「難しそう」「とっつきにくい」と考えられがちな日本舞踊ですが、その基本はとてもシンプルなものです。
着物を着て舞う、その姿が「美しく見えること」
これが基本になります。
しかし、日常的に和服を身につけることがない現代の方が着物を着て舞うことの美しさを理解するのは難しいかもしれません。
そこで今回は「日本舞踊の基本を学ぼう!」と題して、
・日本舞踊の服装
・挨拶の仕方
・基本の構え・動き
・足さばき
・お扇子の使い方
といったポイントについてお伝えしていきます。
どうぞ最後までお付き合いください。
日本舞踊の服装と着付け
着 物の素材選び
日本舞踊の服装は着物が基本です。
そして、着物については高級なものである必要はありませんが、“初心者の方こそ「絹」の着物”をオススメします。
というのも、絹素材は表面がツルツルしていて「滑り」が良く、動きやすいです。
それに比べ、ウール素材は滑らないので滑らかに動くには「コツ」がいります。
ましてや「木綿」の浴衣で上手に踊るには、かなりの力量が必要です。
このため、初心者の方は「絹素材」の着物を用意しましょう。
着 物の着付け
日本舞踊の着物の着付けについては、最低限浴衣が一人で着られる程度のスキルが必要です。
女性ならおはしょりをして、文庫※で結ぶことができればOK。
男性なら貝の口に結ぶことができれば大丈夫です。
そして、踊っていると自然に「緩んでくる場所」に特に気を付けましょう。
例えば上前(着物を合わせたときの上に来る部分)はすぐに落ちてきますから、そこを「きゅっ」とあげられるようにしておくと、着崩れを防ぐことができます。
※文庫:振袖の帯結びの一種。江戸時代には武家の女性の基本の帯結びでした。結ぶ帯や、場を選ばず比較的手軽に結ぶことができる上、バリエーションも豊富です。

日本舞踊の流派に入門したり、教室で日本舞踊を習いはじめたりすると、半年~1年ほどで「発表会」または「おさらい会」という名称で、それまでのお稽古の成果を披露する機会が訪れます。
そんな時に気になるのが、舞台で着る「衣装(衣裳)」のこと。
挨拶の仕方

流 派によって異なる挨拶
挨拶は流派によって異なります。
正座をして自分とお師匠さんの間にお扇子を置いてお辞儀をする流派と、自分の右脇にお扇子を置いてお辞儀をする流派があります。
ただこれは最初の手ほどき(初回のレッスン)で教えてもらえると思うので、心配ありません。
日本舞踊の基本の形
それでは日本舞踊の基本の形についてお伝えしていきます。
日 本舞踊の基本の構え
まずは立ったときの基本の構えです。
背筋を伸ばして頭のつむじが上に引っ張られるような意識で立ちます。
胸を張り、肩甲骨をくっつけるようにして両手は自然に身体の脇に下ろしてください。
このときに完全に真正面を向かず、右か左の肩を「気持ち」引くのがコツです。
真正面を向くのは「間抜け」に見えるので、必ずどちらかの肩を引き気味にします(ほんの気持ち程度で大丈夫です)。
そして、ここからは立ち役(男の踊り)を踊るのか、女形(女の踊り)を踊るのかで違いがあります。
立 ち役
立ち役では足を外輪(つま先を軽く開く感じ)にします。
極端につま先を離すと下品になるので、両足を平行に並べるようにしてください。
その上で膝を少しだけ曲げる意識をします(本当に曲げるというよりも、曲げる「意識」程度です)。
そうすることで、いわゆる「腰が据わる」状態になります。
女 形
女形では足を内輪(いわゆる内股のイメージ)にします。
そして両膝はどんなときも基本的に離しません。
昔の人は下着を着けていないわけですから、膝を離していると最悪「見えて」しまいます。
そのため、余程のことがない限り両膝はつけたまま構え、踊るのです。
そして、立ち役と異なり実際に少し膝を折ります(曲げることを「膝を折る」といいます)。
これが基本の立ち方です。
袖 口の握り方
通常は右手でお扇子を持ち、左手は袖口を持ちます。
袖口の持ち方は、左手の小指で着物の袖口を持ち、内側に絞り込むイメージです。
お 辞儀をする
立っている場合も、座っている場合も、お辞儀の基本は同じです。
頭のてっぺんから尾てい骨まで「一枚の板」が入っているイメージでお辞儀をします。
一番気をつけないといけないのは、首を曲げて頭だけで「コクン」とお辞儀をすることです。
腰からしっかりと曲げ、背中が丸くならないように気をつけます。
首 を振る
首を振るときは3つのアクションで振ります。
最終的に左を向きたい時は、
1. まず普通に「右」を向く
2. 右を向いたまま「あれ?」という感じで首をかしげる
3. 左を向いて「あれ?」という感じで首をかしげる
これが基本です。
しかし、首の振り方は難しく、5~6年お稽古をしている人でも上手に首を振れる人はあまりいません。
立ち役と女形でも違うので、お師匠さんや先輩、舞踊家さんの映像を見てひたすら真似をしてみてください。
手 をかざす
「あちらへどうぞ」と案内のために手を差し出す、遠くを見るときにおでこの辺りに手をかざす振りです。
・指は開かずくっつける
・親指は内向きに折る
・指先まで「ピン」と力をいれて張る
という点に注意してください。
足さばきの基本

足さばきの基本は、「どんなに足を動かしても、上半身が上下に動かない」ということです。
つまり腰の高さが常に一定ということ。
これをしっかりと意識してください。
す り足
すり足は日本舞踊の動きの基本です。
「すり足」というくらいなので、かかとは床から離さず、つま先をあげてかかとを滑らし、反対のつま先をあげてかかとを滑らすという動きを繰り返します。
このとき膝は軽く曲げておきます。
上半身が上下に動かないように気をつけてください。
足 の踏み方
足の踏み方は「トン」と一回踏んだり、日本舞踊の基本動作であるヤットン拍子という「ヤットンヤットンヤットントン」と複数回組み合わせて踏むお稽古をします。
「ヤッ」が手で「トン」が足です。
基本的にかかとを床に落として軽く音を出すイメージで行ってみてください。
足を上げるとき、踏んだときに膝が伸びきって上半身が上下動しないように気をつけます。
扇を使った基本動作
お 扇子の構造
お扇子は竹などでできている「骨」の部分と、紙や布でできている扇面で構成されています。
骨の部分はたたんだときに一番上と下になる骨を「親骨」、その他の骨を「中骨」と呼びます。
骨をつないでいる根元の部分を「要」と呼び、舞踊用のお扇子にはこの部分におもりが仕込まれているのが特徴です。
お 扇子の持ち方
お扇子は骨の下部分を持ち、要の部分に小指があたるように握ります。
お 扇子の開き方
基本的な開き方は、左手で下側の親骨を支え、右手で上側の親骨を持って水平に開きます。
また、親骨を「一段」だけ開けておいて、「バッ」と勢いよく振り下ろして開くやり方もあります。
お 扇子の閉じ方
お扇子を閉じるときは、下側の親骨を右の手のひらで支え、左の手で上側の親骨を押さえていって閉じます。
開くときは水平に開くことが多くなりますが、閉じるときは閉じやすいように縦に閉じることがほとんどです。
扇 で指し示す
扇で景色やものを指し示すときは、指先で指し示すことを意識し、その延長線上にお扇子がある感じで行うとうまくいきます。
お扇子を閉じているときは上の親骨に添わせた人差し指でさすことを意識し、お扇子を開いてさすときは、中骨に添えている4本の指のうち、中指でさすようにイメージしてください。
おわりに
洋服を着て椅子に座る生活に慣れている現代人にとって、日本舞踊の動きは難しく感じるので、はじめは全ての動きを動画で撮影してみましょう。
また、自分ではできているつもりでも、お師匠さんや他の方から見ると、奇妙な格好になっていることも多いものです。
そこで、はじめのうちは自分の動きを動画で撮ってチェックしたり、大きな姿見を購入して、その前でチェックしながら踊ってみることをオススメします。
今回、ご説明したものはどれも基本的な日本舞踊の動きですが、実はこの基本が日本舞踊の全てとも言えます。
他にも日本舞踊の振りはありますが、この記事で説明されている基本の動きの応用だからです。
何事も基本が肝心。
ぜひ基本を身につけて、日本舞踊の奥深い世界に足を踏み入れてみてください。

2012年から中学校の体育の授業では「ダンス」が必修科目となっています。
「創作ダンス」「フォークダンス」「現代的なリズムのダンス」からひとつを選ぶのですが、生徒からの希望もあり、hip-hopを教えていることも多いのだとか。

日本舞踊を習っている人に共通する悩みとして、「なかなか上達しない」「上達しているのかどうか分からない」というものがあります。

日本舞踊教室の探し方には、ネットで探す・ワークショップや市民講座で探す・紹介で探すといった探し方があります。この記事では、初心者の方が安心して日本舞踊を学ぶための「教室」を選ぶポイントや注意点をお伝えし、実際にかかるお金や具体的な教室の探し方を解説していきます。

「難しそう」「とっつきにくい」と考えられがちな日本舞踊ですが、その基本はとてもシンプルなもの。着物を着て舞う、その姿が「美しく見えること」これが基本です。しかし、日常的に和服を身につけることがない現代の方へ「日本舞踊の基本を学ぼう!」と題して、ポイントをお伝えしていきます。どうぞ最後までお付き合いください。

一口に日本舞踊といっても、日本舞踊協会に加入している流派だけでも約120!新しく創流されて未加入の流派を加えると200以上、新舞踊などの流派を加えるとその数は正確に把握できないほど多いといわれています。

日本舞踊だけではなく、茶道や華道、武道などの流派のトップを一般的に「家元」といいますが、よく似た呼称に「宗家」というものもあります。
どちらも「とても偉い方」ということは分かるのですが、まるでお店の総本家、本舗、元祖が並立しているようで、「どう違うのか」「どちらが偉いのか」などということは正直よく分かりません。