「こけし」だけど「こけし」じゃない!?伝統に新風を吹き込んできた創作こけしの魅力とは
日本の民芸品として愛されてきたこけし。
そのこけしは、大きく二つのタイプに分けられることをご存知しょうか?
こけしといえば、江戸時代後期の文化文政時代(1804-1830年)あたりから、東北の土産物として作り続けられている「伝統こけし」が有名です。
宮城県の鳴子こけしや、作並こけし、遠刈田こけしなどが「伝統こけし」としてよく知られています。
一方、既成の枠にとらわれない自由な表現が特徴となっているのが「創作こけし」です。
こけし作家の個性溢れるもの、人気漫画のキャラクターをアレンジしたものまで実に様々な創作こけしが存在します。
海外からの人気も高く、日本を訪れた際にはこぞって買い求めるほどだといいます。
伝統こけしをベースにしながら、オリジナリティ溢れた創作こけし。
一体、どんなこけしなのでしょうか。
創作こけしの誕生と歴史
第二次世界大戦後の昭和22~23年頃(1947~48年)、東北地方で広まったこけし文化が全国に広まります。
それが「創作こけし」と「新型こけし」です。
伝統こけしの様式をルーツにしながらも、手に取りやすい「こけし人形」をはじめとした土産物を「新型こけし」、作家の個性が表現された芸術性の高いこけしを「創作こけし」と呼ぶことが多いようです。
これには諸説あり、両方をひっくるめて創作こけしと総称する説もあります。
また、東北の伝統こけしと対比させる名称として、「近代こけし」とする意見も聞かれます。
戦前から戦後にかけ、何度かブームを巻き起こしてきたこけしですが、2010年頃から「第三次ブーム」が来ており、海外からも「クールジャパン」を体現する商品として、こけしが人気急上昇中!いるといいます。そこで、今回はこれまでのこけしの歴史について、その成り立ちや由来、特徴にフォーカスしてみました。
本拠地は群馬県
戦後、群馬県や京都府などで創作こけしが作られ、売られるようになりました。
コマやけん玉など木の玩具の産地でもあった群馬県では、木工技術を持った職人たちがこけしづくりに進出していきます。
特に前橋市総社町のエリアは「創作こけし発祥の地」ともいわれました。
現在、日本で作られる創作こけしは6~7割が群馬県で生産されています。
全国一の生産量をになう群馬県は、まさに創作こけしの産地といえるでしょう。
創 作こけしならではの特徴、伝統的なこけしと何が違う?
創作こけしには、「これ」という決まりごとがないのが特徴です。
その形や彩色、モチーフは実に様々です。
絵付けに関しては、従来のように筆で描くだけでなく、彫刻やニクロム線(電熱線)で焼き付ける技法を取り入れた作家や工房も存在します。
作家が自由に作り上げるため、伝統的なこけしに少し変化を加えたものもあれば、「これがこけし!?」と驚くほどこけしらしくない作品もあるのが特徴です。
手足のあるこけし、映画やアニメの人気キャラクターをこけしにしたものもあります。
加えて、こけしの材料となる原木といえばミズキが知られていますが、群馬では他の木を使うこともあります。
それが桜やケヤキ、そして栗の木です。
栗の木の特徴といえば、なんとも美しい木目です。
その木目の素朴な雰囲気が、群馬の創作こけしにも生きています。
卯三郎こけし
卯三郎こけしとは、創作こけしの産地群馬県で、最大の工房を有するのが卯三郎こけしです。
ディズニーのキャラクターやミッフィー、ドラえもんなど子どもたちに大人気のキャラクターこけしが好評です。
群馬県のマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」のこけしも製作しており、そのオリジナリティには定評があります。
創業者である岡本卯三郎さんがこけしを手がけたのは昭和25年(1950年)のことでした。
伝統こけしの製法として知られる「ろくろ技術」や、筆による「絵付け」はもちろんのこと、手作業だけでなく特殊機械でのこけしづくりを取り入れました。
先に述べた、彫刻やニクロム線(電熱線)で焼き付けるという技法も開発していきます。
卯三郎氏の新しい作風は、これまでのこけしに立体感をもたらしました。
栗の木の木目にも注目し、こけしづくりに取り入れています。
創作こけしの見た目も、伝統こけしとは異なっています。
今までのこけしの丸い頭ではなく、おかっぱ頭で丸みのある胴体が卯三郎こけしの特徴です。
日本のかわいい女の子、わらしべをイメージさせ、日本に限らず世界中から注文があるほどです。
卯三郎こけしは、群馬県の榛名山麓に工場をかねた工房を構え、展示販売場や見学コースも有しています。
創作こけしの魅力を感じることのできるスポットとして、多くの観光客が訪れています。
現在注目を集めるキャラクターこけしは、3代目となる卯三郎の孫である岡本義弘さんを含めた若手職人が中心となり、生み出したもの。
こけし界に新風を吹き込み、若い世代のファンを獲得しました。
卯三郎(うさぶろう)こけしとは、スヌーピーなどの人気キャラクターとのコラボこけしで、若い人たちや海外の方からも大人気の、群馬県の創作こけしの工房です。この記事では、そんな卯三郎こけしの歴史や魅力を詳しく解説していきます。
キャラクターものが多い卯三郎こけし。ユニークな作品をご紹介
キ ャラクターこけし人気に火をつけた!ミッフィーこけし
銀座の松屋で開催された「ミッフィー生誕55周年展」で飾られたミッフィーのこけし。
卯三郎こけしの魅力を知ったミッフィーの商権を持つ企業からのオファーを受けて作られました。
群 馬といえば高崎だるま。幸福だるまこけし
手のひらサイズのだるま型こけしです。
紅白でそろえると幸福を呼び、運気アップにつながるかもしれません。
お ひなさまこけし
季節に合わせた卯三郎こけしも多数あります。
おひなさまのほか、干支やクリスマスのサンタさんのこけしも。
創作こけしの作家たち
若手から、ベテランの名工までさまざまな作家が創作こけしを手がけています。
その作風は実にさまざまです。
個性あふれる創作こけしの工人をご紹介します。
石 原日出男
大正14年(1925年)、東京生まれの創作こけし作家。
内閣総理大臣賞(全国こけし人形展など)をはじめ多くの受賞歴を持ち、その抽象的な作風、 一度見たら忘れられない作風が評価されている。
以前にセレクトショップのBEAMS(ビームス)から作品が復刻されたことも。
徳 丸えつこ
昭和31(1956年)年東京生まれ。
群馬県知事賞(全日本こけしコンクール)等を受賞。
絵柄がカラフルで緻密。
富 所ふみを
昭和23年(1948年)群馬県生まれ。
内閣総理大臣賞(全群馬近代こけしコンクール)など多数受賞。
洋風でモダンな作風が特徴。
東北の温泉地を中心に発展し、古くから日本人に親しまれてきたこけし。
こけしの起源には諸説あり、原型ともいわれる最古のものは、今から1300年以上前の奈良時代に作られていたという説もあります。
江戸時代後期には、子どもの顔や、さまざまな模様をほどこした木の人形が作られるようになります。
ここは外せない!創作こけしを知るスポット、イベント
「創作こけしって、どんな手触りなんだろう?」
画像で見るだけではなく、実際に創作こけしを手にとって、その感触を確かめてみたいものです。
そんな時は、創作こけしを知るスポットに出かけたり、イベントに参加してみませんか?
卯 三郎こけし
創作こけしの中でも有名な卯三郎こけしの工房には、一度は訪れたいですね。
群馬県北群馬郡榛東村長岡1591
TEL:0279-54-6766 FAX:0279-54-8684
※ 毎週水曜日は工場のみ休業、創作こけし工芸館・絵付け体験教室・売店は営業。
12月29日~1月4日は完全休業。
営業時間8:00~16:50(絵付体験教室の受付時間は、8:00~15:00)
全 国創作こけし美術展in渋川
コンクール形式ではなく、美術作品として創作こけしを鑑賞する展覧会。
毎年群馬県渋川市の渋川市民会館小ホールで開催されています。
創作こけし作家と話すことも可能な貴重な場。
絵付け体験教室も開催されています。
平成30年度は9月から開催、今年度は未定です。
渋川市教育部生涯学習課生涯学習係
群馬県渋川市石原6番地1
TEL:0279-22-2500 FAX: 0279-22-2132
伝統こけしとは違った魅力にあふれた創作こけし。
こけし界の新しい風はまだまだ吹き続けています。
お気に入りの作家さんを見つけて、ユニークな創作こけしを愛でてみませんか。
ふっくらした胴体に慎ましやかな表情…。日本の伝統工芸品の一つであるこけしは、私たちをどこかホッコリとさせてくれる郷土人形です。今回は、伝統こけしの中から遠刈田こけしの雑貨を、また創作こけしからは、楽しく可愛い卯三郎こけしをご紹介します!