「ワンピース」「NARUTO」に続き、アニメの歌舞伎化の決定版となるか!?
最近「ワンピース」や「NARUTO」といった超人気アニメが次々と歌舞伎の舞台で上演されました。
「え!?歌舞伎でアニメ作品を演るの???」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、江戸の昔から当時のアニメ的作品である「人形浄瑠璃(現在の文楽)」を原作として、それを歌舞伎化することは行われていました(曽根崎心中などで有名な近松門左衛門は元々人形浄瑠璃の作者です)。
老舗の料理店の味はずっと同じものを頑なに守っていると思われがちですが、実は常に味を微調整し、バージョンアップを続け、年々変わりゆく現代人の味覚に合わせているのです。
伝統芸能である歌舞伎も同じこと。
常に新しい流れを取り入れ、新陳代謝をはかっています。
そのような流れの中、いよいよ宮崎駿監督、スタジオジブリの不朽の名作、「風の谷のナウシカ」が歌舞伎化されることになりました。
2019年12月、新橋演舞場で上演されます。
ナウシカを演じるのは人間国宝尾上菊五郎を父に、女優富司純子を母に持ち、歌舞伎界を二分する菊五郎劇団を率いる若きリーダー「尾上菊之助」。
至高の名作アニメが原作だけに、歌舞伎の名作として後世に残る作品になるのではないかという予感がビンビンして、今からワクワクが止まりません。
風の谷のナウシカとは
あらすじについてはご存知の方がほとんどだと思うので、簡単に。
「炎の七日間」と呼ばれる最終戦争により、文明が崩壊し、「腐海」と呼ばれる有毒の瘴気を発する森に覆われた世界が舞台です。
ナウシカは辺境の小さな集落「風の谷」の族長の娘で、人々から敬愛され、のどかに暮らしていました。
そのナウシカが2つの大国トルメキアと土鬼(ドルク)の争いに巻き込まれながら、腐海が汚染された環境の浄化のために存在すること、そして現在の人類がその浄化のために作られた人工生命体であることを知り、悩みながらも戦って行くというのがテーマとなっています。
原作漫画の全てを上演
風の谷のナウシカの映画は、原作の単行本全7巻中第2巻の途中あたりまでのストーリーのため、ナウシカ達を人工生命体として作り上げた旧文明との決別という部分には触れられていません。
しかし今回の歌舞伎化では原作漫画の内容が余すところなく表現されるとのこと。
これは非常に楽しみですね。
アニメの舞台化という構造は江戸時代からあった
人 形浄瑠璃の歌舞伎化
冒頭でもお伝えした通り、アニメを舞台化するという試みは江戸時代からありました。
当時歌舞伎と同等かそれ以上の人気を誇った人形浄瑠璃のストーリーを歌舞伎化、つまり「実写化」したわけです。
現代の宮藤官九郎や三谷幸喜を凌ぐカリスマ劇作家だった近松門左衛門を始めとする人気作家達の浄瑠璃脚本は、歌舞伎になっても大人気を博します。
それと同じく、「ワンピース」「NARUTO」から「風の谷のナウシカ」という超人気名作アニメの歌舞伎化は、後世に残る人気狂言(歌舞伎の演目のこと)となるのではないでしょうか。
最近『ワンピース』や『NARUTO』といった漫画を原作とした新作歌舞伎が上演されています。
「あれ?歌舞伎どうしちゃったの?」「歌舞伎っぽくないね」という意見もありますが、実はこのような新たなものを取り入れる「活発な新陳代謝」こそ歌舞伎が400年にわたって生き残ってきた秘密なのです。
演 出はどうなる?
玉蟲が花道を通り、メーヴェで宙乗りか?
まだ上演が先なため、具体的な演出などは発表されていません。
しかし巨大な玉蟲(オーム)の群れが大ぜりで舞台上にせり上がり、ナウシカと共にオームの子供が花道を駆ける。
そしてメーヴェ(小型のグライダー)に乗ったナウシカが宙乗りで頭上を舞う。
といったように、様々な想像が膨らみ、興奮を抑えきれません。
主な出演者
尾 上菊之助(ナウシカ役)
可憐な女形を演じつつ、芯の強い二枚目役もこなす菊之助は、強い意志を感じさせるナウシカ役にピッタリです!
またその独特の清らかな透明感は、実在しない架空のヒロインを演じてもなんら不自然さを感じさせません。
歌舞伎界を二分する菊五郎劇団の若きリーダーとして統率力も抜群なので、「座頭」として歌舞伎版『風の谷のナウシカ』を必ずや成功させるに違いありません。
中 村七之助(クシャナ役)
昭和の名優十七代目勘三郎の孫であり、先年亡くなった平成の名優十八代目勘三郎の次男である中村七之助。
幼い頃から父勘三郎に厳しく鍛えられ、近年では兄勘九郎と共に「コクーン歌舞伎」や「平成中村座」の一座を率いて、若手のリーダー格として存在感を増しています。
一見冷酷ながら、実は自国のトルメキアの民の事を誰よりも強く思うクシャナは非常に難しい役ですが、必ずやこの難役を素晴らしく表現してくれる事でしょう。
尾 上松也
菊五郎劇団の名脇役だった尾上松助の息子と言わずとも、今や若手歌舞伎役者トップの人気を誇る尾上松也。
父譲りの長身と朗々と響き渡る美声、そして女形もできる涼やかな顔立ち。
人気が出ないわけがありません。
毎年新春に浅草公会堂で開催される「新春 花形歌舞伎」では中心となる座頭格で活躍。
今回の舞台でも一際輝いた演技を見せてくれるはずです。
坂 東巳之助
十八代目勘三郎と共に、これからの歌舞伎界の中心人物となるはずだった十代目坂東三津五郎を父に持つ坂東巳之助。
若くして父親を亡くしましたが、近年は古典歌舞伎の舞台だけではなく、スーパー歌舞伎II「ワンピース」でも大活躍。
その演技が認められ、「NARUTO」では主人公のうずまきナルトを熱演。大好評を得ました。
風の谷のナウシカではどの役を演じるのか楽しみです。
尾 上右近
清元の宗家である七代目清元延寿太夫の次男であり、曽祖父は大正・昭和期の名優、役者の神様六代目尾上菊五郎、そして母型の祖父は昭和の大スター鶴田浩二という芸能一家に育った尾上右近。
菊五郎劇団の女形として修行し、「ワンピース」ではケガで休演となった猿之助に代わり主役のルフィを見事に勤め上げました。
美観の女形がどのような演技を見せてくれるのか期待が膨らみます。
歌舞伎は江戸時代の慶長8年(1603年)出雲阿国が京都で「かぶき踊り」を始めたことに端を発すると言われています。400年以上の歴史を持つ日本の伝統芸能の一つで、音楽・踊り・芝居の要素を備えた総合芸術です。今回は、歌舞伎の歴史をわかりやすく解説し、歴史を作った代表的な役者たちを紹介します。
おわりに
アニメと歌舞伎がコラボして、世界から注目されないわけがない!
クールジャパンの象徴であるアニメと、日本の伝統文化の代表である歌舞伎がコラボして、世界中から注目されないはずがありません。
東京オリンピックを翌年に控え、来日する外国人が増加する中、大きな話題となることは確実です。
そして私たち日本人も不朽の名作アニメ「風の谷のナウシカ」を歌舞伎の演出で楽しむことができる。
こんなに胸が高まることは滅多にありません。
是非、劇場に足を運んでみてください。
「難しい」と思われがちな歌舞伎ですが、実はルールを覚えてしまえば非常に分かりやすいお芝居になっています。
というのも当時の歌舞伎は庶民の娯楽。しかも現代と異なり芝居中に食事をしたりお酒を飲むことも自由でした。
宴会をしながら観劇するようなもので、集中して観ているわけではないのです。
「若衆歌舞伎(わかしゅかぶき)」とは、未成年の男の子である“前髪”の美少年に女装をさせて舞い踊らせる形態の歌舞伎です。江戸時代初期、女歌舞伎の禁止後に盛んになるものの承応元年(1652年)に禁止されました。今回は、若衆歌舞伎の歴史から禁止に至った経緯、そして、現代の歌舞伎に通じる芸の中身について詳しく解説します。
劇場に足を運ぶのが難しい方は、映画館で映像を通して観る「シネマ歌舞伎」はいかがでしょうか。
シネマ歌舞伎でしか観ることができない歌舞伎俳優のドアップの表情も楽しむことができますよ!