祭りの意味

日本は祭りの盛んな国で、全国各地で多くの祭りが行われています。

そして、それぞれが独自性を持つだけでなく、時代とともにスタイルも多様化してきました。

例えば、青森のねぶた祭りや仙台の七夕祭りは、宗教行事を伴わないスタイルの祭りで、毎年多くの観光客を惹きつける賑やかなイベントです。

これも現代の祭りのひとつの形ではありますが、本来祭りとは、もっとつつましやかなものです。

祭りの語源は、神の御側おそばで、神に奉仕するという意味の「マツラフ」に由来します。

また、祭りの「まつ(待つ)」という言葉は、お祭りの日に遠いところから来られる神様が、山や木、岩に宿るのを「待つ」という意味です。

神様を待って、おもてなしして、日頃の神恩に感謝することが「まつり」というわけです。

そして、人は祭りに参加することで、共に生きる人々と思いを分かち合ってきました。

例えば、村里の小さな共同体で、氏子うじこだけがお宮に集まって供物くもつを神に捧げ、お神酒をいただくというとても静かな祭りがあります。

神を迎えてお供物を捧げ、神の仰せを承り、最後にお送りする、そして同時に村の安穏あんのんと氏子の幸福を祈願するという祭りです。

外から見ると神社にのぼりが出ているというだけで、一見すると祭りが行われているようには見えません。

多くの人がイメージする、出店が出て、活気があり、人間が楽しめるような派手な「祭り」ではありません。

しかし、本来の祭りとは信仰をともにする者たちの祈りや感謝の儀式であり、これが日本の祭りの本質的な姿なのです。

下記の記事では、文頭で紹介しました「青森のねぶた祭」と「仙台の七夕祭り」の由来や見どころについてまとめています。

ぜひ、ご覧ください。

祭りの楽しみ

核化やライフスタイルの変化とともに、カレンダーで見かけるだけになってしまった年中行事も、もともとは日本人に親しみのある「生活の中の祭り」でした。

例えば、農耕生活に根差した年中行事は、第一次産業の割合が少なくなった現在でも、全国の神社のお祭りの中にあります。

まず年の初めの豊作を祈願する神事「田遊び」に始まり、2月の最初の午の日に「初午祭はつうままつり」が行われます。

これは初午の日に田の神が山から降りてくるという民間伝承に由来する行事です。

そして、種蒔きや田植えには「御田植祭おたうえまつり」、田植え後には害虫を防ぐ、「虫送り」、そして収穫を感謝する「霜月祭しもつきまつり」などと続きます。

これらの行事は全国で似たような名前で行われているものの、その形式は地域によって異なります。

実際に祭りに足を運び、その地域性を感じるのも祭りの醍醐味です。

例えば、板橋の「田遊び※1」は千年以上も続けられている非常に古い祭りですが、現在は、近代的な団地や新興住宅が並ぶ地域になっており、平安の昔と今日の変遷を考える貴重な行事と言えます。

※1 田遊び:稲作の季節を前に豊作を祈ること

また、春日大社「御田植祭おたうえまつり※2」のように、とても美しく、見物するだけでも楽しい祭りもあります。

※2 御田植祭:年頭または田植えの前に、豊作を祈って行われる田植えの神事

日本全国が同じような風景になってきた今、祭りを見に行くことは、かつての日本人の生活や、地域性を感じる数少ない機会です。

祭りのみどころ

全国の神社で共通して行われる祭りは恒例祭祀こうれいさいしと呼ばれ、神社にとって最も重要なお祭りである「例祭れいさい※3」、2月に行われる産業の発展と国力の充実を願う「祈年祭きねんさい※4」、そして、神恩しんおんに感謝し、皇室、国家、国民の平和と繁栄を祈る11月23日の「新嘗祭にいなめさい※5」などがあります。

※3 例祭:ご祭神ごさいじんに縁のある日や創建の日などに行われ、「例大祭」と呼ばれることもあります。
※4 祈年祭:奈良時代に始まり、穀物(特に稲)が豊かに実るよう祈る祭儀です。現代では、稲作だけでなく、あらゆる産業の発展や国力の充実を祈願しています。
※5 新嘗祭:祈年祭とともに古くから行われている祭りで、秋の収穫祭にあたります。

新嘗にいなめとは、その年に採れた穀物を神様に供えるという意味で、長く稲作が産業の中心であった日本にとっては重大な祭儀に位置付けられています。

それ以外の祭りに「特殊神事」があり、神社の由緒や歴史性、地域の独自性を反映した珍しいものが多くあります。

例祭や特殊神事では、神様をもてなし、喜んでもらうために、神社の境内で、神賑行事が行われ、様々な民俗芸能を見ることができます。

参加型神事「湯立神楽」

釜に湯を沸かし、神主がぬさについた湯を参拝者に振り掛けます。

湯を浴びることで無病息災むびょうそくさいになると言われています。

神主が湯の形で吉凶を見たり、残った湯をカップに注いで振る舞ってくれる神社もあり、実際に振り掛けられると結構熱いようです。

秘的で美しい「里神楽」

宮中で行われる御神楽みかぐら以外の民間の神楽を里神楽と呼びます。

基本的に黙劇もくげきで神話を題材にしたストーリーが太鼓や笛をバックに演じられます。

特に、夕闇のなかで見る神楽は、仮面が照明にほどよく照らされ、幽玄で神秘的な美しさがあります。

おわりに

日本の祭りを訪ねて思うのは、祭りを支える人あってのものだということです。

特に日本の祭りは、長い年月の間、人から人に継承されてきた物事が形になったものが多く、尽力してきた人の存在なしには語れません。

古の時代から祭りを伝え継いできた人たち、そして、これから伝え継ごうとしているすべての人に尊敬と感謝の意を表したいですね。

古の時代から続く日本を代表する京都の祇園祭。

祇園祭の山鉾巡業はユネスコの無形文化遺産にも登録されており、毎年数十万人が見物に訪れています。

下記の記事では、そんな京都の祇園祭についてご紹介しています。