着物や浴衣の着付けの仕上げともいえる帯結び。

しかし、一人で綺麗に結ぶのはなかなか難しく、悪戦苦闘しているうちに着物まで着崩れてきて……ということもしばしば。

今回は定番の名古屋帯をつかった「お太鼓」や、粋な魅力の「角出し」、そしてカジュアルな着物浴衣にも合わせやすい半幅帯はんはばおびの「カルタ結び」の、誰でも簡単にできる結び方を紹介します。

「結ばない」簡単な帯の結び方

帯結びが難しいのは、自分では見えない背中側で、後ろ手に複雑な形を整えなくてはいけないからです。

「前結び」といって、お腹側で形をつくってから、帯をぐるりと回す方法もありますが、回すときに着崩れを招くこともあり、私としてはあまりオススメしません。

そこで、私自身が日常的に採用しているのは、「先にお太鼓や角出しの形をつくってしまってから、ベルトのようにウエストに巻きつける」という方法。

「切らない作り帯」といった言い方をすることもあります。

必要なものは、針(布団針のような、長くて太い、丈夫なものが望ましい)と糸。

そして、「お太鼓止め」といわれるクリップ状の道具です。

また、「お太鼓」の場合のみ、ボリュームを出すため「帯枕」と「枕受け」が必要になります。さらに、必須ではありませんが、洗濯バサミがあると、仮止めに便利です。

あとは、ふつうに帯を結ぶときと同様、お好みの帯揚げと帯締めを用意してください。

要な道具リスト

✓ 針と糸

✓ お太鼓止め

✓ 帯枕と枕受け(お太鼓の場合のみ)

✓ 洗濯バサミ(あると便利)

✓ 帯揚げ

✓ 帯締め

名古屋帯の結び方〜お太鼓・角出し~

太鼓

まずは定番の、名古屋帯の「お太鼓」から、詳しい作り方を説明します。

名古屋帯とは、主にカジュアルなシーンで広くつかわれる帯(成人式の振袖や、結婚式の白無垢、子どもの結婚式に母親が着る黒留袖といったごくフォーマルな場面を除いて、たいていの場所で使えます)。

体に巻きつける部分から手先 まで、つまり帯のおよそ2/3ほど、幅を半分に折って仕立てられています。


※厳密には、地域や時代によって、手先部分だけ半分に折った「松葉仕立て」や、折らないままの「おそめ仕立て(『開き仕立て』とも)」といった仕立て方の名古屋帯もあるのですが、現在ポピュラーなのは、上の「名古屋仕立て」です。

「切らない作り帯」をつくる

まずはこの幅が半分になっている部分を、手先40cmほどを残して、長さを半分に折ります。

ちょうどタレ部分が上に伸びて、「┻」の形になっていれば正解です。

この状態で、中心部分(タレ部分と体に巻きつける部分が交差しているところ)を縫いつけてしまいましょう。

補強のために、何ヶ所か縫っておくとより安心です。

ちょうど三角の袋が表に出ていると思います。

ここに枕受けを差し込み、帯枕をセットします。そして、その上に手先を折り返します。

端っこを洗濯バサミで仮止めしておくと、あとの作業がラクになります。

これでお太鼓のベースが準備できました。

帯を装着する

次に、いよいよ帯を身につけていきます。

あらかじめ長さを半分に折っておいた、体に巻きつける部分をベルトのようにウエストに回し、両脇をお太鼓止めで固定します。

この時、あまりきつく巻きつけると苦しくなり、反対に緩すぎるとお太鼓が綺麗に仕上がりません。

下側はややきつめに、上側は帯揚げや帯枕の紐を収めるため、指二本を束にして差し込める程度の余裕をもたせると、ちょうどいいでしょう。

お太鼓の形をつくる

帯が体にセットできたら、お太鼓の形をつくっていきます。

帯枕の紐を結び、帯の中に隠します。このとき、結び目が鳩尾みぞおちに当たると痛みが出やすいので、脇の方にずらして結びましょう。

そして、帯枕を包むように帯揚げを被せて、鳩尾のところでふんわりと結びます。

帯揚げを装着

帯揚げを綺麗に結ぶには、少々コツがあり、まず帯揚げの幅を四つ折りないし五つ折りにして、端を緩く結んでおきます。

そして、中央部分を広げて、帯枕および枕受けを包むように被せます。

すると、帯枕を隠している部分は幅広に、体の前で結ぶ部分は四つ折りという状態になります。

帯揚げを体の中心部分で軽くひと結びしたら、上になった方を下に、下になった方を上にねじります。

あとは余った端を帯の中に隠し、帯の上から見える部分の形を整えましょう。

帯締めを装着

最後に、帯締めでタレを作ります。

体に巻いた帯の下線のラインに帯締めを当て、だらりと垂れ下がったタレをたくし上げます。

タレ先は、人差し指くらいの長さを残すとバランスが良いです。

ちょうどいい大きさのお太鼓が出来たら、帯締めを体の前で結びます。

帯締めの結び方はさまざまなバリエーションがありますが、もっともポピュラーなのは「本結び」です。

体の中心でギュッとひと結びしたら、今度は上下が逆になるように、もう一度結びます。

あとは余った部分を、巻きつけた部分に沿わせて重ね、体の脇でふさが上を向くように挟み込みます。

これでお太鼓は完成です!

仮止めに洗濯バサミを使った方は、忘れずに取っておきましょう。

出し

次に、ぷっくりと膨らんだ形が粋な「角出し」の作り方を説明します。

「角出し」は、「お太鼓」よりもカジュアルな帯結びです。

とくにしまや江戸小紋といった、粋好みの着物にぴったり! ちょっとセクシーな着こなしになります。

角出しの作り帯

ベースは「お太鼓」と同じで、帯の体に巻く部分を、手先40cmほどを残して、長さを半分に折り、タレと交差しているところを縫い付けます。

そして、タレの根元を手繰って、幅10cm程度の輪をつくり、端を縫い止めます。

この輪の中に、手先を入れ込み、リボンのように形を整えます。

帯を装着する

帯を体に巻きつけ、お太鼓止めで固定します。

それから、体に巻きつけた帯の上辺に沿うように、帯揚げを付けます。

このとき、タレの重さで帯締めがずり落ちてしまう場合は、ハンカチや手ぬぐいを細く畳んだものなどを帯揚げに挟み、ごく薄手の帯枕のようにすると、綺麗に決まります。

角出しの形をつくる

最後に、「お太鼓」よりもぷっくりとした「角出し」の形をタレでつくります。

体に巻いた帯の下線のラインに帯締めを当て、だらりと垂れ下がったタレをたくし上げます。

このとき、「お太鼓」のようにきっちりとした四角形ではなく、下膨れのようにラフにたわんだ形にすると、粋な感じになります。

タレ先は、やはり人差し指くらいの長さにしましょう。

体の前で帯締めを結んだら、「角出し」の完成です!

半幅帯の結び方〜カルタ結び~

半幅帯は、名古屋帯よりもさらにカジュアルな、軽装用の帯です。

浴衣に合わせる帯としてもお馴染みですね。

名古屋帯の体に巻く部分と同じくらい、約15cm幅で一定に仕立てます。

カルタ結びは、お太鼓と構造が似た結び方です。

名古屋帯と違い、タレが幅広でない分、すっきりとシンプルな形になります。

まず、55〜65cmほどタレを取り、「L」の字型に折り上げます。

そして体に巻く部分を、手先25cmほどを残して、長さを半分に折ります。

ちょうどタレ部分が上に伸びて、「┻」の形になっていれば正解です。

この状態で、中心部分(タレ部分と体に巻きつける部分が交差しているところ)を縫いつけてしまいましょう。

補強のために、何ヶ所か縫っておくとより安心です。

そして、その上に手先を折り返します。

折り返した手先を包むように、下からタレを巻きつけます。

タレ先を人差し指の長さくらい残すと、バランスよく見えます。

これでカルタ結びのベースができました。

を装着する

帯を体に巻きつけ、お太鼓止めで固定します。

そして、タレの輪の下、手先の上から帯締めを付けます。

これでカルタ結びの完成です!

おわりに

これら「結ばない帯結び」は、慣れたら5分で好みの形をつくることができます。

帯締めの結び方がうまくできないときは、三分紐と帯留を使えば、綺麗に本結びをする必要がありません。

この場合、本来なら結び目がくる体の前側に帯留がくるので、結び目は体の後ろ、お太鼓の中に隠れます。

ですから、解けてこないよう結びさえすれば、リボン結びでも、片結びでも、自由に結びやすい方法で結んでよいのです。

「ふだんは着物を着る機会がないけれど、この夏は浴衣に挑戦したい」といった方にもオススメですから、ぜひ試してみてくださいね。