「琴(コト)」とは?琴と箏の違いは?

「コト」は、和楽器の中で絃楽器の総称でした。「琵琶のコト」「琴のコト」「箏のコト」などと呼ばれ、それぞれの楽器の区別がされています。
こう書くと「えっ、琴と箏って違うの?同じものではないの?」と思われる方も多いでしょう。
そうです、「琴」と「箏」は違う楽器なのです。
確かに「琴」も「箏」も訓読みでは「コト」となりますが、音読みでは「琴」は「キン」、「箏」は「ソウ(又はショウ)」と呼びます。
「琴」は右手で糸を弾き、左手で絃を押さえて音の高低を調整する楽器です。
ギターをイメージするとわかりやすいかもしれません。
今ではほとんど目にすることも少なくなった「一絃琴」や「二絃琴」もありますが、中高年に人気と言われる「大正琴」も、こちらの「琴のコト」となります。
「箏」は絃のチューニングを柱という駒を使い最初に音を調律してから弾くのです。
音を高くしたり低くしたりすることは、この柱を動かすことで行います。
一般的に「コト」と呼ぶものは、この「箏」となるのです。普通に使われる「箏」の絃の数は13本ですが、最近は低音専用の「十七絃」や広範囲の音域を持つ「二十絃」も出てきました。
こちらもすべて「箏のコト」となります。
高校や大学の部活動「箏曲部」は、この「箏のコト」を扱うところです。
しかし、現在では「琴」と言うと「箏のコト」を示します。
「琴」と「箏」の字が混同しているようにも思えますがどうしてでしょうか?
実は、漢字には「常用漢字」というものがあります。
大正12年(1923年)に当時の文部省が漢字の数を制限する目的でつくられたものです。
新聞や公文書、法令や放送の字幕などでは、この常用漢字になっていないものは、できるだけ使わない様に、使う場合は「かな」をふったりして使っています。
常用漢字は小・中学校の授業で習うものと思うとわかりやすいかもしれません。
そして「琴」の字は中学校で習う常用漢字ですが、「箏」は常用漢字となっていないのです。
そんなことから、「箏」の代わりに同じ「コト」と呼ぶ「琴」の字が使われるようになり、段々と混同されるようになっていきました。
今では「箏」=「琴」となっているといっても良いでしょう。
ここでは「箏」の事を、「琴(箏)」で統一して説明します。
琴(箏)の歴史
琴(箏)の歴史は古く、奈良時代に唐から伝わってきたといわれています。
最初は宮中で行われる雅楽の中で用いられる楽器の一つでしたが、平安時代になると貴族の教養の一つとして琴(箏)を演奏することが広まっていきました。
平安時代に書かれた「源氏物語」や「枕草子」にも「琴(箏)」の描写があります。
上流階級の方々に親しまれていた琴(箏)ですが、貴族の世界が衰退していくと、琴(箏)を奏でる人達にも変化が訪れました。
安土・桃山時代には僧侶の修行としても使われていくようになったのです。
やがて、浄土宗の僧侶「賢順」が九州にて「筑紫箏」という新しい箏曲を確立しました。
これが、現在私達が目にする「琴(箏曲)」のもとになっています。
更に時代が町人文化華やかな江戸時代となると、琴(箏)は更なる発展を遂げていくのです。
一番大きな特徴は「当道座」を江戸幕府が整備し、奨励・庇護していったことでしょう。
この「当道座」は、視覚障害者が属している職業集団です。
・検校
・別当
・勾当
・座頭
の順に地位が分かれ、いくつかの職業に付きました。
その中に「琴(箏)」もあったのです。
つまり「琴(箏)」は、盲人が演奏したり教えたりするのが基本で、健常者は習うことしかできないものでした。
江戸時代初期には「八橋検校」が、「六段の調べ」など様々な曲を作り出して人気を集めます。
やがて江戸中期になると京都で「生田検校」が、更に江戸でも「山田検校」が台頭して、現在の箏曲二大流派「生田流」と「山田流」を作りました。
生田流は四角い琴爪、山田流は楕円形の琴爪を使うのが特徴です。
明治時代になると、江戸幕府に保護されていた当道座も廃止されたことから、盲人以外も琴を職業とすることができるようになりました。
特に大正から昭和初期に活躍した「春の海」の作曲者であり、盲人でもあった「宮城道雄」は、洋楽と邦楽の要素を導入して、新しい日本音楽を作り出したといわれています。
現代では、オーケストラとコラボレーションすることも増えてきて、古典から現代曲まで幅広いジャンルを奏でる楽器として人気を集めています。
琴(箏)の魅力
「音楽が好きでも、楽器はなかなか演奏できない」そんな方も多いかもしれません。
何といっても五線譜が読めないことが、苦手の原因になることも多いようです。
そんな方に安心していただけるのが、琴(箏)の楽譜。
琴(箏)の楽譜の基本は、漢数字なので、漢字を13個読めて、その番号の絃を弾ければ良いのです。
チューニングがきちんと取れれば、綺麗な音が簡単に出ます。
シンプルに美しい音が出るのが、琴(箏)の魅力といえるでしょう。

この記事では、琴(箏)の弾き方(奏法
)をわかりやすく紹介していきます。「琴」は「箏」とも呼ばれる日本の楽器です。種類も色々ありますが、一般的なものは絃が13本あるタイプで、長さは182~183㎝と大きな楽器になります。最近は小学校や中学校の音楽の授業で体験することも増えてきました。
琴(箏)のはじめ方
琴 (箏)はどこで習うの?

最近は小学校や中学校の授業で、琴(箏)に触れる機会も増えてきました。
とはいっても、個人的に興味があるのなら、習ってみましょう。
一般的に、琴(箏)の教室はカルチャーセンターと個人教室の二通りがあります。
カルチャーセンター
HPなどで検索して、お近くの教室に問い合わせをしてください。
教室によって、グループ練習か個人練習に分かれます。
グループ練習なら、同じ趣味を持つ友達が増えて楽しくレッスンができるかも知れませんし、個人練習なら周りを気にする事なく自分のペースでできます。
個人教室
個人教室は探すのが難しい場合も少なくありません。
今の時代はネットで検索すれば大丈夫と思うでしょうが、琴(箏)の場合は高齢の先生も多いことから、必ずしも皆さんがHPを持っている訳ではないのです。
ネットで情報が探せなかったら、老舗の「呉服店」や「和菓子屋さん」に聞いてみるのも一つの方法でしょう。
着物と琴(箏)は切っても切れませんし、琴の発表会などを開催する場合は、紅白餅などの和菓子を配る習慣があります。
地方にある和文化の老舗店なら、他の業種のお店でも、どこに琴(箏)の先生がいらっしゃるか教えてくれることもありますよ。
琴 (箏)を習う時に必要なものは?

琴(箏)の練習で、まず揃えなくてはいけないのは「自分用の琴爪」です。
琴爪は右手の親指、人差し指、中指の3本に使います。
それぞれにサイズがあるため、自分専用のものが必要です。
素材はプラスティックと象牙があり、プラスティックは安く、象牙は高いですが、良い音色が出るといった特徴があります。
琴爪は消耗品ですから、「最初はプラスティック」「慣れてきたら象牙」に替えても良いでしょう。
もちろん自分の楽器があれば自宅でも練習ができますから、急がなくても良いので琴(箏)も用意してください。
先生に相談すれば、出入りの楽器店の琴(箏)を購入することも可能です。
最近はフリーマーケットやネットオークションでも琴(箏)が出品されるようになりました。
しかし、いくら安くてもダメージの大きな琴(箏)は、修理代が高くつく場合もありますから、慎重になりましょう。
一部が割れていたり、欠けていたりするものは要注意です。
スマホで撮影して、先生にチェックして貰えれば安心かもしれません。
おわりに
他の楽器と違って、楽譜も簡単に読めて、触れば綺麗な音のでる琴(箏)は、とても魅力的な楽器です。
「正座が苦手」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、最近の琴のレッスンは椅子で行う教室も増えています。
少しでも興味があるなら、地域の演奏会や近所の教室に見学に行ってみましょう。
新しい趣味が見つかるかもしれませんよ。

和楽器とは、古くから日本で演奏されてきた伝統的な楽器のことを指します。和楽器には日本固有の楽器の他、中国などの大陸文化の影響を受けて誕生した楽器もあり、その数は50種類以上。学校の音楽の授業でも、琴(箏)や太鼓に触れることはありますが、和楽器の歴史や魅力については意外と知られていません。