2019年5月1日、平成の天皇陛下である明仁上皇陛下がご退位されるとともに元号が改められ、「令和」の時代が幕を開けました。

この時、日本国民が初めて目にすることとなった「退位礼正殿たいいれいせいでん」が行われ、国内外でも話題になりましたが、一方で新天皇陛下のご即位の礼として「即位礼正殿そくいれいせいでん」が2019年10月22日に執り行われます。

「すでに新天皇陛下は即位したのに、なんで10月にも即位の儀式があるの?」と、素朴な疑問を感じている人も多いと思いますので、今回は国事行為である「即位礼正殿の儀」についてその内容を詳しく解説したいと思います。

そもそも即位礼正殿の儀とは?目的と意味

新天皇の即位を国内外に示す主要儀式

本来、"天皇"という位につくには様々な段階を踏む必要があり、そのために執り行われる一連の儀式を「即位の礼」または「即位礼」と言います。

<即位の礼(国事行為)>

1. 剣璽等承継けんじとうしょうけいの儀
2. 即位後朝見そくいごちょうけんの儀
3. 即位礼正殿の儀
4. 祝賀御列しゅくがおんれいの儀
5. 饗宴きょうえんの儀

10月22日に行われる「即位礼正殿の儀」は、天皇陛下の即位に際して行われる「即位の礼」のひとつで、天皇陛下が践祚せんそ(皇位を継承し天皇の位に即くこと)したことを国内だけでなく海外にも宣明する儀式です。

国事行為として開催&テレビでの放送もある!

「即位礼正殿の儀」を含む新天皇陛下の「即位の礼」は、天皇の国事行為として挙行されます。

国事行為というのは、日本国憲法において「天皇が行うもの」として定められている行為のことで、「内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負う」と憲法上にも規定されているもの。

"天皇陛下のご公務"と言うと、みなさんにも分かりやすいのではないでしょうか。

皇室の伝統儀式として1200年以上続いている!

天皇陛下の国事行為でもある「即位礼正殿の儀」、実は日本の歴史において1200年以上も続いている伝統行事でもあります。

即位の礼の始まりは、西暦781年(天応元年)に即位した第50代天皇である桓武天皇かんむてんのうから始まったのが起源です。

新天皇陛下が第126代天皇なので、1200年以上の間で70人以上の歴代天皇が即位の礼を行い、皇位を継承したと考えると、なんだか不思議な気持ちになりますよね。

そもそも、歴代天皇は近畿地方を中心としてお住まいになられ、江戸時代最後の孝明天皇までは長らく京都御所にお住まいでした。

そのため、明治天皇~昭和天皇までは京都御所にある紫宸殿で儀式を行っていましたので「即位礼紫宸殿ししんでんの儀」と呼び、京都で即位の礼を行っていました。

本来は歴代天皇のご即位には主に大極殿というお部屋が使われていましたが、焼失と再建を繰り返していたようなお部屋だったそうで、平安以降の近代につれて徐々に紫宸殿がメイン会場となってきた背景もあります。

神代かみよの時代から桓武天皇(平安時代)までの即位というのは、神様への祝詞のりとの奏上、三種の神器さんしゅのしんきの献納など割と簡単なものであったと言われています。(簡単に言えば神社参拝と三種の神器の献上でおしまい…だったそうです。)

そこから、かつての中国である唐から即位関係の儀式のヒントを得て、「践祚」と「即位」を区別するための"即位儀礼"なるものが誕生し、時代とともに洗練されたものが現代でも見ることができる「即位の礼」になったようです。

豆知識

ここでひとつ、日本人なら知っておきたい豆知識をご紹介。

西暦がイエスキリストの誕生した年から数えるように、日本には初代天皇の即位から数える「皇紀」と呼ばれる独自の紀年法があるのをご存知ですか?

初代天皇陛下である神武天皇じんむてんのうのご即位から数えて、2019年の今年は「皇紀2679年」にあたる年なのです。

皇紀は失われつつある日本の歴史文化のひとつであり、一般的に使うことはなかったかもしれませんが、当時の日本国民には広く知られていました。

1番分かりやすい例えを出すと、零式艦上戦闘機です。

いわゆる"ゼロ戦"の呼び名で現代でも親しまれていますが、この「0(=ゼロ)」という数字は皇紀から由来しているのをご存知でしたか?

堀越二郎設計主任(ジブリ映画「風立ちぬ」の主人公になりました)をはじめとした三菱重工が試行錯誤しながら最新鋭戦闘機を設計・開発し、新型の艦上戦闘機として正式に採用された年が西暦1940年。

ちょうどこの年は皇紀2600年の節目の年であったことから、国を挙げて紀元二千六百年記念行事が行われ、「零式艦上戦闘機」という名前が付けられました。

(ちなみに、皇紀2600年にあたる昭和15年生まれのおじいちゃんに「(お生まれの年が)ゼロ戦と一緒ですね!」と言うと結構喜んでもらえます)

現代では皇紀自体があまり知られていないため一般的には使われていませんが、神社新報(神主さんが読むような新聞)によると、「神社新報の歩み」の年表には「平成2年2月、皇紀二千六百五十年奉祝式典」というものが書かれていたので神宮をはじめとしたお宮で式典や記念行事があったのかもしれません。

「即位」にはこんなにも壮大な歴史があったのですね!

王族や国のトップも!?世界各国の要人が集結

「即位礼正殿の儀」を分かりやすく結婚式で例えると「"披露宴"に当たるもの」と言えばイメージしやすい人も多いかと思います。

即位の礼意味合い結婚に例えると…
剣璽等承継の儀法的・社会的に立場が認められる婚姻届けを出す
即位後朝見の儀親しい間柄(国民)
に顔を合わせてご報告
婚姻後の両家の挨拶
即位礼正殿の儀お世話になっている人
(外国の要人)にご報告
披露宴
祝賀御列の儀

饗宴の儀
お世話になっている人(国内外の要人)
とのお披露目パーティー
2次会パーティー

ここに、”挙式”にあたる行事として宮中祭祀の”大嘗祭だいじょうさい”というものが加わります。

こうやって見比べるとスケールこそ違うものの、なんだか身近に感じることができるため、一連の行事の理解が深まるのではないでしょうか。

新天皇陛下のご即位は国民だけでなく海外でも注目されており、2019年10月22日(火)の「即位礼正殿の儀」には各国トップの要人が新天皇誕生のお祝いに駆け付けることになっています。

ちなみに、この海外の国賓は陛下ではなく日本政府が招くことになっており、式典委員会で決定された内容によると"日本が国家として承認している195か国の元首など"を来賓としてお招きするそうです。

平成2年の11月12日に行われた上皇陛下の「即位礼正殿の儀」の時には、当時イギリス皇太子だったチャールズ皇太子殿下とダイアナ妃殿下夫妻が国賓として儀式に参列しています。

参加人数にも限りがあるため、「即位礼正殿の儀」に参列するのは政治家だけでなく各国のロイヤルファミリーなど、まさに各国のトップクラスのみ。

錚々そうそうたる顔ぶれが揃う機会は世界的に見ても滅多にないと言えるので、ぜひ注目して見てみてください。

即位の礼の日程を左右する”登極令”とは?

登極令とうきょくれいと言うのは、天皇陛下の御代替わりみよがわりにおける即位の礼について規定している、いわゆる"皇室専用の法律"のようなもの。

法律という難しいイメージをしてしまうかもしれませんが、フランクに解釈すると「即位の礼」のさまざまな決まり事が書かれた「ルールブック」のようなもの。(と言っても、皇族方や宮内庁にとっては大切な決まり事ですが…。)

見どころ① 両陛下がお召しになる古式ゆかしく「美しい和装束」

「即位礼正殿の儀」の1番の見どころとも言えるのは、何と言っても日本の伝統的で美しい「和装束」。

儀式の際に両陛下がお召しになる衣装も古式に則って定められており、新天皇陛下は"天皇"しか身に着けることが許されないと言われている「黄櫨染御袍こうろぜんのごほう」の束帯そくたい、新皇后陛下は「五衣唐衣裳いつつぎぬからぎぬも」いわゆる「十二単じゅうにひとえ」をお召しになられます。

天皇陛下がお召しになった特徴的な冠は、ピンと真っすぐに伸びているのが”天皇の証”。

平安時代さながらの和装束は滅多にお目にかかれる代物ではないため、この衣装を見るだけでも相当な価値があると言えるでしょう。

見どころ② 平安絵巻さながらの宮内庁職員の衣装と「即位についてのおことば」

「即位礼正殿の儀」でお目にかかれるのは両陛下の和装束だけではありません。

秋篠宮皇嗣こうし殿下をはじめとした成人皇族方の和装束姿や、即位の礼に欠かせない宮内庁職員たちによる古式装束の様子もなかなか見応えがあるものです。

特に太刀・弓・やなぐいほこたてを持ち、闕腋袍けってきのほうと呼ばれる冠を被り、挂甲けいこう・肩当てをつけた威儀物捧持者いぎのものほうじしゃと呼ばれる宮内庁職員たちの衣装や、先導をする侍従たちの和装束は平安時代を思わせる独特な伝統衣装。

会場となる正殿松の間に集結し行列をつくる和装束の人々の姿は、まるで平安時代の絵巻物から飛び出してきたような珍しい光景なのです!

このように「即位礼正殿の儀」では、和装束に身を包んだ宮内庁の侍従たちや皇族方に見守られ、黄櫨染御袍をお召しになった天皇陛下から「皇位を継承した」という内容のお言葉を賜ることで、「天皇」という地位に即位したという宣言が行われます。

“太陽”と”月”を刺繍した大旗の高さは8m90cm!

竿頭かんとうに糸飾りをつけて紫宸殿ししんでん前に立て掛けられる大きな旗は、大錦旛だいきんばんと呼ばれる伝統的な大きな旗。

その中で最も高貴なものとされている、金色の太陽を刺繍した「日像纛旛にっしょうとうばん」、銀色の月を刺繍した「月像纛旛げっしょうとうばん」は、それぞれは対となって掲げられ、見事な刺繍がお目にかかれます。

そして今回は、安倍晋三内閣総理大臣が「萬歳ばいんざい(万歳)」と揮毫きごう(毛筆で書くこと)した「萬歳旛ばんざいばん」も掲げられることがニュースで話題となりました。

他にも、金色に輝く金鵄きんしが刺繍された「霊鵄形大錦旛れいしけい(がた)だいきんばん」、頭八咫烏やたがらすを刺繍した「頭八咫烏形大錦旛やたがらすけいい(がた)だいきんばん」が対として掲げられるので、目を凝らして探してみるのも楽しいかもしれませんね!

見どころ③ 関連イベント

「即位礼正殿の儀」が終わると、関連イベントとして様々な行事が日程に組み込まれています。

国民も参列できる「祝賀御列の儀(祝賀パレード)」

トヨタのセンチュリーをベースとしたオープンカー

日程:10月22日

天皇陛下や皇族方がお乗りになる「御料車ごりょうしゃ」。

2006年から愛用され続けているトヨタ・センチュリーロイヤルはテレビなどでもよく目にしますが、その中でもパレード用に造られたオープンカーでのお出ましは、思わず日の丸の小旗を振りたくなる光景です。

こちらのオープンカーは馬車をイメージしてデザインされた代物で、後部ドア付近とナンバープレートがある位置に天皇家の紋章である「十六八重表菊 じゅうろくやえおもてぎく」、いわゆる菊花きくか紋章にも注目です!

即位の礼にあわせて”記念硬貨”が発行される!

1万円金貨と500円ニッケル黄銅貨
発売日:10~11月ごろ

今回の「即位の礼」を記念し、特殊デザインが施された記念硬貨が発行されます。

その種類は

・1万円金貨
・500円ニッケル黄銅貨

過去の傾向から見て500円ニッケル黄銅貨であれば、銀行へ行けば通常価値と同じ金額で販売されるのが一般的ですが、1万円金貨の方は「プレミアム貨幣」となるため造幣局での購入が予想されています。

(現在の上皇陛下が天皇にご即位した時には、10万円金貨が200万枚と500円白銅貨3000万枚が発行されました!)

特に1万円の硬貨は珍しいですし、金貨となるとちょっと欲しくなってしまいますよね!

令和の記念と天皇陛下の繁栄と安寧を願い、あなたもぜひ記念硬貨を手に入れてみてはいかがでしょうか?

おわりに

天皇陛下のご即位の「即位礼正殿の儀」では一般人は参加することはできませんが、国事行為のためテレビでの生中継で拝見することができます。

また、祝賀御礼の儀は祝賀パレードのことなので、こちらは実際に足を運ぶことでお祝いのムードを体感することができます。

日本古来の伝統文化を目で見て触れることができ、日本の歴史の新たな1ページに刻まれる瞬間を、ぜひみなさんもぜひ注目してみてくださいね!