日本の伝統的な和菓子の一つ「落雁」。
落雁は日本三大銘菓にも数えられ、その可愛らしい色や形から、お茶請けや贈り物としても人気です。
また、落雁はよく「和三盆」と混合されることが多いのですが、いったい何が違うのかご存知ですか?
今回は、落雁とはなにか、和三盆との違いについて、落雁の歴史や作り方、名店など、落雁の魅力をたっぷりとご紹介します。
「落雁」とは
落雁とは、米や小麦などから作った粉に水飴や砂糖を混ぜて練り、色をつけ、木型に押し固めて乾燥させた和菓子です。
とても固いお菓子ですが、粉を固めて作っているだけなので、口に含んで嚙み砕くとすぐに溶けていきます。
落 雁の名前の由来
落雁の名前の由来には諸説あります。
中国の「軟落甘」という菓子が日本に伝来した際、「軟」という字が伝わらずに「落甘」だけが伝わった後さらに言葉が訛り「落雁」となったという説。
室町時代、本願寺の綽如上人が教化のために北陸を訪れた際に、白地にゴマが点々とあるこの菓子を出され、まるで雪の上に雁が降り立つ姿に見えて命名した、という説などさまざまです。
また、「落雁」という言葉には“空から舞い降りる雁”という意味があり、秋を表す季語でもあります。
落 雁は「打ち菓子」の一種
和菓子は水分量や製造方法により、さまざまな種類に分類されます。
落雁はその中でも「打ち菓子・打ちもの」と呼ばれる干菓子の一種です。
打ち菓子という呼び方は、木型に詰め固めて作った和菓子を取り出す際に、その木型を「打つ」ように叩いて出すことから由来しています。
落雁の歴史
落 雁が日本に伝わるまで
落雁の基となるお菓子は、西~中央アジアが発祥の地であるといわれています。
それが中国を経由し、一般的には室町時代の日明貿易によって日本に伝わってきたとされています。
日 本でお供え物の定番となる
“落雁や和三盆がお供え物の定番な理由”で詳しくお話しますが、お釈迦様の弟子がお盆に100種類以上の食べ物をお供えする「百味飲物」を行ったことから、お盆にはさまざまな果物や野菜、食べ物を飾ります。
昔は砂糖を使ったお菓子は大変貴重な食べ物であったことや、仏様には貴重な品をお供えするという考え方から、落雁もお供え物の定番となりました。
落 雁が庶民に広まったのは「茶道」のおかげ
その後、茶道の浸透によって落雁は仏事以外にも、お茶菓子としても広く知られるようになりました。
さらに時代が下り、原材料が安価に手に入るようになると、落雁は庶民の間でも親しまれるようになります。
当時からお茶菓子として頂くのが、落雁の定番の食べ方だったのですね。
落雁と和三盆の違い
和 三盆とは
「落雁」と「和三盆」の違いが分からない…という方も多いと思います。
実は、この2つの大きく違うところは材料なんです。
「落雁」は材料に米粉を用いるのに対し、「和三盆」は和三盆糖などの砂糖類と水、水飴のみで作られます。
見た目や作り方がよく似ているため混合しがちですが、実は味も全く異なるお菓子です。
落 雁や和三盆がお供え物の定番な理由
落雁や和三盆は、お墓参りなどの際にお供え物として用いられることも多いですよね。
“落雁の歴史”でも簡単に触れましたが、落雁がお供えに使われるようになったのは、目連の伝説が有名です。
かつて釈迦の弟子であった目連という僧侶がいたのですが、彼は、餓鬼道という地獄に落ちてしまった母親を救うために、百味飲食(美味しい食べ物)をたくさんの人々に施したといわれています。
そんな話が広まった結果、落雁はお供えによく使われるようになりました。
さらに、落雁がお供え物として使われる理由にはこれだけではなく、かつてお砂糖が高級品であったことも関係しています。
昔は現在とは異なり、砂糖をはじめとして甘味というものはとても高価であり、滅多に手に入らないものだったので、甘い落雁をお供えするというのはご先祖様にご馳走をお供えする意味合いが含まれていたのです。
また、果物などの生ものより日持ちがすることも、落雁や和三盆がお供え物の定番になった理由の一つでもあるようです。
落雁の作り方
一般的に落雁は、熱処理をした米粉や砂糖、水飴を混ぜ合わせて、型に入れてから乾燥させて作ります。
かつては熱処理をしていない米粉に水飴を加えて形作ったものを蒸した後、乾燥させるという作り方が主流でした。
ですが現在、こちらは落雁と区別して「白雪糕」と呼ばれています。
ここでは、基本的な落雁の作り方を簡単にご紹介します。
落雁の材料
落雁の主な材料は「米粉」と「砂糖」です。
米粉は主に、蒸したもち米を加熱して粉砕した「寒梅粉」や、蒸したもち米を乾燥させて粉砕後に加熱した「上南粉」などが用いられています。
地域によっては米粉のほかに、大麦を挽いた「はったい粉」などを使用する場合もあります。
砂糖は、粉状の上白糖でも作れますが、香川県と徳島県で伝統的な方法で製造されている「和三盆糖」が、香りや口どけがよく、最も適しているといわれています。
このほかに着色料を使う場合や、落雁の中にあんこや栗などを入れる場合もあります。
誰でもできる!落雁の作り方
まず、砂糖と着色料などの粉をよく混ぜ合わせます。
そこに少しずつ水や水飴を加えていき、よい湿り具合になったら米粉を加え、更によく混ぜ合わせます。
この時、米粉を入れると生地が固まってきますので、手早く混ぜることがポイントです!
生地を一度ふるいにかけたら型に詰めて軽く押し固め、型から取り出して一晩ほど乾燥させたらできあがりです。
落雁の型は、伝統的には木型を用いますが、ご家庭で作る場合はチョコレート型などを代用すると良いでしょう。
落 雁を形作る「木型」
伝統的な落雁作りに欠かせないのが「木型」です。
木型は桜や樫などの硬い木が材料に用いられ、実際の落雁のデザインとは左右で凸凹が逆になるように彫られます。
そんな木型の繊細な模様からは、職人さんの熟練された技術が窺い知れます。
また現在、落雁の木型職人は全国で6~7名ほどしかおらず、大変貴重な存在となっています。
落 雁の形について
落雁といえば、お茶菓子や仏事のお供え物のイメージが強く、それは落雁の形にもよく表れています。
木型で作り出される落雁の形には、仏教の象徴である「蓮の花」や、仏花として知られる「菊の花」、お供え物の定番「フルーツ」などが多いです。
ですが、もちろんそれだけではなく、お茶菓子や贈り物に用いられる落雁の形には「扇」や「コマ」、「鯛」などの縁起物も多く彫られています。
これらの形は、かつて菓子が祭礼に多く用いられ、祈りと感謝の意を表した名残でもあります。
真っ赤な鯛の落雁は、魔よけの象徴でもあったのだとか。
このように、落雁の形はバリエーションが豊かなので、目で見ても楽しいですよね♪
落雁の名店をご紹介♪
ここでは、美味しい落雁が食べられる名店をご紹介します。
口当たりや味わいなど、お店独自の魅力がいっぱい詰まっていますので、ぜひ訪れてみてください♪
伝 統の味を守り続ける 石川県金沢市「森八」
金沢の由緒ある名店、「森八」の落雁『長正殿』は、日本三大銘菓の一つにも数えられるほど有名な和菓子です。
北陸のもち米と徳島県の上質な和三盆糖を用い、300年以上も続く伝統的な製法で作られる『長正殿』は、大変口どけが良いと評判です。
赤い色は自然染料で、紅白の落雁は縁起が良いことから贈り物にも人気です。
住所:石川県金沢市大手町10-15
アクセス:JR金沢駅兼六園口よりバスに乗車、「橋場町バス停」で下車徒歩で約3分
受 賞経験多数! 石川県金沢市「落雁 諸江屋」
森八と同じく、金沢市内にて寛永2年創業の「落雁 諸江屋」は、170年前の創業当時から製造し続けている伝統の生落雁から、ココア味の新感覚な落雁まで、バリエーション豊かな落雁を作り続けています。
人気商品は、加賀藩献上の抹茶を使った『濃茶落雁』や、加賀の伝統文化である能楽の一種をその名に持ち、生落雁の間に羊羹を挟んだ『加賀宝生』です。
一口食べたらその柔らかな口当たりに、きっと驚くこと間違いなし!
住所:石川県金沢市野町1-3-59
アクセス:北陸鉄道石川線「野町駅」より徒歩約5分
長 年守り続けてきた上品な口どけ 新潟県長岡市「越乃雪本舗大和屋」
長岡市に本店を構え、約230年の歴史を誇る越乃雪本舗大和屋の看板商品でもある『越乃雪』は、森八の『長正殿』と同じく日本三大銘菓の一つです。
その魅力は何といっても、ほろほろとした上品な口どけ。
新潟のもち米を独自製法で加工した米粉と、徳島県産の高品質な和三盆糖と混ぜ合わせて自社蔵で一晩寝かせることで実現するその食感を、ぜひ一度味わってみてください。
江戸時代から全国にその名が知れ渡り、贈り物用のお菓子として大人気の『越乃雪』は、まさに雪のように口の中で溶けていくような、不思議で繊細な落雁なのです。
住所:新潟県長岡市柳原町3-3
アクセス:JR「長岡駅」より徒歩約15分
ユ ーモア溢れる落雁たち 京都府上京区「UCHU wagashi」
“人をわくわくさせたり、幸せにするお菓子作り”をコンセプトに掲げる京都の「UCHU wagashi」の落雁は、見る人を楽しい気持ちにさせてくれるラインナップの和菓子が揃っています♪
若い方からも大人気のかわいらしい形の落雁は、木型職人さんの手によって一つずつ彫られた型を使って生み出されます。
創業当時からの定番商品『drawing』は、カラフルなピースがパズルのようで、ちょっとした贈り物にもぴったりですね。
住所:京都市上京区寺町通丸太町上ル信富町307
アクセス:京阪電車「神宮丸太町駅」より徒歩約5分
新 たな和菓子の楽しみ方を探求 東京都大田区「WAGASHI asobi」
平成23年(2011年)創業、東京・大田区に工房を構える「WAGASHI asobi」は、2人の和菓子職人によって日本国内外に活動の幅を広げている、新世代の和菓子店です。
WAGASHI asobiの『ハーブのらくがん』は、着色料などを一切使用せず、ローズマリーやカモミールなどのハーブ、柚子や苺などの素材そのものを材料に使用しているのがこだわりです。
伝統的な概念に囚われず、現代の暮らしにも取り入れやすい『ハーブのらくがん』は、コーヒーや紅茶を合わせても美味しくいただけるので、落雁の新たな食べ方を発見できるかもしれませんね!
住所:東京都大田区上池台1-16-2
アクセス:東急池上線「長原」駅 徒歩1分
おわりに
材料も作り方もシンプルだからこそ、熟練の職人による高度な技術が求められる繊細な和菓子、落雁。
伝統的な製法を守る落雁に加え、次々と新しいスタイルの落雁も生まれており、誰でも気軽に楽しめる和菓子の一つなんですよ。
そんな落雁をちょっとした贈り物にしてみたり、日本茶以外の飲み物のお供にしてみてはいかがですか?
ぜひ、落雁を気軽に生活に取り入れてみてください♪
和菓子とは、日本の伝統的なお菓子のことです。日本の季節感をふんだんに取り入れ、色や形、素材など、あらゆるもので四季の美しさを表現しています。日常のおやつとして食べるものや、季節の行事、お祝い事に使われるものまで、日本人の暮らしと繋がりの深い和菓子。今回は、和菓子とは何か、種類や歴史、オススメの商品までご紹介します!
和菓子には、お饅頭、お団子、羊羹、上生菓子など、たくさんの種類があります。和菓子は、材料や製法、水分量によって分類されます。今回は、「生菓子・半生菓子」と「干菓子」の種類に分け、和菓子の名前をその由来や特徴などを交えてご紹介します。
「羊羹(ようかん)」とは、小豆の餡に砂糖と寒天を加え練りながら煮詰めたり、寒天の代わりに小麦粉や葛粉を入れ蒸し固めた和菓子です。もともとは中国で食べられていた羊の肉を使った汁物(スープ)=羹(あつもの)だったため、「羊羹」といいます。今回は、練り羊羹・蒸し羊羹・水羊羹など種類の違いやオススメの名店までご紹介します。
日本人のおやつとして、子供からお年寄りまでに人気の「饅頭」。
王道のものから個性的なものまで、数え切れないほどたくさんの種類があります。
お土産にもらったり、お茶うけにだされたりする、日本ではなじみ深い饅頭ですが、一体どれくらいの種類があるのか気になりませんか?
旧暦の和風月名で6月は「水無月」ですが、京都では行事食として有名な和菓子の名前でもあります。一年中売っている店もありますが、多くの店では6月に入ってから店先に並びます。6月30日の夏越の祓はらえに欠かせないものとなっています。