尺八の作り方
尺 八の原料となる真竹の採集と熟成
尺八には真竹を使います。
楽器として使われる真竹はあまり水分をもっていないものが好まれるため、採集する時期は真冬の寒い時期です。
節の位置、太さや丸味、硬さ、色つやを吟味しながら選別します。
尺八の音色は、竹自体の性質に大きく影響されるため、その見極めは尺八のできあがりを左右する重要な部分です。
次に、採集してきた真竹を、火であぶります。
この行程で竹に含まれる余分な油分を抜くのです。
油抜きをするとともに、万力で歪みを矯正します。
自然の真竹は必ず曲がりがあり、真っ直ぐな真竹はありません。
真竹の根っこの部分にあたる株根は、鋸ヤスリをかけてバランスを見ながら形を整えておきます。
その後、真竹を熟成させます。良い音色の尺八を作るための重要な期間です。
まずは天日干しにし、十分に乾燥・熟成がなされるように、風通しのよい日陰の場所で寝かせます。
期間は職人によってさまざまですが、1年かける工房や職人によっては3年ほど寝かせるところもあるほどです。

尺 八の矯め直しからホゾ作りまで
十分に熟成させた後、尺八の製造に入ります。
まずは矯め直しです。
真竹の曲がりを再度調整します。
次に切断します。
尺八の吹く部分である唄口と、真ん中で取り外す部分である中継ぎの部分で切り離します。
また、真竹には内部に節があるので、真竹の株根の部分にあたる管尻から中継ぎ、唄口にかけてノミで節を抜き、鉋ヤスリで均等にならしていきます。
節はとても硬いため、骨の折れる作業です。
そして、尺八の上管と下管を繋ぐホゾ作りです。
下管の方にはノミで溝を掘り、ホゾ用のホゾ竹を挿入します。
このホゾ竹は音色に混じりが入らないように真円に仕上げられた竹です。
上管には下管としっかり合うような受けを作ります。
ここで下管と上管を擦り合わせながら調整します。
上管と下管を継いだときに緩まないようにしておかないと、内側に隙間ができてしまい息がもれてしまうからです。
尺 八の指孔あけから地付けまで
ここからは尺八の音色に直に繋がる部分の加工に入ります。
まずは、指孔空けです。
尺八には表面に4つ、裏面に1つの合計5つの孔があります。
この孔をキリや電動ドリルで開けていきます。
全ての孔が竹の中心の線から外れないようにしないと演奏に支障がでるため、慎重な墨入れ(下書き)と加工が必要な作業です。
そして、唄口の加工です。
唄口は、尺八の息を吹き入れる部分で、ノコギリとヤスリを使い斜めの面を形成していきます。
息が直接あたる部分には、黒い水牛の角で作ったはさみ口を埋め込んで補強します。
この部分は極めて薄い造りとなり、尺八の音幅、音色にもっとも重要な部分なので細心の注意が必要です。
尺八の外観があらかた形となってくると、次は尺八の内部の加工へと工程を移していきます。
唄口から管尻の部分までヤスリで再度真円となるように整えたら、漆と砥石の粉を水で混ぜ合わせた地と呼ばれるものを尺八の内部に塗っていきます。
地は、竹棒の先にのせ、平坦になるように丁寧に塗りつけていきます。
この地の配合の仕方で尺八の音色自体も変わってくるので、職人それぞれに工夫を凝らす部分です。

尺八の調律
地付けを一通り行い、尺八の内側全面に地を塗り終えたら、同時に尺八の調律の作業も行っていきます。
まずは、尺八を試し吹きし、ゲージとヤスリを使って内部を削り、また地付けをし、さらに試し吹いていきます。
尺八の音が正しく調律できるまで繰り返し行われる作業です。
尺八職人の長年の経験が試される工程でもあり、調律には職人の耳と手先の感覚、職人のすべてが求められる繊細な作業になります。
調律の過程は、尺八の音程を正すと同時に尺八の鳴りをよくする過程でもあります。
わずか数ミリ程度の削りの違い、地の塗りの違いで尺八の鳴りは変わってくるので、職人の技術が試される過程です。
調律が終了すれば、最後に尺八の内部に漆を塗って仕上げます。
竹棒の先に人毛製の歯ブラシのような筆を使い、真円となるように丁寧に塗っていきます。
尺八の音色は繊細なので、この最後の一塗りの後もう一度試し吹きをし、調律を見直す作業が必要です。

尺八の外観をしつらえる(整える)
実際に真竹を採集してから数年の時を経て、尺八製造の最終段階である外観のしつらえに入っていきます。
シンプルで重厚な尺八において、数少ない装飾といえるのは中継ぎの部分です。
装飾といっても頻繁に取り外す中継ぎの部分の補強の意味も持っています。
中継ぎの装飾は中継ぎ三線とも呼ばれており、銅板と銀線からできています。
まずは銅板と銀線をどちらも金属の棒を使って尺八の丸みに合うように叩きだしてから、ロウを使って接着します。
作成した銅板と銀線は、上管と下管それぞれにはめ込んで、今度は接着剤でしっかりと固定します。
その後、ヤスリや磨き粉で銀線に艶が出るように磨きあげ、籐を漆でまとめたもので巻き上げます。
ここまでくれば、後は尺八全体の仕上げです。
全体に磨きをかけたら漆で空拭きし、さらに磨きをかけていきます。
磨きあげるほどに、株の部分、そして胴体部分にも艶が増し、味のある尺八の外観ができあがります。
尺八は楽器としての側面の他に、工芸品としての側面もある上、外観の仕上がりは職人の技術を推し量る目安ともされているので、どれもきれいに丁寧に仕上げられています。

おわりに
尺八の音色は、このように数年の時を越え、職人の腕と技の粋があつめられて出来上がります。
真竹の姿かたちを活かしつつ、職人の技によって調律された尺八の音色は、まさに日本の伝統文化そのものです。
奥深い尺八の音色を聞きながら、裏になみなみと流れる伝統の厚みを是非楽しんでほしいと思います。

宮中音楽として使われはじめた「尺八」ですが、時代が流れると虚無僧(こむそう)の修行の一環として演奏されました。その音色は次第に一般の大衆へと広がりを見せ、現在では現代音楽とのコラボレーションも行われるほどに広がりを見せています。そんな「尺八」の魅力について、尺八とはなにか、その歴史を紐解きながら迫っていきます。

平成14年度より義務教育に和楽器の履修が必須となってから、尺八の音色は現在においていたるところで触れることができるものとなっています。
例えば、和風をテーマとしたコマーシャルのBGMとしてもよく耳にしますし、映画やドラマでもよく和の雰囲気を醸し出すツールとして採用されています。

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