日本には、古くから受け継がれてきたさまざまな伝統文化があります。

それらは今も私たちの生活の中に強く根付いていますが、どのようなものが日本の伝統文化といえるのか、よく知らないという方も多いでしょう。

この記事では、伝統文化とは何か、伝統工芸品と伝統的工芸品の違いのほか、伝統芸能、芸道、和楽器、食、行事、観光地など、あらゆる分野の日本文化を一覧で解説していきます!

伝統文化とは?

「伝統文化」とは、長い歴史の中で国や地域、家々で脈々と受け継がれてきた文化のことです。

日本における伝統文化の種類は多様で、陶磁器や漆器などの高度な技術を用いた伝統工芸品、歌舞伎や能楽などの伝統芸能、さらに儀礼や年中行事、芸道、民間で継承されてきた民俗文化などが挙げられます。

どれも、日本の歴史の中で創造され、育まれ、大切に守られて発展してきました。

その豊かな芸術性と品質は、国際的に高く評価されているものも多く、まさに日本の誇りともいうべきものです。

現在では、後継者不足などからその伝承が危ぶまれているものもあり、後世へ伝統を残していくため、国や自治体が保存活動に努めています。

俗文化財とは

「民俗文化財」とは、古くから民間で伝えられてきた生活や生業、行事に使われてきた文化的資料のことを指します。

具体的には、衣食住、農業や漁業などの生業、年中行事、風俗習慣、民俗芸能およびそれらに用いられる衣服や用具、家屋などのことです。

私たちの先祖がどのような生活をして、どう移り変わってきたのか、日本人とその歴史を理解するうえで貴重なものといえます。

日本では、昭和25年(1950年)に制定された「文化財保護法」に則り、国や地方公共団体などが指定し、民族文化財の保存・活用の措置が取られています。

そして、民俗文化財は、大きく“有形ゆうけい民俗文化財”と、“無形むけい民俗文化財”の2種類に分けられています。

形民俗文化財

「有形民俗文化財」は、衣服や家、用具など、民俗文化財のうち、形のある資料のことです。

これらは美術工芸品とは異なり、一般人が生活や行事、芸能などのために作り出し、時代と共に工夫、改良を重ね、伝えられてきたものです。

歴史や時代背景、地域性、技術、職能などがわかるものが多く存在しています。

形民俗文化財

「無形民俗文化財」とは、祭りや民俗芸能など、民俗文化財のうち、形のないもののことです。

目には見えないものですが、これらの文化財は、日本人の日常生活に浸透し、各地域の人々のアイデンティティの形成という役割も担ってきました。

提供:(一社)西尾市観光協会

また、国は有形民俗文化財と無形民俗文化財に、さらに下記のような項目を設け、保護を図っています。

有形民俗文化財無形民俗文化財
重要有形民俗文化財重要無形民俗文化財
登録有形民俗文化財登録無形民俗文化財
 記録作成等の措置を講ずべき
無形の民俗文化財

重要民俗文化財・重要無形民俗文化財

民俗文化財のうち、特に重要とされるものを、国の“重要有形民俗文化財”と“重要無形文化財”と指定しています。

令和6年(2024)年1月時点で、重要有形民俗文化財の数は227件、重要無形民俗文化財の数は333件となっています。

重要有形民俗文化財の例)
高山祭屋台、祇園祭山鉾越前和紙の製作および製品、輪島塗の製作用具および製品の型など。

重要無形文化財の例)
青森のねぶた男鹿のなまはげ京都の祇園祭の山鉾巡行、歌舞伎の型など。

登録有形民俗文化財・登録無形民俗文化財

重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財以外の民俗文化財の中でも、保存および活用のための措置が必要とされるものは、“登録有形民俗文化財”と“登録無形民俗文化財”として指定されます。

令和5年(2023)年5月時点で、登録有形民俗文化財の数は2,688件、登録無形民俗文化財の数は107件となっています。

登録有形民俗文化財の例)
岐阜提灯の製作用具および製品、美濃の陶磁器生産用具および製品、丸亀うちわの製作用具および製品など。

登録無形民俗文化財の例)
讃岐の醤油醸造技術、近江のなれずし製造技術など。

記録作成等の措置を講ずべき無形の民族文化財

上記でご紹介した重要無形民俗文化財および登録無形民俗文化財に含まれない無形民俗文化財のうち、特に必要のあるものを“記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財”に指定しています。

令和6年(2024)年5月時点で、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の数は652件となっています。


記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の例)
高千穂神楽、阿波の人形芝居、幸若舞など。


伝統工芸品

「伝統工芸品」とは、各地で継承されてきた伝統的な技術や素材を用いて作られた日用品や美術品のことを指します。

各都道府県や自治体が、それぞれの定義で指定しており、日本全国で約1200種類あるといわれています。

承認される伝統工芸品の条件としては、

・長い歴史があること ・日常生活で用いられていること ・熟練の技術で作られていること ・主要部分が手作業で作られていること

が挙げられます。

また、有形民俗文化財が“昔から伝えられたものをそのままの形・デザインで作り続けている”ものであるのに対し、伝統工芸品は、“指定された材料と技法で手作り”していれば、デザインや形が違っても良いという違いがあります。

統的工芸品

「伝統工芸品」とは、伝統工芸品の中でも、“伝統的工芸品産業の振興に関する法律”に基づき、経済産業大臣により認定されたものです。

伝統的工芸品に認定されるには、下記のような要件を満たす必要があります。

・技術や技法、原材料がおよそ100年以上継承されていること ・日常生活で使用されていること ・主要部分が手作業で作られていること ・一定の地域で産業が成り立っていること

令和5年(2023年)10月現在、241品目が指定されています。

ここまで、伝統工芸品についてご紹介をしてきましたが、一口に伝統工芸品といっても、その種類は多種多様です。

日本刀や浮世絵、日本人形などの芸術品のほか、仏壇やタンス、陶磁器、うちわ、そろばんなど、身近で使用しているものも多く含まれています。

あなたも、日常生活の中で使っているものがあるかもしれません。

どのようなものがあるのか、もっと知りたい!という方は、下記の記事でそれぞれの伝統工芸品を紹介しておりますのでご覧ください。

伝統芸能

「伝統芸能」とは、古くから日本に伝えられ、大切に受け継がれてきた日本の芸能のことです。

そもそも“芸能”とは、舞台上での人の動きによる表現や、修行や稽古を重ねて身に着け生み出した、あらゆる技能のことです。

そのため、芸能といえば、演劇や音楽だけをイメージする方も多いかもしれませんが、実は漆器や華道(生け花)、相撲なども芸能に含まれているのです。

こうした芸能の中でも、古くから、独特の世界観やしきたりなど、一定の様式や型が受け継がれてきたものが、「伝統芸能」と呼ばれています。

ただし、何が伝統芸能に含まれるかという定義づけはないため、その範囲はあいまいなのが現状です。

具体的にどのようなものがあるのか知りたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。

芸道(茶道・華道・書道など)

「芸道」とは、精神性を重んじながら日本独自の形式で体系化した技能のことです。

広い意味では芸能に含まれますが、一般的に芸能が観客に見せることを前提としているのに対し、芸道は自己修業的な精神面を重視しています。

つまり、芸道は楽しむことよりも、修行を重ね自分自身を成長させることを目的としたものなのです。

芸道における極意の多くは秘事とされたため、口伝えで直接子孫や弟子に伝えられてきました。

そのため、芸道には多くの流派が存在し、現代においても家元制度が強く残されています。

精神性を重視する芸道は、日本人の心や美意識を表すものとして注目されており、今では茶道、華道、香道が“日本三大芸道”として有名です。

そのほかにもさまざまな芸道があり、学校の授業などで触れたことがある方もいるのではないでしょうか。

どのような芸道があるのか、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!

和楽器

「和楽器」とは、古くから日本の伝統音楽の中で使われてきた楽器のことです。

日本の和楽器は、銅鐸どうたくや鈴にはじまり、中国などの大陸文化の影響を受けて独自の発展を遂げてきました。

琴、三味線、尺八、和太鼓などがよく知られるものですが、お寺で使われる木魚や『火の用心』でお馴染みの拍子木ひょうしぎ、でんでん太鼓なども和楽器の一つです。

その数は、なんと50種類以上にも及びます。

これは世界的に見ても数が多く、演奏方法や扱い方、音色の多彩さも含め、日本の和楽器文化の豊かさがうかがえます。

和楽器は、“弾きもの”と呼ばれる弦楽器、“吹きもの”と呼ばれる管楽器、“打ちもの”と呼ばれる打楽器のほか、宗教用具としての和楽器や玩具的な和楽器の大きく5種類に分かれています。

一体どんな種類のものがあり、どう演奏されるのか、日本が誇る和楽器についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

日本は国土が南北に長く、海、山、里など、豊かな自然に恵まれています。

そのため「自然に尊ぶ」という精神に基づいて、多様な食材を用いた料理が育まれてきました。

また、日本の「食」は、日本の慣習や年中行事などとも結びついて発展してきました。

おせち料理お雑煮、年越しそばなど、料理名を聞けばそれぞれの行事や季節を思い出す方も多いでしょう。

豊かな文化と歴史を背景にした日本の伝統的な食である「和食」は、平成25年(2013年)にユネスコ無形文化遺産に登録されました。

その多様な食材と繊細な味付け、美しい盛り付けなどもあり、和食は今や世界からも注目される存在となっています。

そして、日本の伝統的な食文化は、和食だけではありません。

繊細な和菓子、日本の米と水で作る日本酒、風味豊かな日本茶なども独特の味わいで知られていますよね。

それぞれの特徴を知ることで、より深く、古くから続く日本の食の魅力を楽しめるでしょう。

日本の風土や文化を感じられる日本の食についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください!

年中行事、祭り、国事・宮中儀式

中行事、祭り

「年中行事」とは、毎年、一定の時期や季節に行われる行事や祭礼のことです。

日本では昔から、季節ごとにさまざまな行事や祭りが行われ、神様に祈願、あるいは日頃の神恩に感謝を捧げてきました。

子供の成長を願う親心、自然や先祖を敬う心なども込められ今日まで受け継がれてきた文化で、お正月ひな祭り七夕お盆など日本全体で親しまれているものから、阿波踊りおわら風の盆の盆など各地域で発展したものもあります。

いずれにしろ年中行事や祭りは、日本の風土や暮らしなどから生み出され、日本人の生活に溶け込んできた、まさに「日本の伝統文化」の一つなのです。

事・宮中儀式

「国事」とは、天皇陛下が内閣の承認と助言のもと国家機関として行うもので、国会の召集や栄典の授与、皇室の行事として行われる即位礼正殿そくいれいせいでんの儀などがあります。

「宮中儀式」には、成年に達した皇族が行う成年式 や、天皇陛下が国家と国民の安寧を祈り執り行う大嘗祭 などの宮中祭祀があります。

日本古来の伝統的な衣装で行われるものもあり、平安絵巻さながらの光景を目にできることも。

これら年中行事、祭り、国事・宮中儀式は、いずれも大切に守られてきた日本の財産です。

どのようなものがあるのか、もっと詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください!

観光地

日本には、さまざまなアクティビティやショッピングを楽しめる都会をはじめ、四季折々で風情が異なる大自然、伝統的な名所など、足を運びたくなる観光スポットが数多く存在します。

近年では、日本人のみならず、海外の方も多く訪れる人気の観光地として知られている日本。

国土が南北に長いため、その土地の気候や風土に合わせて作られた歴史的建築物や施設、文化に加え、訪れる時期によって桜や紅葉、雪国の風情など、季節ごとの景観の違いも楽しめるという魅力があります。

では実際、どのような名所があって、どう楽しめばいいのか、各地のモデルコースやオススメスポットが知りたい!という方もいるのではないでしょうか。

下記の記事では、そんな日本の「観光地」についてご紹介していますので、ぜひご覧ください。

その他の伝統文化

日本には、その他にもご紹介したい伝統文化がたくさんあります。

「盆栽」は、自然の植物を盆栽鉢に植え、観賞目的で手を加えながら育てる日本の芸術文化です。

平安時代に中国から伝わり独自の発展を遂げ、江戸時代には一般庶民も趣味として楽しむようになりました。

小さな空間に美を見出し、自然の風景の美しさを凝縮した盆栽は、日本の美徳心を体現した文化といえるでしょう。

昨今では、若い世代の間でも興味を持つ人が増えており、埼玉県にある“大宮盆栽村”には世界各地から愛好家が訪れるなど、盆栽は幅広い層から親しまれています。

盆栽の育て方や種類、観賞ポイントなど、盆栽に関する情報をもっと知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

「俳句」とは、五・七・五の17音を基本とする、日本の伝統的な定型詩です。

17文字の中に季節を表す“季語”を入れるのが原則で、日本の風土や自分の感情を詩で表すことができます。

室町時代に大成された連歌の冒頭部分の五・七・五が独立したもので、その後江戸時代の俳人・松尾芭蕉によって確立されました。

最大の魅力は、17字の語句が生み出す心地よいリズム感。

しかも“五・七・五という文字数”と“季語を入れる”という2つのルールを守れば、だれでも簡単に作ることができるため、気軽にはじめられる趣味としてもオススメです。

季語の種類や作り方のコツなど、俳句に関する情報をもっと知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

「錦鯉」とは、観賞を目的に改良された鯉の品種の総称です。

赤や黒など色鮮やかな模様で優雅に泳ぐ姿を錦にたとえ、錦鯉と呼ばれるようになりました。

“泳ぐ宝石”とも呼ばれる錦鯉は、江戸時代に真鯉が突然変異して生まれ、その後、より美しく珍しい鯉を作ろうと改良されたもので、現在ではその数なんと100種類以上!

毎年、錦鯉品評会も行われています。

日本庭園などで泳ぐ姿が印象的ですが、身近に楽しみたい方は、水槽など必要な機材さえそろえば、家庭でも飼育できますよ。

錦鯉の飼い方、観賞ポイントなどについて知りたいという方は、下記の記事をご覧ください。

「怪談」は、恐ろしさや不気味さを感じさせる、幽霊や妖怪などにまつわるお話しです。

日本の風土や文化、生活に根差した話が多く、四谷怪談耳なし芳一ろくろ首などは、日本人なら誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。

怪談は、歌舞伎や落語など芸能の分野でも、神話や民話と並び、一つのジャンルとして発展してきました。

江戸時代には百物語という怪談会も流行し、明治時代には小泉八雲が日本各地の怪談を集めた“怪談”という作品集を出すなど、夏の夜には欠かせない日本の風物詩となりました。

では、どのようなお話があるのか、そのあらすじや豆知識を知りたい方は、下記の記事をご覧ください!

「写経」とは、お経を書写、つまり書き写すことです。

仏教において僧侶の修行としてはじまり、やがて個人の祈りや願いを目的にした功徳の一つとして行われるようになりました。

近年では「書く瞑想」とも呼ばれ、心と体を癒す目的で趣味としてはじめる人が増えています。

写経はただ書き写すだけでなく、心を込めて一文字一文字を大切に書くことで、集中力がアップしたり、心が穏やかになったりとするのだとか。

近年では、書いた写経を郵送でお寺へ収めることができたり、定期的に境内で写経会を開催している寺社も多くあります。

写経の魅力ややり方、道具、心構えなど写経に関する情報を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

体験・教室一覧

日本の伝統的な文化は、見ているだけで楽しめるものも多くありますが、実際に“体験したい!習ってみたい!”という方もいるでしょう。

そんな方は、一般人向けに開かれた体験施設やお教室に通ってみてはいかがでしょうか。

自分が続けられるかどうか不安な方や、まずは一度だけ体験したいという方は、1日体験教室がオススメです。

実際に習ったり、体験したりすることで、日本文化の奥深い魅力をより感じとることができるでしょう。

ワゴコロでは、華道、茶道、三味線、琴、日本舞踊、書道、刃物製作など、ジャンル別にさまざまな体験施設・教室を掲載しています。

直接体験申込もできますので、興味のある方はぜひ参考にしてくださいね!

おわりに

長い歴史を持つ日本では、古くから生活や風土に根付いた伝統文化が育まれ、日本人はそれを守り受け継いできました。

今も各地域で生活の中に馴染んでいるものも多く、日常の行事や使用している道具が、実は日本の誇るべき伝統文化だった!ということも少なくないでしょう。

忘れ去られていく文化も多い昨今ですが、伝統文化に興味を持ち、継承していく心を大切にしていきたいものですね。