津軽びいどろとは

津軽びいどろとは、青森県指定の伝統工芸品であり、昔ながらの宙吹ちゅうぶき技法を受け継ぐガラス細工です。

舞い散る桜、華やかな夏祭り、美しい紅葉、厳しい寒さ。

日本の風景の一瞬を切り取ったような鮮やかな色彩が特徴で、その美しさに魅了されたファンは国内のみならず、海外からも高く評価されています。

津軽びいどろの歴史

津軽びいどろを生産しているのは、北洋硝子株式会社という青森県青森市にある硝子製造会社です。

その始まりは昭和24年(1949年)で、当時はびいどろ作りではなく漁業用の浮き玉製造会社として工場を構えていました。

数ある浮き玉工場の中でも北洋硝子の浮き玉は高品質だと評判になり、昭和48年(1973年)に生産高は国内トップになるほど。

しかし、昭和50年頃にプラスチック製の浮き球が生産されるようになると、今までのガラス製の浮き球は需要が激減してしまいました。

そこで北洋硝子は浮き球作りで培った技法を使い、花瓶やグラスなどの生活用品を製造するようになります。

無色透明の浮き玉に色がついたのはほんの偶然で、ある職人がふと、青森県で一番美しいとされる七里長浜しちりながはまの砂を原材料に加えたこところ、落ち着いた深緑色へ変化したのです。

ここから、色ガラス作りへ本格的に取り組みはじめ、昭和52年(1977年)に様々な意匠を凝らした津軽びいどろが誕生しました。

統工芸品としての津軽びいどろ

津軽びいどろが青森県の伝統工芸品に指定されたのは平成8年(1996年)。

津軽びいどろが誕生してからわずか20年弱という非常に短い期間で、びいどろ作りの技術を磨き上げてきました。

かつての浮き玉職人達の技術を引き継いだ伝統工芸士、新しい感性を吹き込む若手職人達、今もなお、津軽びいどろは伝統を受け継ぎながら新しい時代を切り開いています。

津軽びいどろの特徴

津軽びいどろには、見る者を引き込む不思議な魅力があります。

その魅力を作り出しているのは何か、特徴を見ていきましょう。

人技による均一性

一つひとつ職人の手によって作られる津軽びいどろは、型を使用しません。

しかし、型を使っていないとは思えないほどの均一性を保っています。

それを支えているのは伝統工芸士の職人達。

その一人であり、青森県伝統工芸士に認定されている芳賀清二はがせいじ氏による宙吹きの技術は特に高く評価され、若手宙吹き職人の憧れです。

細で豊かな津軽の色彩

津軽びいどろの色彩は、日本の四季のわずかな一瞬を見事に表現しています。

桜一つをとっても、朝の霞桜かすみざくら、満開の花吹雪、敷き詰められた花筏はないかだなど、その表情はさまざまです。

模様付けには色ガラスを用いており、その数は100種類以上。

色ガラスをここまで種類豊富に扱うのは、全国広しと言えど津軽びいどろ以外にありません。

付けは行わず色ガラスで表現

四季折々の鮮やかな色彩が特徴の津軽びいどろは、絵付けを行わず全て色ガラスを用いて表現しています。

溶け込むような淡い濃淡や、力強い模様は、全て職人の長年の勘によって形作られます。

津軽で生きる職人達が肌で感じた風景を切り取った繊細な色彩が、人々の心を掴んで離さないのです。

津軽びいどろの材料

豊かな四季や日本の風景を作り出す津軽びいどろの材料は、全てガラスでできています。

そのガラスの元となるものは、大きく分けて珪砂と色ガラスの二種類です。

砂と色ガラス

津軽びいどろの材料は主に珪砂けいさという砂です。

この珪砂を約1,500度の窯で溶かしてガラスのもとを作り、びいどろの種にします。

ある程度形作ったのちに、金属の酸化物を着色剤として使ったガラスである、色ガラスの粒をびいどろにまぶして模様を作り出します。

100色以上の色ガラスは全て北洋硝子調合の、門外不出のレシピです。

津軽びいどろの作り方

津軽びいどろは、現在は型を使わない手法と使う手法の両方を用いて様々な商品開発を行っています。

均一性のとれた彩り豊かなびいどろはどのように作られているのでしょうか。

を使わない「宙吹き」手法

津軽びいどろの始まりとも言うべき手法が、型を一切使わない「宙吹き」です。

宙吹きは紀元前1世紀頃から受け継がれてきた伝統技法で、ドロドロに溶けたガラスを吹きさおに巻き取り、息を吹くことで膨らませて形を整えます。

型を使わない分、自由に成形できますが、ほんの一瞬の息使いで形が変化してしまう非常に難しい技法です。

心力を利用して成形するスピン成形

スピン成形は、手作りのぬくもりを活かしつつ、安定した生産量を維持できる金型を使用した技法です。

金型に流し込んだガラスを、遠心力を利用して立ち上がらせて成形します。

ガラスを入れるタイミングや回転速度によってその形は異なり、均一な製品を作り上げるまでに様々な試行錯誤を乗り越えて、今の津軽びいどろがあるのです。

ンブロー

ピンブローは、棹にとったガラス玉にピンで穴を空け、濡らした新聞紙を差し入れることによって発生する水蒸気でガラスを膨らませる技法です。

コロンとした丸い形に仕上がるのが特徴で、滑らかな質感から女性に好まれる製品を作るのに適しています。

それもそのはず、津軽びいどろのピンブロー技術を支えているのは、館山美沙氏、牧野清子氏というベテラン女性職人です。

女性ならではの感性で、柔らかなフォルムや色彩を表現します。

らなる技術開発

北洋硝子では常に新しさを追い続け、技術向上と開発に日々励んでいます。

昔ながらの伝統を重んじる風習に、スピン形成が新しい風を吹き込んだように、その進化は留まることを知りません。

津軽びいどろのライフスタイルへの彩り

グラス、盃、箸置き、花瓶、オイルランプ、オーナメント…北洋硝子では先に述べたような技法を駆使してさまざまな商品開発をしています。

それらは日常の様々なシーンに豊かさと余裕を与えてくれます。

ターバックスコーヒーとのコラボレーション

スターバックスのJIMOTO made Seriesでも津軽びいどろが取り上げられ、青森県にある

・青森ELM店
・青森ラビナ店
・青森中央店
・弘前公園前店
・青森西バイパス店
・弘前さくら野店

上記の6店舗限定で販売されています。

「その土地」にこだわったJIMOTO made Seriesでの津軽びいどろは、日本の四季ではなく青森の四季をテーマに色彩が施されています。

雪解けによる春の喜びは、津軽に生きてきた職人達の人生そのものです。

国各地でギフトとして人気のペアグラス

お祝いギフトとして人気のペアグラスは、全国各地のインテリアショップやキッチン雑貨店でその姿を見ることができます。

ペアのデザインや組み合わせも自由に選ぶことができるので、贈り相手の好みに合ったグラスを選ぶ楽しみもあることが、津軽びいどろが人気である理由の一つでしょう。

ゴコロがオススメする津軽びいどろの花瓶をご紹介

下記の記事では、ワゴコロ編集部がオススメする津軽びいどろの花瓶をご紹介しています♪

おわりに

津軽びいどろは、誕生してから約40年という短い期間で築き上げられた工芸品です。

日本の夏に涼を呼び込むイメージの強かった「ガラス」を、1年を通して楽しめるように変化させてきたからこそ、発展することができたのでしょう。

たゆまぬ努力と向上心を持ち続ける津軽びいどろの職人達は、今でも新しい製品が開発し続けています。

津軽びいどろは、これからも発展し続ける日本が誇るべき伝統工芸品なのです。