華道(生け花)の魅力
華道(生け花)とは、主に植物を用いて形作られる日本の伝統芸術です。
四季折々の草花を生けることを通じてその美しさを慈しむ「生ける楽しみ」と、作品を鑑賞する「見る楽しみ」があります。
華道を通して四季を味わったりわびさびを感じ取ったりすることで、日本の自然や文化を愛でることのできる特質を持ちます。
同じく植物を飾る芸術としては西洋のフラワーアレンジメントもありますが、フラワーアレンジメントは花で空間を埋め尽くしその華やかさを楽しむものです。
また、多面的に花を飾り、360°どこから見ても美しい花を正面から鑑賞することができます。
対して華道(生け花)は、主役となる花材と引き立て役となる花材をはっきり分け、時には枝や葉や藻も活用して調和したひとつの空間を作り出します。
流派に依りますが、その多くは鑑賞者の視点を決めた上で装飾をし、正面の決まった一面的な作品となります。
自然が生み出した植物の曲線や、一見寂しさを感じさせる植物間の隙間、アシンメトリーに美しさを見出すというのは日本で伝統的に育まれてきた感性であり、華道(生け花)に親しむことで日本の様々な伝統芸術に潜む魅力を見つけ出していくこともできます。
そんな華道(生け花)の流派ごとに異なる基本やルールが気になる方は、こちらの記事をご覧ください。
華道には多くの流派が存在しますが、その源流は一つとされており、互いに影響し合って発展を遂げてきました。よって流派は違えども基本的な部分で共通するところが多いです。この記事では、三大流派と言われている「池坊」「小原流」「草月流」に焦点を当て、初心者が知っておきたいそれぞれの基本の生け方やルール、違いを紹介します。
また、よく華道(生け花)と間違われがちな「茶花」については、こちらの記事で違いや学び方をご紹介しております。
茶花(ちゃばな)とは、茶道において茶席で飾る花のことを指します。さりげなく床の間に飾られている茶花も、その時期に見合ったものを通して四季を味わうということで、お茶席やお茶会の中でも重要な目的の一つとされます。なお、茶花のルールとして「禁花」と呼ばれる花は選ばれません。あくまでもささやかにお茶の席を彩る存在なのです。
華道(生け花)の歴史
華道(生け花)のはじまりは仏教伝来にさかのぼり、現代でも仏事などで用いられる供花が原点であるというのが有力な説です。
今広く知られている華道が大成したのは室町時代中期、京都の六角堂(頂法寺)の僧侶の供花からであると伝えられています。
六角堂にはその建立のきっかけとなった池があり、その池のほとりに建てられたことから池坊と呼ばれ、あの有名な華道の流派「池坊」に繋がっています。
当初の華道は神仏に供えられるためのものということで型が細かく定められているものでしたが、時代とともに自由に表現されるもの、見る人を楽しませるものとして変化していきます。
その大きな契機の一つとして、明治時代に西洋の文化や西洋由来の草花が輸入されてきた文明開化が挙げられます。
これによりそれまでは壺や瓶に生けるだけだったのが水盤という大皿のような器を用いる方法が考案され、西洋の花材を取り入れた生け方が産み出されたというものです。
このように時流に合わせて柔軟に変化を続けながら、華道(生け花)という芸術は現代においても発展を続けています。
現在では、「IKEBANA」として海外でも愛されるようになりました。
その魅力や背景を、下記の記事でご紹介しております。
数ある日本の伝統文化の中でも、とりわけ華道というものはグローバル化に積極的であると言えます。
非対称的でアンバランス、四季や詫び寂びを味わう華道は日本人の独特なセンスが備わっているからこそ楽しめるものに思えますが、実際は世界中に大きな広がりを見せ、人々に愛されているのです。
代表的な流派
華道(生け花)には様々な流派が存在し、それぞれが創始者の掲げる理念や生け花理論の元で活動しています。
流派ごとの個性を生き生きと表現することはもとより、時には各流派合同で華展を開くなど切磋琢磨し合い互いに影響を与えることもあります。
代表的な華道(生け花)の流派としては
・池坊
・小原流
・嵯峨御流
・草月流
・未生流
などが挙げられます。
池坊
先述の通り、華道(生け花)の開祖から連綿と続く流派。伝統ある「立花」、「生花」に加えて既存の型にとらわれない「自由花」の3つに大別されるスタイルで幅広い芸術作品を生み出しています。
長い歴史を持つ流派ですが、若手イケメン華道家グループ「IKENOBOYS(イケノボーイズ)」を結成してパフォーマンスをしたり、室町時代の池坊家元であった初代・池坊専好を野村萬斎さんが主役として演じた映画「花戦さ」が上映されたり、と若い世代に華道(生け花)を広く普及する活動にも力を入れています。
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華道(生け花)池坊のお免状とは「職位」と呼ばれる階級を表すもので、次の段階の物事を学ぶのにふさわしいことが認められたという許可証の意味合いが強いです。入門~最高職位のほか、かなりの功績が認められた華道家にのみ与えられる華老という職位があります。この記事では、池坊のお免状やかかる費用、得られる資格などについて解説します。
小 原流
明治時代の中期、池坊の門弟である小原雲心が流祖となり始めたものですが、水盤を用いた生け花形式「盛花」を考案したことにより各流派に多大な影響を与えました。
小原流の家元は若く、自らインスタグラムで作品やセンスあふれる写真をアップロードしたりYouTubeに小原流公式チャンネルを開設・出演したり、と時代に乗った情報発信にも熱心です。
嵯 峨御流
嵯峨御流とは名前の通り、嵯峨天皇に始まるとされている流派です。
嵯峨天皇が宮殿を構えていた現在の大覚寺に本部があり、皇室ゆかりの寺院ならではの特色が階級や称号の名などに表れています。
草 月流
型にとらわれない自由な表現を特に尊重する流派です。
初代家元である勅使河原蒼風が形式重視の生け花に反発し、同じく華道家であった父と決裂して創始したこと、華道に留まらず書画や彫刻と他分野での創作活動を行っていたことからもその個性重視の姿勢が見られます。
ちなみに、あのメディア出演で有名な華道家、假屋崎省吾さんは自由度の高い独自の世界を花で表現していますが、元々は草月流で華道(生け花)を学んでおり、現在でも彼が手ずから指導する生け花教室では草月流を元にしたカリキュラムで教わることができます。
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未 生流
数多くの分派が見られることでも知られていますが、その原点は未生流初代当主の未生斎一甫の、幾何学的理論に基づく教えにあります。
彼の息子である二代目当主未生斎広甫が大覚寺にて華務職に任命されたことから、未生流は嵯峨御流にも大きな影響を与えました。
それぞれの流派ごとの資格について気になる方は、こちらの記事をご覧ください。
華道(生け花)教室に通ったり研究会に参加したりすることを通して華道を究めるにつれ、その習熟度に応じてお免状や資格を取得することができます。この記事では、華道(生け花)の資格、お免状とはどのようなものか、流派ごとの種類や費用、できることについてご紹介します。
華道(生け花)の基本のかたち
流派によって華道(生け花)の教えや考え方は違うものの、基本的に花を生ける際の骨組みとなる要素は共通するところがあります。
それは、主役として生ける花材、準主役として生ける花材、脇役として生ける花材とはっきり分担させるという点です。
その役割の呼び方も流派によって「真」、「主枝」など様々ですが、主役は一番長さを取り、それより短くした準主役の2つでまず花を生ける空間を作ります。
他の花材はその2つが決めた範囲内で彩りを加えていきます。
花材は同一のものを複数本使用し、たくさんの種類の花材を1つの作品に取り入れることはあまりありません。
もちろん、自由度の高い生け方ではそういったルールを遵守しないこともありますが、生け花の基本として、まずはこのような生け方を学ぶのが多くの流派の入門となります。
こちらの記事では、初心者の方でも生けやすい花材の紹介や、お花を長持ちさせるテクニック、うまく生けられない時のポイントをご紹介しております。
今回は華道(いけばな)初心者の方向けに、取り扱いのしやすい花材や、お花を長持ちさせるテクニック、上手に生けられない時の解決方法をご紹介します!ちょっとしたポイントを押さえれば、初心者の方でも楽しくお花を生けることができるようになりますよ♪
華道(生け花)に使用される主な道具
花 器
花材を生けるための入れ物。
生け花をする際は必ず花器にたっぷりの水を張ってから生けることになります。
花器の種類は主に壺、瓶、水盤。特に壺や瓶はものによって生けやすさが大幅に変わるため、初心者のうちは練習用として各流派で開発されたものを使うことが多いです。
花を生ける器の色や形、大きさにこだわるのも華道(生け花)の特徴の一つと言えます。
花 切りはさみ
花材を切るためのはさみ。
華道(生け花)は花材の長さを決めることや不要な花、枝を切り落とすことが非常に重要となるため、花器と並んではさみが必要不可欠な道具です。
文具はさみやキッチンはさみで代用しても構いませんが、場合によっては堅い枝を切ることもあるため、専用のはさみを用意した方がいいでしょう。
剣 山
盛花を生ける際に必要となるもの。
大きさや形は様々ですが、無数の針で花材の向きや角度を固定するもので、特に初心者が思い通りの作品の形をつくるために欠かせない道具です。
花材を固定する道具は「花留め」として多くの種類が使われてきましたが、現代ではこの剣山が最もポピュラーです。
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