2019年11月14日、15日の二日間にかけて執り行われる「大嘗祭だいじょうさい」と呼ばれる重要な儀式は、天皇陛下にご即位後、初めて行われる宮中祭祀きゅうちゅうさいしというだけでなく、一世一代限りのとても珍しい儀式です。

そんな「大嘗祭」の準備までに行われる行事や儀式を総称して「大嘗宮だいじょうきゅう」と呼ばれているのですが、一体どのようなことが行われているのでしょうか?

今回は、私たちにとっても意外と身近な「大嘗祭」のことや、一連の儀式で行われるちょっと変わった行事などもまとめてご紹介します。

そもそも「大嘗宮の儀」で行われる「大嘗祭」とは?

皆様は、「新嘗祭にいなめさい」や「神嘗祭かんなめさい」という神社のお祭りを知っていますか?

お米の豊作を感謝するお祭りとして、毎年秋頃に全国各地で行われているのが「新嘗祭」や「神嘗祭」と呼ばれる神道のお祭りです。

場所
目的日程
神嘗祭・宮中
・伊勢の神宮
(一部、天照大神を祀っている神社)
お米の初収穫を感謝し、
天照大神へ新米のお供えをする。
10月17日
新嘗祭・宮中
・全国各地の神宮と神社
豊作を感謝し、
収穫祭としても全国の神社で行われている。
11月23日
(勤労感謝の日)

11月23日は「勤労感謝の日」として祝日に制定されていますが、この「新嘗祭」と呼ばれるお祭りが起源となって定められた祝日なのです。

その11月23日に行われる「新嘗祭」は毎年天皇陛下が宮中祭祀きゅうちゅうさいしとして行っていましたが、天皇への代替わりをされてから初めて行われる「新嘗祭」のことを「大嘗祭」と言い、関連する行事や儀式を合わせて「大嘗宮の儀」と呼びます。

大嘗祭の歴史:330年以上続く伝統的な宮中祭祀

第35代、第37代天皇でもある斉明さいめい天皇の時代(7世紀ごろ)には「大嘗祭」の原型とも言われる儀式が行われていていましたが、その頃はまだ即位と結びついた一世一度の今はではありませんでした。

また、室町時代末期になり戦国時代に突入すると、戦乱や朝廷の窮乏を理由に221年間、行われなかった歴史もあります。

儀式の内容が今のように宮中祭祀として行われたきっかけとなったのは、第113代天皇の東山ひがしやま天皇のご即位後、初めての「新嘗祭」を「大嘗祭」と定めてからです。

以来、今年までの330年以上続く歴史と伝統を誇る、宮中祭祀の中でも重要な儀式となりました。

※斉明天皇:1人の天皇が退位後に再度天皇に即位することを重祚ちょうそと言いますが、斉明天皇は126代続く天皇の中でも2人しかいない重祚をした天皇の1人です。

重祚した天皇即位期間
1回目の天皇第35代 皇極天皇642年2月19日~645年7月12日
重祚後第37代 斉明天皇655年2月14日~661年8月24日

重祚した天皇即位期間
1回目の天皇第46代 孝謙天皇749年8月19日~758年9月7日
重祚後第48代 称徳天皇764年11月6日~770年8月28日

ちなみに、重祚をしたお二人の天皇は、歴代に10人しかいないと言われる女性天皇でもあります。

No.歴代女性天皇在位期間
1第33代推古天皇592年~628年(35年5ヶ月)
2第35代皇極天皇642年~645年(3年5ヵ月)
3第37代斉明天皇655年~661年(6年6ヵ月)
4第41代持統天皇686年~697年(7年6ヵ月)
5第43代元明天皇707年~715年(8年2ヵ月)
6第44代元正天皇715年~724年(8年5ヵ月)
7第46代孝謙天皇749年~758年(9年1ヶ月)
8第48代称徳天皇764年~770年(5年9ヶ月)
9第109代明正天皇1629年~1643年(13年11ヶ月)
10第117代後桜町天皇1762年~1770年(8年4ヶ月)


令和元年における「大嘗宮の儀」の日程

令和における「大嘗宮の儀」では本祭を「大嘗祭」とし、11月14~15日にかけて行われます。

しかし、当日だけに留まらず、「大嘗祭」に関連する行事や儀式は即位後すぐに始まっているのです。

例えば、5月8日に行われた大嘗祭の日程を賢所かしこどころへ報告する「期日奉告の儀」から始まり、5月10日には伊勢の「神宮」へ陛下のご即位礼と大嘗祭を行う期日を勅使ちょくし(天皇の使い)が奉告し幣物へいもつを供える、神宮への「奉幣ほうへいの儀」など。

天皇ゆかりの場所では、今回の「大嘗祭」の日程のご報告をするなど、即位礼の一環として着々と準備を進めていきます。

その他にも、大嘗祭の時に奉納される新米の収穫儀式や、大嘗祭を行うための特別な神殿造りが始まります。

このように、テレビでは放送されていない所でも天皇陛下を初めとした宮中では、準備に追われているのです!

※賢所:宮中において三種の神器のひとつである八咫鏡やたのかがみを祀る部屋で、宮中三殿きゅうちゅうさんでんのうちのひとつでもある非常に重要な場所です。

宮中三殿祀っているもの
賢所八咫鏡
皇霊殿歴代天皇および皇族の御霊
神殿
・天津神…地上世界の神々
・国津神…天照大神がいる高天原の神々


特に賢所にある八咫鏡は天照大神の霊力が宿っていると伝えられ、宮中祭祀などの儀式や重要な報告などは賢所でお祈りをすることで天照大神(アマテラスオオミカミ)本人にご報告をするという歴史があります。

本来であれば天照大神が祀られている神宮(伊勢神宮:三重県)へ毎回お祈りをするのが最良ですが、皇居から距離もあるため賢所でお祈りし、必要であれば再度改めて伊勢野神宮でお祈りをするのが恒例です。

大嘗宮の儀~大嘗祭当日までの流れ~

令和における「大嘗宮の儀」および「大嘗祭」は、「延喜式えんぎしき」と呼ばれる代々伝統のある古式に則り行われます。

「大嘗祭」の当日は11月14日の夜から15日の朝にかけて行われますが、関連行事としては既に始まっているものや、これから迎えるものもあります。

大嘗宮の儀~大嘗祭までの工程①~お祀りの最初は"占い"から始まる?!

宮中では、古くから陰陽道と呼ばれる占いによって祀り事の様々なことを決定していた歴史があります。

そんな現在でも、大嘗祭における決定事項は占いを用いて行われているのをご存知でしたか?

令和の大嘗祭の「悠紀」は栃木・「主基」は京都

大嘗祭は、今年に採れた新米を神様に奉納をする儀式です。

その肝心なお供え物である新米を収穫する稲を準備する、斎田さいでん(田んぼ)の地域2ヶ所を決定するのですが、毎回選出される都道府県が異なります。

お供え物である新米の献上を行う地域として選出されて代表となる田んぼのことを「悠紀ゆき」と「主基すき」と言い、大嘗祭の際には毎回東日本の代表地区と西日本の代表地区が選出されます。

令和の「大嘗祭」において、東日本を代表する悠紀と呼ばれる斎田として栃木県が、西日本を代表する主基と呼ばれる斎田には京都府の選出が決まりました。

その選出方法は陰陽道とともに古代から続く、文化を重んじた「亀卜きぼく」と呼ばれる占いで選出されるのです。

この「亀卜」と呼ばれる占いは、亀の甲羅を火であぶり、そのヒビの割れ具合から新米を献上するための「悠紀」と「主基」を決めます。

先進国の日本でも、昔のおまじないのような占いで決めているのは、少しビックリしてしまいますよね!

大嘗宮の儀~大嘗祭までの工程②~各地でもお祭り行事が行われる

奉納する新米の準備だけでなく、天皇陛下自らも大嘗祭当日に向けて御禊ごけいと呼ばれる"みそぎ"を行い、全国各地の神社でも新嘗祭に向けての地鎮祭などのお祭りが行われます。

※御禊:大嘗祭などで禊を行うことを御禊と言い、歴代の天皇は京都の賀茂川などに臨んで行なった歴史があります。

ここで一番有名な行事は、先ほどの話にもあった「神嘗祭かんなめさい」と呼ばれる、天照大神への収穫の感謝とご報告をするお祭りです。

宮中でも神嘗祭が行われますが、一般人でもお祭りに参加できるのは伊勢の神宮で行われる神嘗祭です。

伊勢神宮では年間を通して1,500回もお祭り行事が行われていますが、その中で最も重要なお祭りが、神嘗祭と言えるでしょう。

白い和装束を来た宮司さんが行列をなして新米を奉納する儀式で、一般人でも参道から見学することができます。

また、奉納行列にも条件によっては参加することができるので、実際にご自身で見学に行き参加するのもオススメです!

2019年伊勢神宮奉納行列

開催月日令和元年10月6日(土)
開催時間10:00~12:00頃解散
募集人数12名
締め切り令和元年9月9日(月)
条 件①小学校3年生~6年生の女の子。
②髪の毛が後方でひとつにまとめられる長さであること。
参加料無料


2019年における伊勢の神宮の神嘗祭予定

外宮(豊受大神宮)
由貴夕大御饌
(ゆきのゆうべのおおみけ)
10月15日(火) 午後10時参道などから見物可能
由貴朝大御饌
(ゆきのあしたのおおみけ)
10月16日(水) 午前2時参道などから見物可能
奉幣10月16日(水) 正午
御神楽10月16日(水) 午後6時参道などから見物可能
内宮(皇大神宮)
由貴夕大御饌10月16日(水) 午後10時参道などから見物可能
由貴朝大御饌10月17日(木) 午前2時参道などから見物可能
奉幣10月17日(木) 正午
御神楽10月17日(木) 午後6時参道などから見物可能


大嘗宮の儀~大嘗祭までの工程③~儀式の舞台「大嘗宮」の建設

大嘗祭が行われる会場となる宮殿を「大嘗宮だいじょうきゅう」と言いますが、この宮殿は大嘗祭のためだけにその都度造られるのをご存知ですか?


祭祀の7日前から建設し、5日以内に造り終え?!

大嘗祭が執り行われる大嘗宮は、儀式までの様々な関連行事までに地鎮祭や建設などが行われ、当日の7日前から建てられた宮殿は、「大嘗祭」が始まる2日前の5日以内に完成します。

令和の大嘗祭での建築にかかる総額は14億円とも言われており、秋篠宮文仁親王殿下は宮中の神嘉殿しんかでんの一部をご活用することを提案されたそうでニュースでも話題となっていましたよね。

また、大嘗祭が執り行われる「大嘗宮」の仮設工事が初の一般競争入札が行われ、大手ゼネコンの清水建設が予定されていた価格の六割にあたる9億6700万円で受注したことでも話題となりました。

当初は15億かかるといわれていた仮設工事ですが、清水建設の落札によって国費の大幅の削減にもつながったと言われています。


祭祀後は直ちに撤去される"幻のお宮"

そんな手間暇のかかる大嘗宮の神殿は、大嘗宮の儀が終わると同時に速やかに撤去されるため、数十日間限定の「幻の宮殿」とも言われています。

「もったいない」という意見もあるようですが、今回の大嘗祭では資材の再利用を行うことも検討されていて、伊勢の神宮が20年に一度お宮の建て替えを行う式年遷宮しきねんせんぐうのように木材を各地の神社の修繕や建て替え用にも使われることも考えられます。

いよいよ本番!大嘗祭当日の儀式と翌日以降の儀式

大嘗祭の儀式は夜中に行われる

大嘗祭をはじめとした、多くの宮中祭祀は"神様の時間"と古来から言い伝えられてきた深夜の時間帯にかけて宮中で執り行われます。

残念ながら、神殿の中で行われている儀式の内容は門外不出とされているため、テレビ中継などの一般公開はされていません。

過去の文献を参考にすると、神饌しんせんと呼ばれる神様へのご飯(お供え物)を神に奉納して、祝詞のりとという神様へのお祈りの言葉を唱えたのちに、天皇陛下がみずから召し上がりになられるという工程だそうです。

十二時辰じゅうにじしんで予定時間が決められていて、最終的な儀式の終了は寅四つ刻(午前4時半~5時頃)とされています。

※十二時辰: 1日(24時間)をおよそ2時間ずつ、12の時辰に分ける時法で、古来から中国や日本で使われてきました。

大嘗祭後も天皇陛下の祭祀は続いている

無事に「大嘗宮の儀」が終わったあとも「大饗だいきょうの儀」から始まり「即位礼及び大嘗祭後賢所御神楽だいじょうさいごかしこどころみかぐらの儀 」まで、天皇陛下の宮中祭祀や関連行事は続きます。

途中、前四代を遡った歴代天皇のお墓である天皇御陵てんのうごりょうへのご報告行事の際には、京都で「茶会」が開かれるとのことなので、大嘗祭後のお茶会のニュースが放送されるかもしれないですね!

おわりに

「勤労感謝の日」というと、私たちにとっては楽しみな祝日の1日ですが、毎年のこの日は宮中で天皇陛下が新嘗祭というお祀りをしています。

今年は特別に盛大な「大嘗祭」として行われるため注目されていますが、みなさんも新米が食卓へ運ばれる時期には、お近くの神社での新嘗祭に参加されてはいかがでしょうか?