みなさんは、書道の世界にも華道や茶道と同様に、「流派」や「会派」が存在することをご存知ですか?

流派、会派といっても芸事によってその流儀は様々で、書道でも同じことがいえます。

この記事では、書道の「流派」の種類、そして実際に書道を始める上で大切な「会派」という団体について、徹底的に解説していこうと思います。

そもそも書道に流派はあるの?

みなさんは「流派」と聞いて、まず何を思い浮かべますか?

華道や茶道、盆庭、日本画、空手、柔道、弓術…といった日本の伝統芸道でしょうか。

これらはどれも「古くからの伝統を守り続けている」というイメージが強いかもしれませんね。

このような様々なジャンルにある流派の共通点は、ある特定の様式化された技術・技能を守り継承しているという点にあります。

では、現在、小さいお子さまの習い事としても人気が高く、大人習字やペン講座といった20〜60代と幅広い年齢層に注目されている書道の流派は一体どのようになっているのでしょうか?

書道における流派ができたきっかけ

平安中期、3人の能書家といわれていた、藤原行成ふじわらのゆきなり小野道風おののみちかぜ藤原佐理ふじわらのすけまさは、書道の歴史に大きく関わったとされています。

藤原行成は「権跡ごんせき」、小野道風が「野跡やせき」、藤原佐理が「佐跡させき」とそれぞれの筆跡から「三跡」と称され、藤原道長がこの3人の書跡を後一条天皇に献上した記録も残されています。

この三跡の活躍によって、今の和様書道が完成したと言っても過言ではありません。

この頃から、書道は「書いて楽しむ」だけでなく、「観て楽しむ」ものとして親しまれるようになりました。

そして、飛鳥時代から書道が急激に広まったことにより、鎌倉時代~室町時代に書道の流派が確立していきました。

中でも、室町時代には藤原行成の流れをくむ四つの流派が、最も勢力があったといわれています。

書道の流派の種類

では、日本書道にはどのような流派が存在しているのでしょうか?

流派についてもう少し詳しく解説します。

世尊寺流

世尊寺流せそんじりゅうは、平安時代に藤原行成を祖として誕生した最も古い書道流派の一つ。

「世尊寺」とは、藤原行成が母の里方である代明親王よしあきらしんのうの邸宅内に建設した寺であり、子孫が代々そこに住み世尊寺流を名乗ったことからこの名がついたといわれています。

平安時代には、貴族や宮廷が使用していた権威ある流派として知られ、尊円流そんえんりゅうの祖である尊円法親王そんえんほうしんのうもこの世尊寺流を学び始めたことをきっかけに、書風の研究で一風をなしたといわれています。

しかし、残念ながら世尊寺流という流派は現在残っておらず、室町時代に最後の当主が亡くなったことでこの流派も共に消えてしまいました。

その後、「持明院流じみょういんりゅう」や「尊円流」という新しい流派がこの世尊寺流の流れを組み、日本の書道の発展に大きく貢献していきました。

持明院流は江戸幕府の公式文書でも用いられましたが、明治維新により江戸幕府が倒れるともに勢いが衰え途絶えてしまいました。

尊円流

世尊寺流の流れを組む流派で、別名「御家流」「青蓮院しょうれんいん流」「粟田流」とも呼ばれています。

能書家としても有名であった尊円法親王そんえんほうしんのうの影響で広まったことから、「尊円流」と名付けられたとされています。

また、この尊円流という書風は青蓮院流の寺の住職に代々受け継がれ、室町時代には盛んに使用されていました。

江戸時代に入るとその名称は「御家流」と呼ばれるようになり、ここから尊朝流や有栖川流といった数々の流派に派生していきます。

武家の公式文書が御家流草書で書かれることが多かったことから、全国に広まり、寺子屋でも用いられ普及していきました。

法性寺流

法性寺流ほっしょうじりゅうは、藤原忠通ふじわらのただみちを祖とする書道の流派の一つです。

三跡でもある小野道風、藤原行成の優雅な書風から影響を受けており、法性寺流の書風はさらにそこに雄大さを加えたのが特徴で、鎌倉時代を代表する書風となりました。

また、この「法性寺」という名は、忠通が通称・法性寺関白と呼ばれていたことに由来します。

持明院流

持明院流は日本式を愛したとされる徳川家康によって、江戸幕府の公文書の書法にも採用された流派です。

先ほどもお話しましたが、明治維新の際に江戸幕府の公文書の書風であることが容認されず、残念ながら衰退していくこととなりました。

持明院家は世尊寺流十七代世尊寺行季せそんじゆきすえが享禄2(1529)年に亡くなったことを機に、後奈良ごなら天皇が持明院基春じみょういんもとはるに継承させたことが始まりとされています。

その理由としては持明院家が、亡くなった世尊寺流の筆頭門人格であったためとされています。

有栖川流

有栖川ありすがわ流は、江戸時代後期に書道を世襲していた有栖川宮ありすがわのみや第五代・職仁よりひと親王により創始されました。

その後、第八代の幟仁たかひと親王によって大成。

明治以降は幟仁親王からたけひとしんのうひやすこ、徳川實枝子とくがわみえこ宣仁親王妃喜久子のぶひとしんのうひきくこの母子三代に受け継がれます。

現在の皇室においては、秋篠宮文仁親王あきしののみやふみひとしんのう正仁親王妃華子まさひとしんのうひはなこが宣仁親王妃喜久子より伝授され、継承しています。

光悦流

光悦こうえつ流は、江戸時代初期の書家であり「寛永の三筆」の一人とされる、本阿弥光悦ほんあみこうえつが始祖である和様書道の一つです。

光悦流の書風は装飾性が豊かで独特の書体が特徴的で、平安時代の古筆を手本にしたとされています。

禅林墨跡

禅林墨跡ぜんりんぼくせきは、墨筆で書いた文字を意味しますが、日本の書では禅宗の高僧の筆跡を禅林墨跡としています。

禅の精神的な内容を表すものとして独自の風格が珍重され,鑑賞の対象にもなりました。

尊朝流

尊円流の一派であり、伏見宮邦輔親王(ふしみのみやくにすけしんのうの6番目の子である、尊朝法親王そんちょうほうしんのうが発展させた流派です。

この流派が広まったことにより、いわゆる御家流ができたともいわれています。

竹峰流

竹峰ちくほう流は1980年頃に、望月秋羅もちづきしゅうらによって生み出された書道の流派の一つです。

竹峰流の特徴は、竹の根を筆にして書道を行うこと。

竹の根は相当回数しても摩耗せず、長く使用でき、文字または絵に、独特の見事なかすれが生じ、風情・趣が得られます。

和紙等に書くと、美麗で力強い書体や絵等が描けます。

書道は流派ではなく会派で選ぶのが一般的?

では「結局、現在の書道の流派はどのくらいあるの?」と疑問に思う方も多いと思います。

現在では上記で述べたような流派から数百、数千もの流派へと派生し、そもそも「流派」という概念でははっきりと分けることが難しくなっています。

実は書道界における「流派」とは、華道や日本画のようにはっきりと分かれているわけではありません。

現在の書道界においての仕組みは、自分が師事している師匠(先生)の筆法をその門下生(弟子・生徒)が長年にわたって習得し、それを培った門下生は師匠譲りの書作品を書くことができるというのが一般的です。

ですので、そもそも書道界においては「流派」というのは言葉自体、あまり使わないとされています。

代わりによく使われるのが「会派」という言葉です。

会派とは

現在、書道界には“○○会”という多くの団体があることから、流派よりも会派という言葉がよく使われます。

会派とは、会社のようなものであり、会派によって書く文字や特徴が異なります。

例えば、日本書芸院に登録されている会派には21派から成る「漢字会派」、17派から成る「かな学会」、「篆刻てんこく会派」があります。

「漢字会派」はその名の通り漢字を書く会派であり、「かな学会」は漢字ではなくひらがなを書く会派です。

「篆刻会派」は、署名印である落款らっかんなどに用いるいんに刻す文字(篆書)を書く会派です。

そのため、入りたいと思える会派がなければ自分で立ち上げる人もいるので、現在では複数の書道の会派が存在しています。

その中でも大きく二つの会派に分けることができます。

芸術系の会派

一つ目の会派は芸術系と呼ばれる会派です。

有名なものだと、「毎日書道会まいにちしょどうかい」があります。

まさにアートのような筆法が特徴で、芸術的なセンスが求められる会派だといえます。

「型にはまらない、おしゃれな文字を書けるようになりたい」という方には芸術系の会派がオススメです。

芸術系の場合、一般的な師範を取ることを目指す人は少なく、書道展での受賞歴の有無によってその道の先が決まってくるといえます。

実際に自己流の先生が独立されて教えている形式が多く、また、近代詩文書の要素が強い会派が好みならば「芸術系」がオススメです。

この他に

創玄書道会そうげんしょどうかい
日展にってん(正式名称:日本美術展覧会)
産経国際書会さんけいこくさいしょてん
謙慎書道会けんしんしょどうかい

といった会派が存在しています。

教育系の会派

もう一つは教育系の会派があげられます。

この教育系の会派には、「日本書道教育学会」が有名です。

芸術系の書体とは全く異なり、漢字とかなを調和よく書いた調和体が特徴の会派です。

誰でも読める美しい字を重視して学びたい方や、王道の書道のような純粋さを求めている方には教育系がオススメです。

その他に

・書壇院
・日本教育書道連盟
・日本習字教育団体
・清風会
・日本書写技能検定協会

といった様々な会派が存在しています。

それぞれに違いがあるので、自分のフィーリングや書道を行う目的、先生の手本を確認し、自分の好みに合わせて会派を決めると良いでしょう。

おわりに

いかがでしたか?

「書道の流派」というものは実質存在せず、書道界では「会派」で選ぶことが一般的です。

そのため、統一された資格も存在しないので、書道を始める際にはフィーリングを大切に自分好みの系統で選ぶことをオススメします。

慣れてくると、一文字一文字が一つの筆先の流れによって生み出され、その独特な空気感や緊張感、深い魅力にはまってしまう人も少なくありません。

なにより、純粋に「書道を楽しむこと」ことがとても大切です。

どのような会派に入ろうか迷った際には、ぜひ参考にしてみてください。