東北を中心に作られてきた伝統こけしですが、東北の中でも最も生産が盛んな県はどこかご存知ですか?
答えは「宮城県」。
なぜなら、宮城県には伝統こけし11系統のうち、鳴子系・遠刈田系・弥治郎系・作並系の4系統があるからです。
この記事では、宮城県内のそれぞれのこけし産地の特徴と、こけしを見たり購入できたりするスポットをご紹介します!
気になったら、ぜひ素敵な伝統こけしに会いに出かけてみてくださいね♪
宮城伝統こけしとは?
先ほども少しお話しましたが、宮城県内には東北地方で作られてきた11系統の伝統こけしのうち、
・鳴子系
・弥治郎系
・遠刈田系
・作並系
・肘折系
の5つの産地があります。
伝統こけしとは、師匠の下で技術を学んだ工人が、その系統の様式に基づいて、ロクロ回しや絵付けなど、すべての工程を手作業で行って作られたこけしのこと。
そして、宮城伝統こけしの5つの産地にはそれぞれ異なる特徴があります。
鳴子系こけし
伝統こけしの代表的な産地として、日本全国にその名を知られる宮城県大崎市の鳴子温泉。
そんな鳴子温泉で作られる、鳴子系こけしのはじまりや特徴などをご紹介します。
鳴 子系こけしの歴史
宮城県の遠刈田、福島県の土湯と共に三大こけし発祥の地の一つとされる鳴子。
文化・文政時代(1804年~1830年)に、山奥で木地業※をしていた人々が、自分の子供にこけしを作って玩具として与えたのがはじまりといわれています。
また、弘化年間(1845年~1848年)には、鳴子の旅館業をしていた大沼又五郎が、木地業の本場・神奈川県の小田原から来た職人から挽物技術を学び、鳴子の新しい産業としたという説もあります。
※木地業:ロクロを使って椀や盆などの木工品を作る職業
鳴 子系こけしの特徴
鳴子系こけしの特徴は、はめ込み式になっている頭を回すと、“キイキイ”と音が鳴ることです。
太い胴は中央部が少しくびれていて裾広がりの形をしており、肩には段があります。
胴には、“重ね菊”や“菱菊”と呼ばれる華やかな花模様が写実的に描かれており、頭頂部には前髪と2束の髪を描き、2束の髪の周りには赤い飾りが施されます。
「こけし」といわれた時に、まず最初に頭に思い浮かべるような、スタンダードな形のこけしが多いです。
皆さんは、「こけし女子」略して「こけ女」をご存知ですか?
こけしの第一次ブームは昭和の初め頃、第二次ブームは戦後の高度成長期に起こりました。
そして第三次が「こけし女子」を生み出した2010年からのブームです。
弥治郎系こけし
伝統こけしの中でも、カラフルでおしゃれなイメージが強い弥治郎系こけし。
宮城県白石市の弥治郎集落を中心に、鎌先温泉や福島県いわき市などでも作られています。
その歴史と特徴を、ご紹介します。
弥 治郎系こけしの歴史
弥治郎系こけしは宮城県白石市の小さな木地師の集落、弥治郎集落で作られてきました。
いつ頃誕生したか等、歴史的なことは定かではないのですが、山形県からきた弥治郎という人物が住み着いたのがはじまりだといわれており、天保年代にはすでに存在していたようです。
弥 治郎系こけしの特徴
弥治郎系こけしの特徴は、ロクロで線が描かれた、ベレー帽のような頭頂部が挙げられます。
頭部はさし込み式で、胴よりも頭が大きいです。
胴はまっすぐなものが多いですが、くびれていて裾広がりの形をしたものもあります。
胴はロクロで模様が描かれる場合が多く、着物を表現した襟や裾、蝶や花が描かれることもあります。
全体的にデザイン性があり、ポップなイメージが強めです。
遠刈田系こけし
宮城県蔵王町の遠刈田新地を中心に、遠刈田温泉や青根温泉、秋保温泉などで作られている遠刈田系こけし。
額から頬にかけての赤い髪飾りなど、描彩が華やかなことで知られています。
そんな遠刈田系こけしの歴史や特徴をご紹介します。
遠 刈田系こけしの歴史
遠刈田系こけしが作られはじめた正確な年代は不明ですが、文政年間(1818年~1830年)には作られていたようです。
遠刈田はこけしの三大発生産地の一つとされているだけでなく、現在確認されている史実の中でも最もその歴史が古く、“すべてのこけしのはじまり”の地だと考えられています。
遠 刈田系こけしの特徴
遠刈田系こけしの特徴は、大きな頭に、細くてまっすぐな胴、そして華やかな模様。
一部、なで肩や肩が張ったタイプの遠刈田こけしもあります。
頭はさし込み式で、頭頂部には手絡と呼ばれる赤い放射状の飾りを、前髪から左右へ八の字型で描く赤い飾りも特徴の一つです。
胴には菊や梅の花などを重ねて描きますが、木目模様を描く工人さんもいらっしゃいます。
作並系こけし
宮城県仙台市にある作並温泉で主に作られている、作並系こけし。
細い胴や「かに菊」と呼ばれる、独特な絵柄が印象的です。
時代を経るごとに、優しい顔立ちに変化していった、作並系こけしの歴史や特徴をご紹介します。
作 並系こけしの歴史
作並温泉を中心に発達した作並系こけしは、江戸時代後期に箱根で木地師の修行をした南条徳右衛門が、宮城県仙台市の岩松旅館に木地師として雇われこけしを作ったことがはじまりだと考えられています。
平成になってから、実は作並がすべての伝統こけしの発祥地だったということが書かれた書物が見つかり、こけし界の一大発見であるといわれました。
作 並系こけしの特徴
作並系こけしの形は、大きく分けて3つのタイプに分けることができます。
① 細くて棒状の胴体を持つタイプ
② 小さな頭を持つタイプ
③ 土台状の裾を持つタイプ
これらは子供がこけしを握って遊んでいた時代の名残だそうです。
土台状の裾を持つこけしは、細い胴体では安定性に欠けることもあるため、大正時代頃から付けられるようになったそうです。
作並系こけしの頭はさし込み式で、台形を逆さにしたような形が多いですが、中には丸いものもあります。
頭頂部には赤い輪っか状の飾りを描き、てっぺんから後頭部にかけ、1本の黒い髪を描きます。
胴に描かれた、カニのように見える菊(通称・かに菊)も特徴の一つです。
肘折系こけし
肘折系は、こけしの中で唯一、2つの系統のこけしが融合してできたこけしの系統です。
他にはない豊かな表情が特徴と言われています。
そんな肘折系こけしのルーツなどを詳しくご紹介します。
肘 折系こけしの歴史
肘折こけしの始祖は、鳴子で木地業を営んでいた職人・柿崎伝蔵だと言われています。
柿崎の生まれ故郷である山形県肘折に移り開業をした後、弟子である井上藤五郎が宮城県遠刈田で修行を始めます。
その後、柿崎の鳴子系こけしと井上の学んだ遠刈田系こけしを融合させたことで、肘折系のこけしが誕生しました。
肘 折系こけしの特徴
肘折系こけし最大の特徴は、その表情です。
三日月形の目と、しっかりとした唇など、他のこけしには見られない、強い個性があります。
基本的には直胴型で、油絵のような鮮やかな色合いがパッと目を引きます。
宮城県でこけしを見られるスポット♪
産地別に宮城県のこけしの特徴をご紹介しましたが、読んでいるうちに「宮城県にこけしを見に行きたくなった!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな方にオススメしたい、宮城県のこけしスポットをいくつかご紹介しましょう♪
カ メイ美術館
カメイ美術館はJR仙台駅から徒歩10分、地下鉄南北線五橋駅から徒歩3分、仙台観光の合間に気軽に立ち寄ることができます。
絵画、蝶の標本、こけしの3つのコーナーからなり、こけしのスペースは少し狭めですが、こけしに魅せられた理事が集めた、大正~昭和10年代頃の有名なこけし工人の作品を中心とした貴重なコレクションを鑑賞することができます。
年に数回展示会があるので、リピートするたびに新しい作品に出会えますよ。
また、夏休みの時期には、こけしの絵付け体験も開催。
旅のおみやげとして持ち帰るのも良いですね♪
日 本こけし館
毎年、鳴子で開催されている「日本こけし祭り」のために作られる作品を含め、11系統・約5,000本のこけしコレクションを見ることができる施設です。
日本こけし館の最大の魅力は、童話作家・こけし研究家の深沢要のコレクションがみられること!
また、工人のロクロ実演が見られる他、絵付け体験も開催されています。
即売所は、鳴子の中でも最も充実しているそうなので、どれをおみやげにしようか迷ってしまうかもしれません。
屋外のジャンボこけしと記念写真を撮ってSNSにアップすれば、話題になること間違いなしです!
※冬季(1~3月)は休業しています。
み やぎ蔵王こけし館
系統別に展示されたこけしと木地玩具の展示本数は5,500本で、世界一とのこと!
整然と並ぶこけしに圧倒されますよ。
工人によるロクロ挽きもすぐそばで見られる他、予約制の絵付け体験も開催されています。
ひなまつりの時期は、期間限定でこけしびなまつりが開かれるので、スキーがてら、そのタイミングで訪れるのも良いかもしれませんね♪
弥 治郎こけし村
入場無料の施設ながら、系統別にこけしが展示されているコーナーや、弥治郎こけしの解説を学べるコーナーなどがあります。
絵付け体験は700円~行っていますので、ぜひオリジナル柄のこけしを作ってみてください!
また、割れてしまったり、傷ついて不要となったりしたこけしの供養を1口1,000円で行っています。
この他、工人と触れ合えるイベントなどが開かれることもありますので、気になる方は弥治郎こけし村までお問い合わせください♪
宮城でこけしグッズを買うのに、オススメのスポット♡
こけしを見たら、買って帰りたい!という気持ちになってしまうはず。
そんな時は、これからご紹介するお店に立ち寄ってみてください。
鳴 子温泉郷
鳴子の工人数は約50人と、日本最大のこけし産地です。
そのため、こけしが買えるお店も鳴子だけで約15軒もあります!
どのこけしを買おうか、目移りしてしまうかも…。
中には、生まれた赤ちゃんと同じサイズの誕生こけしを作ってくれるお店もありますよ。
温泉とこけし、両方を楽しんでみてはいかがでしょうか?
こ けしのしまぬき
こけしのしまぬきは、宮城県の伝統工芸品を販売するショップで、こけしのラインナップも充実しています。
オススメは、“明かりこけし”です。
普段はこけしとして飾って、非常時には懐中電灯として使えるインパクト大!なこけしです!
ミニこけしが入ったこけし缶も、おみやげにぴったりですよ♡
筒状のこけしに手紙を入れて郵送できる、“通信こけし”でお友達に旅行先から手紙を送るのも良いかもしれません。
通信こけしは、絵付け体験をすることもできますよ。
桜 井こけし店
鳴子こけしの創始者といわれている大沼又五郎から、その技術を受け継ぎ先祖代々こけしを作り続けてきたのが桜井こけし店です。
桜井こけし店では伝統的な鳴子系こけし以外にも、HagoromoやKaguya、Cozchiといった海外向けに開発された、パステルカラーや蛍光色で描かれた斬新なこけしも販売されています。
3種類から選べるこけしの絵付け体験も開催されていますよ♡
仙 台城 (青葉城址)本丸会館
仙台城(青葉城址)本丸会館銘品館の入り口近くのコーナーでは、常時2人のこけし工人が交替でこけしの製作実演を行っています♪
こけしだけでなく、こけし関連のさまざまなグッズも購入することができるので、おみやげ選びも楽しくなりそう!
コーナーの壁面がガラス張りなので、入場せずに、外から眺めることもできますよ。
おわりに
宮城県の伝統こけしについてご紹介しましたが、こけしの中にもいろいろな個性があることがおわかりいただけたのではないでしょうか?
伝統こけしは一つひとつ職人の手によって作られるので、一つとして同じものは存在しません。
伝統こけしとの一期一会を楽しみにぜひ宮城県に出かけて、お好みのこけしを見つけてみてください!
ふっくらした胴体に慎ましやかな表情…。日本の伝統工芸品の一つであるこけしは、私たちをどこかホッコリとさせてくれる郷土人形です。今回は、伝統こけしの中から遠刈田こけしの雑貨を、また創作こけしからは、楽しく可愛い卯三郎こけしをご紹介します!
東北の温泉地を中心に発展し、古くから日本人に親しまれてきたこけし。
こけしの起源には諸説あり、原型ともいわれる最古のものは、今から1300年以上前の奈良時代に作られていたという説もあります。
江戸時代後期には、子どもの顔や、さまざまな模様をほどこした木の人形が作られるようになります。
空前のこけしブーム。
その陰には、若手こけし工人たちの活躍があるのです!
今回は、注目の若手こけし工人たちを、その作風や経歴と共にご紹介していきたいと思います♪
部屋の中にひっそりとたたずみ、独特な表情をたたえるこけし。
そのなんともいえない魅力にひかれ、こけしをコレクションする「こけ女(こけし女子)」も増えているといいます。
また、古くからつくられてきた伝統的なこけしだけでなく、モダンで新しい創作こけしや近代こけしも人気を集めています。
戦前から戦後にかけ、何度かブームを巻き起こしてきたこけしですが、2010年頃から「第三次ブーム」が来ており、海外からも「クールジャパン」を体現する商品として、こけしが人気急上昇中!いるといいます。そこで、今回はこれまでのこけしの歴史について、その成り立ちや由来、特徴にフォーカスしてみました。
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東北を中心に作られてきた伝統こけしですが、中でも最も生産が盛んな県はどこかご存知ですか?
答えは「宮城県」。
宮城県には伝統こけし11系統のうち、鳴子系・遠刈田系・弥治郎系・作並系の4系統があります。
この記事では、宮城県内のそれぞれのこけし産地の特徴と、こけしを見たり購入できたりするスポットをご紹介します!