数ある日本の伝統文化の中でも、とりわけ華道というものはグローバル化に積極的であると言えます。

非対称的でアンバランス、四季や詫び寂びを味わう華道は日本人の独特なセンスが備わっているからこそ楽しめるものに思えますが、実際は世界中に大きな広がりを見せ、人々に愛されているのです。

華道のグローバル化には、それぞれの流派が華道の海外進出に尽力しているということの影響が大きいです。

英語や中国語の華道教本も多く発行されていますし、規模の大きな流派は海外にも多くの支部を構えています。

池坊は約100支部、小原流は64支部、草月流は約120支部もの拠点やスタディーグループを海外に広げています。

それもアジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカと世界各地に存在しています。

もちろん現地に住んでいても日本の伝統文化を楽しみたいという目的で日本人が主宰している団体もありますが、華道を研究して正式にお免状を取得した外国人が主体となって運営されているグループもあります。

それぞれの支部で熱心な教室や研究会が行われており、規模の大きいところや著名な華道家のいる地域では華展も行われています。

華道が海外で愛される理由

華道が目覚ましい海外進出を遂げた大きな理由のひとつとしては、いち早く西洋のものを取り入れた柔軟性が挙げられます。

明治時代以降、西洋の草花が日本にたくさん輸入されるようになりました。

それまでも時代に合わせた変化を伴いながら発展してきた華道は、その時流に応えるかのように、西洋の花材を作品づくりに取り入れるようになりました。

花の生け方も、西洋風の建築様式やインテリアに合うようなスタイルが考案されました。

その代表的なものが水盤に生ける「盛花」です。

こうして西洋文化と調和できるものへと進化した華道は、早い段階で海外進出の準備を済ませていたとも言えるでしょう。

自由な発想で西洋の草花を扱った作品がたくさん生み出されたことは、華道は日本らしい花材を無理に調達しなくても実現できる芸術なのだという認識に繋がりました。

それによって日本在来の植物が手に入りづらい外国でも、現地調達できる花材で気軽に生け花を楽しむことができます。

そして、西洋式のインテリアでも様になる生け花は、容易に海外生活で取り入れることのできる日本の文化です。

特別な道具がなくても作品づくりは可能なので、日本人から海外のの親日家へ、他の文化に比べると比較的簡単に紹介することのできる華道が広まっていったのは想像に難くありません。

世界規模で活躍する華道家

そのまま「IKEBANA」と世界的に呼ばれている生け花。

数々の著名な華道家も世界規模で活動をし、海外の華道愛好家や親日家を喜ばせています。

【假屋崎省吾さん】

日本でも有名な華道家、假屋崎さんは、その個性的で華やかな作品で世界中の人々の目を楽しませています。

イギリス、フランス、オランダ、イタリア、中国、タイ、シンガポールなど数々の国で個展やコラボレーション展示、デモンストレーションを行っています。

他にも、フランスの老舗クリスタルブランド「Daum社」よりプロデュースされたクリスタル花器をデザインするなど、彼の華道家としての活動は世界にも大きく評価されています。

【池坊専永さん】

池坊華道の四十五世を継承している家元も、華道を通じた国際交流に自ら積極的に力を注いできた華道家の一人です。

彼は池坊家元として、そして六角堂住職としての仕事もある中で20代のうちからアメリカ、ヨーロッパ、東南アジア各地を訪問し、生け花の海外普及活動を行ってきました。

今ほど海外への渡航が簡単ではなかった時代、たくさんの苦労を重ねながら、その土地の身近な花材を使ったデモンストレーションを開催して華道の魅力を海外に伝えていったそうです。

その活動は今でも続いており、2003年にはロシアのクレムリン宮殿で生け花のデモンストレーションを行いました。

【小原宏貴さん】

小原流の若き五代目家元も、海外への生け花普及活動を積極的に行っています。

ニューヨークを中心とした華道の講演会やデモンストレーションを行う活動を2013年から開始しており、陸軍士官学校やハーバード大学の学生の前で華道を実演しました。

小原流は三代目家元の豊雲さんも海外での活動に積極的でした。

前衛的な作品で生け花の新たな可能性を開拓していった三代目は、後の四代目家元となる息子を助手として海外に出向き、個展を開催しました。

自身の作品にも海外のエキゾチックな品を大胆に取り入れ、晩年にも己の集大成となる作品を生み出すために海外を巡ったと言います。

そんな祖父の海外志向を五代目も継承しているのでしょう。

他にも、各流派の家元や名のよく知られた華道家は海外でも招致され、華やかな式典に作品を提供したり人々の目の前でデモンストレーションを実施したり華展を開催したり、とその活躍の規模は目覚ましいです。

西洋のフラワーアレンジメントとは違った華道の赴きは、上流階級を中心に味わい深い芸術のひとつとして高く評価されているのです。

華道に興味を持った方は、体験レッスンや教室に通ってみるのはいかがでしょうか。