「最も優秀なエリート錦鯉」は、体型・模様・色彩などがはっきりと表れて、総合的なバランスが良い “容姿端麗”の錦鯉です。

しかし、稚魚から成魚になる過程で「優秀なエリート錦鯉」は数匹しか残りません。

生まれた時は皆同じ「エリート候補」

生まれたばかりの錦鯉は、殆ど同じ墨仔ぼくしです。

成長過程で色、模様の出方、体型がどのように変化するのかわからないので、どの稚魚も生まれた時は皆同じ「エリート候補」です。

一方で、錦鯉は生まれてから3歳位まで色、模様の出方、体型などが変化するので、将来のエリート候補の錦鯉を見極めることは難しいです。

※墨色をした稚魚

エリート候補の錦鯉は品種の特徴がはっきりと表れ、痩せすぎず太り過ぎず程良いふくよかさがあり、曲がったり、切れたり、傷が付いたりしないで、元気に泳いでいるものです。

エリート候補の選別は体長が30㎝位になったらある程度することができます。

しかし、これらの基準を満たしている錦鯉の選別の判断は、意外と難しいです。

エリート錦鯉の基本は体型

「エリート錦鯉」の基本は体型ですが、さらに錦鯉の性別、質(色)、模様と斑紋、キワとサシなどの総合的なバランスも大事です。

錦鯉は、4~5年で大きくなり、平均して約50〜70年生きます。

体長が大きい錦鯉は1mくらいになりますが、ただ大きく成長した錦鯉がエリートというわけではありません。

エリート錦鯉の基本である体型には、5つのポイントがあります。

①肉付きが良い

品評会で高く評価されているエリート錦鯉は、胴の部分の肉付きが良くてふっくらとしていて健康的で泳ぎに力強さがあります。

一方、評価の低い錦鯉は、極端に太り過ぎたり痩せすぎたりしています。

②体型バランスが良い

左右の体型バランスが均等で横から見ても上反りになっていない錦鯉が、体型バランスの良い錦鯉として評価されています。

また、その中でも鼻の先端、背びれ、尾鰭(おびれ)までのラインが真っ直ぐでバランスが良く、体型の高さが低すぎず尾筒が細すぎないものが好まれます。

③ふっくらとした頭

頭の形は、重要な体型ポイントです。

良い錦鯉の頭は、ふっくらとしていて頭から尾までのラインが滑らかです。

逆に良くない頭の形は、角ばったり尖がったりしています。

④均等のとれた手びれ

手びれは、左右の大きさが対称で大きすぎず小さすぎず、均等がとれていることです。

また、背びれが裂けたり尖がったりしすぎていないことです。

⑤目、髭、口

目が飛び出さず、髭が4本揃い、極端に口が下の方を向いていない錦鯉が良い錦鯉です。

エリート錦鯉は病気がなく元気で奇形でない「雌」です。

「雌」は、胴の部分が太くてふっくらしているので重量感があるため、見栄えがする体型に成長しやすいです。

雄は、頭が大きい割には体型全体がほっそりしているので成長してもあまり見栄えがしません。

しかし、幼魚の時は泳ぎや成長が雌より早く美しいので、品評会に出品されやすい一面もあります。

性別は、大体体長が30㎝以上になると判断しやすくなります。

(色)

「質」は、錦鯉の体表に出ている色を意味します。

エリート錦鯉の質は、代表的な色である「緋」(赤色)、「白地」(白色)、「墨」(黒色)の3色がはっきり表れていて濃厚でムラがなく、どの色も均一で濃淡がないことです。

これら3色以外にも「黄色」、「茶色」、「緑色」、「青色」などがありますが、どれも色ムラがなく、明るい色で濃いものが好まれます。

様と斑紋

品種によっても異なりますがエリート錦鯉の模様は、前後左右のバランスが良く対称的なものです。

逆に模様が上半身や下半身だけ、あるいは片側一方に偏って出ているものは、好まれません。

斑紋は、1ヶ所に出ている連続模様より、複数ヶ所に斑紋が分かれて表れているものが良いです。

ワとサシ

錦鯉の「キワ」とは、頭を前、尾を後ろと見たときの左横と右横、後ろ側の三方です。

「サシ」とは、斑紋が現れている頭部周辺の前側の緋と白地の境界線のことです。

「キワ」と「サシ」は、錦鯉を1匹ずつ観察しながら“ゆっくり”観賞すると、初心者でもわかるようになります。

「キワ」

キワには、「カミソリキワ」と「ウロコギワ」の2つがあります。

「カミソリキワ」は、緋(赤色)と白地の境界線がカミソリで切ったような直線をしています。

「ウロコキワ」は、1枚ごとの丸みのある鱗(うろこ)に沿って緋と白地が分けられた境界線です。

エリート錦鯉は、どちらのキワもぼやけていないではっきり表れています。

逆に好まれないキワは、境界線がぼやけて滲んだりしていて、ガタガタしたものです。

「サシ」

サシは、頭部周辺部分の緋と白地の境界線で、地体(体)の鱗の下に別の色の鱗が差し込まれている状態です。

例えば、紅白の錦鯉の場合、白地の地体の鱗の下に緋の鱗が差し込まれて2色に重なっているので桃色です。

エリート錦鯉のサシは、色の濃さに関係なく均一に揃って成長し、次第に境界線が見えにくくなり、はっきりとわからないものです。

サシは頭部周辺なので、別名「前ザシ」とも呼ばれています。

エリート錦鯉の美しい時期は一生に1回

しさのピークは一生に1回!

一般的に錦鯉の“美しい”幼魚を購入して育てると、そのまま“美しい”成魚になると思いますがエリート錦鯉の美しさのピークは一生に1回で、それぞれの錦鯉によって異なります。

体型がまだ小さい時、あるいは80㎝位に成長した時に美しさがピークになる錦鯉もいます。

また、数年毎に美しさのピークがやって来たり、美しさが1年位、あるいは10年以上続いたりする錦鯉もいます。

そのため美しい錦鯉を購入してきちんと餌や管理をしても、成長するにつれて美しさが衰退したり、色や模様が理想通りに表れなかったりすることもあります。

また、購入時が美しさのピークである錦鯉を購入してしまい、せっかく飼育しても成長と共に美しさが消えてしまうこともあります。

長と共に美しさが長く続く錦鯉の選び方

成長と共に美しくなり、しかもその美しさが長く続くエリート錦鯉の選別は、専門家でないと難しいでしょう。

また、美しくなっていくエリート錦鯉とそうでない錦鯉は、両方とも飼育にかかる肥料や時間は同じなので経験豊富な専門業者や生産者に選んでもらった方が無難です。

もし、自分で美しい錦鯉を選ぶ場合のポイントは2つです。

①体型と体質の良い錦鯉を選ぶこと

美しさを長く保持している錦鯉は、体型と体質の良いものだけと言われています。

体型は生まれつきなので、後になって良くなるということはありません。

②輝きである“艶”がある錦鯉が良く、購入時に緋の色が真っ赤でないものが無難

既に真っ赤になっているものはすでに色が成熟しているので、それ以上の美しい緋を期待することが出来ません。

一般的に錦鯉の緋はオレンジ色から次第にピーク時の濃い赤色になります。

しかしながら、美しさを保持しない錦鯉でも良い場合は、斑紋や模様にポイントをおいて選ぶと無難です。

おわりに

短所のない優秀なエリート錦鯉も良いですが、短所があるから錦鯉の長所も引き立つので、“自分にとってのエリート錦鯉”を見つけてみませんか。

また、錦鯉の美しさのピークは一生に1回ですが、自分で選んで購入した「エリート錦鯉」には末永く愛情を注いで育てることが一番の「エリート“飼い主”」ではないでしょうか。