おめでたいことがあれば皆で喜び祝う。

不幸があれば、相手に寄り添い悲しみを分け合う。

そんな日本の風習の手助けをしてきたのが「水引」です。それぞれの思いを込めるため、水引は色々な形で結ばれ、現代に引き継がれています。

今回は美しく情緒豊かな水引の文化をご紹介しましょう。

水引とは

和紙を細く切って、糸のようにねじり、紐状にし、さらに形付けしたものが「水引」です。

水引は冠婚葬祭の他にも様々なシチュエーションで使われ、贈り物や現金を包む際の重要なアイテムとなっています。

水引の種類と意味

水引の種類も大きく二つに分かれます。

一つはご祝儀や不祝儀(香典など)の時にお金を包む袋に付けたり、お中元・お歳暮の包み紙にかけるタイプ。

こちらは形式的なもので、最近は紙に直接印刷したものも一般的となりましたが、意味は同じです。

使い方を間違えると、相手に失礼になる場合がありますから注意しましょう。

主な3種類をご紹介します。

鮑結び(あわび結び・あわじ結び)
結び目が絡み合って、解こうとしても解けないのが「鮑結び」。「末長いお付き合い」の意味の他にも「繰り返さない」という願いも込められて、結婚の他に葬儀、病気見舞い、快気祝いなどの際にも使われます。
結び切り
別名「真結び」とも言われる固結びのことです。もともとは目上の方や改まった贈り物をするときに使われていたのが始まりです。
現代では鮑結び同様、結婚式や葬儀、病気や災害のお見舞いに使います。
花結び
「何度も結び直すことが出来る」という意味合いから、結婚以外の祝儀の時に使うのが「花結び」です。「蝶結び」とも言います。
お中元やお歳暮のかけ紙、お礼やご挨拶といった時にも使うことができます。不祝儀や結婚以外で、どの水引が良いか迷ったら花結びがよいでしょう。


もう一つの水引のタイプ。

こちらは具体的な形を水引で表現するものです。

日本には昔から、思いを物に託して相手に伝えるという文化がありました。

自然を愛する、神に感謝をする、相手の幸せを願うetc…

言葉で伝えられないものは、物に託され、それが水引の元にもなっていったようで、現代にも引き継がれています。

梅結び・松結び(吉祥文結び)
昔から使われている花文の一つが梅結び。厳しい冬を乗り越えた春に咲く梅の花は、人生と重ねておめでたい吉祥文として※1人々に愛されてきました。

※1 吉祥文: めでたいしるしの意味を表わした文様
同じ吉祥文としてポピュラーなのが、松結びです。一年を通して青々と茂る松の葉は、長寿延命の象徴となっています。
吉祥文をモチーフとした結びは、長寿のお祝い事や金封にも使われる万能の結びです。
御神酒結びおみきむすび
御神酒とは、神前にお供えする日本酒のことです。「感謝を込めて日本酒をお供えすることで神が宿る」とも言われる日本酒。これをいただくことで、ご神霊を身につけるという意味もあり、日本の儀式には欠かせないものなのです。
結婚式で新郎新婦が行う三々九度さんさんくどの盃や葬儀・法事法要の時に行う献杯、パーティや祝賀会での乾杯などの他にも、家を新築する時に神主さんを呼んで行う地鎮祭じちんさいでも使われる日本酒。そんな日本酒を飲む際の徳利とっくりの首に掛けたりして使われるのが、御神酒結びです。
鶴・亀結び
「鶴は千年・亀は万年」と言われるように、長寿のシンボルとなっているのが鶴と亀です。鶴は一雄一雌いっしいちゆう(どちらか亡くなるまで添い遂げる)と言われ、雄雌の仲が良いことから結納や結婚式の水引に使われます。
亀は卵を多く産むため、長寿だけでなく子宝の象徴と扱われることも多いようです。出産祝いや年長者へのお祝いを贈る際に添えると喜ばれます。


水引の色の違いによる意味

水引は様々な色があり、色によって意味が異なります。

水引で相手に思いを伝えるためにも、結びの意味と併せて覚えておきましょう。


水引も古い時代は白一色だったという話もあります。白は「神聖で汚れのない」という意味がありますが、最近は単体で使われることはあまり見かけなくなりました。

魔よけの意味があります。白と合わせた赤白の水引は、慶事の時の定番です。
水引で一番格上とも言われる色が金色です。銀色と合わせた水引を金封に使う場合は、安い金額を包む時にはふさわしくありません。5万円や10万円以上といった高額な場合が良いようです。
弔事で使われる黒は、※2黄泉の国よみのくにを表しています。黒は国際的にも弔いの意味があるので、不祝儀の時の色と言って良いでしょう。

※2 亡くなった方の魂が行く世界
金色とセットの時は祝儀の色となりますが、銀色一色の時は別です。銀色は薄い黒という意味・イメージとなり、不祝儀として使われますから注意しましょう。
関西や北陸の一部の地域では、黄色と白の水引は不祝儀の時に使われます。ただしこれは一周忌以降に使われることが一般的。葬儀や告別式は黒白の香典袋を使うようです。


おわりに

最近は和文化が見直され、世界各国で人気を集めています。

特に水引は、「繊細で美しく華やかなのに丈夫、素材は紙で環境に優しい」ということで注目されているようです。

和紙特有の凛とした美しさと、一度ほどいたら元には戻らないという儚さはかなは、水引ならではと言えるでしょう。

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最近は「水引アクセサリー」も増えてきました。

ブローチやイヤリングはもとより、飾り花と一緒にアレンジされた髪飾りは、華やかでありながら清楚な雰囲気があり「成人式」や「卒業式」に使われ、評判となっています。

水引は大切な日本の文化ですから、形や色の意味を踏まえて後世に伝えていきたいものです。