剣道とは?

剣道とは、剣道具を着用して一対一で向かい合い、相手の定められた部位を竹刀しないで打ったり、突いたりして勝敗を決める競技です。

日本の剣術にルーツを持つ伝統武術の一つで、勝敗だけでなく「礼に始まり礼に終わる」という礼節を重んじる武道の一つでもあります。

この記事では、その歴史や特徴、ルール、道具など、知っておくべき剣道の基本についてご紹介します!

日本の伝統文化と精神性を学べる武道

剣道は、刀を使った剣術をルーツとする、日本の伝統的な武術です。

長い歴史の中で、武術は“相手を倒す戦闘技術”から“自らの心身を鍛えるもの”へと変わり、「道を極める武道」と呼ばれるようになりました。

武道とは武士道に通じる精神を持つ運動文化で、稽古や試合を通じて心身を鍛え、自分に打ち勝つとともに、相手に思いやりの心をもつという、いわゆる「人間形成」を目指すものです。

剣術をルーツとする剣道もその一つで、相手への敬意や礼節を大切にしています。

そのため、試合においても結果だけでなく、その姿や精神性が求められます。

勝敗を決める1本も、相手より早く打突したというだけでは認められません。

その姿勢や心配りなども加わって、はじめて1本と認められるという奥深い競技なのです。


※武道:柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道の総称で、日本古来のものでない、武道の精神を持つ競技も含まれる。

道とは生涯楽しめる競技

剣道は、誰もがいつでもどこでも、生きている限り続けることができる“生涯スポーツ”で、60代や70代の現役剣士も少なくありません。

年を重ねて精神力を高めるからこそ、強くなれる部分があるのです。

また、剣道は運動文化には珍しく、子供からお年寄りまで幅広い年齢層の方々が一緒に稽古をすることができる競技です。

これは、剣道が他のスポーツに比べて体力差・体格差による影響が少ないこともありますが、精神性を重んじて、世代を超えて学び教えることを奨励しているからともいえるでしょう。

性別や年齢の違う方たちと腕を競いながら、いくつになっても学び成長できるのもまた剣道の魅力です。

剣道の歴史

防具をつけた「剣道」は江戸時代に始まりましたが、そのルーツは日本刀が登場した平安時代にまでさかのぼります。

その歴史を見ていきましょう。

平安~室町時代】刀の誕生から剣術へ

日本刀は今から約1200年前、平安時代中期頃に誕生したとされています。

それまでの大陸から伝わったまっすぐの直刀にかわり、「反り」と断面がひし形になった「しのぎ」を持つ片刃の日本刀が生まれました。

やがて室町時代になり戦乱の時代に入ると、剣術は高度化し、専門化された技術や精神性の違いにより、それぞれ流派(グループ)が作られるようになりました。

念流ねんりゅう」、「新當流しんとうりゅう」、「陰流かげりゅう」などをはじめとした、数百にも上る流派が生まれています。

江戸時代】剣術から生まれた剣道

本格的に剣道の原型ができたのは、江戸時代になってからのことです。

戦乱の時代が終わり、平和が訪れた江戸時代には、以前よりも戦いの場が少なくなり、剣術は人間形成を目指す“武士道”へと変化していきました。

当時の剣術の稽古は、素振りや木刀での形式的な打ち合いが中心的で、誤って相手の体に当たれば、大けがをする危険が伴いました。

そこで江戸時代中期、直心影流じきしんかげりゅう長沼四郎左衛門国郷ながぬましろうざえもんくにさとが、頭を保護する防具である面と腕を保護する小手を考案。

縦割りにした竹に袋をかぶせた袋竹刀ふくろしない打突だとつ※1し合う「竹刀打ち込み稽古法」を確立しました。

これが、現在の剣道の原型となったと言われています。

やがて、一刀流中西派※2中西忠蔵子武なかにしちゅうぞうつぐたけが鉄の面や竹の防具を開発すると、より強い打ち込みが可能になります。

江戸時代末期には、現在と同じような四つ割り竹刀や革で作った胴などの防具が開発され、剣道を行う多くの道場が登場し、交流試合も盛んになりました。

なかでも、士学館しがくかん鏡新明智流きょうしんめいちりゅう)、玄武館げんぶかん北辰一刀流ほくしんいっとうりゅう)、練兵館れんぺいかん神道無念流しんとうむねんりゅう)の3つは「江戸三大道場」と呼ばれ、多くの人が各道場で腕を競っていました。

特に、玄武館の創始者である千葉周作は、竹刀を使った剣術の技を体系化・分類化した「剣術六十八手」を確立しました。

ただし、この頃の剣道は実際の戦いを想定したもので、名称も「剣道」ではなく主に「撃剣げっけん」や「剣術」と呼ばれていたようです。


※1 打突:打ち込んだり、突いたりすること。
※2 一刀流中西派:江戸時代中期に中西子定なかにしつぐさだが起こした剣術の流派。

現代】武道として発展

明治時代に武士階級が廃止されると、帯刀たいとうが禁止され剣術は衰退します。

しかし、明治28年(1895年)に剣術を含めた武術の振興を図る大日本武徳会だいにっぽんぶとくかいが設立されると、明治末期には撃剣が「剣道」という名で学校の教育科目に採用されました。

大正時代初期に流派が統一され、大正8年(1919年)には「剣術」や「撃剣」から、「剣道」という呼び名に統一されます。

第二次世界大戦後、日本は剣道の組織的な活動を禁止されるなど危機を迎えましたが、
昭和27年(1952年)に独立状態を回復すると、全日本剣道連盟が結成され、復興を遂げました。

今では剣道を含む武道が中学校の体育必修科目となり、義務教育にも盛り込まれました。

現在、剣道の有段者(段位を持つ人)は約200万人にのぼります。

なお、剣道の国際化も進み、昭和45年(1970年)には世界剣道選手権大会が開催されました。

国際剣道連盟には62の国と地域が加盟しており(2021年10月現在)、世界中で愛される競技となっています。


※帯刀:腰に刀を付けること。

剣道のルール

剣道は、相手の決められた部位に竹刀を打ち込み1本を取る競技ですが、その1本には細かなルールがあります。

ここからは、剣道のルールや基礎知識について詳しくご紹介します!

剣道では、面(頭部)・小手(手首)・胴(胸や腹)のいずれかを竹刀で打つか、喉(あごの下の喉当て)を突けば1本となります。

5分間の試合を3回行い、先に2本取ったほうが勝ちとなりますが、剣道の1本は単に打った、または突いただけで取れるものではありません。

審判が「有効打突ゆうこうだとつ」と認めて、はじめて1本となるのです。

有効打突とは、「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋はすじ正しく打突し、残心あるものとする」としています。

わかりやすくいうと、気合の入った大きな声と正しい姿勢を持って、決められた部位を竹刀の正しい位置で打ち(または突き)、打った後も油断せず相手の反撃に備える心を残す残心ざんしんがある打突であったかということです。

いわば「気・剣・体の一致」をもって、はじめて1本と認められるのです。

とにかく“当てただけ”という勝利があり得ないところも、精神性を大切にする剣道の考えが表れていますね。


※大きな声:剣道では、「めん」「どう」など打突部分を大きく叫びます。

剣道の基本姿勢と技

「礼にはじまり礼に終わる」と言われる剣道は、稽古や試合においても礼法を重んじる競技です。

剣道の礼には、正座した状態から礼をする「座礼ざれい」と、立ったまま礼をする「立礼りつれい」があります。

座礼には、「座る時は左足から、立つ時は右足から」という決まりがあります。

左足から座るのは、かつて武士が左腰に刀を刺していたため、いつでも右手で刀を抜きやすい状態に備えたことが由来なのだとか。

正座した状態から、両手を八の字型につき、頭を下げるのが座礼です。

立ったまま礼をする立礼は、試合の出入りなど相手に対する礼では15°、上座などへの立礼は30°の角度で頭を下げます。

稽古や試合で相手に立礼する時には、油断せずに相手から目を離さないようにすることが大切です。

踞(そんきょ)

剣道をやる上で覚えておかなければならないのが、竹刀を相手に向けて構えた状態で行う蹲踞そんきょという姿勢です。

相撲にもよく見られる動作ですね。

もともとは、貴人に対して敬意を示すための動作だったとか。

剣道における蹲踞は、対戦者への敬意が込められているとされています。

試合前、この蹲踞の姿勢をとって、審判の「はじめ」の号令で立ち上がり試合開始となります。

合の技

剣道の技には、「仕掛け技」と「応じ技」があります。

仕掛け技はこちらから先に仕掛けていく技のことで、打突を重ねる「連続技」、相手の竹刀を左右に払い、相手が乱れたすきに打ち込む「払い技」、身を素早く引いて打つ「引き技」などがあります。

一方、応じ技は相手が撃ってきた技に対してかわしたり、受けたりして返す技です。

相手の打ち込みを竹刀ですり上げてその隙に打ち込む「すり上げ技」、打ち込んできた相手の竹刀を返した勢いで打ち込む「返し技」、相手が打とうとした瞬間に先に打ち込む「出ばな技」などがあります。

剣道における段級位制の仕組み

剣道は段級位制をとっており、個人の技能や実力、修業期間を総合的にみて審査を行います。

上の段に上がるためには、「昇段(級)審査」と呼ばれる審査を受けて合格しなければなりません。

段位審査の前にある級位審査は、その場で実技を行い、剣道の基本が身についているかどうかを確認する審査です。

級位審査は一般的に一級から三級までで、数字の大きい方から小さい方へと上がっていきます。

また、地方自治体によっては四級以下を設けているところもあります。

段位審査には初段から八段まであり、数字の小さい方から大きい方へと上がっていきます。

剣道の昇段審査を受けるためには、年齢制限や修業期間といった条件があります。

初段 一級取得者で13歳以上
二段 初段合格後、1年以上
三段 二段合格後、2年以上
四段 三段合格後、3年以上

以後、七段までは修業期間の条件が1年ずつ長くなります。

八段は七段合格後、10年以上修行した者で46歳以上が条件となります。

まさに一生をかけて上に上がっていく「生涯スポーツ」としての醍醐味といえるでしょう。

昇段審査は、実技、日本剣道形、学科の3つで審査が行われます。

実技は試合形式で技術の習得度を審査するもので、日本剣道形は「太刀の形」を7本と「小太刀の形」3本の計10本の実演となっています。

なお、初段の合格率は約80%以上と言われていますが、段位が上がるにつれて低くなり、8段は約1%未満のことも多く、かなり厳しい審査になっているそうです。

剣道に必要な道具とは?

では、剣道をはじめるにあたり、どのような道具が必要なのでしょうか?

ここからは、剣道を行う時の服装や防具など、剣道に必要な道具を紹介します!

剣道着・剣道袴・手ぬぐい

剣道を行う時には、剣道着・袴・手ぬぐいを着用します。

上半身には剣道着、下半身にはひだのあるズボン形式の袴を着用します。

道着の主流は汗を吸収しやすい綿素材ですが、夏場の稽古などには乾きが速いポリエステル素材のものも人気があります。

袴は大きく分けて綿製とテトロン製の2種類があり、分厚く風格のある綿製はシワになりやすいため、初心者の方には洗濯機で洗えてシワにもなりにくいテトロン製がオススメです。

そして、手ぬぐいは、面をつける前に頭に巻くためのもの。

汗を吸い取ってくれるため汗が顔に流れるのを防ぎ、打たれた時頭部への衝撃を軽減する役割もあります。

竹刀

剣道で相手を打突するために使う竹刀は、4本の竹片を組み合わせ、つかつばをつけて日本刀のようにしたものです。

重量は軽く、弾力があり、振るとしなります。

中は空洞のため、腕のある方が面を決めた時などは「パン」という良い音が響きます。

竹刀は、比較的安価な「桂竹けいちく」、適度な柔軟性と硬さがあり割れにくい「真竹まだけ」、高価ですが折れにくく長く使える炭素素材の「カーボン」製などがあります。

素材は好みの問題もありますので、部活や道場の先輩に相談しながら実際に手に取って決めてみてください♪

なお、竹刀のサイズは、全日本剣道連盟で指定されている基準を満たすものを選ぶ必要があります。

例えば竹刀の長さは大学生と一般の場合、男女共に120㎝以下で、男性は重さ510g以上、女性は440g以上のものと定められています。

頭部と喉を守るために使われる防具が、面です。

顔の部分は格子状の金属の 面金めんがねで覆われ、喉の部分は突垂れと呼ばれる部位となっています。

頭部から肩にかけては面布団めんぶとんが広がり、頭部から肩を保護しています。

胴・小手・垂れ

胴は胸から腹、脇の下を保護するための防具で、腹と脇の下の部分は竹やグラスファイバーなどで作られています。

胴には刺繍飾りやカラーが入っているものもあり、個性を発揮しやすい防具です。

小手は左右の手から前腕までを守るもので、相手の竹刀から身を守りつつ、自身が竹刀をうまく扱えるように工夫されています。

こぶしの部分は革でできており、竹刀を握りやすいよう手のひらの部分には軟らかい革がついています。

垂れは腰回りに竹刀が当たるのを防ぐための防具で、3枚の大垂おおだれと2枚の小垂こたれでできており、大垂の中央には名前や所属団体などを記載します。

防具についてもっと知りたい方は、下記記事をご覧ください!

まとめ

剣道について、歴史やルール、道具についてご紹介しました。

剣道は日本古来の剣術から発展した武道で、武士道に通じる精神性を習得することができます。

道着を着て防具をつければ、おのずと気が引き締まりますよ!

一度取り組めば、生涯にわたって親しむことができるのも魅力の一つ。

皆さんも剣道を通して、日本の伝統武道に親しんでみてはいかがでしょうか?