海外の愛好家が増加した背景

錦鯉愛好家は、日本国内だけでなく、欧米やアジア地域の国々を中心に世界の約50か国に及び、現地には錦鯉の愛好家団体や親善交流団体などもあり、日本と同じように錦鯉の品評会が開催されています。

欧米やアジアの国々で錦鯉の人気が広まり、錦鯉愛好家が増加している背景には、FacebookやインスタグラムなどのSNSを通して錦鯉をの存在を知ったり、オンラインストアにて海外から日本の錦鯉を購入できるようになったことも影響しています。

インターネットを通して、海外の愛好家は現地に居ながら日本の錦鯉の情報をリアルタイムで得ることができるようになりました。

そのため、海外の愛好家と日本の生産者はお互いのコミュニケーションや売買交渉がしやすくなり、錦鯉の海外輸出量も増加しています。

また、業者ではない一般の外国人もSNSやネットを通して日本の錦鯉の情報に触れる機会も多くなったので、錦鯉の知名度も広がっています。

米国の錦鯉事情

鯉愛好家が多い背景

錦鯉愛好家は、米国(アメリカ)では約5万人いると言われていますが、その背景には2つの主な理由があります。

1つは、「鯉ガーデン」や「鯉ポンド」と呼ばれている錦鯉が泳ぐ池を自宅の庭に造ることが、現地でブームとなっていることです。

この「鯉ガーデン」が自宅にあると、不動産価格も3割くらい上がると言われています。

また、米国でスイミングプールは固定資産税の対象となりますが、この「鯉ガーデン」は対象とならないので税金の心配もありません。

もう1つは、錦鯉愛好家や流通業者を対象とした親善交流団体が全米各地にあることです。

米国の愛好団体や親善交流団体は、錦鯉の情報提供や交流だけでなく、「鯉ガーデン」の作り方や専門業者などの情報提供等も行なっています。

これらの団体の中には、錦鯉について勉強をするために図書館まで完備されている団体もあります。

んな人が錦鯉愛好家?

米国の錦鯉愛好家の多くは、一般的にストレスが多いとされている弁護士、医師、IT関係などの仕事に従事している人です。

このような愛好家の多くは、ストレスを解消したり、精神的な疲れを癒やしたりするために自宅に「鯉ガーデン」を作って錦鯉の観賞をしたり、錦鯉を通して異業種の人との交流を楽しんだりしています。

さらに、錦鯉愛好家の多くは犬や猫と同じようにペット感覚で錦鯉を飼っているので、自分の錦鯉に1匹ずつ名前を付け、それぞれの名前を呼びながら餌を与えています。

その名前も米国人の名前、日本の歴史的有名人の名前、日本語のユニークな固有名詞などが付けられています。

国の愛好家団体

米国の錦鯉愛好家団体で海外でも注目されている団体は、カリフォルニア州にあるThe Associated Koi Clubs of America (AKCA)です。

この団体は、”KOI USA (The Magazine for all KOI KEEPERS)”の季刊誌を発行しています。(”KOI KEEPER”は、愛好家だけでなく生産者や流通業者なども意味します。)

この”KOI USA”の季刊誌は、全米49州、カナダ国内の8州、欧州、アジア地域、南米、オーストラリア、カリブ海地域などにある国々24か国に年6回発行されています。

また、他にも全米各地には愛好家や流通業者の親善交流団体などが多数あります。

どの団体も錦鯉の飼育方法や勉強会、そして錦鯉に関係した様々なイベントを通して他の日本文化にも触れ、日本との交流にも積極的に行っています。

欧州の錦鯉事情

好家が多い理由

欧州に錦鯉愛好家が増加した理由は、錦鯉の輸入関税が低い国であるオランダやドイツを経由して欧州各国に日本から錦鯉が大量輸入されたことです。

また、近年、新しい空路の開拓により、錦鯉の輸送時間が短縮されたことも錦鯉愛好家が増加した理由の1つです。

性のあるおしゃれな池

欧州では錦鯉の愛好家だけでなく、その家族も一緒に錦鯉の飼育や観賞を楽しんでいます。

そのため例え錦鯉の池であっても個性があり、趣向を凝らしたおしゃれなタイプが多く、どの池も自宅と調和のとれたデザインでおしゃれに設計されているので、人と錦鯉が一緒にくつろぐことができ、ガーデンテラスとしての役割も果たしています。

欧州のおしゃれな池には、スタイリッシュで和洋折衷的要素を含まれていたり、池の縁周りに腰を下ろして錦鯉が観賞できる枠があったり、ドームの形をしたものなどがあります。

また、日本でも見られるコンクリートで作られた一般的な錦鯉の池でも、内側にシートを覆い、移動や修理がしやすい作りになっています。

さらに日本の農家さんが野菜作りで利用しているビニールハウスを庭の芝生の上に建てて、その中に池を複数つくり、雨天に関係なく家族でも楽しむことができる作りになっています。

アジアの錦鯉事情

鯉愛好家は富裕層

アジアの錦鯉愛好家は、欧米とは異なり富裕層に多く、お金持ちのシンボルとして錦鯉を飼っています。

また、中国では富裕層の間で錦鯉が商売繁盛や立身出世の縁起物として人気があります。

財務省貿易統計の「観賞魚輸出額推移」によると、近年、日本から欧米に向けての錦鯉の輸出額は減少傾向ですが、アジアの国々への輸出額は年々増加が続いているので、愛好家も増加することでしょう。

産者が期待している東南アジア

錦鯉生産者が今後期待している東南アジアの国々は、ベトナム、タイ、インドネシアです。

これらの国々では、経済発展に伴い、富の象徴として富裕層の間で錦鯉愛好家が増加しているので、錦鯉の市場拡大も期待されています。

また、東南アジアは日本に比べて気候が暖かいため、錦鯉が活発に動いて餌を沢山食べるので、成長も早く生育の良い錦鯉の誕生も期待できます。

10年ほど前、ベトナムの錦鯉販売店は2~3軒くらいでしたが近年では、30軒以上に増えています。

また、インドネシアでは日本の大手養殖業者と現地の養鯉場が、共同で日本の錦鯉の幼魚や成魚を販売しています。

タイでも同じように錦鯉の市場は拡大し、品評会も開催されています。

近年では日本の錦鯉に関心を持ち始めた“将来の愛好家となる”若者が増加しています。

かつての食用としての鯉が経済発展に伴い、観賞用としての楽しみ方も若者の中に浸透してきた背景があるのではないでしょうか。

おわりに

日本の錦鯉は、今日、“世界の錦鯉”として注目され、人気を増しています。

今後は日本だけでなく、海外の錦鯉愛好家も益々増加することでしょう。