江戸時代から続く老舗や、遷都とともに京都から移転してきた店舗など、東京には数多くの和菓子屋さんがあります。
また、日本の首都として明治から大正、昭和と時代が進む中で、東京の和菓子は発展を遂げてきました。
著名な文豪が愛した和菓子や江戸の粋を感じられる和菓子、行列のできる和菓子など、幅広い品を楽しむことができます。
今回は、東京にある和菓子の老舗店や人気店、人気商品をご紹介していきたいと思います♪
四季を彩る上生菓子が揃う老舗和菓子店
菓 子調進所 一幸庵(東京都文京区)
一幸庵は「わらび餅」で有名なお店ですが、芸術品のように美しいといわれる生菓子でも知られています。
季節の移ろいを表現するため、随所に手の込んだ工夫がほどこされた生菓子です。
昭和52年(1977年)創業の比較的新しいお店で、店主は和菓子の伝統を守りつつ、海外のパティシエとのコラボレーションなど、新たな可能性を広げる活動も行っています。
年のはじめには「花びら餅」、桜の季節には「花餅」や「桜餅」など、季節ごとのモチーフを美しく表現しています。
この他、国産の大粒の栗を使った羊羹を味噌風味の松風と一体化させた「栗蒸し羊羹」も人気の一品です♪
住所:東京都文京区小石川5-3-15
アクセス:東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」徒歩5分
営業時間:10:00〜18:00
定休日:日月祝
空 也(東京都中央区)
「空也の最中」といえば、東京の手土産としてよく名前があがる銘品ですが、最中だけでなく、生菓子にも多くのファンがいます。
空也は明治17年(1884年)に上野・池之端で創業、東京大空襲で焼失してしまい、昭和24年(1949年)に銀座に移転し現在に至っています。
多くの文豪が愛したお菓子として知られており、夏目漱石の“我輩は猫である”には「空也餅」が登場します。
空也餅はもち米の粒が残る餅で、ほどよい甘さのつぶし餡を包んでいます。
この他「空也双紙」や「黄味瓢」などの生菓子が有名です。
どれも彩りや装飾が少ないシンプルな意匠で、ほかの店の生菓子に比べると地味ではありますが、飾り気のない素朴な美しさが感じられ“江戸らしい”菓子だといわれています。
住所:東京都銀座6-7-19
アクセス:東京メトロ丸ノ内線・銀座線・日比谷線「銀座駅」徒歩3分
営業時間:平日11:00〜17:00 土〜16:00
定休日:日祝
御 菓子司 塩野(東京都港区)
塩野は、昭和22年(1947年)に、高級料亭が立ち並ぶ赤坂に創業した和菓子店で、場所柄から皇室関係や政財界の人々の御用達ともなっています。
生菓子は常時10種類くらい用意されていますが、春に作られる「花衣」が特に有名です。
桜の花びらをかたどった外郎生地で、黄味餡をふんわりと包んでいます。
柔らかな素材の淡い色合いが、なんともいえない優しげな印象です♡
二代目の高橋博さんが大阪で修行した経験があるためか、練り切りだけではなく関東では珍しい「こなし」の生菓子も並びます。
練り切りは白餡に求肥など餅生地を混ぜたもので、こなしは白餡に小麦粉を混ぜて蒸してから揉みこなしたものです。
住所:東京都赤坂2-13-2 (現在仮店舗にて営業 赤坂3-1-14)
アクセス:東京メトロ千代田線「赤坂駅」徒歩1分
銀座線・南北線「溜池山王駅」徒歩5分
営業時間:平日9:00〜19:00 土祝〜17:00
定休日:日
福 島家(東京都豊島区)
幕末の慶応元年(1865年)には、中仙道筋の菓子舗及甘味処として営業していたという記録が残る、創業150年の老舗です。
地域に愛される和菓子店であり甘味処としても人気ですが、力を入れているのは上生菓子です。
お店には、江戸時代に使われていた和菓子の雛形帳が残っており、大切に受け継がれてきました。
雛形帳は、たくさんの和菓子の意匠が描かれたカタログのようなものです。
普段使いの素朴なお菓子から慶弔用の装飾がされたものまで、色鮮やかに描かれています。
現在、練り切りの「江戸梅」・「江戸桜」・「江戸菊」や羊羹の「宮城野羹」など、この雛形帳に基づいて復元された和菓子が作られています。
住所:東京都豊島区巣鴨2-1-1
アクセス:JR山手線・都営三田線「巣鴨駅」徒歩1分
営業時間:9:00〜20:00
定休日:水曜日
○○といえばココ!名物のある和菓子店
金 つばといえば、徳太樓(東京都台東区)
「きんつば」で有名なのが、浅草の観音裏にある創業明治36年(1903年)の「徳太樓」。
芸者さんを見かけることもある、花柳界が広がる風情ある地域に店を構えています。
寒天で粒餡を固めて四角く切り、小麦粉をつけて焼いたのが「きんつば」です。
徳太樓のきんつばは、北海道十勝産の上質な小豆を丁寧に炊き上げ、甘味を抑えめにして小豆本来の旨味を生かしさっぱりとした味に仕上げています。
中のあんこが透けて見えるくらい薄い皮が全体をきれいに覆って、柔らかな色合いになっています。
やや小ぶりでさっぱりとしているため、いくつでも食べられます。
きんつばの他に、もち米とだるまささげをふっくらと炊き上げたお赤飯も人気の品です。
住所:東京都台東区浅草3-36-2
アクセス:東京メトロ銀座線・都営浅草線「浅草駅」徒歩15分、つくばエクスプレス「浅草駅」徒歩10分
営業時間:平日10:00〜18:00 土〜17:00
定休日:日祝
く ず餅といえば、元祖くず餅 船橋屋(東京都江東区)
文化2年(1805年)創業。
創業者の出身地である千葉県船橋の小麦粉を使って作った餅が、亀戸天神の参拝客の間で話題となり、江戸の名物となっていきました。
くず餅は小麦粉をグルテンと小麦澱粉に分離させた澱粉のみを使用する「グルテンフリー」で、和菓子で唯一「植物性乳酸菌」による発酵食品です。
江戸時代から続いてきた製法ですが、まるで現代のトレンドフードのようですね。
小麦澱粉は木製の発酵槽で乳酸発酵させ450日かけて作っています。
乳酸発酵によるほのかな香りと酸味が特徴となっています。
厳選された大豆を強めに焙煎し粗めに挽いたきな粉と、沖縄産の黒糖をベースにブレンドした独自の黒糖蜜がたっぷりかかっています♪
住所:東京都江東区亀戸3-2-14
アクセス:JR総武線「亀戸駅」徒歩10分
JR総武線・東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」徒歩10分
営業時間:9:00〜18:00
定休日:なし
福 といえば、群林堂(東京都文京区)
文京区音羽に大正5年(1916年)に創業した群林堂は、近隣に出版社が多いこともあって、三島由紀夫や松本清張などの文豪に愛されていたそうです。
こちらの大福は「東京三大大福」の一つとされ、多くの人を虜にしています。
北海道富良野産の赤えんどう豆をたっぷりと混ぜ込んだ薄めの餅で、濃厚な味わいの粒餡を包んでいます。
ずっしりした重みがあり、大胆さのある和菓子です。
歯ごたえのある塩気のきいた豆と、しっかりとした甘味の餡が見事に調和しています。
無添加で柔らかく仕上げられた餅は時間が経つと固くなってしまうので、買ったらなるべく早めに食べるのがオススメ!
みたらし団子や栗蒸し羊羹も、一緒に買い求める人が多い品です。
住所:東京都文京区音羽2-1-2
アクセス:東京メトロ有楽町線「護国寺駅」徒歩3分
営業時間:9:30〜17:00
定休日:日・月曜日
団 子といえば、向島 言問団子(東京都墨田区)
言問団子は、江戸時代末期に向島を訪れる人たちに団子やお茶でもてなす店として創業し、竹久夢二などの文化人に愛されたお店です。
店名にもなっている名物の「言問団子」は、在原業平の読んだ和歌から名付けられました。
お店が有名になったことで、「言問」は近隣の橋や小学校などの名前にもなっています。
米粉の餅を小豆餡で包んだものと白餡で包んだもの、白玉粉の餅をクチナシで青黄色にして味噌餡を包んだものの3種類があります。
甘味をおさえた上品な味わいで、見た目の色のコントラストも美しいお団子です♡
こし餡と白餡の2種がある、鳥の形をした最中「言問最中」も人気の品ですよ。
店内には創業から受け継がれてきた道具や書などの展示コーナーもあります。
住所:東京都墨田区向島5-5-22
アクセス:東武伊勢崎線「浅草駅」より徒歩15分
東武伊勢崎線「とうきょうスカイツリー駅」より徒歩12分
営業時間:9:00〜18:00
定休日:火曜日
ど ら焼きといえば、清寿軒(東京都中央区)
清寿軒は、文久元年(1861年)に創業。
看板商品のどら焼きは、円形の皮で餡を挟んだオーソドックスな「大判どら焼き」と、楕円形の皮を二つ折りにして餡を挟んだ「小判焼き」があり、どちらも餡がたっぷりと入っています!
100%純粋な蜂蜜と新鮮な卵を使った皮は、柔らかくふっくらとした食感。
吟味した北海道十勝産の小豆と純度の高い白ザラメを使って丁寧に手で練り上げた餡は、ほどよく小豆の粒が残りつつもなめらかな口あたりです。
箱入りにすると、江戸時代の商家で使われていた縁起のいい「大福帳」と書かれた箱に入れてもらえるので、創業当時から続く大手亡豆から作る白餡羊羹「本練羊羹」と詰め合わせてみるのもオススメです。
住所:東京都中央区日本橋堀留町1-4-16
アクセス:東京メトロ日比谷線・都営浅草線「人形町」徒歩6分
東京メトロ銀座線・半蔵門線「三越駅前駅」徒歩8分
営業時間:9:00〜17:00 (どら焼きが売り切れ次第終了)
定休日:土日祝
最 中といえば、御菓子司 中里(東京都北区)
明治6年(1873年)に日本橋で創業、大正12年(1923年)に関東大震災で被災し、駒込に移転した和菓子店の中里。
大人気商品の「揚最中」は、昭和初期に3代目店主が考案したものです。
上質なごま油で揚げた最中の皮に伊豆大島産の焼き塩を振りかけ、北海道十勝産の小豆を練り上げた餡を挟んだものが「揚最中」です。
ごま油の香ばしさとパリッとした食感、ほのかな塩気の皮と、なめらかな餡の甘みが絶妙なバランスで組み合わされています。
この他、江戸時代に庶民に親しまれ現在でも昔ながらの製法で作り続けている「ぶどう餅」も人気の品です。
なめらかなこし餡を丸めて、小麦粉と片栗粉をまぶして蒸しあげ、黒っぽい見た目がぶどうのように見えることから命名されました。
住所:東京都北区中里1-6-11
アクセス:JR山手線「駒込駅」徒歩3分
営業時間:平日10:00〜18:00 土祝〜17:00
定休日:日曜日
手土産にぴったりな干菓子がある和菓子店
お こしの手土産なら、大心堂雷おこし(東京都台東区)
明治30年(1897年)創業、「おこし」のみを作り続けてきたおこし専門店です。
おこしは千年前の古文書にも記載があり、古くから日本で親しまれてきた菓子です。
昭和の中頃、東京土産の代表格であった「雷おこし」だけでは物足りなかった当時の店主が、究極のおこしを追求して昭和39年(1964年)に作りあげたのが名物の「古代」です。
お米に熱を加えて膨らませたおこし種と厳選した千葉県産の落花生に、水飴と砂糖を混ぜた蜜を加えて作っています。
お米の膨らませ具合、蜜の温度や絡ませ具合など、一年の歳月をかけて研究し、完成させました。
白砂糖と水飴のあっさり味と、黒砂糖のコクのある味の2種類があります。
住所:東京都台東区台東4-28-2
アクセス:JR山手線・京浜東北線「御徒町駅」徒歩8分、
都営大江戸線・つくばエクスプレス「新御徒町駅」徒歩3分
営業時間:8:30〜18:00
定休日:日曜日
か りんとうの手土産なら、ゆしま 花月(湯島)
昭和20年(1945年)初頭に花街や江戸情緒の残る湯島で、子供相手の駄菓子屋からスタートしました。
蜜を絡めるかりんとうではなく、飴を絡めるかりんとうが名物となっています。
当時から変わらない小さな店で、昔ながらの味を守っています。
かりんとうは、練って発酵させた生地を油で揚げて飴を絡めるというシンプルな製法ですが、おいしい食感にするために手間をかけています。
丁寧に練り上げたキメの細かい生地を温度の違う油で順に3回揚げて、中はサクッと外はカリッという食感を生み出しています。
白砂糖をじっくり煮詰めた飴を絡めて、黒砂糖のかりんとうとは違う艶のある美しいかりんとうになっています。
住所:東京都文京区湯島3-39-6
アクセス:JR山手線・京浜東北線「御徒町駅」徒歩5分
東京メトロ千代田線「湯島駅」徒歩3分
営業時間:平日9:30〜20:00 、土日祝10:00〜17:00
定休日:なし
煎 餅の手土産なら、銀座 松崎煎餅(東京都中央区)
文化元年(1804年)に芝で創業し、慶応元年(1865年)銀座に移転。
関東大震災や戦災で2度店舗を焼失してしまいましたが、現在も銀座で営業を続けている煎餅店です。
できる限り無添加で、素材の味を生かした草加煎餅、あられやおかきなどを作っていますが、名物は瓦煎餅「三味胴」です。
小麦粉に砂糖や卵を加えて角丸の正方形に焼いた煎餅で、形が三味線の胴に似ているところから命名されました。
シンプルな素材で作る優しい味わいも人気の理由ですが、煎餅に描かれる絵柄も人々に愛され続けています。
絵柄は月ごとに変わる四季折々の花鳥風月や風物詩で、職人さんが1枚1枚丁寧に描いています。
オリジナルの絵柄を入れることもできるので、お祝い事や記念品などにもぴったりですよ♪
住所:東京都中央区銀座5-6-9銀座F・Sビル
アクセス:東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線「銀座駅」徒歩3分
JR山手線・京浜東北線「有楽町駅」徒歩8分
営業時間:11:00〜19:00
定休日:なし
干 菓子の手土産なら、江戸和菓子 銀座 菊廼舎(東京都中央区)
明治23年(1890年)に創業し、銀座尾張町で歌舞伎煎餅を売り出したことがはじまりの江戸菓子処です。
大正後期に2代目が、茶事に供される干菓子を元に考案したのが「冨貴寄※」です。
風に吹かれて寄せられた木ノ実や葉っぱなどを模した干菓子で、それらは風に運ばれて幸せをもたらすものであってほしいという願いから「冨貴寄※」という名になったそうです。
※冨貴寄は商標登録されています。
豆や煎餅、金平糖、季節の花や縁起物などの砂糖菓子がびっちりと詰め合わされていて、蓋を開けた時に思わずニッコリしてしまいます。
通年商品のほか、季節限定品もあり日持ちもするので、贈った相手の笑顔を思い浮かべながら選んでみてください♡
手土産や贈り物にぴったりの逸品ですよ!
住所:東京都中央区銀座5-8-8 銀座コアビルB1
アクセス:東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線「銀座駅」徒歩1分
営業時間:11:00〜20:00
定休日:なし
おわりに
ここにご紹介した和菓子以外にも、それぞれのお店には定番の品や隠れた名物がたくさんあります。
そこに行かなければ出会えないお菓子もあるので、お店を訪ねたらお目当ての品以外もぜひ試してみてください!
和菓子には、お饅頭、お団子、羊羹、上生菓子など、たくさんの種類があります。和菓子は、材料や製法、水分量によって分類されます。今回は、「生菓子・半生菓子」と「干菓子」の種類に分け、和菓子の名前をその由来や特徴などを交えてご紹介します。
日本人の暮らしは、お正月に始まり、節分や雛祭り、七夕など、様々な年中行事で彩られています。どれも文化や季節を大切にする心が、繋いできたものです。
四季折々の要素が盛り込まれた美しい形と繊細な色合い、上品な味わいで人気の京都の和菓子。長いこと都であったという歴史と立地などの条件が、京都の菓子文化を発展させてきました。
旧暦の和風月名で6月は「水無月」ですが、京都では行事食として有名な和菓子の名前でもあります。一年中売っている店もありますが、多くの店では6月に入ってから店先に並びます。6月30日の夏越の祓はらえに欠かせないものとなっています。
和菓子の魅力は、何といっても“四季を楽しめる”こと。そして、季節の中で皆が心待ちにするのは、やっぱり「春」ではないでしょうか?寒い冬が終わって暖かさが増していくとき、人々の心もワクワクしていきます。そんな春の訪れを、形や色や素材で表現した春の和菓子をご紹介します♡
四季のある日本の夏は、湿度が高く過ごしにくい季節です。
近年は温暖化で平均気温が上がってきて、ますます夏が辛くなってきていますよね…。
この記事では、そんな日本の夏の暑さを少しでも紛らわすことができる、涼を感じる和菓子や夏の風物詩を模した和菓子をご紹介します!