「窯元」「作家」と聞くと何やら通っぽい響だと思われませんか?

辞書で調べると「窯元」とは、「陶磁器を焼いたり作ったりするところ、またはその陶磁器を作る人」とあります。

要するに、焼き物を作る人だったり、工房だったり、今でいえば企業なども含まれるかもしれません。

イメージでいうと、「ブランド」に近いでしょうか。

一方で作家と聞くと、一人黙々と窯に薪をくべている「人」を思い浮かべる人も多いかもしれません。

今回は、備前焼における作家さんや窯元さん、さらに人間国宝の方をご紹介することで、脈々と続く備前焼の歴史を担っている制作者さんたちに迫ってみたいと思います。

備前焼で有名な窯元(備前六姓)を紹介

岡山県備前市伊部地区には備前焼の窯元さんが多く在ります。

中には桃山時代から備前焼を制作している六姓(木村・金重・森・大饗・頓宮・寺見)など、古くから続く窯元さんもあれば、大正時代や昭和時代に創業された比較的若い窯元さんもあります。

そんな窯元さんは全国から若者を集め陶工として雇い、組織で焼き物を生産します。

そこで修行を積んだ陶工さんたちが、後に独立し作家さんとなっていくケースもあるようなので、窯元さんを知るという事は備前焼の根幹やエッセンスを知るということでもあるのかもしれません。

木村家

木村家は系譜に室町の備前藩細工人、木村清三郎さんがいらっしゃる窯元さんです。

江戸時代の慶長に遡る宮家への献上や、表彰歴なども多くあるようです。

木村興楽園さんが総本家であるのに対して、木村総本家からの分家として陶正園(初代 木村正二)さんがあります。

陶印の個性的な桃蹊堂とうけいどうさん、昭和に分家した一陽窯いちようがまさんも木村の流れをくんでいます。

金重家

金重家は人間国宝の金重陶陽さんが有名です。

江戸時代の備前焼低迷期からの再興にも貢献した功績があり、備前焼の名門と言える窯元さんではないでしょうか。

「備前焼 金重」と検索すると金重陶陽さん、金重晃介さん、金重有邦さん、金重一門の裾野が広がっていることが伺えますが、その中の金重利陶苑さんに総本家窯元の記述があり伝統と格式が感じられる窯元さんです。

寺見(森)家

寺見家には現在、寺見の苗字で活動されている作家さんを見つけることができませんでした。
寺見家の直系として森家が紹介されているので、寺見家と森家は歴史のどこかで統合されたのかもしれません。

現在は森丁斎もりていさいさんが窯主で、作品は「ギャラリー森」に展示されているようです。

備前焼陶友会には作家として紹介されています。

森泰司さん、森大雅さんも森家直系の作家さんです。

森家

寺見家の紹介文をご覧ください。

大饗家

安土桃山・江戸時代には大饗おおば五郎左衛門や大饗平十郎といった陶工がいたということは確認できましたが、現在、備前焼陶友会に紹介されている窯元はなく、大饗利秀さんという作家さんのみがいらっしゃいます。

頓宮家

頓宮とんぐう家は、関白藤原道長の流れで、滋賀県の近江のあたりにルーツがあったという記事はありますが、備前焼に関する情報は得ることができませんでした。

もしかすると、どこかのタイミングで、姓を変えてしまったのかもしれませんし、途絶えてしまったのかもしれません。

六姓以外の名だたる窯元さんとしましては、伊部地区に小西陶古さん、柴岡陶泉堂、備州窯さん、宝山窯さん、友延に窯元備前一さん、香登本に五郎兵衛窯さん、松園さん、東片上に山麓窯、楽雁窯さんなどの窯元さんがいらっしゃいます。

備前焼で有名な作家さんたちを紹介

本来なら実際に実物を目の前にしてご紹介させていただきたいところではありますが、今回は備前焼で有名なオススメの作家さんを紹介したいと思います。

安倍安人さん

安倍安人あんじんさんは、もともと陶器の収集家でしたが現代備前に物足りなさを感じて自ら陶芸を始められたそうです。

形式や伝統への敬意や尊重する姿勢が感じられつつも、その中で新しく斬新なアプローチが展開されており大人気の作家さんです。

市川透さん

斬新さと、独創性を感じます。

ゴツゴツとした岩肌のような表情が様々な形で表現されていて、備前焼の新たな一面を感じこれから期待の作家さんです。

浦上光弘さん

青灰色の土地に黒色の襷がかった独特の青備前が涼しげで、白い肌と黒い襷のマーブル模様もオシャレです。

青備前は製造が困難な上、意図的な発色も難しく貴重です。

大岩智之さん

黒を見事に使っており、サビ感、枯れ感が見事な若手作家さんです。

隠崎隆一さん

隠崎隆一かくれざきりゅういちさんは、面白い形の作品が多く、その名前は焼き物界に留まらず世界的にも有名な異色作家。

しのぎ技法と呼ばれる面と面の稜線を際立たせて削る技法が見所です。

中村六郎さん

酒器作りの神様と謳われた有名な作家さんです。

シンプルで伝統的な、これぞ備前焼といった作風です。

どことなく懐かしさや温かみを感じる作風は伝統工芸士の称号にふさわしいです。

中原幸治さん

大理石のような、わら半紙のような表情が印象的な作家さんです。

原田拾六さん

重厚かつ豪快な作風です。

ゴツゴツな岩肌のような表情のぐい呑みや茶碗にはついつい見入ってしまいます。

馬場隆志さん

艶のある肌感は、グロスを塗ったのではないかと思うほど潤って見えます。

黒や、青といった色使いも素敵です。

備前焼の人間国宝の方を紹介

備前焼で人間国宝を指定されている5名の内、今回は3名をご紹介します。

金重陶陽さん(1896〜1967年)

明治から昭和にかけての陶芸家であり、低迷していた備前焼を再興させた復興者でもあります。

多くの名だたる人々に影響を与えた芸術家、北大路魯山人ろさんじんや世界を舞台に活躍した芸術家、イサム・ノグチなどとも親交があったことでも有名です。

多くの弟子を育てその中から人間国宝を輩出し、備前の歴史に多大な影響を与えた備前の父とも言える存在ではないでしょうか。

山本陶秀さん(1906〜1994年)

備前焼におけるロクロ技術の第一人者で茶の湯に用いる名品を残し「茶陶の陶秀」と言われました。

長男さんは窯元の欄で紹介した備州窯の創設者です。

伊勢崎淳さん(1936年〜)

ご存命で備前焼五人目の人間国宝です。

中世に用いられ途絶えていた半地下式穴窯はんちかしきあながまの復元に成功するなど、伝統や歴史への探求を深める一方で現代美術的な感性をデザインに取り入れてきました。

おわりに

備前市の中でも特に伊部地区には六姓由来の窯元が多く見受けられ、六姓の伝統を守り今尚それを伝えている窯元さんや、日用品や現代生活に合う作品を作られている窯元さんなど、様々な窯元さんがいらっしゃいます。

また、今回ご紹介した作家さん以外にも、昔からの伝統を守り引き継いでいる作家さん、これからもっと名を挙げていくであろう作家さんが多くいらっしゃいます。

そして人間国宝である方々の存在はとても大きく、時代が変化していく中においても、彼らが残した功績は非常に重要なものです。

備前焼がここまで多彩だと初めて知った方も多いのではないでしょうか。

改めて、備前焼の奥深さと広がりを実感し、興味をもって頂けると幸いです

お読みいただきありがとうございました。