日本舞踊の流派に入門したり、教室で日本舞踊を習いはじめたりすると、半年~1年ほどで「発表会」または「おさらい会」という名称で、それまでのお稽古の成果を披露する機会が訪れます。

そんな時に気になるのが、舞台で着る「衣装(衣裳)」のこと。

普段の着物や訪問着などなら呉服屋さんで購入、となりますが、舞台上で着る衣装(衣裳)となると見当がつかない方も多いかと思います。

そこで今回は、

・日本舞踊の衣装(衣裳)とはどのようなものなのか
・日本舞踊の衣装(衣裳)の入手法、借り方
・日本舞踊の衣装(衣裳)に合わせた小道具について

といった内容について、詳しくお伝えしていきましょう。

日本舞踊の衣装(衣裳)は「ジャンル」によって異なる

一口に日本舞踊といっても、能や歌舞伎から派生した「古典舞踊」、現代の感覚を取り入れ、新しい解釈で振付をした「新作舞踊」、演歌や歌謡曲などに合わせて振付をした「新舞踊」などに分かれ、それぞれのジャンルで衣裳も異なってきます。

また、古典舞踊でも舞台衣裳を着て踊る場合と、紋付き袴、着流しなど、通常の着物で踊る「素踊り」で行う場合があります。

ここでは、それぞれにどのような衣裳が向いているか、ということを解説します。

踊りに向いた衣装(衣裳)

素踊りで踊る演目は、

・七福神
・鶴亀
・老松

などという、一般的に「ご祝儀物しゅうぎもの」と呼ばれるおめでたい踊りが多くなっています。

必然的に祝い事や記念行事の時に演じられることがほとんどで、そのため、正装である紋付き(男性であれば紋付き袴、女性であれば紋付きの着流し)を着用して踊ります。

紋付きはお師匠さんの許可を得て、流派の紋が入った物をあつらえるのが一般的です。

典舞踊(衣裳付き)に向いた衣装(衣裳)

古典舞踊は能や狂言、歌舞伎の舞台からきたものがほとんどです。

そのため、素踊り以外で踊る場合は「衣裳付いしょうつき」と呼ばれ、役者さんが舞台で着用する衣裳と基本的に同じものを用います。

作舞踊に向いた衣装(衣裳)

新作舞踊は古典舞踊の枠組みの中に、現代の音楽や西洋のもの、アニメなどさまざまな要素を取り入れて振付をした舞踊です。

そのため、衣裳も古典舞踊で用いられるものをベースに、柄だけをアニメのキャラクターに変えたり、紋の代わりにブランドのロゴを入れたりというアレンジを加えたものが多くなっています。

舞踊に向いた衣装(衣裳)

新舞踊は演歌や歌謡曲に合わせて振付をすることが多い舞踊のジャンルです。

そのため、衣裳も演歌歌手の方がステージで着用するような柄の着物が好まれ、よく用いられます。

日本舞踊の衣装(衣裳) どうやって手に入れる?

では、日本舞踊の衣裳はどのようにして準備したら良いのでしょうか?

いくつか方法があるので、ご紹介します。

本舞踊の衣装(衣裳)を借りる

古典舞踊を衣裳付きで踊るには、歌舞伎などで用いられる舞台用の衣裳が必要です。

そのような衣裳を「自分用」にあつらえる方もいないわけではありませんが、

・非常に高額(中には数百万円になるものもある)になる
・同じ演目の踊りを再度踊ることは少ない

といった理由から、レンタルすることが一般的になっています。

下記にある「松竹衣裳」と「日本演劇衣裳」は、歌舞伎の舞台衣裳を扱っている「プロ」の衣裳さんです。

そのため、一般の方が電話をして気軽に借りるというケースには対応していません。

もし、「歌舞伎の舞台で実際に使っている衣裳を借りて踊ってみたい!」と考えるのであれば、先輩やお師匠さんにお願いして、伝手つてをたどってなんとか借りるといった感じになります。

「市川衣裳」と「小林衣裳」は、一般の方を対象とした衣装屋さんです。

※業界では“衣装さん”と呼ぶことから、一般のお店は“衣装屋さん”と呼び分けて表現しています。

そのため、一般の方でも、下記のHPや電話で連絡を取り、気軽に衣裳を借りることができます。

ただ、本物の歌舞伎の衣裳があるわけではなく、衣裳付きで使われるような舞台衣裳よりも新作舞踊や新舞踊で使われるような衣裳が多く揃っています。

日本演劇衣裳株式会社
03-5117-2035
電話でお問い合わせください。

本舞踊の衣装(衣裳)を古着・中古で手に入れる

日本舞踊の衣裳を着物の古着屋さんや、時には骨董屋さんで手に入れるという方法もあります。

衣裳付きで用いられるような舞台衣裳は滅多に出回りませんが、新作舞踊、新舞踊で使われるような柄の着物は比較的容易に手に入ります。

ただ、どのような柄が今習っている踊りに相応しいかという判断は難しく、ある程度知識やセンスが必要です。

まずはお師匠さんや先輩に聞きながら、こまめに古着屋さんを回ると良いでしょう。

リマサイトやオークションサイトで手に入れる

発表会やおさらい会では、毎回同じ踊りを踊ることは滅多になく、自分の習熟度に合わせてステップアップしていくことがほとんどです。

そのため、一度着た衣裳をもう一度着る機会はあまりありません。
(一度着た衣裳をまた着てる!と思われたくないという理由もあります)

そういった理由もあり、多くの衣裳がメルカリやヤフオクといったフリマサイトやオークションサイトに出品されるのです。

中には古着屋さんなどよりもリーズナブルに掘り出し物を発見できる場合もあるので、常にアンテナを張ってチェックしておくことをオススメします。

ただ、ある程度の知識・センスが必要なのは、古着屋さんなどで購入する場合と同じです。

人・先輩から借りる・譲ってもらう

最もオススメなのは、日本舞踊を習っている知り合いや、流派の先輩から借りたり、譲ってもらうことです。

先ほどもお伝えしたとおり、発表会やおさらい会で踊る「もの」はどんどんステップアップしていくため、一度着た衣裳はしばらく使いません。

そこで、お互いに衣裳を貸し借りしたり、後輩に譲ったりするというわけです。

また、そうして先輩から借りたり譲ったりしてもらっているうちに、「こういった踊り(振付)にはこういう柄が合うのか!」という知識も身についてくるため、勉強にもなります。

本舞踊の衣装(衣裳)に合わせた小道具はどうする?

衣裳付きで踊る場合は衣裳に合わせた小道具も舞台用ですから、「藤浪ふじなみ小道具」など専門の小道具屋さんで借りることになります。

ただ、素踊りで踊る場合の扇子や手ぬぐい、新作舞踊や新舞踊で用いる小道具の中には、煙管キセルやタバコ入れ、印籠いんろうのように自分で購入できるものもあります。

そのようなものは骨董屋さんやのみの市などをこまめにチェックし、収集しておくのがオススメです。

もしかしたら、小道具屋さんでも収蔵していない、珍品をゲットできるかもしれません。

おわりに

はじめは日本舞踊の衣裳といっても、どんなものを着れば良いのか全くわからないと思います。

しかし、お師匠さんや先輩に質問し、「これが良いわよ」と見立ててもらっているうちに、だんだんと自分でも選べるようになってきます。

また、普段から古着屋さんなどを回って自分にあった衣裳をコツコツと集めておくようにすれば、そのうち目が肥えてきて、知識もついてくるものです。

さあ、華やかな衣裳を身にまとい、日本舞踊の世界を楽しみましょう!