藍染の歴史

日本における藍染めとは蓼藍たであい (蓼科の藍という植物)を使った染め物のことです。

蓼藍は東南アジア原産で古墳時代の終わり頃にシルクロードを通ってインド、中国、朝鮮を経て日本に伝わったのではないかといわれています。

日本の藍染めは江戸時代、現在の徳島県で盛んに作られました。

その色は鮮やかで深みのある藍色(青)。

明治時代、開国した日本に訪れた海外の人々は「ジャパン・ブルー」と賞賛したといいます。

絹、麻、木綿などの天然素材によく染まり、藍染めをしたものは消臭効果や虫除け、蛇除けの効果があるとされています。

着物などの衣類はもちろん、てぬぐい、のれん、寝具、教典など幅広いものが染められました。

藍染めは液に浸ける回数が増えると濃くなります。

日本人はごく薄い藍色を「水浅葱みずあさぎ」、そこから少し濃くなった緑色を帯びた青色を「納戸なんど」、「藍」を経てもっと濃い色を「搗色かちいろ」など伝統的な名前をそれぞれに付け大切にしてきました。

各地で藍染めの専門店「紺屋こうや」ができ、藍染め製品を製造していましたが、昭和初期になると人工的に藍色を染める技術が誕生。

時間と手間がかかる藍染め文化は減少していきます。

インディゴ・ジーンズの藍色も今はほとんど人工的に作られた合成染料で染められた色となります。

手間ひまがかかる藍染め液の作り方

藍染の液ができるまでは蓼藍を刈り取ってから4~5ヶ月かかります。

手順1

春に種を撒いた蓼藍を初夏に刈り取り、乾燥させ1.5cmくらいに刻みます。

手順2

葉に水をかけて高く積み上げ、むしろをかけて3ヶ月ほど寝床と呼ばれる建物の中で寝かせます。

その日の天気や気温を見ながら水をかけたり、撹拌するなど世話をすると高温になりながら発酵し湯気が立ちこめます。

この蓼藍が発酵した状態を「すくも」といいます。

手順3

蒅を染め液にするにはまず土中に埋められた藍甕あいがめなどに水、蒅、石灰や灰、小麦粉や糖、酒などを加え温度を30度くらいに保ちます。

微生物が働きだし更に発酵し堆肥のような匂いがしてくると1週間ほどで完成。

伝統的な紺屋の染め場では、火を入れる事ができる火壷ひつぼの周りに染め液が入った藍甕を並べ温度管理をします。

手順4

染め頃になると上部に泡が盛り上がり、染め時を知らせてくれます。

これが「藍の花が咲く」と呼ばれる状態。

そしてこの染め液を作る一連の工程を「藍建あいだて」、「藍をてる」と呼びます。

地域や職人によって藍建ての方法は異なりますが、最後は目や手で確かめたり、匂いを嗅いだり時に口に含んでアルカリ度を調べるなど、五感を使って見極めるといいます。

まさに職人技。

出来上がった蒅はそのまま染めに使ったり、水分を飛ばして固形にし「藍玉あいだま」にしたりします。

藍玉にすることで貯蔵ができ、遠方への運搬ができるようになりました。

そのため江戸時代にはこの藍玉が取引され全国各地の紺屋で利用されました。

むしろをかけて寝かせ、時に水をやり寝返りを打たせ、食べ物を与え温めて…まるで生き物を育てるように大切に大切に手間ひまをかけて藍染め液を作るのです。

染め方

天然素材の糸や布を染め液に一気に浸けます。

その後、染めたものをよく絞って空気に触れさせるようにジャブジャブときれいな水で洗います。

最初は黄緑っぽく見えますが、藍染め液が酸素と化学反応することでみるみるうちに青く染まっていきます。

さらに、繰り返し染めと洗いをすることで薄い青から濃く深い藍色になっていきます。

染めたくない場所を糸で縫い留めてから染め液に浸けることで、縫い留めた所が白いまま残り模様が浮かび上がります。

これが絞り染めです。

絵柄の切り抜き型を作り、布に型を合わせて糊を塗布。

それを染め液に浸けると糊がついた部分だけ染まらず白いまま残り絵柄が浮かび上がります。

これが型染めです。

ほかにも染める手法がいくつもあり、藍染めと一口に言ってもさまざまな表情が生まれます。

不思議なことに、この複雑で非常に時間がかかる藍染め液の作り方や、工夫を凝らした染め方は、現代の化学的な分析をすると理にかなっている方法であることが分かりました。

しかし、当時はそんな技術はありません。

ここまで辿り着くまでにどれだけ研究を重ね、失敗を糧に経験を積み、伝承されてきた文化なのかを想像するとロマンを感じます。

藍染めの今後

藍染めは無形指定文化財に指定されており、今でも全国各地で藍染め職人が藍染めを伝承しています。

しかし、かつて染めていた着物などのニーズは減少しています。

そのため、近年の藍染め職人の中にはスニーカーやTシャツ、バッグなど現代にも使いやすいものを染めるなど、時代の変化と共に新しい発想を加えつつ、藍染めの伝統を守りながら作品作りをしている方も多く見られます。

また、現代現代アートとして藍染めの手法を使うアーティストも出てきています。

藍染めの長い歴史や染めるまでの過程を知ってから作品を見ると、藍色がもっと深い色に感じられることでしょう。

藍染の作品を見られる場所

藍染めが盛んだった徳島県などでは藍染め博物館や体験をさせてくれる工房がいくつかあります。

実際に体験してみないと分からない匂いや手触り、藍色を体感しに行ってみてはいかがでしょうか?

徳島県の藍染体験ができる場所

【藍の専門博物館】
藍の館 ※藍染体験あり
徳島県板野郡藍住町徳命字前須西172

【阿波藍型染伝統技術保持者・香川卓美氏の工場展示場】
藍染工芸館 ※藍染体験あり
徳島県徳島市応神町東貞方字西川渕81-1

【無形文化財指定、国選定卓越技能章・古庄理一郎氏の工場】
古庄染工場 ※藍染体験あり
徳島市佐古七番町9-12