美濃焼とは?
美濃焼とは、岐阜県(旧美濃国)の東濃地方において制作される陶磁器の総称です。
美濃焼はあくまでも総称なので、九谷焼・有田焼・信楽焼・備前焼といった名前を聞くと焼き物に明るい方であればパッとイメージが思い浮かばれるかと思いますが、美濃焼はそういった「これ」といったブランドイメージが確立されている焼き物たちと少々ニュアンスが異なります。
美濃焼の中には、織部焼や志野焼・黄瀬戸・黒瀬戸など代表的な焼き物があり、また岐阜県は磁器の産地としても国内生産量の約半分を占めています。
では早速、美濃焼について見ていきましょう。
美濃焼の特徴
美濃焼の多くは、ろくろ、手ひねり、押し型等の技法を使って作ります。
そうして成形した後、模様を彫りつけたり、描いたりして飾り付け、素焼きします。
素焼き後は、志野釉、黄瀬戸釉、織部釉などの釉薬を用いて釉掛けをし、本焼きを行います。
美濃焼として伝統工芸指定されているものは15種類あり、淡い色合いや、柔らかな素地の質感、釉薬の仕上がりなどが見どころです。
伝統工芸指定とは日常生活品であることや、手工業的であること、またその製造技法や、原材料、歴史の有無などの指定要件を満たした上で経済産業大臣に認可されたものを指します。
美濃焼の歴史
美濃焼のルーツは平安以前にまで遡ります。
かつて朝鮮半島から伝わった須恵器の技術が、平安時代に植物の灰を用いた釉を施した白瓷と言われる陶器となって発展し、鎌倉・室町時代には釉をかけない山茶碗、黄褐色や黄緑色の釉でおおった古瀬戸、酸化鉄を含む鉄釉と広がって焼かれていきました。
室町時代には、大窯とよばれる単室の窯もでき、さらに岐阜県の東濃を中心に焼き物作りが盛んになります。
その後、灰釉が改良され鉄釉によるあたたかい黄色が特徴の黄瀬戸が生まれ、桃山時代(天正年間1573〜1592)には黒釉を施した黒無地の瀬戸黒(天正黒)が生まれます。
この頃になると織田信長や豊臣秀吉などの戦国大名や、千利休や古田織部などの茶人によって、茶の湯が流行し茶陶の世界が生まれます。
彼らのような有名茶人たちの好みを反映し、灰釉に長石を加えた釉薬で焼かれた「灰志野」、長石釉だけ作られた「志野」などが作られるようになりました。
長石はほとんどの岩石の中に含まれている鉱物で、大半は白色をしています。
しかし中には色のついたものあり、ムーンストーンと呼ばれる宝石を含むサニディン、準貴石の扱いを受けているサンストーンを含む灰長石など、成分や種類別に希少なものから、歯磨き粉に使われているようなものまで多種多様に存在しています。
志野の後は、古田織部の指導によって日本初の筆書き文様で斬新なデザインの「織部」が生まれます。
織部焼の誕生背景には、当時の中国から伝来し唐津焼の製法として採用されていた連房式登窯の導入や、唐津文様との類似点からの影響が推測され、1989年の発掘調査から、主に当時の都であった京都で流行っていたことが伺い知れます。
織部以降は、江戸中期に長石を加えた釉薬を施し、それとともに、素地を型にはめて製造する型打ちに加え、かたどった文様を貼り付ける貼付文で作られた「御深井」を経て、江戸末期に始まる磁器の生産から現在の一大窯業地としての美濃焼へと発展しました。
美濃焼の種類~使用される土・釉薬~
土、釉薬に触れながら美濃焼の伝統的工芸品指定15種を紹介します。
美濃焼はどこで入手できるの?
土 岐市美濃焼まつり
毎年5月のゴールデンウィーク頃に、岐阜県の東濃地方の土岐市で日本三大陶器祭りの一つの美濃焼まつりが行われています。
開催期間は3日ほどで、美濃焼の代表格の志野焼や、織部焼など様々な磁器製品がそろい、出店者は300を超えるそうです。
た じみ陶器まつり
土岐市美濃焼まつりと同様に、美濃焼が大特価で販売されます。
来場者は15万人を超えるお祭りで、毎年4月の2週目の週末と9月の2週目の週末に多治見市内で開催されています。
美 濃焼園
同園の工芸館では、桃山の美を現在に伝える焼物師の立場で造られた、伝統的な作品のみが収集され展示販売されています。
美濃焼の名品をお探しであれば、ぜひ足を運ばれることをしますオススメします。
陶 都創造館
一般的な日用品としての美濃焼や、若手作家の現代的な作風のものまで販売されています。
和食器、洋食器と幅広く取り扱いがあり、絵付け体験もできます。
織 部 本店
多治見市の美濃焼卸センターにある大型美濃焼ショップ。
広大なスペースに8,000を超える商品が並び、10月には蔵出しセールも行われています。
おわりに
長い歴史の中で、時代の流れや、トレンドの変化を経て現在に至る美濃焼。
名品を残した黒瀬戸や志野のような芸術品から、日常生活に欠かせないような磁器に至るまで裾野が広がって行きました。
しかし、その一方では資源である粘土不足が懸念されているようです。
今回の記事をきっかけに、少しでも美濃焼にご興味をお持ちいただければ幸いです。
実際に岐阜に訪れ、美濃焼を手にとってみて、今の美濃焼を感じてみるのも良いのではないでしょうか。
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