自分の手で作る、好みのものを収集する、日常の暮らしの中で使う…陶磁器には様々な楽しみ方があります。
なぜ日本の陶磁器は多くの人を魅了するのか。
その魅力のワケを探っていきたいと思います。
日本の陶磁器の特徴
日本には縄文土器から現代まで1万年以上にわたる「やきもの」の歴史があり、現在も全国各地で陶磁器が作られています。
陶磁器の発展は食文化に大きく関係します。
2013年、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ世界文化遺産に登録されました。
日本料理は「目で食べる」といわれ、美味しく食べるための演出に、形や色、模様など多種多様な食器が使われます。
洋食器と違って手に持つことが多い和食器の場合は、デザインだけではなく、大きさ、重さ、手触りまでもが器選びの要件となるため、一般家庭においても自然と食器を選ぶ感覚が養われてきました。
また、日本伝統の文化である茶道や華道でも、陶磁器は重要な役割を担ってきました。
日本では「やきもの」は単なる実用的な容器としてではなく、芸術性や精神性をも表す存在として、日々の暮らしの中にあり続けてきたのです。
日本は、およそ1万年以上もの「焼き物」の歴史を持つ国です。
現在も北海道から沖縄まで全国各地に陶磁器の産地が存在し、国内外から多くの焼き物ファンが訪れています。
陶器と磁器の違いと特徴
陶磁器とは焼物全般を指す言葉です。
陶磁器には主に陶器と磁器の2種類があります。
後ほど陶磁器の歴史についてご説明しますが、日本に磁器が登場したのは江戸時代初期1610年代のことです。
陶器と磁器の最大の違いは硬さと薄さにあります。
陶 器の特徴
陶器の主な原料は陶土です。
焼成温度は1100~1300度。
磁器よりも柔らかく水を吸収します。
暖かみのある感触で料理や飲み物が冷めにくいのが特徴です。
陶器の歴史は古くそのルーツは縄文土器までさかのぼります。
陶器の代表的な産地には、美濃焼、瀬戸焼、信楽焼、清水焼(京焼)、萩焼、唐津焼、備前焼などがあります。
磁 器の特徴
磁器の原料には陶石と呼ばれる岩石を細かく砕いたものを使用しています。
磁器を「石物」と呼ぶのはそのためです。
磁器の焼成温度は1250度~1400度。
磁器の焼成温度は非常に高く、ガラス質で薄いという特徴を持っています。
中国では質感が玉と似ていることから古くから珍重されてきました。
冷たくて鋭利な印象がありますが、そこが磁器の魅力でもあります。
中国での磁器の歴史は古く、北宋時代(紀元前960年~1279年)の遺跡から白磁が多数出土しています。
日本での磁器の歴史は浅く製造がはじまったのは江戸時代初期1610年代(初期伊万里)のことです。
磁器の代表的な産地には、有田焼(伊万里焼)、九谷焼、波佐見焼、砥部焼などがあります。
中国の産地では景徳鎮が有名です。
焼き物の種類
「やきもの」を見た時に、「これは何焼きだろう?」と思ったことはありませんか。
この疑問に答えるためには「やきものの種類」と「焼かれた場所(産地)」を考える必要があります。
まず、「やきものの種類」は、大きく分けて
1. 陶器
2. 磁器
3. 土器
4. 炻器
の4つに分類されます。
「陶磁器」という言葉は、暮らしの中でよく使われる陶器と磁器をひとまとめにしたものです。
陶器と磁器の違いが分かれば、用途に適した「やきもの」を選ぶことができ、より快適で豊かな暮らしができます。
次に、「焼かれた場所」です。
器の裏に窯名や作家名がある場合は、そこから探してみるといいでしょう。
日本には全国に窯業地があり、それぞれ特色のある陶磁器が作られています。
2017年1月現在、31の産地の陶磁器が「〇〇焼」として国の伝統的工芸品の指定を受けていますが、産地に属さない個人作家も多くいます。
また、同一産地内でも作り手や窯元によって様々な作風があり、「〇〇焼はこういうものだ」「こういう特徴があるから〇〇焼だ」と言い切ることが難しい場合があります。
その他、技法や様式、原料となる土の生産地で区別する場合もあります。
必ずしも「〇〇焼」と定義する必要はありませんが、知っておくと、使う楽しみがぐっと増えます。
備前焼とは、日本六古窯に数えられるほど歴史ある炻器(せっき)です。炻器は、叩くと金属的な音がすることは磁器によく似ていますが、透光性がない点は陶器と同じです。つまり備前焼は、陶器と磁器の中間のような性質を持っています。今回はそんな炻器の中でも日本の伝統を受け継ぐ備前焼について、ご紹介したいと思います。
砥部焼とは、江戸時代より愛媛県伊予郡砥部町とその周辺市町で作られている磁器です。「ぽってりとした厚みがあり、白磁に藍色が映える、日常使いの染付の器」という特徴を持つ砥部焼は、生活雑器として長く愛されてきました。今回は、磁器創業240年の歴史を持つ砥部焼の歴史や魅力、特徴についてご紹介したいと思います。
陶磁器はどのようにつくられる?
陶磁器は、「やきもの」。
粘土や石を原料として形を作って、加熱し、焼き固めたものです。
「やきもの」は、人間が初めて化学変化を用いて作り出したものといわれ、わずかな調合や温度調節の違いから、出来上がりが大きく変わる奥深さがあります。
「染付」や「粉引」などはこの手順で行いますが、「鎬」や「印花」など、素焼き前に装飾する技法もあります。
釉薬は焼けるとガラス質の膜となり、器の表面を覆います。
調合や焼成で発色を調節し、装飾に用いることもあります。
手順6:高い温度で焼成する。
窯には、登り窯などの薪窯の他、灯油や電気、ガスを使うものがあります。
窯によって温度や炎にムラがあり、思い通りの「やきもの」を作るためには、経験を通した技が必要になってきます。
どんなにベテランの陶工でも窯を開いてみるまで出来栄えは分かりません。
そこが陶芸の難しさであり、醍醐味でもあります。
色絵(上絵付)は、そのあと、絵付をして低い温度で焼き付けます。
おわりに
日本の陶磁器の魅力は、歴史と風土、生活文化から生み出された多様性にあるといえるでしょう。
古典的作風を踏襲したもの、伝統的な民芸品、現代的な技法を用いたもの、芸術性を追求したものなど、様々な陶磁器を作り出す優れた陶工と、それを愛好し、受け入れてきた使い手が常に存在し続けてきたことにより、大いに発展してきた日本の陶磁器。
窯の中で薪の灰がふりかかり、自然の釉薬として流れ落ちる様を「景色」として愛でる日本人の感性が、世界でも有数の陶磁器の国を育て上げてきたのかもしれませんね。
陶芸には、ものを作り出す楽しさと喜びがあります。元はただの土の塊から、食器や花器、果ては芸術作品など多彩な工芸品を生み出すことができます。しかし、実際に土を練ったり、成形したりした経験がないと、不安なのも事実。
陶芸の道を、一度でも志したことがある方ならお解りかと思いますが、ロクロをはじめとする成形や釉がけの方法をいかに確実に習得し、上達するかは何よりの重大テーマです。
しかし、「土練り3年、ロクロ6年」という諺(ことわざ)がある通り、その技能を習得することは容易くはありません。