洋式化が進んだ現在、スリッパはどのご家庭にもある必需品ではないでしょうか?

私たちの生活になくてはならないスリッパですが、伝統工芸品として名高いものから履き心地にこだわったものまで、実にさまざまな魅力に溢れています。

洗濯できるスリッパや、ホテルライクを醸し出すラグジュアリーなスリッパなど、最近ではラインナップも豊富です。

身につける物なので、サイズや素材などでも意外と好みが分かれます。

この記事では、ご自宅使いはもちろんのこと、大切な方へのプレゼントとしても喜ばれる洗練された伝統工芸品のスリッパをご紹介します。

伝統工芸のスリッパ①津軽こぎん刺しのペアスリッパ~江戸時代からの技が光る!

江戸時代に青森県津軽でうまれた、「津軽こぎん刺し」の技法を用いて作られたスリッパです。

津軽こぎん刺しは、倹約令により、綿や絹を身に着けることができなかった農民が、麻の耐久性や保温性を最大限引き出そうと考えてできた縫い方です。

布目を糸で刺し隙間を埋めることで、保温機能が高まると同時に、補強にも適した強さになります。

1・3・5の奇数目で模様が構成され、その幾何学模様のモダンさは古さを感じさせません。

一つひとつ手作りされたこのスリッパは、履き心地も温かさも抜群!

どこか懐かしい落ち着く味わいと、現代的ともいえるデザインで、お家の中でもおしゃれを楽しんでみてください!

伝統工芸のスリッパ②遠州綿紬のモダンスリッパ~足にフィットする最高の履き心地!

静岡県西部の浜松市で、昔から織られている織物である、「遠州綿紬えんしゅうめんつむぎ」のスリッパです!

遠州綿紬の特徴は、その独特な縞模様と温かみのある日本色です。

生地はコシがあるのにしなやかで、吸汗性にも優れ、肌触りもやわらかでとても気持ちが良いです。

これは、遠州綿紬を織る際に糸くずや繊維の固まりが混ざり込んでいるネップ糸や、繊維が均一で糸全体にひねりがかかっているリング糸等を使用して昔ながらの製法で織っているから。

職人さんたちの手によって現在でも柄数は増え続け、品質も向上していることも遠州綿紬の特徴といえるでしょう。

縞模様と和テイストな色を組み合わせた、ぬくもりを感じるデザインに仕上がっています。

綿100%で足を包み込むようにフィットするような、軽くてやわらかい履き心地も最高です!

伝統工芸のスリッパ③しじら織りの畳スリッパ!軽くて涼しい徳島の伝統工芸品

華やかなカラーと畳が絶妙にマッチする、徳島の伝統工芸品「しじら織り」を使用した畳スリッパです!

しじら織とは、たて糸と横糸の組み合わせによる張力差を利用して生み出される、独特の浮き上がったシボ(シワ模様)とその美しさが特徴です。

昭和53(1978)年には、阿波藍を使った「阿波正藍しょうあいしじら織」が国の伝統的工芸品に指定されています。
 
浮き上がったシボの肌触りは素晴らしく、軽くて涼しいのも魅力です。

インソール部分の畳に施された樹脂コーティングが、色あせと傷をしっかりガードしてくれますので、イ草に比べてカビやダニが発生しにくく、衛生的ですね。

甲部分の内側に貼られたパイル素材で肌触りもバツグン。

履き心地も良く、特に夏の暑い時期にオススメです♪

デザインやカラー展開も豊富なので、お気に入りの一足を探してみてはいかがでしょうか?

伝統工芸のスリッパ④和紙でできたスリッパ?!和紙ブランドSIWAが開発した新素材

山梨県市川大門にある和紙メーカー大直おおなおが、デザイナー深澤直人氏とともに立ち上げた「毎日使える和紙製品ブランド「SIWA | 紙和」。

この名前には、紙の“シワ”と伝統工芸品である和紙の反対読みの“紙和”という意味が込められています。

大直が開発した破れない和紙「ナオロン」を用い、紙の可能性を広げる日用品として、優しさと風合いをいかした、さまざまなプロダクトを提案しています。

今回ご紹介するスリッパも、強度と耐水性を兼ね備えた特殊和紙“ナオロン”を使用した興味深い一品。

和紙を丹念に精製し、革を縫製するように一つひとつ丁寧に作られたスリッパは、趣のある佇まいです。

また、紙袋と変わらない軽量さで、高齢の方の足まわりにも負担をかけません。

見た目も手ざわりも和紙なのに、強度も十分、水に濡れても大丈夫なタフさも素晴らしいです。

伝統工芸品と最新科学が融合し誕生した最強の和紙スリッパをぜひ体感してみて!

伝統工芸のスリッパ⑤阿波藍染めのスリッパ~使いほどに味わい増す♪

徳島県の伝統工芸である「阿波藍あわあい染め」が素材に使用されているスリッパです♪

徳島県で栽培された植物「阿波藍」を使って伝統技法により染色しています。

阿波藍染は、阿波藍の葉を細かく刻んで発酵させた「すくも」という染料を作り、その染め液に布を浸け、空気にさらすことで酸化し発色します。

これを何度も繰り返し、染め上げていくのです。

昭和43(1968)年に「阿波正藍あわしょうあい染法」として、県の無形文化財にも指定されました。

その色調や風合いは、使い続けることで味わいを増し、経年変化も楽しむことができます。

また、美しいだけでなく防虫効果があるとされる独特の香りや、両方でわずか約100gしかない重さ、丈夫でサラッとした感触の肌ざわりの良さも魅力です!

伝統工芸のスリッパ⑥南部裂織のスリッパ~もったいない精神の温かい心が生んだ一品

布は、江戸時代の青森県東部ではとても貴重なものでした。

寒さが原因で、木綿を手に入れることが非常に困難だったのです。

貴重な布を粗末に扱ってはもったいないから最後まで使おう、細かくても何かに生まれ変わらせよう、そんな温かい心で古布を裂いて織ったのが「南部裂織」です。

経糸に木綿糸、横糸に古布と、違う素材を使用しているため、丈夫で温かく、履けば履くほど足に馴染みます。

「大切なものを長く使う」日本人の素敵な精神と、細かい手仕事の魅力を、是非感じてみてください!

伝統工芸のスリッパ⑦きみがらスリッパ手づくり体験もオススメ!丈夫で通気性のよい青森県の伝統工芸品♪

馬の産地として有名な青森県十和田市の伝統工芸品である「きみがらスリッパ」の製作体験で、オリジナルスリッパを作るのもオススメです!

昭和22年(1947年)、馬の飼料用とうもろこしの皮(きみがら)を何かに再利用できないかと考案されたきみがらスリッパは、昭和38年(1963年)設立の『十和田きみがらスリッパ生産組合』を中心に、今も全て手作業で作られ続けています。

きみがらは丈夫で湿度調整に優れた天然素材のため通気性もよく、夏は涼しく冬は温かく履くことができますよ♪

履くほどに足によくなじみ、優しく軽い履き心地も魅力です!

熟練の組合員さんと一緒に、自分だけの手づくりスリッパを作ってみてはいかがでしょうか?


※きみがら:津軽弁でとうもろこしを“きみ”と言い、きみがらは“とうもろこしの皮”のことを指す青森県の方言。

おわりに

スリッパは日常の単なる履物ではなく、上質な暮らしにそっと寄り添うアイテムです。

今回は伝統工芸品のスリッパをご紹介しましたが、伝統工芸品は比較的価格もお手頃な物も多いうえ、一つずつ職人が作る魅力があります。

どれも独自性の高いデザインであるとともに、長年培われてきた技術を用いて作られるため長持ちします。

つまり、伝統工芸品は製品として非常に優れているのです。

私たちの生活に寄り添うスリッパだからこそ、こだわってお気に入りの一品に出会いたいものですよね。

自分にフィットする履き心地は、何かと忙しい毎日に、安らぎと安心感をもたらしてくれます。

こだわりの伝統工芸品のスリッパを生活の中に取り入れて、穏やかに暮らすのもいいのではないでしょうか。