四季の移ろいを表現した、見た目にも美しい和菓子の代表格「ねりきり」。

その滑らかな舌触りと上品な甘さは、老若男女を虜にします。

しかし、名前や見た目は知っていても、どんな和菓子なのか、原材料はなんなのか…詳細はわからない、という方もいるのではないのでしょうか?

そこで今回は、ねりきりの基本知識から、おうちでも簡単にできる作り方、選りすぐりの名店をご紹介します!

ねりきりとは

ねりきりとは、白あんに砂糖やつなぎを加えてよく練った生地から作られる和菓子の一種です。

つなぎには、山芋や求肥といった材料がよく用いられますが、用途やレシピによって異なります。

この生地に色をつけて、四季の植物や風物詩の形を表現する細工を施していきます。

また、「ねりきり」という名前は、生地をつくる際、つなぎを加えて「切る」ように「練る」ことから、その名前がつきました。

ねりきりの歴史

ねりきりが誕生したのは、江戸時代あたりのことです。

古くから貴重な素材だった砂糖の値段が下がり、貴族だけの贅沢品ではなくなったことや、戦が減り平和な時代になったことで、茶会のような文化的な集いの場が増え、京都を中心に和菓子文化が発展。

当時の職人たちはこぞって腕を競い、そのおかげで美しい形の和菓子が次々と誕生しました。

京都では、白あんと砂糖に小麦粉を加えて蒸した「こなし」という生地を使い、意匠を凝らした形の和菓子が盛んに作られていました。

江戸への遷都と共に、「こなし」の技術が関東へ伝わり、アレンジされ発展したのが「ねりきり」だといわれています。

ねりきりは、お茶席や儀礼の場で供される高級な和菓子として位置づけられるようになりました。

ねりきりは「上生菓子」の一つ

ねりきりは、和菓子の中でも「上生菓子」に分類されます。

和菓子は水分量によって呼び分けられ、水分を30%以上含むものを「生菓子」といいます。

中でも、ねりきりは茶席や儀礼といった特別な場にも用いられる上等な和菓子のため、「上生菓子」と呼ばれるのです。

さらに、ねりきりを含む「上生菓子」は、一つひとつに必ず「菓銘かめい」と呼ばれる名前を持っています。

菓銘には、季節や情景を表す雅な言葉が多く用いられ、ねりきりは味だけではなく、見た目や菓銘などさまざまな面から楽しめる和菓子なのです。

ねりきりの作り方

和菓子店で見かけるねりきりは、繊細で美しく、まさに職人の方々の技術の結晶ともいえるものばかり。

その見た目から、素人には作れないと思われがちなねりきりですが、実は材料や生地の作り方はとてもシンプルなんです。

工夫次第でアレンジが無限大なねりきりを、ぜひおうちで作ってみてはいかがでしょうか!

作りはじめる前に!「上物」と「並物」の違いをご紹介

本来、ねりきりは材料やつなぎの違いにより、「上物」と「並物」の2つに分かれます。

「上物」は白あんの材料に、高級な白小豆や白ささげ豆を使用し、つなぎにヤマトイモや葛、百合根を用いることにより、上品で滑らかな口当たりが味わえるねりきりです。

ただし、上物のねりきりは日持ちがしないため、茶席や儀礼に合わせて作られることがほとんどで、和菓子店ではあまり売られていません。

一方「並物」は、比較的手に入りやすい手亡てぼう豆、つなぎにナガイモや求肥といった材料で白あんを作ります。

つなぎに求肥を使うと形が加工しやすくなるため、家庭でねりきりを手作りする場合にオススメです。

また、上物に比べ、多少日持ちが良くなるのもメリット。

上物よりは味が劣るといわれますが、充分おいしくいただけますよ。

ここでは、和菓子職人による本格的なねりきりの話にも触れつつ、家庭で簡単に作れるねりきりの作り方を紹介します。

友だち同士やご家族、お子様と一緒に気軽に挑戦できるものとなっているので、ぜひ参考にしてみてください♪

ねりきりの材料と道具

ねりきり作りに使う材料は、お店やレシピによってさまざまですが、家庭でねりきりを作る場合、以下の材料が手に入りやすくてオススメです!

ねりきりの材料
<生地>
・ 市販の白あん
・ 白玉粉
・ 水

<飾り>
・ 着色料、パウダーなど、必要に応じて用意してください。

ねりきりに必要な道具
・ 耐熱皿
・ 混ぜる用のスプーン
・ 電子レンジ

<飾り>
・ しゃもじ
・ 竹串
・ 濡れ布巾

ねりきり生地の作り方手順

ここでは、家庭で簡単にできる、基本のねりきり生地の作り方をご紹介します。

ぜひ動画を参考に作ってみてください♪

①耐熱皿に、白あんを入れておきます。

②①とは別の器に白玉粉と水を入れて、白玉粉が解けるまでしっかりと混ぜます。

③①の中に②を加えてよく混ぜます。混ぜ終わったら、次は電子レンジで水分を飛ばしていきます。この時、容器に沿って生地を貼りつけるようにしておくと、均等に水分が飛びやすくなります。

④③を電子レンジに入れ、500Wで3分温めます。目的は水分を飛ばすことなので、この時ラップはしません。

⑤熱し終わったら取り出して、熱いうちによく混ぜ、同じように容器の外側に生地を貼り付け、1分間電子レンジで温め、混ぜる作業を繰り返し行います。

手のひらで触ってみて、手につかなくなるくらいの固さになれば生地の完成です!

もし生地が柔らかすぎると感じたら、30秒~1分ほど電子レンジの時間を追加しながら様子をみましょう。

温かい状態で少々柔らかくても、冷めるとすこし固くなります。

生地はできたての状態だと扱いづらいため、ラップで包んで冷蔵庫で2~3時間冷やしてから成形しましょう。

ねりきりで「桜」を作ってみよう!

基本のねりきりの生地の作り方がわかったら、次は「桜」に挑戦してみましょう!

花はねりきりの中でも定番の形のため、1種類つくれるようになれば、アレンジ次第で豊富なバリエーションを楽しめますよ。

<材料(1つ分)>
・ ピンク色のねりきり(生地に赤の着色料で色を付けた物) 30g
・ 黄色のねりきり(生地に黄色の着色料で色を付けた物) 少量
・ 中に入れるあんこ 15g

<道具>
・ しゃもじと竹串(三角棒の代わり)
・ 粉ふるい(ざるや茶こしでも可)
・ 濡れ布巾

①ピンク色のねりきりを強めに押し潰し、あんこを包めるくらいの大きさまで円形に伸ばします。このとき、中央はやや厚めに、端はやや薄めにしておきましょう。ときどき濡れ布巾で手や指先をかるく湿らせると、作業がしやすくなります。

②真ん中に丸めたあんこを乗せ、片手のひらで全体を包むように支えて、もう片手で少しずつ回しながら閉じていきます。閉じ口を下にして、丸くととのえます。

③しゃもじの柄の部分を使い、花びらを5枚作っていきます。まずY字を描くように、端から中央にかけて優しく3ヶ所に溝を入れていきましょう。その後、間に溝を作ることによって残りの2枚をつくるとバランスがよくなります。

④親指と人差し指で、1枚ずつ花びらをつまみます。親指の腹を使って、やさしく押して凹ませましょう。

⑤花びらができたら竹串を使い、それぞれの花びらの端に小さな切れ込みを入れていきます。こうすることで、桜の花びららしくなります。


⑥最後に花の中央の部分を作っていきます。黄色のねりきりを粉ふるいに押し付けて細かくしたら、竹串でつまみ桜の中央に少量を乗せて完成!

はじめは少し難しく感じられるかもしれませんが、コツを掴めばあっという間にできる、桜のねりきり。

お子さまでも簡単につくれるので、ぜひ親子で挑戦してみてはいかがでしょうか。

また、通常、和菓子職人がねりきりに細工を施す道具は、次のようなものがあります。

三角棒さんかくぼう(線を付けたり、形を整えたりする道具)
千筋板せんすじいた(均一に線をつけるための道具)

ただし、このような専用の道具は少々お値段が張りますので、気軽にねりきり作りに挑戦してみたい場合には、無理をして準備をする必要はありません。

あくまでもねりきりは「芸術品」なので、型にはまらずあらゆる道具を使って自由に作っても大丈夫なのです。

家庭にあるしゃもじや竹串、ナイフといった道具を使っても形は自由に変えられるので、想像力豊かに好きな形を作ってみましょう!

本格的なねりきりに挑戦してみたい方は、和菓子職人が使う道具を揃えると、表現の幅が広がってさらにさまざまな形のねりきりが作れるようになるでしょう。

意匠を凝らした、美しき「ねりきり」の世界

ねりきりは、職人の繊細な技術と感性によって、自然や情景が表現される和菓子です。

近年は、より親しみを感じられる動物やイベント、キャラクターに関連したモチーフのねりきりも増えてきましたが、昔から題材としてよく取り上げられてきたのは、日本の四季をテーマにしたねりきりです。

ここでは、春夏秋冬に分けて美しいねりきりをご紹介します。

ぜひ季節のねりきりを愉しんでみてください。

春のねりきり

春は草木が芽生え、桜をはじめとした可憐な花が咲きはじめる季節です。

そのため、この季節には春の訪れを知らせてくれる草花をかたどったねりきりが多く見られます。

つぼみから膨らんだばかりの桃の花を模したねりきりは、春の訪れや、生命の歓びが慎ましやかに表現されています。

中央部分の、黄に色付けされたねりきりによって、控えめながら華やかな桃の花の魅力が引き出されていますね。

初春の野草の一つ、ふきとうをイメージしたねりきりです。

雪の下から真っ先に顔を出す蕗の薹を模したねりきりは、まさに春の芽吹きを感じさせてくれます。

この他に、梅や桜、お雛様をモチーフにしたねりきりも人気があります。

夏のねりきり

木々が生い茂り、生命力に満ち溢れる季節、夏。

暑い夏は、冷茶とあわせていただきたい、カラフルで華やかなねりきりが揃う季節です。

潮騒しおさいをイメージした、白と青のグラデーションが涼しげなねりきりです。

氷餅を散らして表現された波しぶきがおしゃれですね。

夏の花といえば、ひまわり。

花びらの先からすじの様子まで、細かく表現されたねりきりです。

さらに、中心部分の茶色のねりきりに金箔をほのかに散らすことで夏の日差しの眩しさの中に、上品さ感じさせてくれます。

職人の感性や想像力が、和菓子の仕上がりを左右するのですね。

この他に、紫陽花や朝顔、花火をモチーフにしたねりきりも人気があります。

秋のねりきり

秋には、旬の食べものや紅葉といった、まさに秋らしいモチーフのねりきりがたくさん登場します。

近年は、ハロウィンに合わせた愉快でかわいらしいねりきりも多く見られるようになりました。

「月うさぎ」という菓銘の、中秋の名月に合わせたねりきりです。

耳の陰影や角度によって表現されるうさぎからは、あえて顔を作り込まない想像の美が感じられます。

真紅色から淡いオレンジ色のグラデーションが目を惹く、紅葉のねりきりです。

その美しい色合いの表現はまさに職人技。

お菓子で季節を体感できるねりきりの素晴らしさに驚くばかりです。

この他に、菊や柿、銀杏をモチーフにしたねりきりも人気があります。

冬のねりきり

動植物が眠りに入り、しんとした静かな空気が漂う冬のねりきりは、白をベースとしたシンプルなものが多い印象です。

一方で、クリスマスやお正月などのイベント時には、明るく豪華なねりきりが多数登場します。

お正月のシンボルの一つ、松を模したねりきりです。

緑と白の組み合わせのモダンなアレンジが効いたねりきりは、よりアートな雰囲気に仕上がっています。

冬に咲く数少ない花の一つ、寒椿。

椿の花をそのままではなく、花の一部を繊細に表現しています。

デザイン性が高く、色合いの美しいねりきりはまさに芸術ですね。

この他に、雪や鶴亀、柚子をモチーフにしたねりきりも人気があります。

【東京】ねりきりが有名な和菓子屋をご紹介!

ねりきりは、かつて江戸で栄えたことから、多くの名店が東京を中心に集っています。

職人によって生み出される繊細なねりきりの美しさと上品な味わいからは、一つひとつにこだわりが感じられるはず。

今回は、主に東京を拠点に活動するねりきりの名店をいくつかご紹介します。

なお、ねりきりは生菓子のため、どのお店も基本的に通信販売は行っていません。

機会を見て、ぜひ足を運んでみてください。

和菓子の大御所「とらや」

「和菓子」といえば、想像する人も多いであろう、老舗和菓子店のとらや。

そんなとらやの創業は、なんと室町時代にまで遡ります。

京都で創業したとらやですが、東京への遷都とともに江戸へ進出し、実に多くの和菓子を製造してきました。

見た目にも楽しい、色とりどりのねりきりは、江戸時代から続くレシピをもとに現在まで受け継がれている種類もあるのだとか。

さらに、日本だけでなく海外にも進出し、今や世界を代表する和菓子屋となったとらやのねりきりは、全国の直営店で購入できるほか、茶寮併設の店舗でもいただくことができます。

住所(赤坂本店):
〒107-8401
東京都港区赤坂4-9-22
営業時間:(平日)9:00~18:00
     (土日祝)9:30~18:00
休業日:12月を除く、毎月6日

※上記の営業時間や休業日は変更となる可能性がございます。
赤坂店やその他の店舗について、詳細は公式HPよりご確認ください。

シンプルに、上品に。東京・青山「菓匠 菊屋」

新しい場所に引っ越したばかりの和菓子店・菊屋は、昭和10年(1935年)に創業されました。

流行の最先端をゆく街、東京・青山で初代の味を受け継ぎ、少量生産で丁寧につくられる菊屋の和菓子は、美食家のファンが多く、宮家や政界からも厚い支持を得ています。

そんな菊屋の作る、伝統的な日本の風景を閉じ込めたねりきりで、ちいさな四季をお楽しみください。

住所:
〒107-0062
東京都港区南青山5-13-2 菊家ビル9F
営業時間:(火~金)9:30~17:00
     (土)9:30~15:00
休業日:月・日・祝日
     売り切れ次第閉店となります。

※上記の営業時間や休業日は変更となる可能性がございます。
詳細は公式HPよりご確認ください。

日本の美しき伝統を汲み、現代、そして未来へ「楳心果」

楳心果ばいしんかは、世界で活躍するデザイン会社・SIMPLICITY(シンプリシティー)が運営する、茶寮併設の和菓子屋さんです。

東京の喧騒がまるで嘘のような凛とした空間に、センスよくディスプレイされた生菓子が並ぶ様子は、それだけで芸術といってもいいほど。

数年前から白砂糖の使用を止め、食べる人の健康に配慮されたねりきりは、独特のコクと甘さがあり、多くの人々を虜にしています。

併設の茶寮では、庭の借景が映えるほの暗い灯りのもとで、五感を研ぎ澄ませて生菓子をいただくことができ、なんとも贅沢なひとときを過ごせます。

住所:
〒152-0023
東京都目黒区八雲3-4-7
営業時間:(水~日)9:00~16:00
休業日:月・火曜日

※上記の営業時間や休業日は変更となる可能性がございます。
詳細は公式HPよりご確認ください。

世界に発信し続けるアートな和菓子「紫をん Shiwon」

紫をんは、「印象を和菓子に」をコンセプトに活動する坂本紫穂さかもとしほ氏のプロジェクトです。

紫穗氏が作るねりきりは、日持ちがしない上生菓子ならではの儚さを生かした、繊細な美しさが魅力です。

紫穗氏は、イベントや展示会・監修をメインに活動されているため、購入できる機会はほとんどありませんが、定期的に和菓子教室を開催しています。

ねりきりの作り方を、和菓子のプロから教わってみてはいかがでしょうか。

※和菓子教室の詳細は、下記ホームページよりご確認ください。

まとめ

江戸時代に発展し、今もなお和菓子を代表する存在の「ねりきり」。

四季折々の自然や風景をちいさな菓子に仕立て、雅な菓銘をつけることで、五感で季節や情景を楽しめる和菓子は、日本人の繊細な感性の賜物といえるでしょう。

上品でどこか難しそうなイメージのあるねりきりですが、家庭でも簡単に作れるので、ぜひ気軽にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

ねりきりの奥深い世界に、きっと虜になるはずです。