常滑焼とは、愛知県の知多半島西海岸の中央部に位置する常滑市周辺で作られている陶器の名称です。

鉄分を多く含む良質な粘土を原料として、古くから様々な焼き物が作られてきました。

昭和51年(1976年)には国の伝統的工芸品に指定されています。

常滑焼を代表する焼き物の一つとして広く知られているのが、朱泥しゅでいの急須です。

朱泥とは、鉄分の多い陶土を使って焼き上げられた焼き物で、滑らかな質感と温かみのある赤褐色が特徴で、常滑焼は「赤物」とも呼ばれます。

シンプルで美しく、耐水性・耐久性にも優れた常滑焼の急須は、全国的に高いシェア率を誇ります。

この急須という分野において、日本で初めて人間国宝に指定されたのが三代 山田常山やまだじょうざんです。

伝統的な朱泥や、暗灰色を帯びた烏泥うでい、自然釉、窯変を目的とした南蛮手なんばんでなど、多彩な急須を作り出してきました。

平成17年にその生涯を終えるまで、常滑焼の急須とともに歩み続けた陶芸家であり、遺した作品の形は100種類を超えると言われています。

今回は、伝統的な朱泥からモダンなデザインまで、豊富に揃う常滑焼の急須を厳選してご紹介したいと思います。

ぜひ急須選びの参考にしてみてください!


朱泥急須の傑作「三代山田常山 作 常滑朱泥 茶注」

人間国宝、三代 山田常山氏のお弟子さんである村越風月氏の作品です。

風月氏は常滑を代表する日本工芸会正会員の一人でもあります。

深みのある色合いで、重厚感のある佇まいながら、どこか素朴で温かみのある雰囲気を併せ持つ急須です。

中には陶器で作られた茶こしが付いています。

常滑焼の伝統美に加え、シンプルで実用的な機能美が備わっており、高価ではありますが、ぜひ手に取ってみたい作品です。

まろやかなお茶の味わいとともに、使うほどに艶と愛着の増す急須を、ゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。

これは便利!使いやすい!ふたなし急須「常滑焼 朱泥 ふたなし急須」

使いやすいと評判のふたなしの急須。

熱めのお湯で入れる番茶やほうじ茶、釜炒り茶などにオススメです。

茶葉の目詰まりをふせぐ幅広い茶こしの網と、湯切れのよい広い急須口で、快適な使い心地が実感できます。

また、急須上部のアーチ状の大きな押さえは、茶葉がこぼれない設計になっているので安心です。

さらに、ふたがないので茶葉が捨てやすく、洗いやすいのもポイント。

リーズナブルな価格で毎日気軽に使いやすく、プレゼントにも最適です。

煎茶椀で2~3人分入れられる扱いやすい大きさですが、温度が下がりやすいので、一度入れたお茶は飲み切るようにしましょう!

常滑焼の急須で淹れたお茶はおいしいって本当?

朱泥の急須の特徴は、滑らかで温かみのある色合いだけではありません。

常滑焼は、その陶土に含まれる酸化鉄とお茶のタンニンが反応し、渋みや苦みをまろやかにすると言われています。

ただし、流通しているすべての朱泥で作られた陶器に見られる反応ではなく、粒子が細かく、豊富な鉄分を含む良質な陶土に限られる効果です。

常滑焼の急須は、質の高い陶土を使用しているため、まろやかなお茶が楽しめるんですね♪

また、陶器の急須は吸水性に優れていますので、使えば使うほどお茶の味が急須へと染み込み、より深い味わいが出るようになります。

お茶の時間は可愛いネコと一緒に「柏陽 黒泥帯あみ急須(ネコ)」

ぽってりとした形の急須に描かれているのは、なんとも可愛らしい猫と小さな足跡。

手にするたびに笑顔がこぼれてしまいそう。

シックな色合いの素地には、黒泥を使用。

素地の淡い黒色がより柄が引き立て、高級感もあるので猫好きの方へのプレゼントにもオススメです。

急須の胴体とふたにはラインが入っており少しざらざらとした質感であるのに対し、持ち手と注ぎ口は滑らかな質感に仕上がっています。

茶こしはステンレス製の帯茶こし網。

急須の内側を一周囲むように張られており、茶葉が目詰まりしにくいのが嬉しいですね。

軽くて持ちやすく、紅茶や中国茶にもぴったりの急須です。

スタイリッシュな緑の櫛目模様「宇幸窯 黒泥 緑櫛目急須」

くし目模様があしらわれた上品な雰囲気が魅力的な逸品。

容量は280mlと、やや大きめサイズの急須です。

朱泥の急須を、「還元焼成」という酸素が少ない状態の窯で焼成する方法で、鉄分を黒く変化させています。

急須の内側全体に張りめぐらせているのは、帯茶こし網と呼ばれるステンレス製の茶こし網。

お湯の中で茶葉が十分に広がり、お茶本来の風味がしっかりと抽出されるのが特徴です。

この帯茶こし網は、急須の窯元である宇幸窯うこうがまが独自に開発したもの。

宇幸窯は昭和47年(1972年)の設立以来、急須などの茶器を中心とした常滑焼を作り続けている有名窯元です。

製品それぞれに適した土と素材を使い、原料作りから始まるすべての工程を、一貫して自社工房で行っています。

毎日使いたい!素朴で優しい風合いの急須「一心 さわやか茶こし急須(灰とばし)」

土の風合いを生かした滑らかな質感と優しい色合いが魅力の急須。

飽きのこないシンプルなデザインで、灰とばしの模様がアクセントになっています。

茶こしはステンレス製のきめ細かな「さわやか網」が付いており、深蒸し煎茶などの細かい茶葉にも適しています。

容量は290mlと小ぶりで、1~2人分が入れられる使いやすいサイズです。

実用性が高く、毎日使いたくなる急須です。

和・洋スタイルにもマッチするデザイン「常滑焼 富仙窯 手描き急須山ぶどう」

常滑焼の窯元「富仙窯」で作られた、山ぶどうが描かれた珍しいデザインの急須です。

一つひとつ職人さんが手描きで絵付けを行っているので、人の手の温かさが伝わってきますね。

あまり見かけることのない模様なので、贈り物にもピッタリ♪

和にも洋にも合わせやすいデザインの急須が1つあると、さまざまなシーンで使えること間違いなし!

おわりに

「常滑」という地名は、「常=床」、「滑=滑らか」に由来し、粘土層の露出が多い地盤(床)と、その性質が滑らかであったことからこの名が付いたと考えられています。

焼き物に最適な土に恵まれた地で、平安時代末期から一千年の歴史と伝統を築いているのが常滑焼。

日本六古窯にほんろっこようの一つとしても親しまれています。

古くは大型の壺や甕などが生産されていましたが、茶の湯や生け花用品、タイルや衛生陶器など、時代の流れとともに製品の形も移り変わってきました。

常滑焼を代表する急須だけでも、実にさまざまな種類がありますが、伝統的な製品だけでなく、気軽に使えるモダンな製品も人気です。

ぜひ、ライフスタイルの変化とともに発展してきたお気に入りの常滑焼の急須を見つけて、使うことで増していく機能的な美しさを実感してみてください。