足袋(たび)は着物や袴など和装のときに足に履く衣類で、下着という位置づけで使われてきました。

昔から伝統的に日本で履かれてきた下駄や草履(ぞうり)などは鼻緒がの付いているため、これに合わせて足袋も親指のところで分かれる構造(指股)になっています。

足袋の素材は木綿布でできた物が多く、ソックスのような伸縮性がないため、ちょっとした弾みで脱げてしまうことがあります。

それを防ぐための部品として小鉤(こはぜ)という留め具が付いており、小鉤で足袋を足首に固定して使います。

このように、日本の和装文化の中で独特の形に作り上げられた足袋ですが、その歴史と起源、選び方についてご紹介します。

足袋の起源と歴史について

足袋の起源は中国で使われていた「襪(しとうず)」とされ、紀元前5世紀頃に日本に入ってきました。

襪は足袋のように親指で分かれておらず、靴下のような形状をしていて足首を紐(ひも)で結ぶのが特徴です。

平安時代の貴族は、「浅沓(あさぐつ)」と呼ばれるスリッポンのような履き物を着用していましたが、襪は素足に履くのが通例だったようです。

つまり、襪が「下沓(したぐつ)」として使用されていたので、「したぐつ」が訛って「しとうず」と呼ばれるようになったと言われています。

これに対して、平安時代の後期に登場してきた武士は、単(ひとえ)の革(鹿革)を使って作られた「単皮(たんび)」と呼ばれる履き物を着用していました。

これは、現在の革靴に近い履きものですが、その呼び名からも分かるように「たんび」→「たび」と変化して行き、最終的に足袋になったとされています。

時代が進み11世紀の鎌倉時代になると、『宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)』の一節に「足袋」という文字が表われ、この頃に「足袋」という言葉が使われるようになったことが分かります。

ただし、ここで表現されている足袋は、動物の皮で作られた靴に近い履きもので、この頃にはまだ親指のところで分かれた形にはなっていません。

親指のところで分かれている現在の足袋のような形状になったのは、ようやく室町時代になってからのようです。

この時代以降、草履の普及が進みましたが、武士の世界では革製の足袋が普及していきました。

その当時、武士はわらじを履いていましたが、足が擦れて傷にならないために革製の足袋が好都合だったようです。

室町時代が終わり戦国時代になると、男性は革足袋や布製の小紋足袋、女性が着用していたのが布製の紫足袋というのが当時の習慣でした。

男性の場合の革足袋は、戦場での軍装としても使われていたようです。

革は、猿や熊、鹿の革が使われていたようです。

男性が使用していた革足袋では、素材の革が傷んだり劣化したりしないように松葉や糸を差した状態で燻(いぶ)したときにできた模様が柄とし使われていたようです。

一方、布製の小紋足袋の場合、布の素材に縞木綿の柄や松葉柄、麻の葉柄などが施されていました。

17世紀半ばに起こった「明暦の大火」がきっかけとなり、防火対策として羽織など革製の着衣の需要が膨れ上がりました。

男性の場合の革足袋は、江戸時代でも主流として使われていましたが、この大火が契機となって、革の値段が上がったため革足袋は廃(すた)れていったようです。

一方で、安価な布素材、特に木綿を使った足袋が履き心地がよいこともあいまって普及していきました。

この頃、武士が礼装のときに履くのが白足袋、町人の場合には紺足袋というのがしきたりでした。

白足袋を礼装時に履くというのは、現在でも取り入れられている考え方です。

17世紀の終わりから始まる元禄の頃には、小鉤(こはぜ)という留め具を使って足袋を足首で固定する構造に改良されて行きました。

これは、中国から入って来た財布に施されていた爪からヒントを得たと伝えられています。

この形になって、やっと今の足袋に近い物に変わって来たと言えるでしょう。

足袋を着用するのは、江戸時代では主に武士と裕福な町人に限られていましたが、明治時代になると、足袋を履くと暖かいとか足袋はファッション的にかっこいいなどの理由から、広く一般庶民にも普及していきました。

足袋と言えば、草履や下駄など鼻緒が付いた履き物との組み合わせで着用するイメージがありますが、足袋そのものを屋外での履き物として使う「地下足袋」が作られたのもこの頃です。

足袋の選び方

足袋は素材としては木綿、特にキャラコと呼ばれる細かい織りの綿が多く、ソックスのような伸縮性がない分、履いたときのフィット感はまるでサポーターをしているようです。

逆に履いた直後は多少きつく感じるかもしれませんが、1~2時間も履いていれば自然と馴染んできて窮屈な感じはなくなるでしょう。

もし、足袋の専門店や試着ができる呉服店があれば、以下に挙げたポイントを参考に選んでみてください。

・小鉤(こはぜ)を嵌(は)めたとき、足首が緩すぎたりきつすぎたりしていないか
・小鉤の留め具は足の形に沿った形状になっているか
・履いた時にかかとに隙間ができたりしていないか
・足の幅や足の長さに対して足袋の底はちょうどよいサイズになっているか(大きすぎたり狭すぎたりしていないか)
・足の甲の高さに対して隙間ができたり、逆にきつすぎたりしていないか
・指先が余っていたり、逆にきつくて指が曲がったりしていないか

最近では、ストレッチ素材の足袋も出てきました。

柔らかくて伸縮性に優れとても履きやすいと人気を集めています。

ストレッチ素材の足袋は、値段的には割高ですが、足袋が苦手な方や足袋を履きなれていない方にはオススメです。

今身近な足袋

近年、足袋は健康グッズ等として見直され、日常的に使用するシューズや靴下(ソックス)として蘇り、活用されるようになっています。

それぞれ、どのような利点からどのように使われているのか解説します。

足袋シューズ

親指のところが二股に分かれていることから、従来のシューズよりも指を動かす自由度が増すため、地面をしっかりと掴む感覚が得られます。

そのため、転ぶリスクが減り、安定した歩行が可能になります。

また、足の裏を全体的に使って歩くことができるため、股関節が痛くなることや腰痛に悩まされることが少なくなります。

その他、冷え性を改善したり、外反母趾や偏平足、浮足を抑制、軽減など、健康面で大きな利点が得られる可能性があります。

このような利点から、長距離移動が必要なリゾート用のシューズや学校などの体育館用シューズ、外反母趾など足特有の問題を改善する矯正用のシューズとして使用されることが多いようです。

足袋靴下(ソックス)

足袋靴下は、親指だけ分かれた形にすることで足で地面を掴む感覚が得られ、安定した立位の姿勢を保つことができます。

そのため、特に運動する際、下半身を使う場面で能力を最大限に発揮しやすい靴下だと言えるでしょう。

また、親指と他の指が繋がっていないため、従来型の靴下よりも汗が吸収されやすく汗が原因の悪臭発生も軽減されるという利点があります。

さらに、洋装、和装のどちらで履いていても違和感がないため、装いの自由度が広がります。

このように、足袋靴下には従来の靴下にない利点が多く、近年、若い世代の間でも積極的に履きこなそうとする人が多くなって来ているようです。

おわりに

日本人なら、足袋を見たことがないという人はおそらくいないと思います。

それほど、日本の文化の中で、足袋は馴染み深いアイテムと言えるでしょう。

着物など、和服を身に纏う経験が少ない人でも、いざ身に着けてみると足元はソックスでは、様にならないと感じるのではないでしょうか。

和装には足袋は欠かせないアイテムであり、足袋を履いてこそ和装の魅力が引き立ち、和装ならではの落ち着いた自然な雰囲気を醸し出すことができると感じるはずです。