ガラス細工と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?
花瓶、お皿、ステンドグラス…私たちが日常で使っている、あらゆるものにガラス細工は施されています。
今回は、意外と身近にある「ガラス」と「ガラス細工」の関係、体験方法や有名なガラス工芸作家などを紹介しています。
ガラス細工に興味のある方、実際に作ってみたいという方もチェックしてみてください!
ガラス細工ができるまで

最も古いガラスは弥生時代初期に発見されたそうですが、これは日本国内で作られたものか、外国で作られたものか判別がつきませんでした。
弥生時代後期のものと見られる遺跡からはガラス炉が発見され、2000年ほど前からは日本国内でガラスそのものは作られていたという説もあります。
このように、ガラスは弥生時代から現代に至るまで長年使用されてきました。
その時代背景の中で、美術や工芸として派生したものに「ガラス細工」というものがあります。
ガラス細工とは、ガラス工芸品の総称です。
ガラスの放つ美しさや神秘さが多くの人を魅了し、現在でも新たな作品が次々と誕生しています。
ガラス細工のさまざまな技法
有名なガラス細工の技法としては、ホットワークやコールドワークなどがあります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
ホットワーク
ガラスを熱して溶かし、柔らかくした状態で形を造っていく技法です。
ホットワークの中でもさまざまな技法があります。
コールドワーク
ガラスを熱したり溶かしたりする技法ではなく、柄を入れたり色をつけるといったもの。
ホットワークよりも安全なので、幼い子どもでも気軽に体験できるという観点から、各地で体験工房が数多くあります。
ガラス工芸の種類とは?

ガラス細工とひと口に言っても、その種類には様々なものがあります。
形や色、完成するまでの作り方によって、ガラス細工の呼び名は細分化されています。
それでは早速、ガラス細工の中でも有名なものを見ていきましょう。
江戸切子

1834年(天保5年)、びいどろ屋(当時はガラスを「びいどろ」と呼んでいた)の加賀谷久兵衛が金剛砂※1 を使ってガラスの彫刻をしたのが江戸切子のはじまりだと言われています。
江戸切子は2002年(平成14年)に国の伝統工芸品に指定されました。
菊・麻・矢来※2 のような、絵柄として浴衣にも取り入れられるような近代的な模様を切子に反映しているのも大きな特徴です。
※1 金剛砂:不純物の多い砂質のコランダム、または、ざくろ石を粉末にしたもの。研磨剤に用いる。
※2 矢来:竹や丸太を縦横に粗く組んで作った仮の囲い。

「江戸切子」とは、国および東京都が指定する伝統工芸品のひとつです。
ガラスの表面を彫り、美しい紋様を刻んでいく技法(もしくは紋様そのもの)を指します。
そもそも「切子」とはカットグラス技法を意味する言葉。
そのため、「薩摩切子」や「切子工房」など、「切子」という名を冠する商品・店舗は各地に存在しています。
薩摩切子

薩摩ビードロ、薩摩ガラスとも呼ばれていました。
藩主の島津斉興が江戸から江戸切子の職人を招き、1851年(嘉永4年)に薩摩切子が生まれました。
しかし、1863年の薩英戦争で工場が焼失。
その後1985年までの約100年間、薩摩切子の歴史は途絶えてしまいました。
その後から現在まで、伝統的な色味・絵柄の復元、新しい作品の開発も進めています。
厚さは2~3mm程度あるとされており、重厚感とグラデーション、深く刻まれた模様が特徴です。
小樽ガラス

明治24年(1891)、井上寅蔵が小樽の工場で小樽ガラスの製造を始めたことがきっかけと言われています。
明治当時の小樽は北海道の玄関口として港が発展していき、昭和に入ったころには「ガラスの街」と呼ばれるまでに。
その後、北一硝子が観光客に向けて石油製ランプを開発したことで、さらに人気は拡大しました。
拡大と同時に数多くのガラス作家が誕生し、より洗練されたものへと進化を遂げていきました。
琉球ガラス

明治(1868~1912年)、大阪や長崎から沖縄本土に硝子師を呼び、以降から琉球ガラスが本格的に作られるようになったと言われています。
初期は使用済の透明な瓶のくずを原料としていました。
戦後、コーラやジュース、ウイスキーの空き瓶などを集めてアメリカの家庭向けに製造を再開。
当時は外国人の家庭に向けて作られたデザインが多く、今も採用されているデザインもあるそうです。
1972年には廃瓶ではなく、琉球ガラス用の原料を使用する工房が増え、順調に拡大。
1998年には沖縄県の伝統工芸品に認定されました。
有名なガラス作家をご紹介
それでは、実際にガラス細工の世界で活躍されている作家さんをご紹介します。
但野英芳さん
江戸切子作家。2009年には、東京カットグラス工業協同組合の理事にも就任されています。
英芳さんは当初、江戸切子には興味がなく設計士として建築物のデザインを引く毎日を送っていました。
しかし父のコンクールで「同じものがふたつとない、ものづくりの素晴らしさを知った」と話し、江戸切子の世界へ。
和風の中にも、どこか現代的なデザインを取り入れるように意識されているそうです。
中根 櫻龜さん
櫻龜さんは、薩摩切子を100年ぶりに蘇らせた作家。
途絶えてしまった薩摩切子を復元させる際には、1カ月間薩摩切子に関する書籍を読んで勉強されたそうです。
女性らしい曲線を用いた柄を取り入れるなど、試行錯誤しながら新しい作品も作られています。
木村直樹さん
1984年生まれと、若手の小樽ガラス作家。
2016年には「日本現代工芸美術展 現代工芸賞 受賞」を受賞。
2004年にガラス工芸を始め、2011年にKimGlassDesignを設立。
現在は複数のガラス職人と一緒に、小樽グラスの制作・販売をされています。
稲嶺盛吉さん
稲嶺さんは、琉球ガラスの代表的な作家。
「琉球ガラスの人間国宝」とまで呼ばれています。
2019年現在79歳を迎えられますが、沖縄のご自分の工房「虹」で作品を作り続けているそう。
盛吉さんの作品は「琉球稲嶺ガラス」と呼ばれ、非常に市場価値の高いものとして取引されています。
ガラス細工を体験してみよう!
ここからは、自分でもガラス細工をつくってみたいという方、少しだけ挑戦してみたいという方にオススメの工房をご紹介します。
東京
〒178-0061 東京都練馬区大泉学園町6-13-6
〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目4-25 小沢ビル2F
〒111-0034 東京都台東区雷門2-1-14
関西
〒603-8223 京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
〒649-3631 和歌山県東牟婁郡串本町樫野1035‐6
〒543-0025 大阪府都島区片町2-2-36
〒636-0905 奈良県生駒郡平群町上庄2丁目7-19
工房によって技法が大きく異なるので、仕上がりの雰囲気も変わります。
事前にお好みのガラス細工を見つけて、工房ではどんな技法の体験ができるか調べてみてくださいね。
おわりに
今回ご紹介したガラス細工の中に、お好みのものはありましたか?
ひとえに「ガラス細工」と言っても、現在の姿になるまで長い歴史があり、地域の伝統や技法によって仕上がりが全く異なることが分かりました。
日々の食卓を彩る食器や、お花を生ける花瓶など…お好みのガラス細工を、日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。