獺祭だっさい」は、国内にとどまらず、世界にも日本酒の代名詞としてその名を馳せる純米大吟醸の日本酒です。

発売当時、"日本酒の革命児"というほどの衝撃を与えたその味わいや香りで多くの人を虜にし、ロングセラー商品となりました。

安倍首相からオバマ大統領に贈られるなど、国際舞台においても銘酒として知られていますね。

山口県の小さな酒蔵が造り出した獺祭が、なぜ多くの人々を魅了しているのか。

その魅力に迫ってみたいと思います。

日本酒、「獺祭」ってなに?

獺祭だっさいは山口県東部の岩国市にある、昭和23年(1948年)創業の「旭酒造」(家業としては江戸時代の1770年創業)で造られている純米大吟醸酒です。

創業から長い間、小さな地酒の蔵でしたが、昭和59年(1984年)に跡を継いだ社長の桜井博志氏が「おいしい酒・楽しむ酒」を目指して高品質の純米大吟醸を開発し、「獺祭」として売り出しました。

名前は酒蔵がある「獺越おそごえ」という地名と、桜井氏が暮らしたことのある愛媛県松山市ゆかりの俳人・正岡子規の「獺祭書屋主人だっさいしょおくしゅじん」という号から名付けたものです。

平成13年(2001年)からは獺祭一本に特化した酒造りを行なってきました。

「獺祭」の味とその魅力

獺祭の特徴は、酒造りに山田錦を100%使っていること、日本酒の最高ランクともいえる純米大吟醸造りに特化していることです。

獺祭の味の魅力は何といってもフルーティな香りとすっきりした飲みやすさにあります。

その奥には香りと芳醇な味わい、全体を引き締める酸味など、純米大吟醸の魅力が余すところなく詰まったお酒です。

日本酒のお酒臭さがなく洗練された味わいは「ワイングラスで飲む日本酒」とも呼ばれ、新しい辛口日本酒として注目されました。

初心者はもちろん、それまで日本酒にあまり慣れていない若い世代や女性にも好評を博しています。

「獺祭」のこだわり

日本酒革命とも呼ばれた獺祭。

その味を生み出したこだわりについてご紹介します。

山田錦を贅沢に使用した純米大吟醸

【「獺祭」の味とその魅力】でも触れたように獺祭は、最高級の酒米である「山田錦」を全量使って造られた日本酒です。

しかし、獺祭を造った当初、人気が高く栽培が難しい山田錦を、大量かつ安定的に確保することは簡単ではありませんでした。

桜井社長も山田錦の調達に苦労し、遠く新潟などにも出向いて山田錦の栽培を頼んで回っていたほどです。

旭酒造は、富士通株式会社と協同して山田錦の栽培をサポートするプロジェクトを立ち上げるなど、さまざまな試みを行って山田錦の増産につなげています。

突き詰めた精米歩合と遠心分離

獺祭は、最高品質の山田錦を徹底的に磨いて、豊かな香りと透明感を醸し出す日本酒です。

しかし純米大吟醸造りもこの高い精米歩合も、獺祭が登場した当時、日本酒業界では常識破りの出来事でした。

純米大吟醸はその製造に手間暇がかかります。

そのため芸術的なお酒として扱われ、一般向けに大量に造るものではないと考えられていたからです。

しかも、旭酒造は精米歩合においても世間を驚かせます。

2年目に当時の精米歩合日本一となる23%、つまり山田錦を7割以上も削った大胆な酒造りに挑戦したのです。

当時の大吟醸の主流は精米歩合が50%前後であることを考えれば驚異の精米歩合ですね。

当時はお米の組織を壊すことなく23%まで精米するのは、至難の業と考えられていました。

この未知の世界に挑み、168時間かけて23%まで削り上げたのです。

とはいえ、これは未知の世界。

ここまで削り上げて本当においしい日本酒ができるのかどうか、実は疑問視されていました。

しかし精米歩合50%前後の一般の日本酒とこの獺祭を飲み比べると、その味の違いというのは一目瞭然でした。

酒の風味や味わい、透明感が全く異なり、獺祭はたちまち注目されるようになります。

もちろん、獺祭がおいしい理由は精米歩合だけではありません。

獺祭ではおいしい酒造りを目指し、どの工程においても一切妥協をせずに挑戦し続けています。

例えば磨き上げたお米を少しでも良い状態で保管しておくために、特殊な貯蔵袋を独自に開発しています。

また、遠心分離という技法の導入も画期的な試みでした。

もろみから日本酒と酒粕を分離する「上槽じょうそう」という工程において、通常は圧力をかけて搾ります。

それを獺祭では、遠心分離機を用いた遠心力を使ってお酒を搾り出したのです。

この方法はコストも時間もかかりますが、お酒に負担をかけることなく、もろみの持つ旨味や香りをそのまま取り出したピュアな日本酒ができあがりました。

社員だけの酒造り

このように旭酒造では、業界の常識を覆して斬新な日本酒である獺祭を送り出してきました。

さぞや優秀な杜氏とうじが指揮していたのかと思えば、なんと旭酒造には杜氏がいません。

杜氏が辞めたのをきっかけに、社長以下、素人の社員が一致団結し組織として醸造をはじめたのです。

旭酒造は、杜氏がいなくなるというピンチをチャンスに変えました。

杜氏の経験と勘の代わりに、酒造りのすべての工程をデータ化、つまりIT化しました。

そして酒造りをマニュアル化して、社長と社員が組織で酒造りに取り組んだのです。

情報を共有し品質を分析、管理してデータ化することで、安定した酒造りを実現させました。

ただし、すべてをオートメーション化しているわけではありません。

機械でも調整できない細かいところ、もろみの温度管理や洗米などはすべて人の手で行なうなど、おいしいお酒造りへのこだわりが光ります。

※杜氏:日本酒の醸造を行う職人。酒蔵の最高責任者をいう。

四季醸造

日本酒は「寒造かんづくり」といって冬に醸造するのが一般的ですが、獺祭は通年の四季醸造で造られています。

これは、徹底した空調設備や温度管理などのテクノロジーにより可能になったものですが、この四季醸造も獺祭のおいしい理由の一つです。

酒の味は繊細で、気象条件や酒米の状態などによって味が変わってしまいます。

冬にしか醸造ができなければ、柔軟な酒造りができず、最高品質の日本酒を造るチャンスをみすみす逃してしまう可能性があります。

また四季醸造であれば、反省点を改善しながらすぐに次の仕込みに活かせます。

さらに、冬だけの醸造に比べて酒を造る回数が増えるため、社員が早くスキルアップできるといったメリットもあります。

「獺祭」の種類

旭酒造では、おいしいお酒を造りたいとつねに進化し続けた結果、いくつかの獺祭シリーズを生み出しました。

まずは、獺祭の商品一覧を見てみましょう。

・獺祭純米大吟醸50
・獺祭純米大吟醸45
・獺祭純米大吟醸磨き三割九分
・獺祭純米大吟醸磨き二割三分
・獺祭磨き三割九分 遠心分離
・獺祭磨き二割三分 遠心分離
・獺祭磨き三割九分 発泡にごり
・獺祭磨き二割三分発泡にごり
・獺祭磨き二割三分遠心分離 おりがらみ
(年末にしぼり、おりの部分を残したもの)
・獺祭磨き三割九分純米大吟醸槽場汲ふなばぐ
(三割九分の無濾過生原酒バージョン。春と秋の限定)
・獺祭磨きその先へ
・獺祭純米大吟醸発泡にごり酒スパークリング45
・獺祭発泡にごり酒50
・獺祭純米大吟醸45 寒造早槽かんづくりはやぶねしぼりたて
(冬季限定のしぼりたて生酒)
・獺祭純米大吟醸48 寒造早槽 しぼりたて生
・祭磨き二割三分温め酒
・獺祭等外
(山田錦だが、基準に外れた酒米を使用)
・獺祭等外23
・獺祭古酒
・獺祭初心
・獺祭ためし
・獺祭焼酎
・獺祭夏仕込み
・獺祭島耕作 令和ラベル純米大吟醸 磨き三割九分
・獺祭甘酒

では、ここからは、上記の中からオススメの商品をご紹介していきます。

「45」 獺祭の入門編

獺祭の入門編ともいえる「45」は「50」をリニューアルしたもので、精米歩合45%。

米本来の甘味と穏やかで繊細な香りのバランスが良く、端正で飲みやすく初心者にもぴったりです。

お値段もお手頃でコストパフォーマンスにも優れています!

「磨き三割九分」 上品な甘さと爽快な辛口を堪能

精米歩合39%。

エレガントで濃密な香りと、蜂蜜のような透き通ったお米の甘みが特徴です。

それがのど越しまろやかに、スパッと爽快にキレていきます。

この最後の辛口のインパクトにハマる人も多いでしょう。

贅沢に食中酒としていただいてみてはいかがでしょうか♪

「磨き二割三分」 五味が一体化した繊細な味わい

精米歩合23%。

山田錦の酒米を77%まで贅沢に削って醸造した日本酒です。

花のような気品あふれる甘やかな香りと、口に含んだ時の艶めいた清涼感が印象的です。

蜂蜜のような円やかな甘味と酸味との絶妙なバランスがナチュラルで、最後にふわりと余韻が香ります。

淡白な白身魚と一緒に食べたい日本酒です。

「磨き三割九分」と「磨き二割三分」はそれぞれ遠心分離のものもあります。

「磨き その先へ」 重層的に響きあう香りと味が醸し出す新しい日本酒の世界

獺祭シリーズの最高峰である「磨き その先へ」は、「二割三分」を超えるものとして造られました。

精米歩合は非公表。

今までの純米大吟醸とは、ひと味もふた味も違う別の次元へと踏み込んだプレミアムの日本酒です。

このお酒を一言でいい表せば、ひたすらピュアです。

口に含むと、甘美で妖艶な香りにまとわれながら、スーッと流れるように透き通って消えていきます。

いつのまにか香りと旨味、甘味が醸し出す重層的な奥深い余韻に包まれます。

なお、旭酒造のホームページでは、この奥深い味わいの日本酒に合う料理として鴨、白子、トリュフ、柑橘系ソースや柚子胡椒を使った肉・魚料理をあげています。

やはり高級酒には高級料理がお似合いですよね。

「獺祭」のオススメの飲み方

憧れの獺祭を手に入れたら、やはりおいしい状態で飲みたいですよね。

ここからは、獺祭のオススメの飲み方をご紹介します。

獺祭は香り豊かな吟醸酒なので基本的に“冷や”で飲みます。

「獺祭45」、「三割九分」

冷蔵庫で冷やして、出してからすぐに飲むのがオススメです。

“雪冷え”と呼ばれる4~5度で飲むのが最適で、キレの良さを味わえます!

「二割三分」

冷蔵庫から出して10分ほど常温で放置してから飲むのがオススメです。

“花冷え”と呼ばれる10~12度が最適で、香りと甘みを楽しめます。

「磨き その先へ」

12度ぐらいからゆっくり飲んでいきましょう。

自然に温度が上がるのに合わせて、香りと旨味などの変化を楽しむのがオツですよ。

「二割三分」の後に飲むと、よりおいしさが際立ちます。

日本酒といえばお猪口で飲むのが定番ですが、獺祭は「小ぶりのワイングラス」で飲むことが推奨されています。

獺祭はワインのように冷やして飲むことが多いため、ワイングラスの方がお猪口よりも風味や香りを鋭敏に感じることができますよ♪

「獺祭」には焼酎もある!

獺祭には、知る人ぞ知る焼酎があるのをご存知でしたか?

それが「獺祭 焼酎 39度」です。

獺祭の製造過程で出た酒粕を発酵、蒸留させて造った粕取りの米焼酎です。

フルーティな香りや透明感もあり、濃い目の日本酒を飲んでいるような味わいです。

アルコール度が高いので割って飲むのが良いでしょう。

獺祭の香りをストレートに楽しみたいなら、水割りかお湯割りが最適。

スタンダードにソーダ割にすれば、アルコール度も薄まり、酒の風味も柔らかくなるので強いお酒が苦手な方も飲みやすくなります!

旭酒造の酒蔵見学

旭酒造では酒蔵見学ができます。

1日2回、所要時間は1時間。

酒造りの話を聞いたり、実際の醸造の現場を見学することができます。

白衣代200円、希望者は試飲300円、要予約。

実際の酒造りの現場を見学すると、旭酒造の酒造りへの思いをひしひしと感じることができますよ♪

酒蔵見学のお申し込みはこちら

おわりに

今や多くの人の憧れの高級な日本酒となっている獺祭についてご紹介しました。

旭酒造は、純米大吟醸に特化した酒造りや、突き詰めた精米具合などおいしい酒を求めて、つねに新しいことにチャレンジして獺祭を生み出してきました。

「磨きその先へ」も究極の日本酒かと思いきや、まだまだその先を目指しているそう。

新しい獺祭の登場も楽しみですね。