水やり(灌水かんすい)作業は、良い盆栽を育てる上で最も基本的な作業の一つです。

初心者におすすめの3つの灌水用道具を使って水やりを行うと、枯らすことなく生育の良い盆栽を育てることができます。

※水をそそぐことの意味。水やり

盆栽の水やりについて

盆栽の水やりは、目的を理解してコツを掴むと毎日楽しく行うことができます。

やりの目的

野山に自生している樹木や庭木などは、直接地中に深く根を張り巡らせているので、常に水分を自分で吸収することができます。

しかし、盆栽は鉢の中の限られたスペースにある水分だけしか吸収することができないので、水やりをすることによって生育に必要な水分を供給しなければならないのです。

盆栽は水やりをきちんと行っていれば、めったに枯れたりすることはありません。

やりのポイントと上手に水やりを行うコツ

盆栽の水やりは、個々の樹の状態や環境、植替え後、季節や梅雨時期に注意をして行うことがポイントです。

盆栽は、

・樹種
・大きさ
・樹勢
・鉢の大きさ
・鉢の深さ
・用土
・気候
・季節
・風通し
・陽当たり環境

などによって1日の水やりの回数や量が決まるので、毎日上げる水の量などは異なります。

また、植替え後の盆栽は樹木の根や枝などが切り詰められているので、水分の吸収もあまりよくないため、植え替え後はその点も留意して水やりを行いましょう。

植替え直後の盆栽に水やりをする場合は水をやり過ぎないように少し控えめに、しかし鉢土が乾燥しないようにと絶妙な水やりを目指してみましょう。

さらに、盆栽の灌水作業で一番難しい時期は、梅雨時期です。

梅雨時期でも雨が降らない日は、例え土面が濡れていても鉢底の部分は乾燥している場合があるので水やりが必要になります。

他にも、梅雨の長雨が続いていると水はけの良い場所に盆栽鉢を移して管理することで根腐れを防ぐことができます。

水が必要な理由

葉水とは霧吹きスプレーを使って直接葉に水をかけることで、生育の良い盆栽を育てるために必要な灌水作業です。

葉水は冬の寒い時期を除いて行いましょう。

特に、植替え直後の樹勢が弱っている時である初夏から盛夏にかけての夕方に行うことでより良い盆栽に仕立てることができます。

手に灌水を行うコツ

初心者が上手水やりをするコツは、主に6つあります。

1:日頃から鉢土の乾燥具合を観察し、鉢土はちどの土面が乾燥する前に灌水を行う

2:特に乾燥する盆栽には「拾い水」を行う

「拾い水」は盆栽の専門用語で、すべての盆栽に水をあげた後、特に乾燥する盆栽だけに再度水やりをすることです。

3:鉢が深い盆栽は水やりを充分に行う

深い盆栽鉢は、水が底まで届いていなくても気づかないことが多いので、鉢底から水が流れ出るまで水を与えます。

4:雨が降った後でも再度灌水が必要な場合がある

雨によって鉢土の土面だけ濡れていても、鉢底まで雨水が届いていない場合があります。

一般的に、夏の夕立やにわか雨位では盆栽の鉢底まで雨水が届くことは少ないです。

5:冬の寒い時期でも水やりが必要

冬の寒い時期は、あまり水やりをする必要がないように思われてしまいますが、空気が乾燥していると鉢土も乾燥するので、水やりを行わないと盆栽が枯れてしまう恐れがあります。

6:厳冬の時期の水やりは午前中に行う

厳冬の時期は、灌水した水によって土面が凍ってしまうことがあるので、灌水作業は比較的あたたかな午前中までに行いましょう。

初心者におすすめの灌水道具3種

初心者におすすめの灌水道具は、「盆栽専用ジョウロ」、「盆栽専用のノズル付きのホース」、そして「噴霧器」の3種です。

栽専用ジョウロ

盆栽に水をやる際には「盆栽専用」ジョウロを使いましょう。

庭の草花などに水やりをするジョウロはハス口の穴目が粗く、出てくる水の勢いが強いため、樹を痛めたりしてしまいます。

しかし、盆栽専用ジョウロのハス口は穴目が細かく水が霧状に出るので、根株や枝葉を痛めることなく水を与えることができます。

盆栽用ジョウロにはプラスチック製やステンレス製、真鍮製などがありますが、初心者には銅製で作られたものがオススメです。

銅製のジョウロの価格は他のジョウロにくらべて高価ですが、作りが丁寧なので長く使うことができます。

また、竿が長く作られているの水がやりやすく、ハス口から出てくる水も優しくやわらかなものになり、樹を痛めることがありません。

しかし、プラスチック製のジョウロは銅製のものに比べて安価ですが、屋外で使うので劣化しやすく、1~2年ぐらいでひび割れが入ってしまいます。

銅製のジョウロを選ぶ際は、持ち運びがしやすい水量のものを選ぶと灌水作業がしやすいです。

栽用ノズル付きホース

初心者におすすめのホースは、盆栽用“ノズル付き”のタイプです。

特に盆栽用ノズルもジョウロと同じように銅製で作られたものがオススメです。

銅製ノズルはプラスチック製に比べて価格が高いですが、ハス口の穴目が細かく流れ出る水が柔らかいので、盆栽の樹木や枝などを痛めたりする心配がありません。

銅製ノズルには、水の勢いが強くまっすぐに出てくる「輪切り型」と、水の勢いが柔らかくて水が散水する「斜め切り型」の2種類があります。

そのため、盆栽用ノズルを選ぶ際は樹木や鉢の大きさや樹勢、気候などによって、その時期の盆栽の状態に1番合ったものを選びましょう。

霧器

噴霧器は主に葉水を与える際に使います。

樹木の大きさや盆栽の数によっても噴霧器の大きさは異なりますが、消毒用に使うものとは別にしましょう。

噴霧器は園芸店で市販されているハンドスプレーでも代用できますが、できるだけ盆栽専用の噴霧器を使って灌水作業をすると、樹木にも優しい散水をすることができます。

おわりに

毎日行う水やりは大変な作業に思われますが、日々美しくなっていく盆栽を見るのは楽しいでしょう。

また、水をあげたことによって濡れた盆栽には格別な趣があるので、灌水作業を楽しみながら良い盆栽を育ててみませんか。