漆器の作り方
漆器は大きく分けると「木地」、「下地塗り」、「中塗り・上塗り」、「加飾」の4つの工程で作られます。
その工程の中でも、素材や品質によってさらに種類があり、高価なものから安価なものまで分かれています。
まず、土台となる「木地」。
木地には木製、木質、合成樹脂の3種類があります。
1. 木製・・・トチ、サクラ、ヒノキなどの天然木
2. 木質・・・合成樹脂に木粉を混ぜたもので、合成樹脂よりも強く、木の質感がある
3. 合成樹脂・・・プラスチック
木製品は、まず天然木をチョウやナタを使って大まかな形を削り出します。
それから6ヶ月~1年程かけてじっくり乾燥させた天然木を使用します。
お椀のような丸い器は、天然木をロクロで回しながら、ミノなどの道具で削って形を作っていきます。
お盆や重箱、小箱のような角張ったものは、乾燥させた天然木を裁断して組み立てていきます。
一方で、木質と合成樹脂は金型を使って熱加工して成形していきます。
成形されたものには、金型の継ぎ目に「バリ」という樹脂の出っ張りができてしまいます。
ガサガサとして手触りがよくないため、専用の刃物を使ってバリを削り、滑らかにしていきます。
それぞれ専門の職人さんが丁寧かつ繊細な作業を行っていきます。
しかし、天然木を使用する木製品のほうが、乾燥や器の形作りに時間と高い技術が必要とされます。
「加飾」にも何通りか方法があります。
上塗りを施す前に金粉や銀粉で絵付けをし、その上から「透き漆」と呼ばれる透明な漆を塗ることにより、模様を浮かび上がらせる「白檀塗り」。
漆を塗り、乾燥したものの表面を木炭で研いでいく作業を何度も繰り返し、蠟のようなしっとりと深みのある艶を出していく「呂色」。
漆器の表面に漆を付けた筆で絵を描き、乾く前に金粉や銀粉を蒔いて模様を付けていく「蒔絵」。
蒔絵では、「梨地粉」と呼ばれる金粉や螺鈿を貼り付けた上から漆を塗り、表面を削って下にある梨地粉や螺鈿を削り出していく手法もあります。
そして、漆器の表面にノミで模様を削り出し、できた溝に漆を入れて金粉や銀粉を付着させる「沈金」。
このように、漆器が出来上がるまでには長い時間と洗練された確かな技術が必要とされます。
はじめにも記述しましたが、それぞれの工程でどのような素材を使うか、どのような技術と時間が必要とされるかにより、漆器の価値は大きく変わってくるのです。
しかし、値段が高ければいいというわけではなく、気軽に普段の食卓や生活の中で使用できるというのも大きなポイントなのではないでしょうか。
日本には漆器の産地が30近くありますが、中でも「山中漆器」は生産額が産地全体の70%を占め、日本一を誇ります。古くから木地挽物技術に優れ、高齢化が進む全国の産地から木地の注文がくることもあり、山中は木地の生産規模でも日本一です。
漆器は日本だけでなく、アジアの広い地域でみられます。中国の浙江省河姆渡遺跡から発見された、約7500~7400年前に作られた木製の弓矢に漆が塗られていたことから、これが最古の漆器とされています。
竹細工と漆器を合わせた総合芸術の籃胎漆器は、お盆や花入れ、お手拭き置きなど日常の道具として使われています。
とは言っても、籃胎漆器と知らずに使っている方も多いかも知れませんね。実は身近にあるけどあまり知られていない、そんな籃胎漆器についてお伝えします。