この記事では鵜飼うかいの歴史や、鵜舟うぶねを先導する鵜匠うしょうのこと、全国の鵜飼地についてご紹介します。

鵜飼とは?

鵜飼うかいとは、主に中国や日本で行われてきた伝統的な漁法で、という鳥を使って鮎などをとることが特徴です。

鵜の首に紐を巻き付けることで、鵜は大きな鮎を飲み込むことができなくなります。

鵜を操る鵜匠うしょうはそれを吐き出させて鮎を捕獲します。

想定する鮎の大きさによって紐の巻き具合が変わりますが、大きさの満たない小さな魚は喉にひっかかることなく鵜の胃へと落ちていくようになっています。

鵜飼の歴史

鵜飼は日本最古の歴史書である古事記や日本書紀にも記述があるなど、1300年以上も前から行われていたという記録があります。

最も古い史料でいうと、美濃国(現在の岐阜県)で大宝2年(702年)に各務かかみ郡中里の戸籍に鵜飼を職業にした人の名前として「鵜飼部都売うかいべめづらめ」という記述があります。

その後、戦国時代には織田信長が『おもてなし』の一環に鵜飼を取り入れたり、慶長20年(1615年)に徳川家康・秀忠の親子が大阪・夏の陣の帰途で鵜飼を見物したりと、時の名将にも愛されました。

さらに元禄元年(1688年)には松尾芭蕉も見学しており、

“おもしろうて やがてかなしき 鵜舟かな”

と一句読んだ話は有名です。

その後、明治時代から太平洋戦争までの期間に鵜飼は一度勢いを無くします。

明治時代に鵜飼が絶滅の危機を迎えた際、長良川鵜飼の開催地である岐阜県の知事が宮内省(現在の宮内庁)に要請したことで、鵜匠は宮内省(庁)式部職しきぶしょく鵜匠、いわゆる国家公務員として認定されました。

このように長良川鵜飼は皇室との関わりが深く、平成9年(1997年)には天皇皇后両陛下も鵜飼をご覧になりました。

「鵜飼」を支える鵜、鵜匠、鵜舟の特徴

鵜」の特徴と種類について

カツオドリ目ウ科に分類される鳥はウミウ(海鵜)、カワウ(川鵜)、ヒメウ(姫鵜)、チシマウガラス(千島鵜鴉)の4種が日本国内で確認されています。

日本の鵜飼では、その中でも最も体格の良い“ウミウ(海鵜)”が用いられています。

鵜は長時間首に紐を巻かれた状態では次第にやる気をなくしてしまうため、時折鵜匠から休暇を与えられるそうです。

また、日本語の「鵜呑うのみにする」とは、鵜が魚を噛まず丸呑みすることにちなんでいわれるようになりました。

鵜匠」の特徴と仕事

鵜舟」の特徴

鵜匠を乗せる舟は鵜舟うぶねと呼ばれています。

鵜舟の先頭で焚かれているかがり火は照明としての役割だけでなく、光に敏感な鮎を驚かせ活発にする効果や、川面を照らすことで鵜が鮎の姿を捉えやすくするためなどのさまざまな効果があります。

「鵜飼」の主な3つの漁法

徒歩鵜かちう
通常、鵜舟うぶねに乗って行われる鵜飼ですが、徒歩鵜では舟を使わず、1~2羽の鵜を連れた鵜匠が直接川に入り鮎をとります。

山梨県桂川で行われていた徒歩鵜は現在執り行われておらず、同県笛吹川石和鵜飼か、和歌山県でのみ見学できます。

放し鵜飼(放ち鵜飼)
「放し鵜飼」は「放ち鵜飼」ともいい、平成13年(2001年)まで島根県の鵜飼で採用されていた漁法で、鵜に“追い綱”を付けず自由に鮎をとらせる方法です。

放し鵜飼の復活をめざし、17年の時を経て平成30年(2018年)に京都府宇治川で内覧会が行われました。

鵜匠の元に戻らせる訓練をマスターする必要があるため、難易度が高い鵜飼です。

※追い網:鵜の潜水範囲を決めるため、鵜につなぐ網。

御料ごりょう鵜飼
岐阜県長良川ながらがわでの鵜飼は、宮内庁式部職である鵜匠によって行われており、皇室の保護を受けています。

これらは「御料ごりょう鵜飼」といわれています。

長良川鵜飼では、1人の鵜匠が同時に12羽の鵜を従えながら鮎をとります。

御料鵜飼でとった鮎は皇居へ献上され、明治神宮や伊勢神宮へも奉納されています。

日本の三大鵜飼と開催期間

本三大鵜飼①長良川鵜飼(岐阜県岐阜市)

長良川ながらがわ鵜飼」は日本で唯一、皇室御用の鵜飼(御料鵜飼)となっています。

長良川鵜飼の漁法、造船技術、観覧舟操船技術はともに県や市の重要無形民俗文化財に登録されています。

開催期間:5月11日~10月15日
※中秋の名月と増水時以外の毎日開催。

本三大鵜飼②肱川鵜飼(愛媛県大洲市)

愛媛県大洲おおずの鵜飼は他の地域のものとは少し異なり、鮎を捕獲する鵜舟を屋形船で取り囲み、間近で見学する形を取っています。

肱川を下りながら、約2時間鵜飼を見学することができます。

開催期間:6月1日~9月20日
開催期間は前後する場合があるため、下記Webサイトよりご確認ください。
※各回約2時間

本三大鵜飼③三隈川鵜飼(大分県日田市)

三隈川みくまがわ鵜飼」は大分県の重要無形文化遺産の一つとして知られており、400年の歴史を持つ鵜飼です。

見学するには、屋形船を所有する日田温泉の旅館に申し込みをします。

開催期間:5月20日~10月31日

その他の鵜飼開催地と期間

三大鵜飼の他にも、日本の各所で鵜飼は開催されています。

和鵜飼(山梨県笛吹市)

石和いさわ鵜飼」は他の開催地とは一風変わり、徒歩鵜の見学ができます。

川に入る鵜匠と鵜を目の前で見られるだけでなく、実際に自分が鵜匠になれる鵜飼体験を開催しています。

開催期間: 大体7月20日~8月19日の間、週に4日間ずつ開催

曽川うかい(愛知県犬山市)

長良川鵜飼と同じく1300年の歴史を持つとされる「木曽川うかい」です。

他の地域の鵜飼は夜がメインですが、木曽川うかいは昼にも開催されています。

また、東海地方初の女性鵜匠が在籍しています。

開催期間:6月1日~10月15日

瀬鵜飼(岐阜県関市)

長良川のほとりにある小瀬おぜ(岐阜県関市)で行われる「小瀬鵜飼」は、長良川鵜飼と同じく1000年以上の歴史があります。

醍醐天皇からの称賛を受け、織田信長に愛されたといわれる小瀬鵜飼の見どころは“狩り下り”と“付け見せ”です。

特に屋形船(観覧船)と鵜舟1が並走して川を下る“狩り下り”が素晴らしく、鵜を操る鵜匠の巧妙な手縄さばきが見ものですよ♪

開催期間:毎年5月11日~10月15日

次鵜飼(広島県三次市)

三次みよし鵜飼」では鵜の潜水範囲を決める追い綱の長さが日本中どこよりも長く設定されています。

そのため、縦横無尽に泳ぎ回る鵜の狩りを、鵜舟と並走する遊覧船から間近にみることができます。

開催期間:6月1日~9月10日

山鵜飼(京都府右京区)

「嵐山鵜飼」は嵐山の夜景とともに鵜飼を見学できるという、京都好きにとっても嬉しい鵜飼スポットです。

景勝地ならではの風情を楽しむことができます。

また、全国初の海外の方が鵜匠も誕生したことでも話題になりました。

開催期間:7月1日~9月23日

治川の鵜飼(京都府宇治市)

鵜匠は男性の割合が多いのですが、木曽川うかいの女性鵜匠につづき、宇治川の鵜飼では女性鵜匠2人の迫力満点の鵜飼を見学することができます。

嵐山の鵜飼とともに京都の有名な鵜飼です。

開催期間:7月1日~9月30日