木のぬくもりを感じさせる、日本の伝統工芸品こけし。

古くから子どものおもちゃとして親しまれてきました。

現在では、若い女性や外国人を中心に人気を集め、伝統的なものはもちろん、新型こけし、創作こけしなどさまざまに進化を遂げました。

中でも伝統こけしは、東北地方を中心に11系統存在し、職人や産地によってその工法や製法は異なります。

新型こけし・創作こけしにいたっては、さらに新しい手法が取り入れられています。

シンプルに見えるこけしですが、どうやって作られているのでしょうか?

今回はこけしの基本的な作り方を説明していきます。

こけしはどうやって作られる?

こけしは木で作られています。

こけし作りはその木を選ぶところからはじまります。

使用される木の種類は、主にミズキやイタヤカエデ。

桜やえんじゅの木を使うこともあります。

それでは、それぞれの木によってどのような違いがあるのでしょうか。

頻繁に使用されるミズキとイタヤカエデの特徴を見てみましょう。

木の種類特徴用途
ミズキきめが細かく、木肌が白くて美しい。
イタヤカエデより柔らかい材質で、山地や里山でよく見られる落葉樹。
公園や街路樹としても多用される。
樹液が多く、切ると水が滴ることからミズキの名がついたとも
こけし
印鑑
下駄

食器の材料 など
イタヤカエデ
(板屋楓)
時を経ると美しい光沢が現れる秋に成熟する木。
肌色がかった木肌を持ち、やや硬め。
カエデ科の落葉高木で、北海道から九州までの山に生育。
エゾイタヤ、アカイタヤなどの亜種も多数存在
建築用材料
家具
スキー板の材料 など

樹液から砂糖やシロップも採取可能

こけしの作り方~製法や工程とは?

材料となる木を乾燥させたら、次はいよいよこけし作りの細かい作業です。

実際に用いる道具は市販品ではなく、工人自らが自分で火を起こして、鍛冶仕事をして整えます。

鉄を金敷の上で叩き、市販品を自分仕様に作り変えたり、修理したりもします。

道具を整え、実際の細かい作業に入っていきます。

地方や工人によって、さまざまなタイプのこけしが存在します。

一体型の作り付けタイプの場合、1本の木をそのまま加工します。

一方差し込み、はめ込みタイプは頭部分と胴体部分を別々につくり、後でつなげる方法です。

次の製造過程では、差し込み、はめ込みタイプの作り方を中心にご紹介していきます。

こけしの製造工程

切り、木取り

材料である樹木を乾燥させた後、玉切り、木取り の作業に入ります。

原木である大きな木材適度な寸法に整えることを玉きり、こけしを作るために適した形に製材することを木取りといいます。

これは必要な長さに木を切り取り、粗く削って下準備をすることです。

のこぎりで寸法どおりに木を切ったり、ナタで角を落としたりして円筒形にし、こけしの形に近づけます。

木は十分に乾燥させてあるため、硬くなっており、骨の折れる作業です。

しかし、こけしの原型、基礎を形づくる作業 として、手が抜けない部分でもあります。

地挽き

ここでろくろが登場します。

材料となる木をろくろの軸の先端に取りつけ、うまに固定してカンナ(木の表面をなめらかに削ることのできる刃物)でゆっくりと削っていきます。

頭の部分、胴体の部分をそれぞれ形づくるように削っていきます。

上げ挽き

こけしのだいたいの形ができたら、バンカキという仕上げ用のカンナで削って整えます。

バンカキは木肌を繊細に、なめらかに整えることができる刃物です。

バンカキで整えた後、頭も胴もサンドペーパーでさらにきめ細かく、なめらかに仕上げます。

昔は木賊トクサ(植物の茎を煮て乾燥させ、サンドペーパーのように研磨に使っていた)や磨き藁、ヘチマなどを使って、木肌を整えていたとか。現在でもトクサを用いている工人もいます。

付け

いよいよ、こけしに生命息を吹き込む絵付け作業です。

胴体と顔に丹念な筆遣いで「こけし」をまるで生きているかのように再現します。

ここで胴体にろくろ線(ろくろを回しながらつけるボーダー柄のような縞々模様)や菊模様などを書き込みます。

墨や赤、緑のほか、こけしの系統によっては紫や黄色などの色を使うことも。

引き

系統によってはやらないこともありますが、光沢を出すための仕上げとして蝋引きという作業を行います。

頭と胴体をそれぞれろくろに立て、ムラができないよう全体に蠟を溶かし付け、布で磨いて艶を出します。

こうすることで、染料が褪せるのを防ぎ、劣化を少なくする役割もあります。

と胴体をつなげる

穴を開けて、頭と胴体を繋げます。

例えば鳴子こけしの場合は、頭と胴体をはめ込んで繋げます。

遠刈田や弥治郎、作並、肘折の各こけしは、差し込みというやり方で繋げていきます。

ついにこけしのできあがりです!

形状

こけしの製造工程でも少し触れましたが、こけしは産地、系統によってその形状が少しずつ異なっています。

り付けタイプ

頭と胴体を1本の木で作っている、一体型のこけしのことです。

素朴な雰囲気が特徴です。

津軽系(青森県)、木地山系(秋田県)がこのタイプになります。

し込みタイプ

頭と胴体を別々にろくろで挽いてつくり、それぞれに同じ大きさの穴をあけて棒を差し込み、木槌でたたいて固定するので、動くことなくしっかり固定された安定感があるのが特徴となっています。

頭が大きい遠刈田系(宮城県)のこけしがこのタイプで、細い胴体を安定して支えています。

他に作並系(同県)や肘折系、山形系、蔵王系(山形県)など多くの産地で用いられています。

め込みタイプ

差し込みタイプと同じく、頭と胴体を別々に作ってはめ込むタイプです。

一方に穴、片方に突起を作り、ろくろの回転と熱を利用して押しつけてはめ込むやり方です。

突起を穴よりも大きく作って特殊なはめ込み方をするので、職人技が必要になる技法だといえます。

鳴子系(宮城県)のこけしがこのタイプで、首がくるくる回り、キイキイと音が鳴ります。

これは、はめ込みタイプだからこその特徴です。

南部系(岩手県)のこけしもこのタイプで、頭がクラクラ動き、赤ちゃんのおしゃぶりとして発展したという説もあります。

「キナキナ」と呼ばれています。

どんな道具を使う?

に用いる道具は次のようなものです。

道具の種類使い方・特徴など
木工ろくろ
(木工旋盤)
木材を回転させるための機械。
カンナさまざまな形状、種類があり、削る作業全般に使用。
工人自らが金属を鍛錬する鍛冶仕事を行い、自分だけのオリジナルのものを用いることもある。工人の個性が出る道具。
バンカキ仕上げに用いる、木肌をきれいに整えるためのカンナ。
ウマ肘あての役割をし、固定することでろくろの回転に弾かれにくくなり、細かい作業が可能に。

自分だけのこけしを作ってみよう!

工人が職人の技を駆使して丹精に作り上げたこけしは、素晴らしい伝統工芸品です。

その職人の技のすごさを知るには、こけし作りの体験をオススメします。

付け体験に行こう

こけしの産地には、絵付け体験ができる工房や施設が多数あります。

そのいくつかをご紹介します。

本こけし館「世界でひとつの私だけのこけし」

日本こけし館では、こけしの絵付け体験が手軽にできます。

完成したこけしは蝋で磨き、その日のうちに持ち帰ることが可能です。

また、子供も体験することができます。

鳴子木地玩具協同組合
4月1日より12月31日まで無休
(入館料あり、絵付けも有料)
開館時間 8:30~17.00           
9:00~16:00(12月1日~12月31日)
宮城県大崎市鳴子温泉字尿前74-2
TEL:0229(83)3600
メール:[email protected]

下こけし資料館「旅の思い出に絵付け体験してみませんか。」

岩下こけし資料館では、こけし工人の指導のもと、絵付け体験ができます。

完成したこけしは職人がろくろにかけて蝋仕上げをしてくれます。

絵付け体験をする際、「ホームページを見て」と添えるとミニこけしのプレゼントがあるのもうれしいですね。

開館時間 AM8:00~PM17:30入場無料
(絵付けは有料です)
宮城県大崎市鳴子温泉字古戸前80
TEL0229-83-3725 FAX0229-83-2666

つや物産店「土湯こけしの絵付け体験ができるお土産店」

まつや物産店とは、「土湯こけし自慢」、「山椒しじみ」などのご当地土産を売るお店ですが、こけし工房もあり、こけしの絵つけ体験が可能です。

福島市土湯温泉町字下ノ町25
TEL 024-595-2156
(絵付けは有料です)

けしキットを購入する

せっかくだから産地にいきたいけれど、時間がないし……という方は、こけしキットを購入してみてはどうでしょうか。

こけしの白木と専用の絵の具がセットになっているもの、あるいは、サインペンや一般の絵の具でもか描けるような白木を販売している画材店や工房があります。

カワチ画材オリジナルブランド「プラス・デ・ザール」がプロデュースした「創る」をテーマにしたシリーズ 「do.Artドゥ.アート」 

高さ約25cmと大きな無塗装のこけしと絵の具のセットで、こけしは国内職人による手作業のものです。

店舗によっては販売をしていないところもありますが、一部在庫はあるようですので、ぜひ問い合わせてみてくださいね。

おわりに

シンプルだけど、奥が深いこけし。

そのつくりには職人の技が光ります。

絵付けを体験して、その難しさ、面白さに触れてみてはいかがでしょうか。