俳句を上達させるためには、いくつかのコツをつかんだり、工夫をしたりすることも必要です。

また、俳句には、いろいろな決まりごとがありますが、その中にはやってはいけない禁止事項も含まれています。

それでは、そういったコツや工夫、約束事にはどのようなものがあるのでしょうか。

俳句の上達に必要な11のコツ

ここでは、俳句の上達に必要な11のコツを紹介します。

五・七・五を生かし切ろう

俳句は、「五・七・五」の合計十七文字で描写する定型詩です。

この五文字、七文字、五文字、の文字のつらなりが生み出す歯切れのよいリズムが俳句の命とも言われています。

例えば、「五月雨の水を集めて最上川の流れが早くなっている」という文章があるとします。

これは、単に事実を羅列した文章ですが、これを

"五月雨を 集めて早し 最上川"(松尾芭蕉)

と五・七・五に区切って詠むとどうでしょう。

心地よいリズムと余韻が生まれてきて、一つの音律として印象に残りませんか?

しかも、このリズムによって力強さが生まれ、その情景がありありと目に浮かんできます。

これこそが、俳句において五・七・五が生み出す最大の効果なのです。

季語・傍題を使おう

「季語」とは季節を表す言葉で、俳句では一句に一つの季語を入れるという約束事があります。

"夏草やつわものどもが夢の跡"(松尾芭蕉)

こちらは「夏草」が夏を表す季語になります。

また、季語には「傍題ぼうだい」といって、副季語(または子季語)というものがあります。

例えば、「雪」の季語に関して言えば、「粉雪」、「細雪」、「ボタン雪」、「雪の精」、「今朝の雪」、「名残り雪」などはすべて傍題になります。傍題を使うことで表現の幅が広がります。

切れ字などのルールを身につけよう

「切れ字」は、俳句と短歌において、「切れ」を作るために使われる文字のことです。

詠み手が一番強調したい語句の直後に置かれます。

"古池ふるいけかわず飛びこむ水の音"(松尾芭蕉)

"月天心つきてんしん貧しき町を通りけり"(与謝野蕪村ぶそん

昔は、連歌や俳諧などで切れ字十八字というものがありましたが、現在の俳句では、「や」、「かな」、「けり」の三つのみが使われています。

ただし一句に二つの切れ字が使われることはほとんどありません(使われていて名句と言われているものもあります)。

※切れ字十八字とは、連歌の時代から引き継がれてきた十八の切れ字のことです。
具体的には、かな・けり・もがな・らん・し・ぞ・か・よ・せ・や・つ・れ・ぬ・ず・に・へ・け・じ、のことを言います。

推敲法を活かそう

推敲すいこう」とは、一度作った句を練り直すことです。

一度詠んだ句は、必ず書き留めておいて、時間を置いてから、季語を傍題に変えてみたりほかの語句を他の言葉で置き換えてみたり、切れ字を入れたりして練り直すことをオススメします。

その時に、詠み直す度に書き留めておきましょう。そして声に出してえいずることです。

「詠む」は、俳句や和歌を作ることに主眼を置いて、

「詠ずる」は声に出して読み上げるときに使われます。


しかし、あまり推敲でひねくり回すと、何を詠みたかったのか分からなくなってしまいますので注意しましょう。

類想・類句について理解しよう

「類想・類句」とは同じような発想で同じような句を作るということです。

俳句はたった十七文字で表す定型詩です。

俳句結社や同人会に所属して何万人、いや何百万人もの同人が作る俳句の中に、似通ったものが存在することを避けることはできません。

俳句に限らず、同じ発想をして同じ言葉を口にすることなどよくあることです。

もちろん、故意で誰かの作品を盗むという行為は許されることではありませんが、偶然に似たような俳句があったからといって、それを恥じたりする、自信をなくしたりする必要はありません。

また、反対に、自分の作った句によく似た句を見つけたからといって、目くじらを立てる必要もありません。

そういうことを恐れずに、どんどん自分の詠みたい句を作っていきましょう。

鑑賞力を養おう

作句力は選句力と表裏一体だと言われることがあります。

どちらもいろいろな俳句を鑑賞することで養うことができます。

俳句結社や同人会に入って、いろいろな人の作った句を読んだり、テレビなどの俳句講座や、いろいろなコンテストの結果発表などを見たりして、鑑賞力をつけることも大切です。

吟行のマナーを知る

吟行ぎんこうとは、俳句の題材を求めて自然の中へ出て行ったり、名所や祭事を訪れることですが、仲間といっしょにこの吟行を行うときに注意することは、無駄なおしゃべりに時間を割かないということです。

おしゃべりしていると自分自身が作句できないだけでなく、真剣に作句に取り組んでいる仲間の邪魔をすることになります。

そして終わったら最後に必ず句会をして、作った句の合評会をしましょう。

人に読んでもらおう

俳句に限らず、楽器でもダンスでも何でもそうですが、成果を人に見てもらうことは上達する上で重要なポイントです。

作った句は、どんどん人に読んでもらって、感想を聞きましょう。自分の作った句から人がどんな情景をイメージするのかを聞くことで、いろいろな気づきを得ることができます。

そのためにも定期的に句会を開くことをオススメします。

モノからスタートする

俳句は説明ではありません。

目に映るものやその時の心情を詠むものです。

したがって最初は、出来事ではなく、モノを詠むことからはじめましょう。

たとえば、野鳥がやってきてヒマワリの種を食べたという出来事や情景ではなく、まずは、野鳥という生き「モノ」を詠むことに取り組んでみましょう。

ふとしたシーンを詠もう

俳句というと、花鳥風月などの美しい言葉を使って詠むものだというイメージがありますが、決してそうではありません。

ふと今、自分の目に映ったシーンを詠むことが大切です。

例えば、今夜のおかずの「サンマ」や、手を洗ったときの「しもやけ」、くしゅんとくしゃみをしたときの「花粉症」などを季語や傍題に使っても、感性にあふれた楽しい俳句を作ることができます。

場数を踏もう

誰でもはじめて句会に行くときは緊張します。

まして一人で参加するとなると尚更のことです。

そんな時は、「みんなもはじめは同じだった」と思うことです。

そして、上手に詠もうとか、ほめられるような句を詠もうとして気負わないことです。

ありのまま、そのままの気持ちを素直に五・七・五で詠みあげることからはじめましょう。

慣れてくると度胸もすわってきます。要は場数を踏むことです。

表現を工夫して上達を目指そう!

俳句を詠む上で大切なのは表現を工夫することです。

ではどんな工夫があるのでしょう。次に俳句でよく使われている工夫を紹介します。

比喩表現を使おう

比喩には直喩と暗喩の2つの方法があります。直喩は、「~のごとく」とか「~のような」で表されます。

例えば、"一枚の餅のごとくに雪残る"(川端茅舎)では直喩が使われています。雪を餅に比喩しています。

これに対して、暗喩とは、「~は~である」のように同等のものとして扱って表現する方法です。

例えば、"母の日や大きな星がやや下位に"(中村草田男くさたお)では暗喩が使われています。

「母」を「大きな星」と、昔の家庭における母親の地位を表す「やや下位」という2つの言葉で比喩している句です。

いずれにしても、この比喩で大切なことは、すでに日常でよく使われている表現は使わないということです。

擬人法を使おう

擬人法は、動物や植物や無生物を人間のように見立てて表現する方法です。

この擬人法を使った句は、月並み句になってしまうといって嫌われることも多々あります。

しかし、昔の有名な俳人も擬人法をうまく使って残した名句はたくさんあります。

たとえば、"大寺を包みてわめく木の芽かな"(高浜虚子きょし)や"海に出て木枯こがらし帰るところなし"(山口誓子せいし)などがその一例です。

この擬人法の場合も、ありふれた、よく目にするような表現は使わないようにしましょう。

対句を覚えよう

「対句」というのは、同じ表現法の二つの句を使って印象づける方法です。

例えば、対句で有名な句に、"赤い椿白い椿と落ちにけり"河東碧梧桐かわひがし へきごとう)があります。

この句では、「赤い椿」と「白い椿」が対をなしています。

ほかに、

"彼一語我一語秋深みかも"(高浜虚子)→ 彼一語・我一語

"一歩二歩あるけて三寒四温かな"(田中えいこ)→ 一歩二歩・三寒四温

などがあります。

呼びかけを覚えよう

呼びかけとは、何かに呼びかけるような口調で句を詠む方法です。

軽い命令形の場合も呼びかけと言われます。

有名な句としては、"やせ蛙負けるな一茶これにあり"(小林一茶)があります。

また、高浜虚子の"木曽川の今こそ光れ渡り鳥"も渡り鳥に「光れよ」と呼び掛けて命令している句です。

この呼びかけを使うと、句が優しさを帯びてきます。対象への愛情を感じさせる句となります。

打消しを使おう

五・七・五の最後の五に打消しをもってくることで、イメージが強く湧き上がるという効果があります。

例えば、高浜虚子は、"美しく残れる雪を踏むまじく"という句の中で、最後に「踏むまじく」という打消しを使うことで、残った雪の美しさをより強調して詠みあげています。

リフレインに挑戦してみよう

「リフレイン」とは同じ語句や表現をくり返し使う方法ですが、俳句は十七語という短い定型詩だけに、このリフレインを使うとうるさくなったり、本来表現すべき語句が使えなかったりして駄作を作りかねないために、本当に効果的な使い方をしているのかどうか、熟考する必要があります。

第40回現代俳句全国大会で現代俳句全国大会賞を受賞した二作品がリフレインを効果的に使っていたと評価されていたので以下に例として上げます。

"父の日の吊革いっぽんづつに父"(宗像市 池田守一)→ 父

"母の通夜母と夜なべをするやうに"(舞鶴市 上田保太郎)→ 母、夜

オノマトペを使おう

オノマトペ」とはフランス語で、擬声語を意味する言葉です。

擬音語や擬態語など、俳句に使うことで軽快なリズム感を生み出す効果があります。

”行く春やほうほうとして蓬原”(正岡子規)→ ほうほうと

”うかうかと咲き出でしこの歸り花”(高浜虚子)→ うかうかと

人名を活かしてみよう

俳句に人名を詠みこむのはかなり難しいと言われています。

それなりの知名度があって、その句の意味やイメージを大きくまたは深く展開させるものでなければ効果がありません。

"やせ蛙負けるな一茶これにあり"(小林一茶)などは、生きものに深い愛情を注いでいる人物として名を知られていたからこそ詠めた一句だと言われています。

数詞を使おう

俳句に数詞を使うことで、そのイメージを際立たせるという効果があります。

例えば、有名な"梅一輪一輪ほどの暖かさ"(服部嵐雪)では、一輪だけ咲いた梅に見る暖かさを巧に詠みあげた名句です。

色彩を活かそう

俳句の中に色を詠みこむことで、その主体が鮮やかにイメージされるという効果を発揮します。

例としては、芥川龍之介の"青蛙おのれもペンキぬりたてか"などを上げることができます。

嗅覚を活かしてみよう

俳句に匂いを詠みこむことで、その時の心情や情景がありありと目に浮かぶという効果が期待されます。

小林一茶の"梅が香に障子開けば月夜かな"などは、その優れた一例だと言えます。

助詞を工夫しよう

助詞を工夫することで俳句が単なる説明にならずに、余韻のある情緒豊かな一句になります。

" 雪の降るまへの桜の木にもたれ"(長谷川双魚)では、主格を表す助詞「が」を「の」に変えることで、優しい音色を醸し出すことに成功をしています。

シンプルにしよう

俳句の題材にたくさんのものを持ちこまず、一つのものをじっくりと観察して、シンプルな句を詠む習慣をつけることをオススメします。

俳句でやってはいけないことって?

俳句には、禁止事項がいくつかあります。

以下にそれを紹介します。

過去を詠まないこと

過去のことを過去のことのようにして詠むのではなく、現在、今目の前にあるものとして詠みます。

松尾芭蕉の”夏草や兵どもの夢の跡”では、昔戦場だったということを、今目の前にぼうぼうと生えている夏草を詠むことで、表しています。

時間と場所などを入れこまないこと

俳句に時間や場所を詠みこむのは、非常に難しいと言われています。

そういった要素は忘れて、まずは目の前にある対象「モノ」を詠むようにしましょう。

答えを詠まないこと

俳句では余韻をとても大切なものとしてとらえています。

したがって、その句の中に、答えや結果を詠みこまないようにしましょう。

余韻を持たせて読み手の心を惹きつける必要があるからです。

与謝野蕪村の"五月雨や大河を前に家二軒"などは、長雨で氾濫しそうになった川のほとりに家が二軒ぽつんと建っているという情景を詠んでいますが、その後、その家がどうなったかは触れていません。

これが読み手に、家はどうなったのだろう、という思いを抱かせてより印象深い句としています。

報告しないこと

これも上記の「答えを詠まない」と同じで、いろいろなことを報告せずに、余韻を残す句にしましょう。

状況を説明しないこと

俳句は、状況や場面を説明するものではありません。

長々と説明文のようになる表現は避けましょう。

動詞を多く使わないこと

俳句においては、一句に使える動詞は一つだと思ってください。

おわりに

俳句を上達させるためのコツや工夫、禁止事項など、今回はたくさん紹介しましたが、あまり一つひとつにこだわっていると、作句が進みません。

今は、どんなコツや工夫があるのか、やってはいけないことはどんなことなのかを、ざっと理解するにとどめましょう。

俳句の上達は何といっても、まず詠むことです。

失敗や駄作などを怖がらずに、目に映るものをどんどん俳句にしていくという習慣をつけることです。

俳句友だちを作って句会などを定期的に行うことも上達の秘訣ですよ。