“ものづくり”をしていくか、ということにフォーカスして見ていただけたらと思います。

回のテーマを決めたきっかけは?

小島さん(出雲杜氏)

現代の日本酒は、人工培養された酵母を入れて発酵させていることが多いのですが、本イベントでご紹介している6種類のお酒は、空気中の酵母や乳酸菌を使って醸造されたものなんです。

人工の乳酸を使用せず、一から乳酸菌を育てるこういった手法は“生酛造きもとづくり”と呼ばれます。

江戸時代から明治時代中盤まで主流だった日本酒の造り方なのですが、普段こういう醸造方法でお酒を造るうちに、江戸時代よりもっと前はどのようにお酒を造っていたのだろう?とルーツが気になるようになってきて。

そういった技術や伝統を調べていくうちに、お酒が“つながりをつくるもの”であり、さらに“今あるつながりを思い出させてくれるもの”だと思うようになりました。

お酒のルーツである農作文化、お祭り文化などには、先人たちの自然への想いや知恵が詰まっていて、その基盤があって今の私たちがいるのだな、と。

日本酒を通して、そういった生命の営みを感じられるお酒を造りたいという想いを、今回の企画で形にさせていただきました。

回の展示で訪れる方に感じて頂きたいことは?

永田さん(株式会社良品計画)

現代は、テクノロジーが大変発達している時代です。

日々新しいものが、目まぐるしい速さで生まれ続けています。

しかし、新しい刺激を求めるばかりではなく、今あるもの、私たちが古くから積み上げて繋げてきたものをもう一度振り返ることで気が付くこともあると思っています。

この展示を通して、今ある当たり前を改めて見直して、未来へ繋いでいく“ものづくり”の思想に触れ、何かを感じていただけたら嬉しいです。

取材を終えて

普段、外でお酒を頂くことが多い私にとって、お酒はコミュニケーションツールの一つである、という認識が強くあったように思います。

しかし、今回の展覧会に訪れたことで、お酒という存在の根底には自然の恵みや日々の環境への感謝が込められていたことを知りました。

そして、過去に工芸品職人の方々に取材させて頂いた際に、皆さんが口をそろえて“材料を与えてくださる自然への感謝が大切だ”と仰っていたことを思い出しました。

お酒も、その他の工芸品も、古くから日本人のものづくりの根底にあるものは同じなのだな、と新たな気づきを得ることができた、とても良い機会でした。

日本人の自然との共生の心は、この先も繋いでいくべきものだ、と強く感じると共に、普段口にするもの、使うものに改めて感謝を込めて過ごしていこう、と思うことができる体験でした。

本イベントは、令和6年(2024年)9月1日まで行われています。

機会があれば、ぜひお酒のルーツと、作り手である杜氏の想いに触れてみてくださいね♪

イベント情報

イベント名文化を味わうものづくり『にほんのさけ』展
展示期間令和6年(2024年)7月5日(金)~9月1日(日)
営業時間11:00~21:00
会場〒104-0061 
東京都中央区銀座3-3-5
無印良品 銀座 6F ATELIER MUJI GINZA Gallery 1・2
アクセス・東京メトロ「銀座駅」から徒歩3分
・東京メトロ「銀座一丁目駅」から徒歩3分
・JR「有楽町駅」から徒歩5分

出雲杜氏・小島達也氏の略歴

昭和59年(1984年) 愛知県出身
平成22年(2010年) 酒販店勤務を経て、島根県出雲市の板倉酒造にて酒造りを開始
平成27年(2015年) 板倉酒造の杜氏となる
現在 水酛やミードなど、野生酵母を生かした自然醸造に取り組む。
酒造りについての思想を、民俗学、生物学、哲学など多様な世界に学ぶ。

ATELIER MUJI GINZA

無印良品が考える未来へのメッセージを共有するため、ものづくりやデザイン、アートにまつわる企画・展示を行う場所。

グラフィックデザイナー兼無印良品のアートディレクターであった田中一光氏により命名され、「ここは暮らしの原点に立ち返り、未来へ進むヒントを見つける工房です。」という言葉のもと運営している。

展覧会を開催する二つの「Gallery」エリアのほか、コーヒーなどのドリンクを飲みながら語らう「Coffee&Salon」、古今東西から長く読み継がれてきた本をあつめた「Library」に分かれている。