伝統こけしが好きな方でも、山形にどういった系統の伝統こけしがあるのか、ピンと来ないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、山形県内の産地ごとの伝統こけしの特徴をご紹介すると共に、こけしを買えるお店やこけしに出会える温泉宿をご紹介します。
山形ならではの伝統こけしの魅力を知って、ぜひ伝統こけしを求めに山形に出かけてみてください♪
山形の伝統こけしとは?
宮城県に続き、2番目にこけしの産地が多い山形県には、蔵王系・山形系・肘折系の3系統の伝統こけしが存在します。
また、山形の伝統こけしは、こけしの三大発生産地(鳴子・遠刈田・土湯)から学んだ技術を融合した作品が数多く見られます。
では、山形の伝統こけしを系統別に、どういった特徴があるのかご紹介していきましょう。
皆さんは、「こけし女子」略して「こけ女」をご存知ですか?
こけしの第一次ブームは昭和の初め頃、第二次ブームは戦後の高度成長期に起こりました。
そして第三次が「こけし女子」を生み出した2010年からのブームです。
蔵王系こけし
蔵王温泉を中心に、山形市で主に作られてきた蔵王系こけし。
遠刈田系こけしの影響をうけて発達した蔵王系こけしは、グラマラスな胴体で豪華さのあるこけしとして知られています。
では、蔵王系こけしがどのように作られるようになったのか、その歴史をご紹介します。
蔵 王系こけしの歴史
山形県山形市の蔵王温泉で誕生した蔵王こけし。
もともと蔵王温泉には木地屋がなく、万屋を営む斎藤藤右衛門が遠刈田系の木地商品を仕入れて販売していました。
そんな中、木地商品の商売が繁盛していることを知った能登屋を営む岡崎栄治郎が、明治20年(1887年)に宮城県川崎町にある青根温泉の遠刈田系木地工人のもとへ修行に行きます。
修行後、栄治郎は山形県の蔵王にもどり木地業をはじめるのですが、これが蔵王系こけしのはじまりだといわれています。
栄治朗の作るこけしの売れ行きが上がると、ライバル店の万屋も青根温泉から木地工人を雇入れ、こけしの販売を行いました。
こうして、蔵王系こけしは遠刈田系こけしを起点としつつも、より豪華な作風となっていきました。
蔵 王系こけしの特徴・魅力
蔵王系こけしの特徴は、太めの胴体に三日月型の目、桜くずし模様や重ね菊模様といった豪華な絵柄です。
万屋や能登屋が職人を呼び寄せて互いに競い合ったことも、豪華なこけしが作られるようになった一因でしょう。
頭は差し込み式になっています。
その他、おかっぱ頭のこけしやくびれたウエストに帯をしめたこけし、頭頂部に赤い放射状の飾りが描かれたこけしなどがあります。
山形系こけし
主に山形市で作られてきた山形系こけしは、かつては子供がおもちゃとして遊んでいた名残の、小さい頭と細い胴が特徴です。
山形系こけしがどのようにはじまったのか、その歴史をご紹介します。
山 形系こけしの歴史
万延元年(1860年)に、作並の木地師に弟子入りした小林倉治が、後年、山形市旅篭町で木地業を開いたのがはじまりです。
こけしの産地は温泉にあることが多いのですが、山形系は例外的に、町の中心部で作られています。
小林倉治の実家が山形市旅籠町でお店を開いていたので、たまたま町の中心で作られるようになったと考えられています。
山形市では、日本三大こけしまつりの一つ・みちのくこけしまつりが毎年開催されます。
山 形系こけしの特徴・魅力
山形系こけしの特徴は、スリムでまっすぐな胴体であることです。
子供が掴んで遊びやすいように、細い胴体が主流でしたが、最近では置いたときに安定しやすいように胴が太目のこけしも増えていきました。
作並系と同じく頭は差し込み式で、頭頂部には赤い輪っかと放射状の飾りを描き、てっぺんから後頭部にかけて1本の黒い髪を描きます。
胴の上下にロクロで線を描き、その間に梅や牡丹、紅花などの花を描くことが多く、鼻は、「人」という字のような形(割鼻)をしたものが多いです。
肘折系こけし
もともと肘折温泉で作られたことから、この名がついた肘折系こけし。
現在では、仙台市でも作られています。
鳴子系譲りの太い胴と、肩の段、遠刈田系譲りの重ね菊模様などが特徴です。
肘折系こけしが生まれた背景をご紹介します。
肘 折系こけしの歴史
明治10年(1877年)頃、鳴子で木地業を学んできた柿崎伝蔵が肘折系こけしを作りはじめたといわれています。
その後、弟子の井上藤五郎が遠刈田で足踏みロクロの技術を学んで戻ってきたため、鳴子系と遠刈田系の影響を受けた肘折系こけしが誕生しました。
肘 折系こけしの特徴・魅力
肘折系こけしの特徴は、目が三日月型で、くちびるに黒い輪郭が描かれていることです。
一部、西洋人形のように目がぱっちりしたものや、黒いおかっぱのこけしもあります。
頭部は遠刈田系と同じく差し込み式です。
頭頂部には、遠刈田系のように手絡と呼ばれる赤い放射状の飾りが描かれており、胴はまっすぐで太く、肩に段が入っているものが多いです。
胴の柄は遠刈田系の影響が強く、重ね菊や撫子などの草花が描かれることがしばしばあり、胴は黄色に塗られているものもあります。
肘折系こけしの中には、子供のおもちゃだった名残で、頭に小豆が入っていて、音が鳴るようになっているこけしもあります。
山形の伝統こけしを満喫できる蔵王温泉こけしの宿「招仙閣」
山形のこけしについてご紹介しましたが、記事を読んで山形に行ってみたくなった!という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方には、館内でもこけしを目いっぱい堪能することができる、「招仙閣」がオススメです!
伝 統こけしの宿 「招仙閣」とは?
蔵王温泉にある「招仙閣」は、こけし工人・岡崎栄治郎とともに蔵王高湯系こけしを確立した工人・斎藤松治がはじめた宿です。
素泊まり中心の家庭的な宿で、廊下などには約2,000本のこけしが展示されています。
源泉かけ流しが自慢の「こけしの湯」では、浴槽の脇に立つこけしを見ながら入浴することができますよ♪
伝 統こけしの宿 「招仙閣」の楽しみ方
「こけしの湯」は別名・姫の湯と呼ばれ、お肌がすべすべになる美肌の湯として知られています。
お風呂で使ったオリジナルのこけしタオルを、お土産として持って帰るのも良いですね。
山形で伝統こけしを販売している、オススメのスポット♡
山形に行ってこけしを見たら、家にもこけしグッズを持って帰りたくなってしまうかもしれませんね。
そんな方にオススメのお店をいくつかご紹介します。
欲しいものがいっぱいで、目移りしてしまうかも!?
蔵 王温泉商店会
こけし工人・岡崎久作が開いたお土産屋・能登屋と、蔵王系こけしを確立した一人である岡崎栄治郎の流れを組む、「能登屋 工房 栄治郎」があります。
商店会には参加していませんが、田中こけし屋で絵付け体験を楽しむこともできますよ。
尚 美堂
尚美堂は、山形市にある山形県内の工芸品を販売するショップです。
こけしは、南部系以外の有名工人の作品を取り扱っています。
エスパル店には、デザイン性あふれるこけし型のコマや、赤ちゃん向け玩具の“こけしのにぎにぎ”なども売っていますよ。
肘 折温泉 ほていや商店
ほてい饅頭で知られるほていや商店には、肘折系こけしを中心とした、すべての系統の伝統こけしが販売されています。
お店には店主が集めた貴重な歴史資料もあり、肘折について深く触れることができるお店です。
カ ネヤマ商店
肘折温泉にある酒屋さんで、こけし柄の日本酒のワンカップやこけしラベルの大吟醸酒など、酒屋さんならではのこけしグッズを手に入れることができますよ。
伊 豆こけし工房
山形県尾花沢市の銀山温泉にある、NHK連続テレビ小説・おしんに登場した「おしんこけし」を販売するお店です。
赤ちゃんと同じサイズの誕生こけしも作っています。
1,050円~こけしの絵付け体験も行っていますので、電話かFAXで問い合わせてみてください♪
鈴 木こけし工房
肘折温泉唯一の工人・鈴木征一さんのお店兼自宅です。
100年前とほぼ同じ形のこけしを現在でも買うことができます。
また、製作工場では征一さんによるこけし作りも見学することができますよ♪
おわりに
今回は、山形の伝統こけしの特徴や魅力についてご紹介しました。
温海温泉で作られている蔵王系や、仙台で作られている肘折系など、主な産地以外にも産地が点在しているのは山形こけしの特徴です。
山形では、眼がぱっちりしたものや、どことなくユーモラスなものなど、伝統こけしでありながら、個性にあふれたこけしに出会うことができます。
今回の記事を読んで気になった方は、ぜひこけしに会いに山形に出かけてみてください!
戦前から戦後にかけ、何度かブームを巻き起こしてきたこけしですが、2010年頃から「第三次ブーム」が来ており、海外からも「クールジャパン」を体現する商品として、こけしが人気急上昇中!いるといいます。そこで、今回はこれまでのこけしの歴史について、その成り立ちや由来、特徴にフォーカスしてみました。
東北の温泉地を中心に発展し、古くから日本人に親しまれてきたこけし。
こけしの起源には諸説あり、原型ともいわれる最古のものは、今から1300年以上前の奈良時代に作られていたという説もあります。
江戸時代後期には、子どもの顔や、さまざまな模様をほどこした木の人形が作られるようになります。
ほのかな酸味とやさしい甘さ、赤い宝石とも称されるさくらんぼの名産地として有名な山形県。そんな山形県では、何百年も前から受け継がれてきた技術で作り上げた、20品目以上の伝統工芸品が存在します。経済産業大臣によって山形県の「伝統的工芸品」として指定されている山形鋳物、置賜紬、山形仏壇、天童将棋駒、羽越しな布をご紹介します。
山形県尾花沢市にある銀山温泉は、昔ながらの日本の景色が広がる温泉街です。
大正時代から昭和初期に建てられた洋風木造建築の旅館が立ち並び、夕暮れになるとガス灯にオレンジの火が灯る風景に“大正ロマン”を感じることができます♪
今回は、銀山温泉で立ち寄りたい観光・グルメスポットをご紹介します!
「立石寺」は、山形県山形市に位置する通称「山寺」と呼ばれるお寺です。この地を訪れると、“おくのほそ道”の作者で有名な松尾芭蕉も感嘆し一句詠んだ、美しく雄大な景色に出会うことができます。この記事では、実際に立石寺を訪れたワゴコロ編集部員が、立石寺の歴史や各御堂、参拝方法、周辺の観光スポットなどをご紹介します♪