「日本茶」というと、どんなお茶をイメージしますか?
緑色で爽やかな味と香りの煎茶、香ばしい玄米茶やほうじ茶など、様々なお茶を連想できるのではないでしょうか。
多様な種類がある日本茶ですが、日本で作られているお茶のほとんどが緑茶に分類されます。
一般的に、日本茶は緑茶のことといっても差し支えないでしょう。
ここでは、紅茶や中国茶とは一線を画す、日本の緑茶の特徴と代表的な種類をご紹介します。
日本茶は全て「チャノキ」からできている

日本の緑茶だけでなく、中国茶や紅茶も、同じ「チャノキ」という植物の葉を摘んで作られています。
それぞれの個性に大きな差が生まれるのは、製法、なかでも発酵度が異なるからです。
お茶の葉は摘み取られるとすぐに発酵が始まります。
これは生葉に含まれる酸化酵素の働きによるものです。
紅茶や中国茶のほとんどは発酵させて作りますが、緑茶は「不発酵茶」と呼ばれ、発酵させないことが特徴です。
発酵を止めることで、お茶の葉本来の緑色や、爽やかな味や香りが保たれます。
お茶の発酵はどうすれば止められるのでしょう?
そのノウハウは日本独特の「蒸す」工程にあります。
摘採された生葉は、送風・加湿することで発酵の熱を抑え、水分と鮮度が保たれます。
続いて、蒸気で蒸すことにより酸化酵素の活性は止まり、緑色が保たれます。
この工程は「蒸熱」と呼ばれ、緑茶の「味・香り・水色」の基本的な性格を決定づけ、品質も左右する重要な工程です。
20~120秒という短時間の蒸し時間ですが、微妙な差が「浅蒸し」や「深蒸し」などの豊かなバリエーションを生み出します。

みなさんの一番身近なお茶はなんですか?
「緑茶」 「煎茶」と答える人も多いのではないでしょうか。
では、どのように作られているかはご存知でしょうか?
身近なお茶とはいえ、製造工程にふれる機会は意外と少ないはず。
現代では、煎茶をはじめとする緑茶は、機械を使って統一された工程で作られています。
日本茶の種類は、栽培方法と製造方法で決まる
蒸された茶葉は、揉む工程で整形され、乾燥と仕上げ加工を経て製茶されます。
製造工程は緑茶の種類によって異なりますが、玉露やかぶせ茶などは栽培方法から違いがあります。
日本の緑茶には、主に次のような種類があります。
各種類にさらに細かな分類があったり、地方による差異があったりするので、日本茶のバリエーションは実に豊かです。
煎 茶
緑茶を代表するお茶です。
蒸熱後、揉みながら乾燥させる一般的な製法で作られます。
茶葉の形は細長く整えられ、新鮮な香りの、うま味と渋味のバランスがよいお茶です。
深 蒸し茶
普通煎茶よりも蒸し時間が約2~3倍の長さです。
抽出すると濃い緑色で、渋味が抑えられ、甘みとコクがあります。
茶葉は崩れがあり細かくなっていて、水出しにも向いています。
玉 露
高級緑茶の代名詞。
製造工程は煎茶と同じですが、栽培過程が異なります。
お茶の新芽が出てから摘採までの約20日間、新芽を覆って直射日光を避けて育てます。
うまみと濃厚な甘みのあるまろやかな味わいです。
「覆い香」と呼ばれる香りも特徴的です。

か ぶせ茶
栽培時にお茶の木の上部を覆い、日光を遮って栽培します。
被覆期間は1週間~10日程度です。
玉露よりはうまみが少なく渋みが多めで、煎茶と玉露の中間くらいの性格を持つお茶です。
番 茶
若芽を摘採した後の遅れ芽からできるものや、成長した茶葉を茎ごと刈り取って製茶したものなどがあります。
各地方特有の番茶もあります。
玉 緑茶
煎茶とは製造工程の最後が異なり、形をまっすぐに整える工程がありません。
代わりに、回転するドラムのなかに茶葉を入れ、熱風を通して乾燥させます。
「ぐり茶」とも呼ばれ、茶葉が丸くぐりっとした形になっています。
渋みが少なくまろやかな味わいです。
釜 伸び茶
摘採後、生葉を蒸すのではなく、高温の釜で炒って作るのが特徴です。
形は細撚りに整えられています。
釜 炒り玉緑茶
釜伸び茶のように釜で炒って作られますが、玉緑茶にように、回転するドラム内で熱風によって乾燥されるので、茶葉が撚れていない丸い形状をしています。
別名「カマグリ」とも呼ばれます。
粉 茶
煎茶や玉露の仕上げ加工工程で、粉状のお茶をふるいなどで選別し集めたものです。
色鮮やかで味も香りも濃く、有効成分も摂取しやすいお茶です。

芽 茶
煎茶や玉露の仕上げ加工工程で選別された、芽の先の丸まった部分から作られます。
お茶の旨味を多く含み、香りが強く、味も水色も濃厚です。
茎 茶
煎茶や玉露の仕上げ加工工程で選別された茎のお茶です。
香りは若々しく、味は爽やかです。
玉露や高級煎茶の茎は「雁が音(かりがね)」と呼ばれます。
ほ うじ茶
煎茶、番茶、茎茶などを褐色になるまで高温で焙じて作ります。
高温で焙じることでカフェイン量が減り、香ばしくすっきりとしたお茶です。
玄 米茶
蒸して炒った玄米を、ほぼ同量の番茶や煎茶とブレンドしたお茶です。
炒り玄米の香ばしさとお茶のさっぱりとした口あたりが楽しめます。
碾 茶(てんちゃ)
蒸した茶葉を揉まずに乾燥させ、茎や葉脈などの硬い部分を取り除いたお茶です。
揉む工程を経ないので形は整っていません。
抹茶の原料となります。
抹 茶

碾茶を石臼や粉砕機で挽いて粉にしたお茶です。
茶道で使われる抹茶は、玉露と同じように栽培時に被覆し、甘味の強いまろやかなお茶に育てます。
茶葉をそのまま粉にしたお茶なので、香りも風味もとても深く、栄養成分もまるごと摂取できます。

日本茶をよく飲む方のなかには、「おいしいから」というだけでなく、「健康に良いから」という理由で愛飲される方も少なくないと思います。
おいしさを生み出し、健康効果ももたらす日本茶の成分については、長年の研究から徐々に明らかになって来ています。
ライフスタイルや好みに合わせて楽しめる日本茶
日本の緑茶は爽やかな味や香りが楽しめるだけでなく、ビタミンやカテキンはじめ、栄養成分も豊富です。
含まれる成分は緑茶の種類によっても異なります。
有効成分がまるごと含まれる抹茶や粉茶、カフェインが少ない玄米茶やほうじ茶など、お茶のタイプを知っておくと、年齢、飲む時間帯や目的に合わせて日本茶を取り入れやすくなります。
好みだけでなく、生活の様々なシーンに合ったお茶を選べるのも日本茶の優れたところです。
様々な種類の日本茶を、みなさんの生活のお供にいかがでしょうか。

煎茶や玉露、ほうじ茶や玄米茶など、様々な種類がある日本茶。
それぞれのおいしさを引き出すためには、入れ方がとても大切です。
標準となるお茶の入れ方には、茶の入れ方研究会や全国の茶業関係団体などが検証した基準があります。
入れ方のポイントを押さえて、おいしい日本茶を楽しんでください。