書道を上達させたいと思い、調べてみると「楽しむことが大切!」、「気持ちを整えることから始めよう!」、「集中できる環境を探そう!」…

そんなことはもちろんわかっているんです!

そういった精神論に近いアドバイスではなく、具体的にどうすればいいかを教えてほしい。

そう思っている方も多いのではないでしょうか?

確かに、美しく格好の良い作品が書けるようになるために、少しでも早く、筆を使った技術的な部分について教わりたいと思うでしょう。

しかし、ここでひとつ言っておきます。


「書道において、精神の充実は欠かせない!」


書道が上手くなりたい!と思うのであれば、「書道と向き合う際に自分の気持ちを高められる方法」を見つけて下さい。

それが、書道の腕前をどんどん上達させるための近道です。

この点を頭に入れた上で、以下にご紹介する「書道を上達させるためにできること」をお読みください。

書道の上達のための振り返りチェックポイント

書道を始めると「早く上達したい」「一緒に始めた友人よりも上手く見られたい」などという気持ちが芽生えるのは、当たり前とも言えることではないかと思います。

しかし、よくよく考えてみると、「いつまでに上手くならなければならない」とか「あの人には負けたくない」という感情は、書道の本質とは少しベクトルが異なるのではないでしょうか。

自らと向き合って心をコントロールし、理想の作品を書き上げる態勢を整える。

そのような姿勢を忘れずに取り組むのが書道であり、人と比べることにあまり意味はないのです。

「集中し、焦らずに自分のペースで」という基本を忘れず、書道を楽しもうとする姿勢こそが、書道上達への一歩となります。

まずは基本を確認してみましょう。

姿 勢は崩れていないか?

自分でも気づかないうちに腰が曲がってしまっていることはありませんか。

「さっきまで上手く書けていたのに」「同じように筆を動かしているのに」そう感じた時、実は姿勢が崩れていたということがあります。

姿勢が崩れると、同じように書いているつもりでも筆の紙への接触の仕方が変わり、同じ線を書くことが難しくなります。

また、姿勢が崩れているということは、多かれ少なかれ疲れが出てきて集中を維持することができなくなっているサインです。

無理をせずにひと休みし、フレッシュな気持ちで真っ白な紙と向き合えるようにしましょう。

の持ち方は崩れていないか?

書道を始めたばかりの頃は特に、長時間同じ姿勢を維持することは難しいと思います。

筆の持ち方にも同じことが言え、時間が経つと鉛筆のように筆が斜めに寝たまま書き始めてしまうことがよくあります。

また、長時間文字を書いていると指に負担がかかり、ペンだこのような症状が現れることもあります。

姿勢にしろ、筆の持ち方にしろ、そこまで力んで整える必要はありませんが、軽い体操や深呼吸でリラックスするなどし、いつでも自然体で書きやすいコンディションを維持できるように努めたいものです。

きやすい服装で書いているか?

書道の師範と呼ばれる先生などは、伝統的な作務衣(さむえ)などを着ているイメージがないでしょうか。

「先生らしく見えるから」という理由もあるかもしれませんが、袖の裾が広く書道の際に「身体を動かしやすい」という利点があるのも確かです。

とはいえ、普段から作務衣のような特別な服装を取り入れることには少し抵抗がある人も多いでしょう。

「書きやすい服装」というのは、動きやすく筆をスムーズに運ぶことができるという意味はもちろん、自分が書道と向き合う際に「気持ちを高いところで維持することが可能な服装」という意味合いも含んでいます。

自分の好きな服装で取り組めるところは、書道の良い部分のひとつです。

作品の出来とは関係ないと決めつけずに、一度書道を行う際の服装についても考えてみてはいかがでしょうか。

書道が上達するためのアクション

手本(法帖)をよく観察する

習字の勉強や鑑賞のために、先人の筆跡を石や木に刻んだり書き写したりしたものを、法帖ほうじょうといいます。

つまり、真似てみたり参考にしたりするためのお手本のことです。

個性に溢れた自分だけの作品を書き上げられるようになるには、先人たちが遺した筆跡について学ぶことが重要です。

作者、あるいは作品によって文字の特徴は異なるため、隅々まで丁寧に観察すればするほど、その作品から学べるポイントを多く発見することができます。

「お手本をよく見て書きなさい」と書道教室の先生はよく言いますが、それにはきちんとした理由があるのです。

まずは筆を手に持つ前にお手本全体を眺めてみましょう。

どのように筆を進めていくか時間をかけてイメージを浮かべてみるのもいいでしょう。

人によってやり方は様々だと思いますが、お手本をよく観察することでひとつでも気づきが増えれば、自らの表現の幅を広げることができるはずです。

生(顧問)の筆使いをしっかりと観察して真似する

上手な人の筆使いを観察することも、お手本をよく見るのと同様にとても大切なことです。

先生が書いているところを見ていると、実に簡単そうに筆を操り、力まずスムーズに紙の上を滑らしていくと思いませんか。

しかし、いざ自分でやってみると、似ても似つかないような筆跡になってしまう。

同じように筆を動かしているつもりなのに。

そのように思うかもしれません。

観察の仕方は人それぞれですが、ただ何となく筆の進んだ跡を目で追うだけでは、たいして何も得られません。

どこで力を入れたり抜いたりしているか、曲線の部分では筆をどう動かしているか、筆を走らせる速度はどれくらいかなど、細かい部分を注意深く見るよう心掛けましょう。

自分で書いていて上手くいかない部分を覚えておいて、その部分を先生はどう書いているかを地道に一つ一つ見て学ぶという姿勢が必要です。

極的に先生や友達に見せてアドバイスをもらう

お手本を参考にしたり、先生の筆使いをよく見るところまでは、1人でも何とかこなせます。

人によってはこれだけでもかなり上達するでしょう。

しかし、自分のレベルを上げることができるであろう行動がもうひとつあります。

それは、自分の作品あるいは書いている姿を人に見てもらうということです。

中には「上手くなるまで絶対に人には見せたくない」という人もいます。

確かに、自分よりも明らかに上手い人に見せたらどう思われるか?笑われたりしないか?誰でもそんなふうに考えてしまいます。

そもそも書道は1人で静かに行うことが多く、それが良くて始めたのに、と思う人も多いと思います。気持ちは非常に理解できます。

しかし、一度想像してみて下さい。自分では何枚書いても進歩がなかった箇所が、他人のアドバイス一言でスッと上手くいくかもしれないのです。

自分では上手く書いているつもりでも、人の目からは修正点がいくつも見えていたりします。

必要のないプライドは捨ててしまったほうが、目に見えて上達が早くなります。

極的に友達にアドバイス“する”

勉強と同じで、人にアドバイスをして問題点を見つけてあげるという作業は、それ自体が自分の力にもなります。

アドバイスをしている中で、自分の作品に取り入れられるポイントが見つかる場合があるのです。

多くの作品を見て様々な筆跡や表現の技術に触れることで、書道作品を見る目をより養うこともできるでしょう。

ただし、アドバイスは基本的に相手のためを思ってすることなので、自分の作品の糧とすることばかりを考えすぎないようにしなければなりません。

また、人にアドバイスするためにはそれなりの知識や経験が必要なうえ、言葉の選び方を間違えると逆効果になってしまう場合もあるので注意を払いましょう。

にイメージをする

「書道の上達には精神の充実が不可欠だ」とはじめに書きました。

書道を始める際、精神を充実させるためにできる行動は、真っ白な紙に墨を落とす直前のわずかな時間に気持ちを集中させることだけではありません。

電車の中で何気なく揺られている時、ビルの間を歩いていてふと空が見えた時、職場での休憩時間。

そういった、日常に何度も訪れる些細な瞬間に少しだけ書道を思い出し、練習するように軽く指でなぞってイメージを膨らませるだけでも、次に練習する際にスムーズに書道の世界へと入っていくことができます。

また、荒々しく力強い作品を書きたいと思うのであれば、静かな場所で心を静めるよりも、運動をした直後やテンションの上がるアップテンポの曲を聴くなどした直後に筆を持ってみてください。

湧いていたイメージが筆跡にそのまま現れて、躍動感に溢れた作品を書き上げることができるかもしれません。

作品全体のバランスはもちろん大切ではありますが、それ以上に生き生きとした動きのある書が評価されることがあるという点も、書道の楽しさのひとつです。

習字で学んだ基礎を上手く溶け込ませるなど工夫を凝らせば、さらに人を魅了する作品となるでしょう。

筆を運び始めるその瞬間までをどのような気持ちで過ごすか、豊かなイメージを筆に乗せることができるかどうかで、作品全体が大きく変わってきます。

おわりに

書道を上達させるためにできることを紹介してきました。

書道は自分一人でも腕を上げることが可能で、自分なりのやり方で楽しめる点が魅力の一つです。

しかし、一度は書道教室に身を置いて見ることも考えてみてはいかがでしょうか。

書道のプロである先生や、他の多くの生徒の作品に触れることで、自分一人では得られなかった様々な刺激を受けることできます。

書道に対する視野がますます広がり、その魅力や上達へのきっかけを見つけることができるので、是非とも検討してみてください。