日本の伝統工芸品の一つである「曲げわっぱ」は、古くから受け継がれる伝統的な手法によって職人の手で一つずつ丁寧に作り上げられる非常に奥深いものです。

この記事では、曲げわっぱがどういったものかだけでなく、曲げわっぱの種類をご紹介します。

曲げわっぱとは

曲げわっぱとは、スギやヒノキを薄く切り、熱して曲げて作った工芸品です。

お弁当箱が5,000円〜1万6,000円するため安価ではありませんが、見た目の美しさから日常的に使う人も増えています。

現在は単なる工芸品ではなく「ちょっとおしゃれな日用品」として人気です。

材:スギやヒノキ、ヒバ

主な材料として、樹齢の長いスギやヒノキ、ヒバが使われています。

留める部分は金属や接着剤ではなく、樺や桜の木の皮が使われるのが一般的です。

曲げわっぱは木を丸めて作るため、木と木の重なる部分があります。

重なる部分をくっつけるために金属や接着剤を使うと周りの木に悪影響が出るため、木の皮で縫うように留めるのです。

に使われているか:お弁当箱が人気

人気なのはお弁当箱。丸型や楕円形、四角などの種類があります。

他にもパン皿や米びつ、おひつ、マグカップ、ぐい呑など様々な商品が作られています。

げわっぱの人気の秘訣:見た目の美しさと実用性

見た目の美しさで興味を惹かれる方が多いですが、実用性も高いのが特徴です。

天然の木材を使っているので吸水性が高く、ご飯やおかずが傷みにくいのです。

軽量で持ち運びが楽なのも嬉しいですね。

げわっぱを使用する時の注意点:カビないように丁寧に扱う

天然の木材を使っているため、カビないように丁寧に扱う必要があります。

具体的には洗剤を使わない、使用後はすぐに水分を拭き取る、湿気の多い場所に置かないなどの点に注意しましょう。

最近は漆やウレタンでコーティングされている商品も多いので、カビが心配な方はコーティングされた商品を選びましょう。

曲げわっぱの種類

田の大館曲げわっぱ

特徴白くて温もり溢れる天然の秋田杉を使用。秋田杉は日本三大美林(秋田のス
ギ、木曽のヒノキ、青森のヒバ)の一つに指定されています。現在は秋田杉
の伐採が禁止されているためストックを使用している状況です。
歴史平安時代(806〜1185年)から見られますが、商業として発達したのは江戸時
代(1615〜1868年)と言われています。天候の影響で農作物が育たず仕事が
無くなった時に農民や下級武士の副業として推奨されたことが普及のきっ
かけです。
明治時代(1868〜1926年)には30社400人ほどが曲げわっぱを作っていました
が、現在は8社30人ほどに減少しています。
作り方木の切り出しや乾燥から数えると1年以上かかります。手順は下記の通り。
・木を切る
・お湯で温め、曲げる
・1週間〜10日ほど乾燥させる
・桜皮でとじる
・組み立てて、ヤスリで整える
価格帯・丸いお弁当箱:8,000〜1万円前後
・おひつ(五寸):30,000円前後


大館曲げわっぱについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

森県藤崎町のひばの曲物

特徴大館曲げわっぱと同じく白っぽい曲物です。年輪も細かで伸縮性が少な
く、水分がしみにくいので硬いです。殺菌成分が強いので腐りにくいと言
われています。
歴史かつては青森市や弘前市などに職人さんがいましたが、石油製品の台頭に
より安価な製品が増え、ヒバの曲物の需要が減り、職人も減ってしまいま
した。
作り方下記の通りです。
・ヒバの切断
・木取り
・銑がけ
・曲げ
・シタぬき
・合わせ
・とじ
・ならし
・シタいれ
・足付け
・仕上げ
価格帯・お盆:2,000円前後
・まな板:5,200円前後


岡県静岡市の井川メンパ

特徴メンパとはお弁当箱のことを指します。大館の曲げわっぱや青森ひばの曲物と比べて茶色っぽいです。ヒノキに天然漆を塗っているので光沢感が強く、漆を塗り直せば何度でも使える丈夫な製品です。食べ物が腐りにくいという特徴があります。
歴史鎌倉時代(1185〜1333年)から作られ始めました。江戸時代(1615〜1868年)
には農民の生活道具ではなく、副業の生産物として作られるようになりま
した。井川の曲物に「漆塗り」の技術が加わり、現在の井川メンパが誕生
したと言われています。
作り方下記の通りです。
・ヒノキを3~4ヶ月乾燥させる
・お湯につけて柔らかくする
・「ころ」で曲げる
・型を作る
・2~3日乾燥させる
価格帯・一段のお弁当箱:5,000円前後


野県塩尻市奈良井宿の木曽ヒノキを使用したメンパ

特徴ヒノキに漆を塗ったお弁当箱で、井川のメンパと似た色合いをしていま
す。きこりが「お弁当箱いっぱいにご飯をつめた」ことからメンパと呼ば
れるようになりました。

軽い・蒸れない・洗いやすい特徴が人気で、重量は約225g。そもそも漆塗
りが有名な地域なので、メンパ以外にも蒔絵や箸もセットで売られること
があります。
歴史江戸時代(1615〜1868年)に漆塗りや曲物文化が発達し、一次産業の副業と
して収入を得る人が増えました。
作り方下記の通りです。
・ヒノキを蒸す
・曲げる
・桜の皮で留める
・漆で塗り重ねて拭くことを繰り返す
価格帯・小判メンパ(一段):8,000円前後
・小判メンパ(二段):1万円前後


重県尾鷲市の尾鷲わっぱ

特徴ヒノキを使った丈夫なお弁当箱です。ヒノキは柱としても使われるほど丈
夫で、「丁寧に使うと尾鷲わっぱは100年持つ」と言われています。見た目
は井川メンパや木曽ヒノキのメンパに似ていますが、伝統工芸品のお弁当
としては珍しく「電子レンジ可能」な製品です。
歴史明治20年(1887年)から現在の方法で作られており、山で働く男性たちのお
昼ご飯用として使われてきました。
作り方45の行程を経て仕上げられています。木の手入れから漆塗りまで一人の職
人が手作業で作るため、一つのわっぱを作るのに1ヶ月かかるのです。
価格帯・楕円お弁当箱(二段):16,000円前後
・おひつ:30,000円前後
・三段重箱:80,000円前後


岡県の博多曲物

特徴スギやヒノキを使った白っぽい製品です。人気が高く、制作が追いついて
いない状態。400年以上にわたって曲物を作り続けている柴田家の女性職人
が有名です。
歴史400年以上続く歴史ある伝統工芸品です。
作り方下記の通りです。
・スギを1年以上乾燥させる
・木を裁断、加工する
・熱湯を使い曲げる
・桜皮で留める
価格帯・お弁当箱:6,000円前後
・おひつ:1~2万円


れぞれの曲物のまとめ

スギを使ったものは白っぽく、ヒノキを使ったものは茶色っぽく丈夫な特徴があります。

起源は平安時代〜鎌倉時代(806〜1333年)と様々ですが、商業として発展したのは江戸時代(1615〜1868年)であることが多いです。

100年使える丈夫な三重県の尾鷲わっぱがもっとも高級です。

Instagramによる曲げわっぱの人気

曲げわっぱは、一つひとつが高価なため工芸品としての色合いが強くなっていました。

しかし最近ではInstagramなどのSNSの影響もあり、普段使いのお弁当箱としての人気も高まっています。

特に約7万2千人のフォロワーを持つ人気インスタグラマー「みずかさん」の曲げわっぱレシピが人気を集めています。

おかずがこびりつくのを防ぐためにお弁当箱の内側を湿らせたり、油を使わない和食を多めにしたりと「曲げわっぱならではの工夫」も説明されています。

海外におけるBENTO文化

最近では海外にも「BENTO文化」が人気です。

きっかけは日本のアニメやマンガが人気になったためです。

特にフランスでは「コース料理のような豊かさ」や「時間がないときでも手軽に食べられる便利さ」などが注目されました。

農民の普段使いから始まり、副業としての工芸品を経て、再び普段使いとして人気を集めている曲げわっぱ(曲物)。

鑑賞するだけでなく実際に使用できるので、工芸品に馴染みのない方でも取り入れやすいですね。

曲げわっぱのお弁当箱を一つ使うだけで、日常が「丁寧な暮らし」になります。