
漆器のお話に入る前に、そもそも漆とは何なのかをご説明します。
漆は、日本や中国、東南アジアにある落葉高木(喬木)です。
漆の木に傷をつけると、乳白色の樹液が出てきます。
この樹液が「漆」です。
1本の木から採取できる漆は、1シーズンで150~200gほどと、とても貴重なものなのです。

採取した漆から木の皮やゴミを取り除いたままでも使用できますし、加熱して水分量を調整し、鉄粉や顔料を混ぜて色を付けて使うこともできます。
こうしてできた漆を、木や紙の表面に塗り重ねていった物を漆器といいます。
漆器という文字を見ると、器だけが漆器のように思ってしまいますが、器だけでなく箸や箸置き、現代ではスマートフォンケースなど、漆を塗り重ねていったもの全般を広く漆器と呼びます。

陶磁器と比較されることの多い漆器ですが、どのような特徴があるのでしょうか。
漆器の特徴(良い点)
耐久性
漆は乾くと堅牢性がでてきます。
何度も漆を塗り重ねられた漆器は硬く、丈夫になり、より割れにくく欠けにくい漆器となります。
そういうわけで、結婚式やお祝いの時に選ばれることが多いのです。
また、欠けてしまったとしても修理をすることができます。(木製のみ)
耐水性
乾いた漆には水を弾く性質があります。
断熱性(保温性)
お椀に熱々の汁物をいれても断熱性があるため、熱くて手で持てない!ということがありません。
さらに保温性もあるため、漆器にいれた料理が冷めにくく、おいしい状態で食べることができます。
防腐性
漆には防腐性があることから、即身仏(ミイラ)となる修行僧たちが死する直前に漆を飲み、自ら内蔵の防腐処理を行っていたそうです…。
抗菌性
金沢工業大学環境・建築学部によると、漆器に付着した大腸菌は24時間後にはほぼ死滅するという研究結果がでています。
他にも、軽い、口当たりが優しい、捨てる際も環境にやさしい(木製)など魅力がたくさんあります。

普段、どんな食器をお使いですか。
ずっと触れていたい手触りや口当たりを、食器に感じたことはありますか。
食器を変えれば、食卓が変化します。
手になじむ優しい漆器は、食器を手にとって食べる日本食のスタイルに非常に適しています。
漆器の特徴(悪い点)
1. 極端な温度変化・乾燥・湿気に弱い。
そのため冷蔵庫や電子レンジ、食器洗浄機、乾燥機は使えない。
2. 傷ができてしまったり、漆が剥げてしまうため、金属製のフォークやスプーン、めの粗いスポンジが使えない。(ただ、塗りのハゲや傷は修復できる)
意外と扱いが難しいですが、良い点にも記述しました通り木製の漆器であれば修復ができます!
「使えない」と記述してはいますが、1.2.はあくまで、なるべくこうしたことは避けた方が長持ちする、ということです。
ちょっとデメリットに気を付けながら使用すれば、誰でも簡単に扱うことができます。
割れにくさや口当たりの良さから、小さい子供にはぴったりの優れものです!
用途によって使い分けながら、うまく生活のなかに取り入れていきたいですね。

代表的な漆器
山中漆器

石川県の、木地の模様を生かした漆器です。
使用される木地の美しさは魅入ってしまうほどです。
一つひとつ木地の模様が異なるので、選ぶ楽しさもあります。

日本には漆器の産地が30近くありますが、中でも「山中漆器」は生産額が産地全体の70%を占め、日本一を誇ります。古くから木地挽物技術に優れ、高齢化が進む全国の産地から木地の注文がくることもあり、山中は木地の生産規模でも日本一です。
越前漆器
越前漆器は日本最古の漆器の産地として福井県が知られています。
飛鳥時代に継体天皇へ黒漆の椀を献上したところ、その光沢の美しさに深く感銘し、奨励したことから越前漆器がはじまったとされています。
会津漆器

安土桃山時代に福島県の会津領主が産業として奨励したことがきっかけで始まりました。
領主の蒲生氏郷(がもううじさと)が以前の領地であった滋賀県日野から漆器職人を呼び寄せ、当時の最先端技術を取り入れることにより発展していきました。
現在でも進んで技術開発を行っています。
紀州漆器

紀州南高梅で知られる和歌山県で作られています。
根来塗の技法で作られた漆器です。
根来寺の僧侶が、自分たちが使用するために作ったことから、根来塗と言われています。
黒漆のうえから朱漆を塗られているのが特徴です。
戦後、一番に合成樹脂を取り入れたことで有名です。
川連漆器
秋田県で作られており、お椀等の日常品を多く作っている。
漆器の下地に、漆だけでなく渋柿も使用しているため、安価で大衆に親しみやすい漆器です。

漆器というと、「手入れが大変そう…」や「敷居が高そう…」といったイメージを持ってはいませんか!?
しかし、実は漆器のお手入れはそれほど難しくなく、いくつかのポイントを押さえておけば、他の食器同様に使えるんですよ♪